同じ時代を生きている情感をはらんだ音の塊、BLAHMUZIK a.k.a. Brothers GRIM

BLAHMUZIK a.k.a. Brothers GRIM   2014/06/27掲載
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“情景が浮かぶ音”、音楽に対するほめ言葉のひとつ。“絵を描くように音を創る”、これもまたミュージシャンへのほめ言葉のひとつなのだろう。そんな陳腐な言葉をかき消すような鮮烈さに満ちた、ほぼ毎週のようにリリースされるCD-R群、ソロ名義でのプレスCD、ジャズ・ドラマー今泉総之輔とのユニットBMSO、Guilty ConnectorとのユニットGrim Talkers、それらの作品を受け取った者に“飛び込んでくる”のはドローン、ハーシュ・ノイズ、ヒップホップを経由したジャズといった表層的な音の断片ではなく、今、同じ時代を生きている情感をはらんだ音の塊。Brothers GRIM名義で新作となる『ONE』をリリースしたばかりのサンプラー・アーティスト、BLAHMUZIKに話を訊いた。
――ソロとしてCD-R作品、プレスCDでは2013年に1st『THE MOST BEAUTIFUL TRAK NEXT TO JAZZ』、2014年に『How Do We End All Of This Muzik Madness』、さらに他アーティストとのユニットと、定期的に作品を発表されていますね。
 「『THE MOST〜』に関しては去年、区切りとして発表しました。MTRに入っていた10年前のトラックとか、新しいものではないです。最初にリリースするなら裸のまま出そうということで、手を加えたりもしていません。幼なじみとやっていたグループのトラックも、そのまま入れています。『How do 〜』もそうなんですが、CD-Rのほうが好きなことをやっているから、そっちを本来だったら(プレスCDとして)出すべきなのかなとも思うんですが、(自分の音楽への)“入り口”になるかなと」
――ほぼ毎週のようにCD-R作品をリリースされていますね。
 「リリース数が多いので、よく作家だとか言われたり、そういうニュアンスでとられたりするんだけど、自分にはまったくそういう気がなくて。……マスタリングした瞬間に音って変わっちゃうじゃないですか、フラットで。自分にとっては、そのままサンプラーから取った音の方が一番素で、OKラインで。そのままで、マスタリング作品と対抗したいと思ってるところもあるのかな。サンプラーでフレーズやメロディ・ラインがひとつできた時に、その形の根本の部分に気持ちを落とし込んだ、聞こえない部分だと思うんですけど、そこをやっているんです。そこが一番伝えたいんだけど」
――CD-RとプレスCDでは意図的に作り方は違うのでしょうか?
 「CD-Rに関しては、デカい音量でクラブやジャズ・バーで聴くものとは完全に違うので、フレーズだとかは気にします。あとはバラバラですね。例えば写真を1枚見て、イメージでその中の話を組み立てていく、情景に近いんだと思うんですけど。他にも、生活していくうえでの納得いかないことだったり、辛いことだったり、色んなことがあって。その思い出みたいなものが蘇ったらサンプル・ネタを探して、そのコードに合うような形で、響くものをみつけて作っていくとか」
――内面にあるものを、目線だったり、感情などのテーマがあって、そこに沿う音をピックアップして、形にしていくという手法なんでしょうか。
 「そんな感じなんですかね。動物の目線で考えて作ったトラックとかもあったり。笑っちゃうんですけど、カラスの目線で作ったトラックとか、気づかされることも多くて。そういう時はかなり集中しているので一気に作り上げますね。……音を作るしかできないっていうか。誰に求められているわけではなく、ずーっとそれが続いていて。『ONE』については、CD-Rでリリースした『Da whirlpool in March』の裏側っていう意味合いもあります。“これまでやってきたことの裏側を作りたい”と思っていたタイミングで親友が亡くなって。その時の感情です。完全に悔しかったんですね。とにかくヘッドフォンをつけて泣いているみたいな……はた目には大丈夫?って思われるような状況の中で、とにかく“作る”って感じで出来た音源です。タイトルとか曲目は、そいつと遊んでいた場所とか。まぁ“出しておかないと”っていうのがきっかけです」
BrothersGRIM a.k.a. BLAHMUZIK
『ONE』
――CD-Rはどれぐらい刷るんですか?
