SNSで注目を集めるシンガー・ソングライター ドリームポップなデビュー・アルバム 楓

楓(Kaede Amber)   2026/06/25掲載
 繊細さ、心地よさ、そして包容力を感じさせる美しい歌声がとにかく魅力的。海外のシンガー・ソングライターとリンクする音楽性やリアルとファンタジーを行き来するような歌詞を含め、豊かな可能性を感じさせるニューカマーの登場である。
 18万超えのフォロワーを持ち、インスタやTikTokなどSNSで注目を集める女性シンガー・ソングライター、楓(かえで)。黒澤よう、澤田仮面と組んでいるポップ・グループROBITASでも活躍中の彼女だが、今回ミオベル・レコードからファースト・ソロ・アルバム『Daydreamer』がボーナストラック2曲付きでCD化された。
 早耳リスナーの間で早くも話題になっている今作は、アコースティックギターと歌を中心にしたアレンジ、ドリームポップ的な音像によって、彼女のヴォーカルをしっかりと際立たせた作品に仕上がっている。
 インタビューには、楽曲の共同制作者であり、実兄である遼(はるか)も同席。音楽的なルーツやアルバム『Daydreamer』について語ってもらった。


First Album

『Daydreamer』

(miobell records・PCMR-0042)
※6月17日発売


ROBITAS
『ROBITAS』

(miobell records・PCMR-0038)
※2月18日発売
――音楽に興味を持ったきっかけは?
楓「祖父と祖母がカラオケスナックをやっていて、小さい頃からそこで歌っていたんです。当時はアニソンとかですけど、兄とマイクを奪い合っていました」
遼「大人に混じってよく歌っていました。ギターを始めたのは中学生の時。父親がギターを持っていて、教えてもらったらハマっちゃって。その後、自分のアコギを買ってもらったんですけど、最初はオープンチューニングで、ボディを叩いたりしながらインストをやっていたんです。高校生になって歌モノに興味が出てきて、コードを弾き始めました」
楓「私も同じ時期からギターを触り始めました。高校ではベース・ヴォーカルのバンドをやっていたんですけど。友達が“ギターやりたい”と言っていたから、じゃあ私はベースをやろうかなって」
遼「高校時代は僕もベース・ヴォーカルだったんです。グリーン・デイのコピーをやっていました」
楓&遼
――洋楽が好きだったんですか?
楓「そうですね。テイラー・スウィフトは小学生の頃から聴いていたし、エド・シーラン、ブルーノ・マーズ、トリー・ケリー、ビリー・アイリッシュも好きでした」
遼「親の影響が大きいかもしれないです。小学生の時にMP3プレーヤーをもらって、そこにマイケル・ジャクソンやビートルズ、レディオヘッドが入っていたんです。その頃、ちょうどマイケルのドキュメンタリー映画『THIS IS IT』が公開されて、こんなにすごいアーティストがいるんだ! と思っていたら、亡くなってしまって」
楓「ライヴもよく連れていってもらっていました。テイラーは来日するたび観に行っています」
――初めて曲を作ったのは?
楓「18歳の時にバンクーバーに留学して、アコギで曲を作り始めました。アルバムの1曲目に入っている〈Break of Dawn〉という曲が最初です。コード進行を兄に相談して」
遼「ギターは僕のほうが得意だったので“こんなコードがいいんじゃない?”みたいな感じで」
楓「思い返してみたら、最初から一緒に作っていましたね」
遼「聴いてきたものが近いせいか、楓が作る曲はすんなり入ってくるんです。“こういう雰囲気にしたいんだな”というのも直感でわかるし、そういうやり取りができるのは兄妹だからなのかなと」
楓&遼
――2人で曲を作り始めて、少しずつ変化や進化を繰り返して。アルバム『Daydreamer』にもその過程が反映されている?
遼「めっちゃ入っていると思います」
楓「アルバムにはこれまで作った曲を全部入れたんです。〈Break of Dawn〉から始まって、2曲目の〈純白〉、3曲目の〈太陽の涙〉も最初のほうに作った曲です。私たちにとっては思い出ボックスみたいなアルバムです」
遼「作った時期はバラバラなんですけど、統一感があるんですよね。どの曲にも楓の世界観が描かれているし、曲順通りに聴くと、夜明けから始まって、太陽が昇って、夜になってまた朝を迎えるという流れになっていて」
