ワイヤレスの疑念を一撃で払拭 音も装着感も高度に洗練されたフラッグシップモデル

2026/08/27掲載
ヘッドフォンブック2026 SPECIAL SELECTION


有線に匹敵する音質と、英国の粋を感じる洗練された機能美


 ハイエンドワイヤレスヘッドフォンはその価格に見合うだけの価値を持っているのか。同じ予算で有線ヘッドフォンとそれに合わせたヘッドフォンアンプを揃えるのに匹敵するだけのサウンドを生み出せるのか。バッテリー劣化=ヘッドフォンの寿命という弱点を踏まえてなお、ワイヤレスならではの魅力でそれを上回れるのか。
 バウワースアンドウィルキンズ(以下B&W)「Px8 S2」こそ、それらの疑念を振り払ってくれる一撃だ。


B&W


 同程度の予算で有線システムを組んだとて、このモデルを超えるサウンドとなる組み合わせは多くはない。一聴した時点でそう思わされた。ドライバーからアンプまで全てを互いに最適化そして一体化して設計できる。ワイヤレスヘッドフォンならではのその強みが、無線伝送時の損失という弱みを遂に決定的に上回ったか。さらにはこのモデルは、その損失もaptX LosslessとaptX Adaptiveによって最小限に抑え込める上に、ロスレスハイレゾのUSB有線伝送にも対応。ヘッドフォンとアンプが一体化された、最上級の有線システムとしても機能する。
 とはいえ基本はワイヤレスでの活用が中心になるだろう。ワイヤレスの身軽さとこのサウンドを同時に享受できてしまうという事実。一度それを知ってしまうと、自宅等の屋内利用時でも、それを抜け出すのは困難だ。
 しかもこのモデル、音だけではなく、装着感も使い心地も外観も洗練されている。イヤーパッドとヘッドバンドはナッパ・レザー製で、しっとりと心地よい肌触り。パッドのクッション性等のおかげで耳周りへのフィットも抜群で、ノイキャンオフでも室内の空調ノイズ程度は十分に抑え込める。
 操作系は左耳側に電源とノイキャン、右耳側に再生と通話+音量のボタンと明快な振り分け。耳に手を当てる動作で親指が自然と触れるあたりに配置されており、手探りでの操作性も良好だ。
 そして外観の美しさ。これは言葉を尽くしても伝え切れないところなので、写真、できれば実物を見てほしい。
 デザイン面の注目点をひとつ挙げるとすれば、イヤーカップのスイベル機構が両向きに180度回転できる設計となっていること。付属ケースに収納する際の方向に回すとコンパクトにまとまる。逆方向に回すとコンパクトではなくなるのだが、代わりにヘッドフォンを肩に乗せておくときに、イヤーカップの表側を上に向けることができる。イヤーパッドの内側を上に向けて人に見せるのって格好よくないよねということだろう。英国ブランドの粋を感じる、こだわりの設計だ。
 そのほか機能性の面では、バッテリーライフは最大30時間、15分充電で7時間再生の急速充電も可能、アプリ周りではEQが5バンドでの詳細調整に対応。
 左右合計8基のマイクと各種アルゴリズム等の組み合わせにより、ノイキャンと通話の性能も向上。前述のように物理的な遮音性が良好なこともあり、一般的な電車内や駅前の喧騒程度でノイキャン性能の不足を感じることは全くなかった。


B&Wケーブル
(USBケーブルでの有線接続では96kHz/24bitまでのハイレゾ再生が可能になる)


「True Sound」による現代的バランス、情動まで伝える圧倒的な表現力


 では、カーボン振動板ダイナミック型ドライバー自体の特性とハウジング内のアコースティック設計を追求した上で、DSPとアンプも合わせてB&Wサウンドとして磨き上げられた、そのサウンドについて述べていこう。
 B&WはアプリにてEQオフの状態を「True Sound」と称しているが、そう名乗るにふさわしい、現代のリファレンス的なトーンバランスが実現されている。星街すいせいさん「もうどうなってもいいや」のようなエレクトリックサウンドにおいてその中低音域をどの程度押し出すか。そこには各ヘッドフォンの音作りの志向が現れやすい。本機のその中低音域は、いわゆるモニター的なフラットさではなく、全体のバランスを崩さない範疇のプッシュを加えた、絶妙な落とし込み。シンセベース独特の肉感や弾みの再現の見事さも合わさり、ダンサブルなビートが生み出される。そしてそのビートに急制動をかける、楽曲中盤の超低域のディープな響きも十分に確保。衝動のままに駆け出し、立ち止まって沈み込む。そんな情動の遷移を感じさせる音楽表現を、このヘッドフォンは余さず届けてくれるわけだ。エレクトリックサウンドならではの緻密に構築された空間表現への対応も当然完璧。
 矢野顕子のライヴアルバム『荒野の呼び声 -東京録音-』からの「すばらしい日々」では繊細な演奏表現への追従性が際立つ。冒頭のシンバルとリムショットからしてその音量と音色を合わせてのダイナミクスコントロールは鳥肌もの。そこに合流するピアノとベースの滑らかに音をつなぐレガートな奏法も、つなげられていく音の抑揚がまた絶品。そんな調子で最初から最後まで全ての演奏に耳を惹きつけられ続ける。楽曲と演奏の素晴らしさあってこそだが、その素晴らしさをこれほど損なわずに届けてくれるヘッドフォンはそうはない。ワイヤレスに限らず、有線ヘッドフォンまで含めてもだ。
 ワイヤレスの中での最高峰にとどまらず、あらゆるヘッドフォンの中での最高峰をも狙えるワイヤレスヘッドフォン。いまそれがここにある。


ミッドナイトブルー
ミッドナイト・ブルー


オニキス・ブラック
オニキス・ブラック


ウォーム・ストーン
ウォーム・ストーン


パールブルー
パール・ブルー


文:高橋 敦 Atsushi Takahashi

バウワース アンド ウィルキンズ
Bowers & Wilkins Px8 S2

オープン価格(12万9,800円前後)
●形式:密閉型・Bluetooth・ノイズキャンセリング
●ドライバー:φ40mmダイナミック型
●対応コーデック:SBC、AAC、aptX、aptX HD、aptX Adaptive、aptX Lossless
●重量:310g
●付属品:1.2m USB-C to Cケーブル、1.2m USB-C to 3.5mmステレオミニケーブル、キャリングケース



B&Wマクラーレン
B&Wマクラーレン

Px8 S2 McLaren Edition
オープン価格(14万3,000円前後)


ハイエンドスポーツカーブランドMcLaren Automotive、そして昨2025シーズンのF1にてドライバーズ&コンストラクターズのWタイトル獲得の名門、McLaren Racingとのパートナーシップから生まれたコラボレーションモデル。イヤーカップおよびフレームから覗くケーブルに採用された「パパイヤ」カラーはチームの栄光を象徴する輝きだ。落ち着いた色合いのベースモデルとはまた別の魅力を見せつけてくれる。


※本記事は、「ヘッドフォンブック2026」から転載された内容です。
https://www.cdjournal.com/Company/products/mook.php?mno=20260325

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