 「1枚だけのもありますが、だいたいは数十枚程度です。去年の夏から、1枚は手元に残しているんだけど、それより前のものは何も残してないし、データも全部消しちゃってます。宣伝とかも気が向いたり、時間があるときにインスタグラムに写真をあげるだけなので、わかんなくて買えないって言われます。そんなもんでいいかなって思ったり」
――飽きっぽいタイプですか?
 「多分。スケートボードも飽きちゃったし、DJも人の曲をかけながら“俺ならこうする”って思っちゃって、意味ないなって。ターンテーブルも売っちゃって、家でレコードが聴けないって焦ったり、めちゃめちゃですよ。でも、作ることだけは飽きないですね。出来たばっかの音源にはもちろん満足していて、ちょっと時間が経つとどうでもよくなるんだけど、数年後とかに改めてまた満足できて。その間はどうでもいいですね」
――音作りの際に、ご自身の中におそらく明確な情景があるのかと思いますが、映像を作ることに興味はありますか。
 「CD-Rに関しては、ひとつのジャケットにすると制限されるから、イメージとかは究極、いらないんですよ。ただの紙だけでもいいんじゃないかと思ったり。やってみたい気持ちは、なんとなくあるんですけど。映画の音はやってみたいなと思う。キム・ギドクの映画が好きで、たまに観てる最中に音を消して表情だけを見たりとか、流れがすごく抽象的だったりすると面白いなって思ったりするけど……ああいう素晴らしい映画監督の作品を観ると逆にできないですよね。それでいいんじゃないかな、それ以外は別にいらないって思えたりもして。満足できる、別の切り口があったらやってみたいのかな」
――音楽的なルーツについて教えてください。
 「15歳くらいのころ地元で音楽をやってる人がいて、そこで聴かせてもらったり、スケートボードで遊んでいるときにかかっていた曲とかですかね。ヒップホップのレコードだとインストが入ってたりするんで、ジャズのサンプリングに出会ったり、先輩がまたその元ネタを持ってたりして、気づいていった。幅広く好きでしたね、ヘンリー・カウみたいなロックも好きでした。カサンドラ・ウィルソンとか、おもちゃみたいな音が入っていて“面白いなあっ”て単純に思った気持ち、そこらへんなんだろうな。そこから、今でも使っているサンプラーを手に入れて。トラックを作り出したのがはじまりですね」
――カルチャー、アートなどの影響を感じることはありますか?
 「よくわからないです。最近で言うと、気に入りすぎて1回くらいしか着ないまま実家に置いてあった“456”って書いてある〈PHATFARM〉の服にものすごいシミっていうか、変色してて、それを見たときに“ああ、これがアートだな”って思った。たぶん、思い入れとか、経験とかが反映されているものだと思うんですけど」
――“東京に住んでる人が作る音だな”って感じますが。
 「地元は、ある意味ゲットーみたいな場所で。もちろん地域性もあるんだけど、人の手で、10年程度で出来上がったものばかりのところ。団地、環七、公園とか、角ばったものがすごく多いというか“四角い”んですよ。でも、そういう地元だからこそ、人が住んでる建物より古いもの、例えば川でデカい石が流れで削られて変な形になっていたりとか、感動するんですよね。……色んな人たちがいて、少なからずその影響を受けている中で、改めて“本当に好きなことやろう”って気づかされたことが今に繋がっているので、地元のおかげもあるのかなって思うんですね」
――違う都市に移ったら、音楽的な部分って変わってくると思いますか?
 「完全に変わらないっていったら嘘になると思うんですけど、根本の部分は変化しないと思います。旅行に行ったりしたときに、感覚的な部分だけなら変わりますね。海に行ってビール飲みながら雲を見て、綺麗だなと思う、リラックスするし。その時にこういうのが聴きたいなって思ったら、それは余韻として何かに影響はしているかもしれないけど、そのくらいのものだと思う」
――どこかに拠点を移されたとしても残るということ?
