bump.y 1stアルバム『pinpoint』 プロデューサー西寺郷太(NONA REEVES)全曲解説

bump.y   2013/12/18掲載
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bump.y 1stアルバム『pinpoint』
プロデューサー西寺郷太NONA REEVES)全曲解説
取材・構成 / 宮内 健
 これまでにインディのロックバンドやガールグループのアルバムを丸ごと手がけたことは何度かありましたけど、こうしてメジャー・レーベルからリリースするアイドルのアルバムをトータル・プロデュースするのは初めてです。
 ここ3年ぐらいで男性、女性含めてアイドル・グループへの楽曲提供やプロデュースが増えたんですが、最初はアルバムでの参加が多かったのが、だんだんNegicco「愛のタワー・オブ・ラヴ」V6「kEEP oN.」のようにシングル曲のプロデュースも手がけるようになってきていました。やっぱりダンスもきちんと付いて、PVも作られて、ライヴで披露されていくことが、アイドル・ソングの極み。シングルは正直手応えがあります。で、次はアルバムすべてをプロデュースしてみたいと。なので今回bump.yが企画段階から僕にトータル・プロデュースを任せてくれたのは本当に嬉しかったですね。
 bump.yは、今年1月にリリースされたシングル「COSMOの瞳」から一緒に仕事させてもらいました。最初のミーティングが、2012年の8月23日。堂島孝平くんとやってるSmall Boysの新宿タワー・レコードでのインストア・イベントの後だったので覚えてるんですよ。で、プロジェクトが始動したのは2012年 秋頃から。担当ディレクターのヴィジョンに“80年代アイドルの楽曲を、今のサウンドで”っていうキーワードがあったんで、それならとヴォーカル・ディレクションも含めて全方位的にタッグが組めることもあり、編曲と作詞・作曲の共作者に谷口尚久くんを推薦しました。そこから10曲。完成まで、1年3ヵ月くらいでしょうか。
bump.y
“pinpoint”
初回限定盤
 振り返ればいろいろ、その間に変化もありましたね。僕自身は普段可愛かったり、ポップなイメージの楽曲を求められることが多かったんですが、第2弾シングルの「SAVAGE HEAVEN」で、シリアスな曲調を求められたことは自分にとって最大のチャレンジでした。「SAVAGE HEAVEN」を初めて聴いた時、以前からのファンは「なんでbump.yがこんなヘヴィでダークな曲を?」って思ったかもしれません。僕も最初は思いました(笑)。ただ、桜庭ななみちゃん主演ドラマ『リミット』の主題歌という大前提の中で、原作のコミックや、ドラマの内容が凄惨なストーリーだったから、“ニコニコした要素”は最初から省くというのが“お題”だったんです。だけど そうして与えられた“お題”だったんですが、彼女たちって、そもそも女優としていろんな役を演じてきた経験がありますから、シリアスな曲のときはビシっとシリアスな顔になるんですよ。で、そうして演じてるときにこそ、むしろ本当の彼女たちの姿や、他のグループたちとの“差”が出てくるのかなと思ったことが、大きな発見でした。つまり「これは単に“歌”というだけではなく、“お芝居”ですよ」と。彼女たちは幼い頃からドラマを演じるトレーニングと実践を重ねている。事務所の環境も、凄い先輩たちがいて恵まれています。なので、「5人はアルバムの登場人物であり、それぞれのシーンで歌を演じてもらう」っていう、逆サイドから、僕も途中でbump.yを捉え直したんです。
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“pinpoint”
初回限定盤
 彼女たちは、他のアイドルと比べてもおしとやかなイメージがあるというか。たとえば最近では、BPM200近いアイドル・ソングもざらにあって、デストロイな(笑)ものや、限界まで本性をさらけ出すやり方もあるし、超体育会系の「おらーー!」みたいなスタイルもある、それはそれで時代のムードだし、盛り上がるんでしょうけど、そういうのと一緒くたになっても、彼女たちの持つエレガントな雰囲気を大切に、しっかりと差別化する、その部分はすごく意識しました。
