映画監督でもあるヴォーカル・甫木元空が自身の作品の生演奏上映をきっかけに結成した2人組バンド、
Bialystocksが、1月26日にリリースされた1st EP『Tide Pool』の発売を記念し、2月25日に〈『Tide Pool』Release Live〉を東京・新代田FEVERで開催。
同公演のライヴ・レポートが到着しました。
[ライヴ・レポート] Bialystocksが1stEP『Tide Pool』のリリース・ライヴを2月25日(金)に東京・新代田FEVERで開催した。共演予定だったRyu Matsuyamaは残念ながら新型コロナウィルス感染を受け、出演辞退となったが、Bialystocksに対する期待値の高さを証明するように当日完売という盛況ぶりだ。
映像作家でもある甫木元空(vo)と、他のアーティストのサポートやジャズのライヴで活躍する菊池剛(key)からなるBialystocks。結成のきっかけは甫木元が手掛けた映画『はるねこ』(2016年)の劇中音楽をライヴ演奏するイベントで、2019年から活動開始。映画やミュージカルといった2人の共通項と、甫木元のどこか郷愁やペーソスを感じさせる歌詞の世界観、菊池のバックボーンであるジャズやソウルが融合した、オリジナリティと風通しの良さが同居した音楽性で早耳の音楽ファンを惹きつけている。
ライヴはミュージック・ビデオのダイジェスト映像を背景に波の音が流れる中、サポートメンバー5人とともにステージに登場。1曲目は『Tide Pool』収録の「光のあと」でスタート。音数を選びぬいた演奏の上をあたかもそこあることが当たり前のような伸びやかな甫木元のヴォーカルに驚く。かと思えばR&Bテイストの「コーラ・バナナ・ミュージック」ではトリッキーなメロディラインを歌い、さらに驚かされる。生バンドで表現するネオソウル〜現代ジャズの抜き差し感も音源とはまた異なる楽しさを増幅させていく。さらに郷愁感漂う語りに近い歌い出しとジャジーなピアノのイントロから始まる「花束」。Aメロでのファルセットへの飛翔はこちらの身体も浮き上がるようだ。熱唱とは違う自在な歌唱と、それを埋没させない隙間の多いアンサンブルにすでにオーディエンスは心を持っていかれた様子。
「あ、この2人がBialystocksです」と、登場時の印象をいい意味で覆す甫木元。後のMCでも「Ryu Matsuyamaさんを見るつもりだったけど返金するのもめんどくさいなと思って来られた方もいらっしゃいますよね」と笑いを誘う。
フロアが和んだところでメンバー2人だけでの「フーテン」。ブルージーではないけれど、風来坊を描写した歌とラウンジ感のある菊池のピアノが、この人物像に命を吹き込む。ここで甫木元が「映画撮ってるとかいうとアーティスティックな人と思われがちなんですが、こんな感じなんです」と、ダメ押し気味に自己紹介。続く「All Too Soon」は歌の譜割りがミュージカル調かつ器楽的でユニーク。サポートの山下あすか(perc,cho)のコーラスも効いていて、ノワールなジャズにきらめきを一匙振りかけたような洒脱さ。都会的な夜におとぎの国が出現したようなBialystocks独特の音楽観が十二分に堪能できた。
さらに超スローなキック&スネアから始まる「またたき」は全ての音が歌に付かず離れずのいい温度感。シンプルな音像だからこそ、サビでエモーションを開放する甫木元のロングトーンも落差があってカタルシスを生む。また、菊池と秋谷弘大(key,cho)が添えるコーラスの完成度も高い。秒針のようなシンバルの刻みから入る「Winter」はスタンダードジャズをアップデートしたようなメロディが心地よい。一聴、ジャンル違いなようなブルージーな鶴田伸雅(g)のソロが起点になり、スケールの大きなロック・ナンバーのエンディングに向かい、バンドスタイルならではのダイナミズムを満喫させてくれた。続いてピアノループに乗る早口のトーキング風ヴォーカルに耳目を奪われる「I Don’t Have a Pen」。NTT docomoのWEB CM「正解よりも、楽しいを答えに。」に起用された、アイデア満載のナンバーだ。生演奏ではサビでファンクのグルーヴに突入する勢いが何倍にもなる印象だ。そのトリッキーさと熱演に大きな拍手が起きる。
ひとりでフォークギターを弾いていたという甫木元は初めてスタジオに入った際に始まったセッションにどう参加していいかわからなかったという。バンドビギナーだというわけだ。そこに一人、また一人、音を重ね、菊池の「これが噂のセッション!」という言葉に甫木元があんなに流暢な歌から意外なほどたどたどしくフェイクを入れる。さらにサポートメンバーの紹介がスタートし、それぞれのソロパートで会場を沸かせた。
日常をこの上なく美しいメロディに乗せる新作EPからの「Over Now」。ちょっとした皮肉や面白みを押韻も含め、軽快に描くセンスは背景の違う2人ならではだろう。耳が喜び、心が躍る。本編ラストは彼らの中ではフォーキーな魅力にあふれる日常の歌、「ごはん」と「夜よ」を1曲につないだ展開。コロナ禍のみならず、世界が不穏な空気に包まれるときだからこそ、“明日こそは意味を持たずに のんきな歌 そっと響くように”というフレーズがしみた。
ポストジャンル的な多様さを持ちつつ、人懐こさもある彼らの音楽に拍手喝采が送られ、しばしの後、アンコールで再登場。まず2人だけで「あいもかわらず」を披露し、再度サポートメンバーを呼び込んで、主にインディーポップ好きのあいだで話題になり、予測不可能な展開で人気曲になった「Nevermore」を披露。ギターポップのきらめきもエモーションの爆発もすべて詰め込んだこの曲の自由度の高さはさらにオーディエンスを熱くして、そこにいるあらゆる人は高揚感の中、おのおのの帰路についた。
なお、対バンライヴ〈Bialystocks Live 2022 “音楽交流記1”〉が5月7日(土)に東京・渋谷WWWで開催されることもライヴ中に発表された。


Text by 石角友香Photo by SHUHEI.W