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BEGIN、〈うたの日コンサート〉4年ぶりに沖縄本島にて開催 伊勢正三、ハンバート ハンバート、Y.A.B出演
BEGIN
2023/06/27 12:37掲載
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BEGIN
が毎年続けている〈うたの日コンサート〉が、4年ぶりに沖縄本島にて6月24日に開催されました。
この日、BEGINを含め、
栄昇
が新しく組んだバンド“Y.A.B”、佐藤良成と佐野遊穂によるデュオ“
ハンバート ハンバート
”、
伊勢正三
の4組が出演。地上戦が行われた沖縄で、戦時中、楽しく歌うことさえも許されなかったこともあり、歌えるようになったことを祝う「うたの日」を、一緒に踊り歌う観客とともに大いに盛り上げました。
なお、BEGINは9月1日(金)より静岡・磐田市民文化会館「かたりあ」公演を皮切りに、全国8ヵ所にて〈BEGINコンサート2023〉を開催することも発表。詳細はオフィシャル・サイトをご確認ください。
[ライヴレポート]
2023年6月24日、「うたの日コンサート」が4年ぶりに沖縄本島で開催され、約5000人の観客が、梅雨明けの真っ青な空の下、歌い踊った。4年ぶりにと書いたが、2020年からの3年間は、ちょうどコロナ禍にあたる。しかし、その間、BEGINが「うたの日」を止めることはなかった。BEGIN自身のライブは中止や延期が余儀なくされても、「うたの日」だけは続けると決め、彼らは3年間、生まれ故郷の石垣島で「うたの日」を開催している。最初の年は無観客で、2年目は石垣市民会館に島にある3つの高校の生徒たちを招待して、そして3年目はマスクをしながらではあったが石垣市の公園に沖縄のミュージシャンと石垣島のコーラスグループを呼んで。
なぜ止めなかったのか。比嘉栄昇いわく、「うたの日は、祝いごと」だから。「世話になった親戚や家族の米寿のお祝いをやることと同じで、それを止めるというのは落ち着かない。しかも、うたのお祝いは自分たちで先陣切ってやってるわけで、それを止めるのはBEGINだけの問題ではないぞ、と思ったんです。それに、いつの日か受け継いでいきたいと思っているから、この間だけ止まっていたとは言いたくない。そんな思いに突き動かされていた」
そもそも「うたの日」を沖縄本島で開催する理由は、多くの住民たちの命が奪われた戦争を抜きには語れない。地上戦が行われた沖縄で、山や防空壕に逃げ込んだ人々は、歌うことも許されず、声を出すことさえ許されなかったという。戦争が終わり、沖縄には大きな悲しみや痛みは残ったが、それでも沖縄の人々は歌に励まされ、歌い踊れることの喜びをどこよりも強く感じたのではないか。BEGINが「うたの日」を、「慰霊の日」の次の日、6月24日にしたのは、戦争の悲しみや苦しみの方ではなく、それでも沖縄の人々を支え励ましてきた「うた」が解放された日として、「歌う喜び」に焦点を当てたいという想いからだったのだ。
だからこそ、この日、4年ぶりに沖縄本島に戻ってきた「うたの日」のステージで、栄昇が最初に言ったこの言葉には、これまでのうたの日にはない、重みがあった。「コロナ禍で、3年以上歌を歌っていけないような雰囲気があった。僕らはこれまで、うたの日を子どもたちに説明する時に、昔、戦争があったんだよ、その時は歌うことも踊ることもダメで、防空壕の中で赤ちゃんが泣いても口を押さえていた、そんな時があったよと、だから『うたの日』はみんなで歌うと楽しいねという、歌う喜びを忘れないようにはじめたんだと、ずっとそう言ってきたんです。だけどコロナ禍で、マスクして、歌っちゃいけないと言われて、これまでと同じように「うたの日」を説明することが難しくなってしまった。だから、もう一回ゼロから「うたの日」を考えてみようと思ってる。「うたの日」とは何なのか、僕たちもうまく伝えられないから、もう一回やってみて考え直す、今日はそういう一回目にしようと思って臨んでいます」
それまでの「うたの日」は、しばらく嘉手納町が会場となっていた。嘉手納空軍基地を抱え、戦闘機が飛ぶ嘉手納町で、しかし「うたの日」だけは歌で満たされる。まさしくその会場は、「うたの日」のコンセプトを説明せずとも象徴するような場所だった。そして今回、コロナ禍を経て、あらためて歌う喜びを体感するために、会場をどこにするかから考えた。そうしていろんな縁が重なり、導かれた先が、今回の会場となったうるま市石川多目的広場だったのだ。