 「そうですね。作品を作るときに“どこが終わりどころか”というのがまずは、皆それぞれあると思うんですが、音を止めて客観視したときに、いかにピュアに出来たかっていう透明度……その度数が高いかどうかなんです。例えば、ドローンみたいに持続した音が8分続いているとして、確率共鳴みたいなもので、音がレイヤーしてくるようにも聞こえて……“これで完成”って満足するんですけど、人によってはただのピーって音だったりして。そこをいかに、自分の考えだけで詰め込めるか。迷いもなく一発で繋がるっていうか、線になる。自分に対しての純粋さです」
――人とセッションすることは好きですか?
 「込められた気持ちが伝わるような、よく知っている人とであれば……好きですね。LIL' MERCYとの『Write & Blow』はアカペラが届いて、リリックを読んで“その一言なんだよなあ”って共感が生まれたり。さらけ出しているようでいて、本当は何重にも鎧を着たうえでの一言、はがゆいところとかを見ると、性格も知ってるし、葛藤を受け取るというか、そこへ容赦なく音をぶつけることができる。出来上がった時に“こんな風に感じたよ”って会話するのも好きだし。あと、自分はロジックとかプロトゥールズを使っていないので、耳で聞いて基本、全部手打ちで作っていくから、そういう意味でもハードルは高いので面白いです」
――BMSOはどんな経緯でスタートしたんですか?
 「BMSOは(今泉)総之輔のほうからアプローチがあって、スタジオに入ったんだけど、その時に2〜3時間ぐらい無言で何も決めずに、どういうやつなのか、何なのか分からずに成立して。互いにちゃんと“自分がある”ということが(一緒にやる相手の)基準なのかなと思うんです。BMSOでいいなと思うのは、完璧な“ずれ”、生でやっていると必ず“ずれてくる”ところ。同じループを作りはじめて、5拍で進めてても、4拍に感じるとか、そういうマジックがあるのがとても良い。しかもリズムだからお互いの拍の解釈があって、一番音楽っぽい。だからお客さんも一般的な人が多いというか。自分のではなくて総之輔のほうのジャズのお客さんなんだろうけど」
――Grim Talkersについては?
 「Guilty Connectorも〈サーーーーー〉って音だけのハーシュ・ノイズを挑発的に提示してきたりして……お互い5倍くらいにして返してますけど。だからセッションは本当に楽しいですね。Grim Talkersは実験的とも感じるかもしれないけど、互いの音の位置をずらしながらやったり、掛け合いみたいな感じになってるんだろうな。そこをいかに音楽のように、フィジカルに感じさせつつ、ノイズのところで引き抜くかって考えています。まずは聴いてもらえないと仕方ないって思うからそういうところは意識してる。Guilty Connectorがどう考えてるかはわからないけど(笑)」
――ある意味ではノイズやドローンだと評されると、リスナーに関しては間口が狭くなると思うのですが。
 「ジャンルとかよくわかんなくて、ノイズを使うのも最大の理由は、ムシャクシャしてる部分や飽和している感じ、衝動的なものを表したいから。とにかく、自分の太ももを悔しくて叩くような気持ちの時もあると思うんですよ。それに一番近いなっていう表現がノイズなんです。でも自分はノイジシャンではないし、トラックメイカーでもないし、だからジャズ、フリー・ジャズには一番近いのかなとは思うんですけど」
――それでは“サンプラー・アーティスト”たるソロとしての活動についてはどうお考えでしょう。
 「ソロに関しては、クラブなんかでやっていて、夜22:00〜朝5:00くらいまでの大きなくくりとして考えると、やっぱりグルーヴが出来上がってるところに自分が組み込まれていて、そこからもちろん引き離してもいいんだけど、そこに寄せないといけないところがある。結局どんなに奇抜なことをやろうと、クラブを“1曲”だと考えたら、ただのサビの部分、ブリッジの部分にしかならないのが歯がゆくて。そうは言っても、想像力を掻き立てたり、明確にその方向を示してあげたりはできるんだけど。サンプラーについては、昔ミュージシャンに嫉妬していたことがあって、“絶対負けない”って思っていたときがあった。“やってやろうじゃねえか”くらいの勢いで、現実的なものを落とし込みたいと思ってます。ソロでのライヴは少ないんですけど、エフェクター、サンプラー、ルーパーとかピックアップ・マイクを使っていて、ステージで葛藤した時にその音をピックアップが握っているから、サンプラーと同時に鳴ったりして、一気に表情が生になる瞬間がある。エフェクトとかやっぱりいいなと思いますね。写真でハレーションを起こすような感じって音源にも落とし込めないし、生じゃないと伝わらないところ、そういうのが好きで……やってるんですよね」
――必要に迫られてジャンル分けをするなら、確かにフリー・ジャズがいちばん近いのかな、と感じます。でも、こんなに尖った音のジャズ・ミュージシャンは、いまやほとんどいないと思いますが、いかがでしょう?
