e-onkyo musicではじめる ハイカラ ハイレゾ生活 - [こちらハイレゾ商會]第68回 チック・コリアの才能が花開いていた初のピアノ・トリオ作品
掲載日:2019年6月11日
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高音質放送i-dio HQ SELECTIONのランキング紹介番組『「NOW」supported by e-onkyo music』(毎日 22:00〜23:00)にて、この連載で取り上げたアルバムから牧野さんが選んだ1曲を放送します。今月の放送は6月25日(火)の「JAZZ NOW」から。

こちらハイレゾ商會
第68回 チック・コリアの才能が花開いていた初のピアノ・トリオ作品
絵と文 / 牧野良幸
 今回はチック・コリアの『ナウ・ヒー・シングス・ナウ・ヒー・ソブス』のハイレゾ(flac 96kHz/24bit)である。
 これは70年代を席巻したリターン・トゥ・フォーエヴァー以前の作品。チック・コリアの初のピアノ・トリオ作品でブルーノートから1968年にリリースされた。この頃チック・コリアはマイルスのバンドにも参加し、70年代のリターン・トゥ・フォーエヴァーでの活躍へとつながる。
 僕が初めてチック・コリアを聴いたのは、高校一年生の時で、当時話題となっていたアルバム『リターン・トゥ・フォーエヴァー』だった。チック・コリアの弾くエレクトリック・ピアノ(フェンダー・ローズ)がロックばかり聴いていた僕にもすんなり聴けたのである。
 しかしチック・コリアのそれ以前の作品となると手が出なかった。この『ナウ・ヒー・シングス・ナウ・ヒー・ソブス』もそうだ。カモメのジャケットの『リターン・トゥ・フォーエヴァー』にくらべると、いかにも“ジャズ”というジャケット・デザイン。これだけで高校生には敷居が高かったのである。僕が高校時代をとおして聴いたのは、ロックにどんどん接近していくリターン・トゥ・フォーエヴァーの新作ばかりだった。
 ということで、ハイレゾになったのを機にようやく『ナウ・ヒー・シングス・ナウ・ヒー・ソブス』を聴いたわけである。発売から51年、ずいぶん年月がかかってしまったものだ。
 先にも書いたように本作はピアノ・トリオだ。ベースにミロスラフ・ヴィトウス、ドラムスにロイ・ヘインズという顔ぶれ。もちろんチック・コリアが弾くのはアコースティックのピアノである。
 1曲めの「ステップス−ホワット・ワズ」を聴いた瞬間から、“どうして昔聴かなかったんだろう!”という後悔が押し寄せた。
 サウンドは違うけれども、70年代のリターン・トゥ・フォーエヴァーのアルバムを聴くような面白さだ。早い話、チック・コリアの斬新性、オリジナリティ、そしてポピュラリティまでもが、『リターン・トゥ・フォーエヴァー』を待たずして、この初のピアノ・トリオの作品で開花していたのだった。
 「ステップス−ホワット・ワズ」では、ドラム・ソロをはさんでの後半はチックらしいスパニッシュ風。演奏も躍動感があり、ピアノ・トリオの醍醐味を感じる。2曲目の「マトリックス」以降も新鮮な曲が続く。これらは今聴いてもまったく色褪せていない。
 ただ最後に前衛的な曲が置かれているところが、いかにも60年代らしい。「ザ・ロウ・オブ・フォーリング・アンド・キャッチング・アップ」は短いながらも、ジョン・ケージのプリペアド・ピアノのための作品のような音響。実験音楽のようである。ジャズというよりも、当時の音楽潮流を色濃く反映した曲に感じる。しかしこれも面白いのだ。アルバムがピリッと引き締まることは間違いない。
 ハイレゾの話に移ると、1968年録音とは思えないほどの、がっしりとした骨太のサウンドである。
 左のスピーカーには、ロイ・ヘインズのドラム。シンバルやスネアが、粒立ちよくあらわれる。右のスピーカーには、ミロスラフ・ヴィトウスのベース。超絶プレイで軟体動物(?)のようなベース音を奏でる。そして中央にチック・コリアのピアノ。
 横一列の並び方はいかにも60年代のステレオ風であるが、これはこれで違和感がない。特にドラムとベースは、まるでスピーカーがドラムやベースそのものになったようで、我がスピーカー(B&W 804)の鳴りっぷりを堪能するのにちょうどいい。JBLならさらにジャズっぽい音になるだろうなという予感もする。



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