オープニングの一曲目は、うるま市との縁を伝えるために「ウルマメロディー」からはじまった。戦後、食糧不足となった沖縄に、沖縄の食文化を支える「豚」を届けてくれたのは、ハワイに住む沖縄出身の日系移民の方々だった。故郷に豚を送ろうと、ハワイのウチナーンチュたちが「恵みの歌」をつくり、ラジオで繰り返し放送し、募金を呼びかけた。結果、5万ドルという大金が集まり550頭の豚がポートランドから沖縄へと送られたという。そしてその時、船が着いた場所が、うるま市のホワイトビーチだった。そのことを知ったBEGINが、ハワイの方々への感謝を歌にしたのが、この日、オープニング曲となった「ウルマメロディー」だった。ステージには、フラのチームによる美しい踊りと、琉球國祭り太鼓のメンバーによる力強いエイサーが、歌に合わせて披露された。一曲目にして、「ここ」で行われる必然性がガチッとハマった、そんな印象を受けた、そんな「うたの日コンサート」の幕開けだった。
今回、歌を届けるアーティストはBEGINを合わせて4組だった。1組目は、石垣島で、栄昇が、ボーカル・比嘉ケンジロウ、ベース・メリーアラキ(ペルー生まれの日系4世で、現在石垣島に暮らすシンガーソングライター)、ギター・石垣ユウマ、ドラム・安間ゼンタロウとともに新しく組んだバンド「Y.A.B(ヤファイアン・アッチャーズ・バンド)」。いつもは石垣島の使われなくなった映画館「万世館」を改装し、そこを拠点にライブをしているという彼ら。沖縄本島では2回目ライブ、しかもこれだけの観客を前に、挨拶代わりに自分たちの音楽の要とも言えるグルーヴを体感してもらおうと、沖縄の詩人・山之口貘の詩に高田渡が曲をつけた「生活の柄」に八重山民謡の「マミドーマ」のリズムが重なる一曲が放たれた。
さらに、栄昇、ケンジロウの個性の違うボーカルが生きた「風の馬車」や、西表島の神事「節祭」をテーマとし、「さぁ!さぁ!さぁ!さぁ!」という掛け声で福を招く「節祭支度」、ビートの効いた「島サバジェンダー」「ゲンキクールロックンロール」など、勢いある熱いサウンドを展開。「これから全国的に有名になっていくので!」と叫んだ言葉が現実になるのも近いかもしれないと思うほど、エネルギーを感じるステージだった。
そしてそのエモーショナルなバンドサウンドからは一転、続いてステージに現れたのは佐藤良成と佐野遊穂によるデュオ、ハンバート ハンバート。沖縄では4年ぶりのライブだという2人。フィドルが空気を震わし、そこに魅力的な遊穂の歌声が重なり合う「うちのお母さん」から、ハンバート ハンバートの世界へ引き込まれていく。続く、「おなじ話」も、2人の歌声の、切なくも静かな対話に耳をそっと澄ませるようにして聴き入った。ハンバート ハンバートの歌は、小説を一冊読んだような物語性を含んでいる曲が多いが、その物語をこちら側に想像させて届かせるのは、2人の音楽の力に他ならない。多彩な響きでさまざまな奥行きを感じさせるギター、情緒的なブルースハープ、違う情景を喚起させる声のハーモニー、独特のタイム感、2人だけの演奏なのに、そうとは思えないほどに豊かな響きが現れるのだ。そして最後は、「うたの日」のステージで歌うことの意味を、彼ら自身、しっかりと確かめるように、「メッセージ」、「長いこと待っていたんだ」が続いた。まさしく、歌うことの喜びに満ちた歌だった。
「しょうやーん!」と声援が上がる。伊勢正三の登場に、大きな拍手が起きた。一曲目、切なくも美しい「なごり雪」のイントロがはじまると、さらに大きな拍手が湧いた。バンドは楽曲への敬意に満ちた演奏を聴かせる。そこに、50年以上歌い続けてきた人の深みのある優しく強い伊勢正三の声が重なる。聴き入るしかない。伊勢の声には、そういう不思議な説得力があった。「海辺のジャパニーズレストラン」ではフラが舞い、また、ムード溢れるサウンドに乗せた「海岸通り」は切なさに胸が疼いた。そしてこの日会場の誰もが聴きたいと願った名曲中の名曲「22才の別れ」へと続いた。「歌はいいなとしみじみ思います」と伊勢自身、噛み締めるように呟いたが、それは聴いた私たち自身の言葉でもあったと思う。
エバーグリーンな歌が続く中、「新曲を」と2018年に発表したアルバムから、ポエトリーリーディングを思わせるリリックの重なりが軽やかな「風の日の少年」を披露。そして最後「一緒に歌ってください」と、アコースティックギターの力強い音が奏でられ、「ささやかなこの人生」が鳴り響いた。