 トータル・プロデュースは僕が担当して、全曲のアレンジは谷口尚久くんが手がけました。僕に何人か腕利きの相棒がいる中で、谷口くんはJ-POP的 な音楽の“正統”の凄みを出したい時に誘う相手。SMAPやV6も一緒に作ってますし、ガラパゴス的な音楽の極みのようなSmall Boysではプロデュースを任せてます。いわゆるサブカルや、SNSや、ノーナを含む渋谷系の音楽が好きだった“音楽好き”のリスナーだけが反応するようなものじゃない、郊外のドン・キホーテや、ボーリング場などで普通にかかっててもおかしくない“日本”仕様のギリギリのものを今回のbump.yでは意識して作ってみました。
 ミックスはNONA REEVESでもお世話になってる松田タダシさんにお願いしました。リップ・スライムチャットモンチーテイ・トウワさん等も手がけている売れっ子エンジニアですね。松田さんは僕のある意味“サウンド”的師匠というか、さまざまな音楽を知り尽くしてる人なんですが、bump.yの在り方や、僕の狙いを高く評価してくれて「bump.y大好きだし、面白いよー」って献身的に仕事をしてくれましたね。楽曲そのものの作りは、80年代歌謡曲からの流れを追いかけたオーソドックスなものだけど、サウンドの最終的な質感は“今”という仕上がりになってると思うんですが、それは松田さんの力が大きいです。その絶妙なバランスがアルバム全体の魅力になっているかと思います。
1. 「孤独にVIVID」
 80年代のアイドルって、10代でも結構大人っぽかったというか。それこそWink工藤静香さんにしても、歌ってることは完全に男女の成熟した恋愛だったり。この曲に関しては、そういう大人っぽさを狙いました。AKB48のような大人数のグループだと、大勢でユニゾンで歌うことが多いけど、bump.yは5人なので、それぞれへのフォーカスが重要になってきます。8歳の年齢の差も、ある意味では女子アイドル・グループの今の潮流というより、むしろジャニーズ的というか。だからこそ、アルバム全体でメンバー一人一人に見せ場を作ることは歌割りなどで意識しましたね。それぞれの素敵な部分が出るように。
 この「孤独にVIVID」と、「傷痕 HEAVY SOUL」「SAVAGE HEAVEN」を、僕の中では“bump.y シリアス三部作”と位置付けていて。その中でも「孤独にVIVID」はダンサブルなフィーリングもあるので、シリアスな側面と明るいポップな側面の両極を繋ぐ中和剤というか、橋のような存在で。今のbump.yを表すにはベストかなとスタッフと相談して1曲目とリードに選びました。
 筒美京平さんや松本 隆さんが好きで、昔の歌謡曲をたくさん聴いてるような、それこそ今ムック本とかたくさん出てますけど、耳の肥えた音楽ファンがいるじゃないですか? そういう人たちに、「今これでしょ?」って自信を持って言える。そんな昔のレコードを探すんじゃなくて、今まさにここで生まれている今のダンス・ミュージックとして聴いてほしいって差し出せるのが、この「孤独にVIVID」なのかもしれないですね。“2010年代の『歌謡曲』”。
 今週だけでもSmall Boysと藤井 隆さんで出た、二丁目のゲイの方々が集結するイベントや、代官山UNITの〈申し訳ないとファイナル〉で、あれは700人くらいですかね……、パンパンに膨らんだフロアで僕がDJした時にかけたんです。多分まだ新曲でリリースもされてないこの曲、初めて聴く人も多かったんで不安もあったんですが、どちらも異常なほどの熱狂に終わってこの曲の威力を確信しました。ライムスター宇多丸さんや、ダイノジ大谷さんの絶賛も嬉しかったです。
02. 「恋はpinpoint」
