レアな体験だった―。会場にいた人の多くはきっとそう思ったことだろう。
亀梨和也が独立後初にしておよそ9年ぶりとなるソロツアー〈KAZUYA KAMENASHI LIVE TOUR 2026 - FROM HERE-〉を開催した。ここでは、全国7都市を巡った同ツアーの最終日の9月17日、東京ガーデンシアターの昼公演の模様をお届けする。
開演前のステ―ジ上スクリーンには、海底に7つの額縁が無造作に並んだイメージ映像が映し出され、波の音が流れている。おそらくは今回のツアー開始直前の7月にリリースされたばかりの1stアルバム『WAVE』の世界観を投影したものだろう。本公演の演出は開演前から始まっているのだ。
しかしながら、開演は予定時刻から遅れることに。亀梨自身による二度の場内アナウンスを経て、なんと亀梨がステージに登場。チケット認証のトラブルによりスタートが遅れていることを説明し、「あと7、8分かかるということで、ほんとうはかっこよく登場したかったんですけど、爆笑トークからスタートいたしましょうか」とまさかのフリートークに突入。滅多に見ることのない機会に会場は沸きあがった。亀梨は、会場入り前に行ったサウナ施設の自販機のタッチ決済がうまくいかなかったエピソードを披露し、朝からデジタルのトラブルに見舞われる日だというオチをつけてみせた。
思わぬサプライズ展開に客席が十分に温まったのち、予定よりも30分ほど遅れてライヴ本編がスタート。ピンスポットの下、レースの目隠しをつけた亀梨がアカペラで「POMPEII」を披露し始める。楽曲は火山の噴火によって消えた都市・ポンメイをモチーフにしたもので、バックの音が加わるとともにステージ前方の紗幕にはマグマの映像が映し出され、会場は一気にヒートアップ。亀梨が曲の終わりとともに目隠しを外すと大きな歓声が上がった。続く「WAVE」では、開演前に映像として見ていた額縁が実際のセットとして出現。亀梨は額縁に腰掛けてドラマティックなナンバーを歌い上げた。一曲ごとに新たな演出を惜しみなく盛り込んでいくのがこのライヴの見どころのひとつ。ステージに大きな階段やソファなどが次々とあらわれるなか、亀梨はそれらを使いながらバックダンサーと阿吽の呼吸で歌い踊っていく。
「4度目まして、亀梨和也です」という軽妙な挨拶に始まるMCではソロとしては9年ぶりのライヴであること、新たな一歩を踏み出したことなどを語り、「Crushing On You」へ。ここでバックバンドが登場。ステージ後方のセットに組み込まれるようにバンドメンバーが配置されているのもひじょうにユニークだ。続いて亀梨は天冠を頭につけて幽霊の姿になり、体温を求めてファンに呼び掛ける。大きな声援を受けた亀梨は熱を取り戻し、「36度5分」を披露した。
本編中盤MCでは、昨年4月に個人での活動を始め、コンサート会場のスケジューリングやグッズ制作の納期まで考えるようになったことなど、自身に訪れた環境の変化に触れる。売り切れ続出となったグッズ販売の対応も丁寧にファンへと伝えた。
また、一旦ステージを捌けて、衣装チェンジの模様を生中継する模様はチャーミングだった。アンコールに用意されている「Love it!!」の振り付けを前もってレクチャーするシーンもあり、随所にユーモアを交えながらファンとのやりとりを楽しんでいる様子がうかがえたのも印象的だった。
ダンサー陣によるインタルードを挟み、過去のソロ曲を振り返るブロックに突入。発表当時のような衣装と演出で楽曲を披露していく。なかでも雅やか和装を纏った「1582」はフライングも飛び出し、大きなインパクトを残した。また、フロアの客席間をトロッコ移動しながら歌った「someday for somebody」は当然のように熱狂に包まれた。ステージよりもさらに近い場所に降臨するファンサービスに撃ち抜かれた人も多かったことだろう。
幕間の映像「ライブとアイツと亀梨と」は、各会場で内容が異なるというファン垂涎のコンテンツ。どうしてもライヴにダンサーとして出演したいスタッフと、その母(!)が亀梨に懇願しにくるというくだりは一級のコント映像として機能しており、この日一番の笑いを誘った瞬間だったかもしれない。
本編最後となるブロックでは、亀梨は黒のハット、黒のスーツで登場。再びバンドを従えて「現在」「Diamond」と披露していく。「'O sole mio」のサビではシンガロングも起こり、会場は温かい一体感で包み込まれた。続く「Passion Overdose」では色気たっぷりに妖しく魅せ、ラストは「ここにいなくても」。高まったボルテージを片時も下げることなく壮大なバラードを歌いあげ、最後は自ら銀の紙吹雪を投げ上げて本編を締めてみせた。
ファンからの熱烈なアンコールを受けステージに戻ってきた亀梨は、事前に予告していた「Love it!!」も含めてたっぷり4曲を披露。この日最後のMCではこのツアーを振り返りながら、「また新たな旅を、航海を、始めさせていただきたいなという思いでこのような流れを作り上げました。ほんとうにさまざまな環境、状況のなかでこうしてついてきてくださるみなさんの思いというのを僕自身大切に育んでいきたいと思いますし、この関係をしっかりと守っていきたいなと思っています。濁りのないエンタテインメントをそのまましっかりと届けられるように、受け取ってもらえるように、これからもこうしてステージで活動していきたいと思いますので、どうかこれからも素敵な関係を一緒に作り上げていきましょう」と語った。〈FROM HERE〉というツアータイトルは、まさに“ここから”新たなスタートを切るのだという意志の表れである。
亀梨がこの公演最後の曲として選んだのは「絆」。本公演は、予期せぬトラブルから幕を開けたことを含め、亀梨とファンとの絆が改めて再確認されたライブになったのではないだろうか。青く光るペンライトで埋め尽くされた会場でこの日のオーラスナンバーを聴きいっていたら、そんな結論に導かれた。
取材・文/南波一海