 「自分は実験的だったり、フリーな音楽の影響を受けていると思います。フリーだとインプロヴィゼーションだから、出した音に対しての反応やハーモニーとリズムの関係性での進行から断ち切れてたり、暴走している人……ポール・ニールセン・ラヴ、ハン・ベニンクとか、カッコいい人がいて。“音で殺しにきてる”っていうか、本気なんですよね。そこに引き込まれるし。そして、そういうことに気が付かせてくれるのがBMSO。2人だけでずーっと1時間のセットで、全部さらけださないとだめで、殻を被っていると何にもなく終わっちゃうんですけど。ひとりで表現する、音が出来上がるっていうことが一番大切なのかな」
――ジャズをやっている人たちには“外からのもの”は嫌われているのかな、とも思います。
 「フリー・ジャズだけが素晴らしいとかでは絶対なくて、スタンダードなジャズの良さとかもあるし、本当にミュージシャンだったら楽器を鳴らした演奏だけじゃなくても、ライヴでセッションできるんじゃないかって思います。サンプリングのカルチャー自体がすごく尖っているなと思うし。年配のジャズ・フリークの方から“いろんなのを聴いてきたけど、(自分の音を聴いて)一番すっとする”って言ってもらえたこと、嬉しいなと思います。“何が良いかわからないけど、なんかすごく良い”って褒めてくれたり(笑)。悪いときは“悪い”って、はっきり判断して、満足してくれるんですよね。すごく狭いところなのかもしれないけど、ヒップホップとジャズの世界でそういう人が増えてくれたら、もっと良くなると考えてます。色々聴いたり、遊んだり、嫌なことを経験したら幅広く聴けるようになると思うし、そうなり難いのは自分たち、やってる側の責任が大きいなって思います。カッコいいなって思う人は、みんな背筋が伸びていて。俺はちょっと猫背で、矯正しようかなって。背筋が伸びている人は、全体を見ることができて、とんでもないバランス力があって、しっかりとあるんですよ。そういう人に憧れているのかな」
――トラックを作りはじめたころから同じサンプラーを使っていたり、ロジックやプロトゥールズを使っていないというのはこだわりですか?
 「欲しい機材はもちろんいっぱいあるけど、買えないだけです。でも機材に頼ってやってたら意味ないし、持ってない、買えないのも含めて出来る範囲でやればいい、それなら俺は出来るかなって思っています。やりたいこととか、こうなりたいってのはあるだろうけど、何かをなぞらえてるなら意味はないし」
――今後の創作についてはいかがでしょう。
 「これまでは敢えて、ものを大きく見て、引いたビジョンで、少し楽して作ってたところはあるんですよ。例えば、ルート配送しているトラックが、その中でしか通用しないバーコードがあって。それをベースにCD-Rを作ったことがあるんですけど、その時は環七をトラックで走ってるのを後ろから眺めているような……景色を見ていて“ここで下りたいな”って思ってる場所とか、その感情を入れていたんだけど、それって結局引いて見ているから、次はもっと分かりやすく展開させていきたいなって考えています。今回の『ONE』で一区切りできたのかなと思っているので、これからはフォーカスしていくような、同じ目線の高さから見えるところで作ったり、そういう感じ方にしたいなって。もっとクローズアップして、具体的な形にするってことなのかもしれないけど、出来たらいいなっていうか、次、それをやろうと思ってます」
取材・文 / 服部真由子(2014年6月)
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