 もともと10年以上前、それこそ筒美京平さんに“ポップスの作り方”を教わりながら「LOVE TOGETHER」をリリースした2000年頃に、ノーナのために作った曲なんですけど、女の子が歌ったらいいんじゃないかと思って温めてたんです。自信作だったんですけど大サビがなかったんで、今回bump.y用 に、「ララララー」からのいわゆるブリッジ・パートを谷口君くんに作ってもらいました。アルバム『pinpoint』は、作詞・作曲のクレジットをじっくり見ながら聴くと楽しいと思います。谷口くんスタートの曲はちゃんと彼のクレジットが前になってますから。これは“郷太色”の強い曲ですね。なのでこの曲は、今までの西寺郷太ワークスが好きだったら、きっと気に入ってもらえるんじゃないかな。
 「孤独にVIVID」でも話しましたが、bump.yは、メンバーの年齢が14歳から22歳までと幅広いんです。男の子でもそうですけど、7、8歳の年の差って、恋愛観も何もまったく違ってくるじゃないですか? しかも女の子は特に1年ごと、いや半年、3ヵ月ごとにでも変化していく時期だから、歌詞を書くのはなかなか難しかったですね。まあ、だからこその“pinpoint”なんで面白いんですが。
 僕は松山メアリちゃんの今風のヴィブラートをつけない、素直な歌い方が好きで。いわゆる“渋谷系”的な曲に彼女の声は合うんですよ。なので、この曲ではメアリちゃんに歌いだしを任せました。
03. 「傷痕 HEAVY SOUL」
 これは出来た瞬間、自分の最高傑作だと思いました。作曲家・作詞家・プロデューサーとして、自分が今まで出来なかった場所に到達するっていうのはすごく嬉しいことで。僕のこれまでの歴史の中で、これほどマイナー調で“世紀末的”な強さを持った曲は作ったことがなかったので。依頼も「どこまでダンサブルで、 華やかさやポップさを出せるか」というのが、これまでの西寺郷太的な作風で、そういう曲が多かったと思うんだけど、これはまったく違うベクトルで。
 彼女たちに、「女優なんだから」と曲ごとに真逆の世界観を要求するのであれば、自分の曲の作り方としても“究極のポップ職人”として、ハードロック的というか、『ブレードランナー』『北斗の拳』が合体したサイバー感というか、破滅的な世界を詞曲で表現出来ないと、と思いまして。それが“最高傑作”発言に繋がるわけですけど完成した瞬間、まさにひとつの到達感がありましたね。好き嫌いはあると思うけど、このクオリティでこういうタイプの曲が書けるなんて、 と。協力して形にしてくれた谷口くんと、それを歌ってくれたbump.yにはすごく感謝してます。
 ソリッドなbump.yの新しい側面は、高月彩良ちゃんっていう才能がいてくれたからこそ、出来たことだと思います。彩良ちゃんは、やっぱりこういった“クール”な曲でのヴォーカル面の軸ですね。あと“女の子が憧れるハンサムな女の子”と言う感じのキャラクターを作りやすかった。僕はアイドル・グループをプロデュースする上で、それぞれのキャラクターを活かすやり方が好きですから。bump.yに関しては、尖った彩良ちゃんのキャラを随所に刺していってますね。
 「クール・ジャパン」って言うんでしたっけ? 海外のアニメ・ファンとかにも受けそうな気がします。深沼元昭さんのギターも超カッコいいです。
04. 「COSMOの瞳」
 この曲は主に谷口くんが作曲して、ブリッジだけ僕が作曲しました。逆に詞は主に僕が書いて、ブリッジだけ谷口くんが書くという感じで、お互いに役割を交換して作った曲が今回のアルバムのやり方です。で、「COSMOの瞳」は、詞と曲の良さという意味では、プロジェクトの最初の一曲目でしたけど、相当“究極”まで行ったんじゃないですかね。シングル曲って、アルバムに収録された時にはまた違って聴こえてくると思うんですけど、「COSMOの瞳」もまさにそうで。シングル単体で聴くよりも、アルバムの中で聴いたほうが意味合いが見えてくると思います。裏のテーマとしては、「君に、胸キュン」的な、テクノ・ポップとアイドル・ポップの融合というのも入ってます。
 ただし、ビートルズジョン・レノン派とポール・マッカートニー派がいて、ずっとポップなポール派は理解者が少なかったように、これくらい“究極”ポップスになればなるほど、いわゆるサブカル的な文脈で浸透させるのはなかなか難しいなぁと思う気持ちも正直ありました。この曲の“凄さ”をもっと伝えていきたいですね。
 ななみちゃんは流石に大舞台に強いというか、「君の瞳はCOSMO」の台詞もレコーディング、一回しかしてません。集中力が凄い。スターですね。
