ライブ配信アプリ発のアーティストとして、活躍の場を広げているシンガー・I NOU。SHOWROOMでの毎日配信は、ファンとの絆を深めるだけでなく、オリジナル楽曲リリースや音楽フェス出演を実現させるなど、アーティストとして大きく成長するきっかけとなった。そして、10月には3回目となるワンマンライブ『I NOU in Wonderland ~Who are you? あなたは誰?~』を大阪・東京にて3DAYS開催。一歩ずつ外の世界へと歩みを進める彼女に、これまでの活動やファンを魅了する歌声の背景、さらには思い描くアーティスト像について話を聞いた。
――まずは、現在の活動のベースとなっているライブ配信を始めたきっかけを教えてください。
「元々は前に出ることは好きじゃなくて、ただ歌うことが好きだったんです。歌いたいけど顔を出したくないので、仮歌を入れるお仕事やYouTubeで顔出しをせず歌配信を始めるために、前に所属していた事務所に入りました。そこで今もマネージャーをしてくれている方にも出会うんですが、その方に“ライブ配信というものが始まっていて、キャラクター的にハマるんじゃないか”と声をかけてもらったのがきっかけでした。でも、ライブ配信についての説明を聞いてみると、顔出しで不特定多数の知らない人が見に来ることがわかって、“そんなの絶対無理だ!”と思いました。だから、初配信はほとんど顔が見えない状態で歌っていたんですが、見てくれたリスナーさんが“また配信してほしい”、“歌を聴きたい”と連絡をくださったんです。初めて誰かに“聴きたい”と言ってもらえたので、すごく心に響いたんですよね。その声に少しずつ突き動かされていきました」
――配信を続けていく中で、工夫していることはありますか?
「配信を見に来てくれる人の大事な時間をもらっているので、とにかく楽しんでほしいと思っています。歌を聴いて、ちょっとでもプラスの時間になることを意識する。その積み重ねな気がしています」
ーーリスナーさんと時間を共有することで、絆が深まっていくんですね。
「ライブ配信はライバーだけのものではなくて、リスナーさんとの掛け合いでできるものなんです。リアルのライブは観客の熱量や声援が届いて、ライブ自体を一緒に作り上げると思うんですけど、ライブ配信も同じです。コメントをくださる方や見に来てくださる皆さんと一緒に作り上げていく。しかも、日本全国、海外からもリアルタイムで見に来てくださるので、そんな皆さんと日々コミュニケーションを取れるライブ配信はすごいなと思います」
――今年でライブ配信を始めて10年目になりますが、大変だと思うことはありますか?
「正直、辞めたいなと思ったこともありました。でも、ライブ配信に出会ったおかげで、応援してくれる存在が初めてできて、こんなにたくさんの人が一緒に夢を叶えようと頑張ってくれることが私にとってすごい経験で。どんなに嫌なことがあっても、具合が悪くても、前を向かせてくれるんです」
――人前に出ることが苦手だったI NOUさんですが、今では大勢の観客を前にライブを披露しています。ライブ配信を始めたことで、ご自身の中でどんな変化が起きていったのでしょうか?
「どうしても人に対しての苦手意識がすごくあったんです。でも、毎日リスナーさんが配信を見に来てくださって、一緒に時間と思いを重ねていく中で、“人っていいな”と感じることがたくさんあって。そのおかげでどんどんリアルの活動ができるようになっていったと思います。最初は人の目が見れないぐらい酷かったんです(笑)。でも、ライブやフェスで出会う人たちは、私のことを知らなくても、音楽を通してつながれる瞬間があるんですよね。リアルな音楽活動も、“心でつながれた瞬間ってこんなふうにつながれるんだな”とライブで体験したことがあって。そこからさらにライブが大好きになりました。今はステージに立って、目の前にいる人たちと歌を通してつながりたい思いがあふれています」
――今年に入ってアーティスト名を改名されましたが、どんな背景があったのでしょうか?
