リリィ・シュリンプは、ともに曲を書き、ヴォーカルも取るりさとあゆなのデュオ・ユニット。みずみずしくエヴァーグリーンなメロディを、ふたりの伸びやかなヴォーカルとハーモニー、それにアコースティック主体のサウンドとともに聴かせるポップスが持ち味だ。その彼女たちが、今年2月に短冊CDシングル「おろかもの」をミオベル・レコードから発売。さらに2ヵ月連続配信リリースとして、9月に「来世を信じないきみへ」、10月に「earth」と、相次いで新曲を発表する。これらは楽曲としての力強さやスケール感が格段に増しており、ユニットの可能性を広げる曲となっている。
Latest Single
おろかもの
(miobell records・PCMR0040/2月21日発売/配信中)
New song
「来世を信じないきみへ」
(miobell records/9月19日配信)
「earth」
(miobell records/10月20日配信)
ミオベル・レコード作品紹介
ジャケットイラスト:切り絵クリエイター KEN
――リリィ・シュリンプの結成は2024年。SUGARCLIPというバンドで活動した後、音楽活動を休止していたりささんと、りささんの曲が好きだったあゆなさんのふたりでライヴをやったのが最初なんですよね。
あゆな「私はりささんの作った〈森が好き〉という曲が好きで、それまでもふたりで曲を録音したり、カヴァーで声を重ねて録ったりしていたんです。ハモるのが好きだったんですよ。それで一緒にライヴをやりたいなと思って。りささんが音楽活動を休止していることも知ってはいたんですけど、私は全然配慮できない人間なので(笑)、ズケズケと誘って一緒に出てもらったのが初めてのライヴです」
――結成の時にユニットとしてのビジョンはあったのでしょうか。
りさ「ないです(笑)。でも、ないのが逆によかったと思うんです。もともと友達ですし、楽しいからやるみたいな感じ。前に音楽をやってた時みたいに“こうしなきゃ”と囚われる気持ちもなくて、ふわっと、ゆるっとやる感覚というか。それがよかったんだなって思います」
――今年2月に出たシングル「おろかもの」はりささんの曲です。これはどういうイメージがあったのでしょうか。
りさ「周りから言われる自分と、自分の見ている自分というのがあって、その周りから言われる自分をバサッと切りたくなっちゃうタイミングってありませんか? “俺は俺の道を行くんだから”みたいな。でもそれって愚かなことかもしれない、というのを表現したいと思って作りました。自分の道を行っても、先は“崖”なんです。死んでもいいからその道を行くっていうのも、ひとつの答え。一見愚かな行為だけど、自分で決めて進んだということに意味があるんじゃないかなと思ったんです」
――自分たちの音楽も、時代に関係なく我が道を行く、っていうことにもつながるわけですか。
りさ「周りからすれば“もっとこうしたほうが売れるよ”とかあるのかもしれないですけど、うるさいと(笑)。私たちは楽しくやっているんだから!」
――カップリングの「[X]ty Years」はあゆなさんの曲です。曲を書くようになったのはいつ頃からなのでしょうか。
あゆな「フレーズを書いたりしてはいたんですけど、曲として完成させたことがなかったんです。でも、曲数を増やそうとなってきた中で、曲作りに本格的に取り組んでみて、これが初めて仕上がった曲です。一晩で書きあがりました。しんどかったことって毎回忘れていっちゃうなというか、思い返してみるとつらかったことや乗り越えたことっていっぱいあったなと。がんばった自分のことを忘れないようにしてあげたいと思ったんです。ティーンエイジャーが終わって、大人になって、トゥエンティ、サーティ、フォーティとなって“ty”になっていく。もう一生ランニングマシンの上を走らされるような感覚というか、その苦しさが限界を超えてしまう時に寄り添う曲、ではなくて、一緒にどん底に行くような曲です(笑)。その時間すら自分を大事にしてほしいというメッセージです」
――2ヵ月連続配信リリースの第1弾「来世を信じないきみへ」もあゆなさんの曲です。歌詞に前世、来世と出てきますが、“輪廻”のイメージでしょうか。
あゆな「そうですね。壮大な単語と生活感のある単語を交ぜたかったというのがあります。宇多田ヒカルさんに影響を受けていて、宇多田さんも曲調とメロディの壮大さに対して、すごく現実的な、生活感のある単語が出てきたりする。その表現できる幅が好きで、そこにリスペクトもインスピレーションももらいつつ、せつない感じを表現しました。それと、個人的におもしろいと思っているのは、歌詞の世界観が、りささんの曲はマクロ視点というか、地球の外側から見ているような視点が多いこと。彼女の曲はそこが好きなんです。逆に私はミクロというか、同じことを言っているんだけどアプローチが違います」
――10月に出る「earth」はりささんの曲ですが、たしかに空から見た風景などマクロ的視点があります。
りさ「人間の愚かさを憂いている時期があって、その時に地球にいたくないって思っちゃったんです。人間でいることが恥ずかしいという境地。人間って無駄なことばかりしているし、愚かじゃないですか。だから地球を保護したい。でも今は、どうしても意味のない生産をしたり、よくわからないことをいっぱいやってしまう。そういうのにいちいち傷つくんですよ。それで自分が人間でいたくない時があって、もう宇宙に帰りたいって。地球じゃなくて、もっと精神的に高いレベルのところに行きたいことがあって、それを天使という言葉に例えました。自分をどうして地球に置いていっちゃったの、という曲です。この世の中、知らないことばかり。たかだか人間の生きる80年か100年の間で知れることってごくわずかだと思っていて。その愚かさも表現しているのかなと思います。“愚か”というのは、私の中でテーマとして根底にずっとあるのかもしれないです」
――女性デュオの曲って、ほんわかした癒やしっぽいイメージが強いと思うんですけど、リリィ・シュリンプはそういうところじゃないですよね。とくに今年出た曲はどれも世界観が明確で、スケール感もあります。これからどういう音楽を作っていきたいですか。
あゆな「ぬるっと始まったのがよかったのかなというのもあると思うんですけど、私はあえて先のことを考えないようにしています。こういう音楽をやりたいとか、こうでありたいというイメージをあえて持たない。私たちを取り巻く環境、作った曲たちから引っ張っていってもらおうかなというか。できあがった曲たちが私たちを形作っていってくれたらいいなと、身をまかせている感じはあります」
りさ「私もそう。未来を見る、将来を想像するってできなくなっちゃった(笑)。今が楽しければいいなんてまったく思わないですけど、じゃあ将来的にこうなりたいからこういう曲を作ろうとか、自分たちのイメージはこういうものだよねみたいなもので縛っていっちゃうと、おもしろくなくなっちゃうのではないかと思っています。たとえば〈愛さえあれば〉なんて歌っていたのに、次は〈お金が全て〉という曲を作って、周りから“どういうこと?”って言われても、自分たちがそれを作りたかったんだからいいでしょう! っていうわがままなユニットでいたいです(笑)」
取材・文/小山 守
撮影/塙 薫子