05. 「ロマンティックMAYBE」
 「ロマンティックMAYBE」もAメロのあたりは、僕が10年ぐらい前に作って温めていました。僕自身、モータウン調のガール・ポップは好きなので、やっぱり得意なんですよ。bump.yって、他に活躍しているアイドルたちより、ちょっと古風というか、エレガントなキャラの子が多いと思うので、彼女たちが持っている育ちの良さ、ファンタジーみたいなものを前面に打ち出した曲のひとつですね。特に宮武美桜ちゃんのキュートな声が、脳みそを直撃してきて大好きな曲です(笑)。美桜ちゃんの ポップなヴォーカルは本当に魅力がありますね。
 歌詞に出てくる“ロマンチック”“ロマンチッカー”“ロマンチッケスト”っていうフレーズは、谷口君発信のアイディアです。ふたりでディスカッションしてるときに出てきたんですが、最初聴いたとき「この人……、やっぱ……、凄いな」と思いました(笑)。広告のコピー的に言葉でちょっとドキッとさせるという狙いが成功してると思います。あと“観覧車が光るアミューズメント・パーク”っていうのは、実際にbump.yが「COSMOの瞳」のリリース時によこはまコスモワールドの観覧車の下でイベントをやっていたのを、僕が観にいったことから入れたフレーズだったり、“パティシエみたい”っていう歌詞は、彼女たちが「自由が丘スイーツ大使」に任命されたことからインスパイアされたフレーズで(笑)。実際にこの1年3ヵ月の間に彼女たちに起こったことも、歌詞に当てはめてみたり。それってデートではないけど、ファンの方たちも共有した出来事として記憶してるじゃないですか? そういうことを言葉の中に意図的に織り込んだりと、随所に仕掛けも隠してあります(笑)。
06. 「DREAM BEATに飛び乗って」
 これまでの曲、特にシングル曲については1、2行で歌割りをしているんです。たとえばテレビの歌番組に出たときにはフルコーラスじゃなくて、1番だけ歌ったりすることも多いから、そのときにソロを歌えないメンバーがいるのはあまり良くないじゃないですか? だけどこの曲はアルバムに入る曲っていうのが決まってたから、一人一人に長めのブロックを歌ってもらおうというのがコンセプトでした。
 一番最後のほうにレコーディングしたこともあって、「どこのブロックを歌いたい?」って本人たちに歌うパートを選んでもらったのもこの曲だけですね。選び方も皆のキャラクターがそれぞれわかって面白かったです。曲調やサウンドも含めて、ちょっと特殊な曲として作れたのは、これこそアルバムの醍醐味って感じですね。ライヴでも、すごく映える曲だと思います。
 基本的に曲は谷口くんが作曲で僕が歌詞担当の曲ですが、「優しさ、言葉じゃなくて、直感を信じて」のパートのメロディは僕が考えました。多分最初、谷口くんはバグルス「ラジオスターの悲劇」的なテクノ・ポップ感を狙ってたと思うんですが、僕はそこにポール・マッカートニーとウイングスの「レット・エム・イン」の世界観のような、ノスタルジックで寓話的な、マーチングバンドや鼓笛隊が似合うようなメロディを入れこみたかったんです。
 宮武 祭ちゃんの抜けてゆく声とキャラクターには何度も助けられました。少年時代のマイケルを感じるというか、高音が気持ちよく響いて感動するんですよね。なので、この曲は出来た瞬間から「祭ちゃんが生きてくる曲だな」って思ってたんです。
07. 「Another Smile」
 これはアルバム中、最も谷口色が強い曲じゃないでしょうか。僕が作ったブリッジとアウトロのメロディ以外は、たぶんデモとして聴かされた一番最初の段階から大きな軸が出来ていました。彼はカーリー・レイ・ジェプセンあたりをイメージしたと思うんですけど、いわゆるアイドルっぽい曲というよりは、もう少しお姉さん的な、例えばBONNIE PINKのようなアーティストが歌ってもおかしくない純粋なポップスを目指して作られた気がします。