楓「初期の曲はちょっと恥ずかしい気持ちにもなりますけど、“今じゃこんな曲は書けないな”とも思います。曲を聴くと、その時の自分がなにを思っていたかわかるというか。たとえば〈純白〉は留学から戻ってきた直後に書いたんですけど、アップテンポの聴きやすい曲にしたいと思いつつ、人間関係で悩んでいたことが歌詞になっていたり」
遼「楓がどんな生活をしていて、なにがあったかは大体わかるから、曲を聴くと“ああ、あのことを曲にしたんだな”って。それがアレンジにつながることもあります」
楓
楓
――楓さんから「こういうサウンドにしてほしい」とリクエストすることもあるんですか?
楓「〈やだまだ〉はけっこう注文しました。ピアノの音色とか、“スネアのリムショットにクラップを重ねてほしい”とか。エリカ・バドゥにそういう音を使っている曲があって、“同じようにやって”と言って(笑)」
遼「聴いている音楽の幅が広いから、いろんなリファレンスを送ってくるんですよ。それを吸収して、曲になじませている感じです」
――繊細なニュアンスを伝えられるのも、兄弟で制作している利点かもしれないですね。外部のアレンジャーに依頼すると、遠慮しちゃいそうじゃないですか?
楓「そうかもしれないです。こだわり始めるとどんどん注文が増えていくし、“そうじゃない”みたいなことも率直に言っちゃうので(笑)」
遼「それでいうと、〈おもかげ〉も印象に残っていますね。制作中に祖父が亡くなって、生前使っていたカメラのシャッター音を曲に入れました」
楓「祖父との思い出はたくさんあるし、接するなかで学んだことを入れたり、祖父への思いを詰め込んだ曲になりました。私が作る曲は基本、プライベートなことがもとになっているんです。洋楽の女性シンガー・ソングライターも実体験を歌にすることが多いし、もしかしたらその影響があるのかも」
楓&遼
楓&遼
――「空想」は楓さんと遼さんのデュエットですね。
楓「ライヴのために作った曲です。兄にはコーラスをやってもらうことが多いんですけど、“たまには歌いたいだろうな”と思って(笑)。コード進行やアレンジは全部兄に任せて、そこにメロディと歌詞を乗せました。兄に似合いそうな言葉を入れたりして、楽しかったですね」
遼「爽快感がある曲ですよね。楓はどちらかというとゆったりした曲が多いので、ビートを感じられるアップテンポの曲にしたかったんです」
楓「私、普通に作っていると明るくない曲が増えてしまうから(笑)」
遼「僕も悲しいことを明るく歌っているほうが好みなんですけどね」
――『Daydreamer』というアルバム・タイトルについては?
楓「〈夢想家〉という曲を作った時に、自分のことをうまく説明している曲だなと思って。自己紹介というか、名刺代わりになるようなアルバムにしたい気持ちもあったし、私は夢想家の部分があるし、タイトルは『Daydreamer』にしようとわりとすんなり決まりました」
遼「楓に似合うタイトルだと思います。10代の頃はよく寝ていたし」
楓「昔はよく兄に起こしてもらっていました(笑)」
遼「空に浮かんでいるようなイメージの曲も多いしね」
楓「小さい頃からファンタジーの世界に強い憧れがあるんです。ディズニーランドによく連れていってもらっていたんですけど、初めて友達と一緒に行った時に“親がいなくてもここに来られる年齢になっちゃったんだな”と思ったのと、ディズニーランドから離れたくなさい気持ちが強すぎて泣いちゃったんです。ジブリ映画を観て“なんで私はこういう世界にいないんだろう”と思ったり。そういう感覚は音楽につながっているのかもしれないです。歌っている時、音楽をやっている時はすべてを忘れて、曲の世界に入り込んでいるので」
遼「音楽をやっている時は現実にいないというか。そういう気分は僕もあります」
――初のアルバムを経て、この先の活動に向けてどんなヴィジョンがありますか?
楓「『Daydreamer』を作り終わって、少しずつ自分が変わってきた気がしていて。少しは成長しているだろうし、友達といろんな話をするなかで、視野が広がってきた感じがあるんです。それを音楽に落とし込んでいけたらいいなと思っています」
楓&遼

取材・文/森 朋之
撮影/塙 薫子

EVENT Information
■〈楓 One-man Live “Daydreamer”〉
2026年6月28日(日)東京・蔵前 GINZA RECORDS & AUDIO KURAMAE
開場 13:00 / 開演 13:30
前売 3,500円(+1drink)/当日 4,000円(+1drink)
https://tiget.net/events/491240

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