「ずっと悩んでいたんです。MAYAという名前で活動していて、SHOWROOMの中ではいろんな方に知ってもらえるようになりました。でも、SHOWROOMから外に出て音楽活動を始めようと思ったときに、海外のアーティストさん含め、名前が重なる方があまりにも多くて。SNSで検索してもらっても埋もれてしまう。せっかくリスナーさんからの応援で、大きなフェスやステージに立たせてもらっても、そこで出会った人が検索してもたどり着けないんですよね。そこで、タイミング的にも去年事務所も退社してフリーになったので“チャレンジするなら今だ!”と思い切って名前を変えました。だから、今までを捨てるわけではなく、今までの全てと共に“新しい一歩”という感覚です」
――「I NOU」という名前にはどんな思いを込めましたか?
「英語で“わかるよ”、“そうだよね”と共感するときに使う、“I know”という言葉がベースになっています。私は365日配信をしていて、みんな笑顔で見にきてくれます。でも、出してない見えない部分ってすごく大きいと思うんです。みんなが抱えているものが何かはわからないけど、だからこそ、みんなの日々に寄り添える歌を、様々な感情を歌っていきたいという思いを込めました」
――音楽のルーツについても教えてください。歌うのが好きになったのは、どんな影響からだと思いますか?
「家ではテレビでよく音楽番組が流れていたので、音楽が染み付いていったんだと思います。あと、母親がよく歌を口ずさむ人で、いつも童謡を歌ってくれていて。自然と歌がそばにありましたね」
――学生時代、人前で歌を歌う機会などありましたか?
「人前に出るのが嫌だったので、ひとりでカラオケで歌っていました。でも、カラオケにひとりで行っているってことを友達に知られるのが嫌だ……と思うぐらい、引っ込み思案な性格で。だから、いつも家で音楽を聴いて口ずさんだり、テレビ見て口ずさんだりしていました」
――どんな歌を歌っていましたか?
「椎名林檎さんは大好きなので、よく歌っていました。自分に持っていないものを持ってるので、めちゃくちゃ惹かれます。他はジャンルなど気にせず、“好きだから歌いたい”という思うものを歌っていたと思います」
――今年は積極的にオリジナル曲もリリースされていますが、楽曲制作ではどんな部分にこだわっていますか?
「人間の感情って1個じゃないので、いろんな感情に寄り添える楽曲を歌っていきたいと思っていて。だから、ジャンルも声色も幅広く歌っています。6月に発表した『笑えるね』は、SHOWROOMの楽曲提供イベントがきっかけでいただいた曲です。自分の中で“ここから次につなげていきたい”という思いも強かったし、リスナーさんと一丸となって手にした楽曲だったので、ありきたりな曲は嫌だなと思って。だから、今の私のイメージから想像できない、リスナーさんが驚くような曲にしたくて、ダークな要素をいっぱい散りばめた楽曲にしました。この曲を聴いてちょっとでもスッキリしてもらえたらいいし、抱えていたものが浄化されるといいなと思って。“陽”じゃない部分も歌っていきたいんです」
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――10月にはワンマンライブが控えていますが、どんな内容になりそうでしょうか?
「今回が3回目のワンマンなんですが、事務所を辞める頃からずっと考えていたワンマンをやりたいと思っていたんです。独立して、名前を変えたこのタイミングでしかチャレンジできないことがいっぱいあるんじゃないかなと思って。今回は東京だけでなく、初めて大阪でも開催しますし、初めての3DAYSなんです。1日目の大阪がアコースティック構成、2日目の東京はダンス構成、最終日がバンド構成になる予定です。セトリも全部ガラッと変えて、どの日を見ても全く違うセトリと構成のワンマンになるので、ワンマンを3回やるみたいなイメージですね(笑)。あと初のコンセプトライブ! 3日間で私が音楽を通して今伝えたいことを物語と共にお届けします。自分が持っている以上の力を注いで、改めて音楽をとおして自分自身とも向き合う3日間にしたいと思っています」
――では、今後アーティストとして目標にしていることはありますか?
「ずっと応援してくださっているリスナーさんに、たくさんの景色を届けられるようになりたいです。ライブ配信からスタートしたアーティストとして、叶えられることをもっともっと描いていきたい。同時に、ライブ配信のおかげで全てが変わったので、ライブ配信は素敵な場所だということ、たくさん夢が叶えられることももっと知ってもらいたいです。だから、毎日大切にライブ配信をしながら、外にも響かせていけるアーティストになりたいと思います」
取材・文/久野麻衣 撮影/SHIZUKA SHERRY