音楽監督
ユベール・スダーン(Hubert Soudant)のもと、シーズンを重ねるごとに音楽性を深めている
東京交響楽団。2012年度のラインナップを発表する記者会見が、11月24日にミューザ川崎の市民交流室にて行なわれました。
2012年度のシーズン・テーマは“マーラー・リーダー(歌曲)・プロジェクト”。サントリーホール定期演奏会と、川崎定期演奏会(横浜みなとみらいホールにて開催)では、
マーラーの歌曲のほぼ全作品を網羅するプログラムが並びます。このプロジェクトについて、スダーンより以下のような説明がありました。
「今シーズンはシェーンベルクのシリーズに取り組み、サントリーホールのチケットが完売になるほど多くのお客さまに足を運んでいただくことができました。プログラムを組むとき、どうしても人気作品を優先してしまいがちですが、それだけはいけないと私は考えます。シェーンベルクのようにポピュラーとは言えない作品での成功によって、私は勇気をもって来シーズンのプログラムを組むことができました。来シーズンのテーマはマーラーの歌曲を中心に据えたツィクルスです。人気作品だけでなく、演奏されることがあまりない貴重な作品もあり、マーラーを得意とする一流の歌手たちを揃えました。どうかご期待ください」 取り上げられるマーラーの歌曲は、「子供の不思議な角笛」「大地の歌」「さすらう若人の歌」「リュッケルトによる5つの詩」「若き日の歌」「亡き子をしのぶ歌」「嘆きの歌」。歌手陣にも、
トーマス・バウアー、
クリスティアーネ・エルツェ、
ローマン・トレーケル、
ナタリー・シュトゥッツマンなどの豪華な顔ぶれが続々登場します。
また、マーラーの歌曲と組み合わされた作品との関連性にもスダーンの英知が宿っています。
「マーラーの歌曲に加え、リストの〈ファウスト交響曲〉やブルックナーの交響曲第6番といった作品が、同じ演奏会のプログラムに組み合わされています。これらはマーラーの叙情的な歌の世界につながる要素をもった作品たちです」 このほか東京オペラシティ・シリーズには、旬な若手ソリストや指揮者が数多く登場。詳細は東京交響楽団のwebサイトでご確認ください。
記者会見では、東日本大震災によって天井材が落下し、大きな被害を受けた楽団の本拠地、ミューザ川崎シンフォニーホールについての説明も行なわれました。ホールの復旧工事は2013年3月末までかかるとのこと。そのため、2012年度の川崎定期演奏会は横浜みなとみらいホールで行なわれるほか、川崎名曲全集のシリーズは川崎市教育文化会館にて開催されます。
そしてミューザ川崎シンフォニーホール再開までの約1年半の活動を、“Togeghe with TSO 2013”と題し、ホール復旧への支援を募るとともに、被災地への復興支援を行なっていくことが発表されました。このプロジェクトについては、楽団スタッフより以下のような説明がありました。
「震災後、真っ先に日本を心配して支援の手を差し伸べてくださったのは、作曲家のヘルムート・ラッヘンマン氏でした。氏の呼びかけにより集められた支援金をいただいたほか、ベルリン・フィルをはじめ世界中の音楽家や団体からご寄付をいただいております。また、一般のお客さまからの支援金を募る銀行口座を開設し、そちらにも多くのご寄付をいただき、たいへん感謝しております。東京交響楽団では、ホール再開に向けて支援を募ると同時に、被災地への復興支援活動として、チャリティCDの制作やチャリティ演奏会、被災地での演奏などを積極的に行なっていく予定です」 本拠地のホールが使用できず、困難な状況にありながらも音楽のクオリティを下げず、ますますの高みに向かって邁進するオーケストラ。来シーズンも期待大です!
■東京交響楽団 webサイト
http://tso.jp/