 ただ最終的なミックスの段階では、実は80年代よりも、90年代初期のイメージっていうのを意識してこの曲をまとめています。リサ・スタンスフィールドみたいな、ハウスとポップが混ざり合ったような。ちょっと前まではダサいと言われていた、アーリー90'sなところを強く意識してますね。自分の中でもブームというか。それは今回のSmall Boysの2ndアルバムもそうなんですけど、80年代のダサさとは違う、シンセの性能が上がったが故に、逆に安易にサンプリングを多用してしまったような、90'sっぽさが気持ちよくなってる。曲作りそのものは、あくまでも“いい曲”を作るっていうところでやってるけど、サウンドの仕様としては、2、3年前よりももうちょっと時代を後ろにズラしてますね。この前ロサンゼルスに行ってもその気配はめちゃくちゃ感じました。最近のcut copyとか。今回のアルバムでは「孤独にVIVID」あたりにも、90'sのイメージは反映されてますね。
 この曲は“by”っていう宮武美桜ちゃんと高月彩良ちゃんの高校生コンビのユニットが歌ってます。普段のキャラクターは、それ一辺倒じゃないんですけど、歌として聴いたのときの美桜ちゃんのすごく子どもっぽいカワイイ声と、彩良ちゃんの大人っぽい声がミックスされて楽しいですね。
 歌詞についても、bump.yと違った“現役高校生”として、ふたりならではの一面が出てるんじゃないでしょうか。学校っていう狭い世界では、自分で毎日の暮らしを選べないですよね。18歳ぐらいになるとそれなりに自分で選べるんだけど、高校卒業までの時期って、僕自身、抜け出せない何かを感じながら生きていたっていう印象もあって。だから「イヤなことがあっても、別の場所に行けば、別のスマイルがあるよ、大丈夫だよ」って、bump.yという、学校とは違う場所を持っている彼女たちだからこそ歌える、同世代ならではのメッセージソングを意識して作りました。
08. 「SAVAGE HEAVEN」
 この曲は不思議な曲ですね。ななみちゃん主演ドラマの主題歌ということで、映像の世界観とのマッチングというオーダーが最初から存在したこともあって。ただ、今どき、主演ドラマの主題歌を自分で歌うことなんて、なかなか難しいですからね。ドラマやCMや映画などでメディアにもガンガン登場している桜庭ななみちゃんという女の子が持ってるアドヴァンテージを活かしたいなと思って作りました。
 この曲、もともとは谷口くんが作った、純粋に美しいメロディのバラードだったんです。そこに自分としてはX JAPAN「Silent Jealousy」とか「Rusty Nail」のイメージをミックスしてみました。「生きることの意味」あたりの部分からのメロディが僕ですね。X JAPANの1st2ndは高校生の頃、聴きまくってたんで、ゴシックな様式美も入れてみたら面白いんじゃないかと。リズム的にはエンジニアの松田さんから提案されたトラップの要素も入れて谷口くんに作ってもらったので、結果的にはそれほどハードロック色は強くないと思いますが。あとは今年、マイケル・ジャクソンとシルク・ドゥ・ソレイユの舞台『イモータル』のオフィシャル・オブザーバー、日本への紹介者として1月にモスクワに行って、何度も『イモータル』を観て、舞台音楽の仰々しさみたいなところに改めて触発されたんですよね。ジャクソンズ「ハートブレイク・ホテル」のような、マイケル・ジャクソン的ストリングスのドラマ感。この曲はまさに制作過程だったんで、その影響も少し入ってるかもしれないですね。
 ライヴでも繰り返すたびにどんどんパフォーマンスが進化していって、5人のステージでの輝きが増していったのも印象的でした。
09. 「硝子のMAGIC」
 すでにシングル「SAVAGE HEAVEN」のカップリングとしてリリースされてる曲で、もともとは「COSMOの瞳」の次のシングル候補曲として作っていたんです。ホイットニー・ヒューストン「すてきなSomebody」とか、バングルス「マニック・マンデー」みたいな80年代のミドルテンポの曲のムードをちょっと意識してます。僕自身、bump.yの代表曲「Kiss!」がとても好きで、あの曲と繋がってライヴでやれたらな、というのがそもそもの狙いでした。作曲は主に谷口くんが担当して、僕がブリッジを手伝ったタイプの曲ですけど、今思えばシングルにしては“いい曲すぎる”というか、平和すぎたかもしれないですね。なので、アルバムで聴くと味わい深いはずです。こういう曲、今あまりないので。