少しずつ陽が傾きはじめ、海からの風が心地よく感じられる頃、「うたの日」最後の出演者、BEGINの登場となった。まずは島袋優がボーカルを務める「海の声」、そして続く「三線の花」で、しっかりと歌を届けていく。そして、BEGINバンドのドラマーの比嘉舜太朗が、自身のバンド、HoRookiesの「結の唄」を披露。生まれた島を離れる時の心境、感謝を丁寧に言葉に乗せて歌う舜太朗の瑞々しい声が響き渡る。「子どもの頃からずっと来ているイベントに来れて嬉しいです」と舜太朗。こうやって「うたの日」が次に受け継がれていくのかと、その片鱗を見た気がした。
そして後半、再びBEGINのライブへ。「皆さん用意はいいですか?」と、畳み掛けるように「国道508号線」、そして、琉球國祭り太鼓を再びステージに迎え、「オジー自慢のオリオンビール」が続くと、観客は総立ちとなった。栄昇が叫んだ。「俺たちは、3年間コロナ禍、過ごしてきたんじゃ!」大きな歓声が起きた。「子どもたち、大人を信用できなくなったかもしれないけれども、大人はこうやって音楽ができるということをわかっててくれ。そしてお前たちもいつかこのステージに上がってくれ。止めません、うたの日は」「かりゆしの夜」、そして「島人ぬ宝」。栄昇と観客の歌声が混じり合い、空気が混じり合い、人々が歌い踊れば、また空気が動く。人々が手を挙げて、歌っている。笑顔が溢れ、胸がいっぱいで泣きそうな顔の人もいる。そうして歌い踊る。まさしく、「うたの日コンサート」が最高潮に達する瞬間だった。
しかしこれでは終わらなかった。「もちろんまだやります!」との声とともに、マルシャの2拍子のリズムが会場に鳴り続けた。そして、宮城姉妹率いるサンバチームが会場を一気に華やかにし、ホーンセクション隊の管楽器の音色が高らかに鳴った。マルシャとは120年以上前に誕生したブラジル音楽のひとつで、サンバ以前の音楽。かつて、移民の方々が、沖縄からブラジルに着いた時、知らない国での新しい生活に、不安と期待が入り混じりながら聴いた音楽はマルシャだったのではなかったか。
2013年、BEGINが二度目のブラジル公演を行った時、「ブラジルと日本を結ぶのはマルシャだよ」と教えてくれた板尾英矩さん(元・在サンパウロ日本国総領事館広報文化担当)との出会いがきっかけで、BEGINは、「マルシャ」に、八重山の言葉で「〜しようよ」という意味の「ショーラ」を合わせた「マルシャ・ショーラ」というコンセプトで、2014年から音楽を発信し続けてきた。自身のオリジナル曲はもちろん、これまで親しんできた歌の数々を、マルシャのリズムに乗せてメドレーにしていくのだ。
このリズムが鳴れば、自然と身体は揺れ、心が動き出す。今日のステージをともに作ってきた、伊勢正三、ハンバート ハンバート、Y.A.Bらが歌い継ぎ、途切れることないマルシャのビートの中で人々は踊り続けた。そして「笑顔のまんま」、「ソウセイ」で観客のボルテージはピークに達し、高揚感に包まれた。
最後は、「涙そうそう」だった。BPMを落としながらもマルシャの2拍子が続く中、心を込めて、栄昇は歌を届けた。歌を聴きながら、みな、自分自身の「涙そうそう」を歌っていた。込み上げるものがあったのか、栄昇の声が途切れた。「最後、みなさん、締めてくれ!」、その言葉を合図に、観客ひとりひとり、それぞれの歌声が重なり響いた。この日、いくつも美しい瞬間を見たが、歌が、それぞれの人の中にあり、それがともに放たれたこの時は、中でも最も美しい瞬間だったように思う。
歌は誰からも奪うことはできない。そのことを身体に刻むように思った。そしてあらためて、歌への感謝が深く内側から湧いてきた。それこそ、「うたの日」をお祝いする心、そのものなのだと思った。
なおBEGINは9月1日(金)より静岡・磐田市民文化会館「かたりあ」公演を皮切りに全国8ヶ所にて『BEGINコンサート2023』を開催する。
記事: 川口美保
写真: 大湾朝太郎
■
〈BEGINコンサート2023〉
2023年9月1日(金)静岡 磐田市民文化会館「かたりあ」
2023年9月10日(日)滋賀 ひこね市文化プラザ グランドホール
2023年9月16日(土)愛知 一宮市民会館
2023年9月18日(月・祝)兵庫 加古川市民会館 大ホール
2023年9月23日(土・祝)埼玉 熊谷文化創造館さくらめいと「太陽のホール」
2023年10月20日(金)大阪 高槻城公園芸術文化劇場南館トリシマホール
2023年10月22日(日)大阪 ラブリーホール(河内長野市立文化会館)大ホール
2023年12月2日(土)岡山 津山文化センター大ホール
www.begin1990.com/live/detail/?id=755
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