アレハンドロ・ホドロフスキー監督の新作映画、『リアリティのダンス』(7月12日公開)のプレミアム上映イベントが4月22日(火)に東京・新橋「ヤクルトホール」で開催。『The Rainbow Thief』(1990年 / 日本未公開)以来、実に23年ぶりとなるホドロフスキー監督の新作、さらに当日はホドロフスキー監督自身が登壇するとあって、会場のチケットはすぐにソールドアウト。小雨降りしきる中、大勢の熱狂的なファンが会場を訪れました。
本編上映後、全身白でコーディネートしたホドロフスキー監督が颯爽と現れると、場内には割れんばかりの拍手と歓声! 「私は観客の感動を呼ぶためでなく、一人一人がそれぞれの方法で反応してくれればいいと思って映画を作ってきました。ですが、今日この『リアリティのダンス』に、皆さんがとても喜んでくれたことはまるで奇跡のようなことです」と、感謝の言葉を述べました。
『リアリティのダンス』は“家族の再生”と“魂の癒し”をテーマに、ホドロフスキー監督の故郷であるチリを舞台として、少年アレハンドロと彼の家族をめぐる関係、そして彼がどのように世界と対峙していくかを、現実と空想を交錯させ描いています。
また、ホドロフスキー監督の息子であるブロンティス・ホドロフスキーが少年の父役を演じ(アダンやクリストバルといった息子たちも出演)、妻のパスカルも衣装デザインとして参加。
現代社会全体の問題である「人は家族にどう向きあっていけばいいか」という質問に対しては、「その深い質問には、分厚い本でないと説明できない(笑)。わたしはサイコマジックという心理セラピーで家族を分析する『Psicomagia』という本を書きました。それは、自分の祖父母の代まで研究することで自身を癒やすという内容です。ですが、この『リアリティのダンス』では、芸術的なかたちでそのメソッドを昇華させるように作りました」と語る。
続いて、タロットカードの研究者としても知られるホドロフスキー監督が、会場の観客からの“悩み相談”に答えることに。……するとここで、仮面をかぶった22名が、ホドロフスキー監督自身が古いマルセイユ・タロットを復刻してデザインした特大タロットを抱え、“人間タロットカード”として舞台に登場。
「幼稚園の先生になりたいのですが、レポートの締切が4日後なのにまだ書けていないんです。私は職業に就けるでしょうか?」という女性からの相談には「何を占ったらいいんだ? 自分がなりたいと思っている職業なら、なぜ勉強しない?」とタロットを引く前に一喝! そして別の女性の「意中の男がいて告白すべきか悩んでいる」という相談には「指輪を口移しで贈れ!」とアドバイス。「髪を伸ばすべきか、このままにするべきか」という悩みには、彼女が選んだタロットカードの意味から、「髪を伸ばすとセクシャルなパワーが増して権力をつかむことができますから、ぜひ髪を伸ばしてください」とのこと。
最後に、首に痛みがあり、どんなセラピーを受けても治らないというペルー生まれの青年が登場。ホドロフスキー監督は、彼が選んだカードと共に、生い立ちを質問していくなかで、お母さんの不在や、わだかまりによる痛みではないかと分析。客席にスペイン語の歌を歌える人はいないか呼びかける。
ひとりの女性が舞台に招かれると、監督は彼女に彼の首元でスペイン語の子守唄を歌わせる……。笑いと緊張が交錯する不思議な空気に包まれ、観客が固唾をのむなか、彼が引いた次のカードを見た監督は、「賢くなって、ペルーに帰ってしまった母さんに会いにいってください。そうすれば首の痛みはなくなります」と伝えたのでした――。
『リアリティのダンス』のテーマそのままに、タロットリーディングでもオーディエンスの魂を癒やそうとしたホドロフスキー監督。彼の妥協を許さない生き方とエネルギッシュな魅力が十二分に伝わるイベントとなりました!
(写真: 西岡浩記)