本邦初お目見えのフル・バンドで来日したオーウェン・パレット、自身のクリエイティヴィティを語る

ファイナル・ファンタジー   2012/05/01掲載
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 ヴォーカル、ストリングス、エレクトロニクスを自在に操り、アーケイド・ファイアベイルートスノウ・パトロールをはじめたくさんのアーティストのストリングス・アレンジャーとしても信頼の厚いシンガー・ソングライター、オーウェン・パレット(Owen Pallett)。ヴァイオリンを片手に歌う印象的なライヴ・スタイルで、2010年の初来日公演は即完。そして今年2月に開催された<Hostess Club Weekender>で2度目の来日、そして日本初お目見えとなったフル・バンド・セットで会場を大いに魅了した。今回CDJournal.com初登場となるオーウェンに、自身の音楽的ルーツやインスピレーションの源、作曲方法などクリエイティヴィティにまつわるあれこれを聞いてみた。
――まず、音楽にまつわる一番古い記憶を教えてください。
  オーウェン・パレット(以下同) 「ちょっと恥ずかしいな(笑)。5歳か6歳の時、コンピュータのプログラミング言語のベーシックを習っていたんだけど……それってすごい年寄りに聞こえるかもしれないね(笑)。古いパソコンを使って、プログラミングで音楽を作っていたんだ。すごくシンプルなものだけどね。それを親や兄弟に聴かせるんだけど、自分で作ったとは言えなかったよ。恥ずかしくてね。だから、“これって誰々が書いた音楽なんだよ”って言って聴かせてたんだ」
――ピアノじゃなくてコンピュータなんですね。なんだか今のサウンドのルーツが、もうそこにあるような気がします。
 「楽譜を書くのって6歳ではちょっと難しいんだよ。譜面を書き慣れてないから、書き直したりするともうグチャグチャになっちゃう。だけどコンピュータだと、消去できたりしてやり直しがきくからうまくいくんだ」
――その後、あなたはクラシックの音楽教育を受けていますが、子供の頃にアカデミックな教育を受けたことは、あなたのクリエイティヴィティに影響を与えていますか?
 「良い面と悪い面があると思うな。良い面は自分の頭のなかで音楽が響いた時、すぐにそれが弾けること。悪い面は知識を持ちすぎていて、いろんなことをやろうとしてしまう。昨日、ブラッドフォード(・コックス/ディアハンターアトラス・サウンド)と話をしてたんだけど、彼は思いついたことを、ぱっと作品にして出せる。僕はいろいろ考え込んでしまって、完成するまで3年くらいかかってしまうんだ」
――あなたの最近のサウンドはすごく複雑な構成ですが、曲を作っていくうちに、どんどん複雑になっていくのでしょうか。
 「僕はひとつの曲を仕上げるにあたって、1週間に5分しか手を加えないんだ。パッとアイディアを思いついて5分間それを試してみる。そして、しばらく寝かしておいて、翌週、新しいアイデアが出てきたら、さらに付け加える。そんな感じで、いろんな曲を同時進行でやっていくんだ。だから僕の曲が複雑なのも、長い時間をかけていろんなアイディアを積み重ねているからなんじゃないかな」
――時間をかけてシンプルなサウンドに磨き上げていくアーティストもいますよね。
 「レコーディングされた音楽に関していえば、“シンプル”や“複雑”という概念は人によって違うんじゃないかな。たとえば僕にとって、フランク・ザッパはすごくシンプルに聴こえるんだ。コード進行があって、変拍子がある。何をやろうとしているのかすぐわかる。でも、ノイ!カンみたいなクラウトロックを聴くと、ずっとループしているようだけど、全然読めない展開だったり、すごく複雑なサウンドに思えるんだ。そのどちらに惹かれるかというと、ザッパよりカンやノイ!のほうに惹かれるな」
――では、あなたがファイナル・ファンタジー(Final Fantasy)をスタートさせた時は、どんなサウンドを目指していたんですか?
 「とくに何も意識してなかったよ。基本的には好きなものをごっちゃにして、自分なりに表現していただけ。1st(『Has a Good Home』2005年)の頃は、90年代に好きだったスティーヴン・メリット(マグネティック・フィールズ)やガイデッド・バイ・ヴォイシズにすごく影響されてると思う。セカンド(『He Poos Clouds』2006年)は有名なストリングス・カルテットに影響を受けている。そんな風に、その都度、影響を受けたものを自分なりに消化してるんだ。昔より今の方がやりたいことがはっきりしてると思うな」
(C)古溪一道
――では今、頭のなかにあるヴィジョンは、どんなものですか?
 「『ハートランド』(2010年にリリースされた現時点での最新作、本作から本名に改名)では、オーケストラを使ってエレクトロニック・ミュージックをやってみたかった。次のアルバムはその延長線上なんだけど、古いモジュラー式のシンセを使って70年代のシルヴァー・アップルズとかクラスターみたいなサウンドを作って、ストリングスと組み合わせたりしている。あと一番大きな違いはバンドで演奏しているってことだね。とてもエネルギッシュでアグレッシヴなサウンドだよ」
――新作が楽しみになってきますね。とにかく、あなたの作り出す音楽はひと言で説明できないようなユニークなサウンドですが、もし小さな子供に「どんな音楽をやっているの?」と聞かれたらどう説明しますか?
 「ポップ・ミュージックだよ!(笑)」
取材・文/村尾泰郎(2012年2月)
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