 “若い恋”の前提って、中2と中3では全然違ったり、中3と高1も全然違ったり、また次の夏が来たときまで、その人のことを好きでいるかわからないっていうのがポイントだと思うんですけど、その儚い感じを歌詞作りでイメージしました。いくら好きだからって、思い切り近づくと割れてしまうっていうのも10代ならではだと思うし。砂時計も、薄い硝子で出来てて落とせば割れちゃうけど、そこで刻まれる一分一秒の重みっていうのは、僕らみたいなおっさんとは違うっていうね(笑)。
 あと、アイドルの暮らしって、見えてるけど入れない何かっていうのがあるじゃないですか? そういう意味で、そのまま見てるよりも硝子越しに見ていたほうが光も変わるし、綺麗に見えたりもする。そういう日本のアイドルならではの、ファンタジックなマジックも描けたらと思って歌詞を書きました。
10. 「CRY」
 湯川れい子さんとマイケル・ジャクソンの話を通じて仲良くなったんです。2011年9月だったかな、熱海にある湯川さんの別荘に音楽評論家の吉岡正晴さんと誘われて、一緒にお食事をするっていう日があって。そのときに、湯川さんから「私、歌詞を書いたから、あなたに曲をつけてほしいの」って言われてもらったのが、この「CRY」の詞なんです。
 湯川さんって震災以降、今でもずっとボランティアで東北を回って、講演したりいろんな活動をされてるんですね。で、自分が復興への想いをきっかけに書いた歌詞に、みんなで一緒に歌えるようなシンプルな曲をつけて、それを今のアイドルに歌ってもらえたらっていうことで、今アイドルの仕事の多い僕に預けてくれたんです。
 歌詞自体は、「上を向いて歩こう」のアンサーソングで、涙をこぼして泣いてもいいんだよって内容で。“俺でいいんですか?”って恐縮しつつも、光栄な話なのでがんばってみることにして。
 僕は子どもの頃から曲を作り溜めていたんですけど、あまり出来上がった作詞に曲をつける、いわゆる“詞先”ってほとんどないんですよ。で、少しプレッシャーに戸惑っていたら、湯川さんからいただいた歌詞を見ながら曲を考えてるときに、小学6年生ぐらいに僕が作ったある曲のメロディが、頭の中で再生されたんです。その曲には子供時代の僕が一応別の歌詞をつけてたんですけど、まぁ、はっきり言って未完成だったんです。しばらく頭の中で僕のメロと湯川さんの詞をパズルみたいに当てはめてみたら“え?これ、めちゃ合うやん!”って。で、合体させたらこうなったんです。その後、サビの部分の展開とメロディを谷口くんに作ってもらって。
 実際に84、85年に小学生の僕がメロディを作ってから、約30年後に湯川さんと俺の共作として完成したのは感慨深いですよね。流石に歌詞もシンプルで素晴らしいです。
 この「CRY」がいろんな学校で歌われるようなスタンダードになったら嬉しいし、それぐらいのポテンシャルがある曲だと思う。学校の体育館なんかで、ピアノの伴奏だけでみんなでユニゾンで歌えるようなシンプルな曲。それを歌ってくれたbump.yには、本当に感謝してます。

 今後いろんな展開がある中で、このアルバムの曲も育っていくんだろうなと思います。手探りで作っていったところもあったけど、彼女たちの歌もどんどん上手くなってきてるし、踊りもびっくりするぐらい上手くなったんで。Small Boysをやってみてわかったけど、踊るのって本当に大変なんですよ(笑)。

 やっぱり同じチームでアルバム一枚レコーディング出来たっていうのが大きいですね。実際にレコーディングは最終曲の「CRY」が最後だったんで、4人が録り終わり、最後にななみちゃんが歌い終わったときは隠してましたけど泣きそうになりました。
 僕や谷口くんも含め、bump.yの5人もそれぞれ超ハードスケジュールの中で頑張ってアルバムを一枚作れたんで。彼女たちも3年目ですが、このアルバムから、新しい“スタート”が切れるんじゃないかなと思って期待しています。

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