「私がアメリカで生活していた頃、レミーさんのライヴに行ってご挨拶したのが最初の出会いだったと思います。尊敬する作曲家でもある彼に、直接お話をうかがいたいとお願いしたこともありますし、テキサスで開催されたジャズ作曲家のためのカンファレンスでお会いするなど、たびたびお目にかかる機会がありました。ファースト・アルバム『Crossing Reality』ではゲスト・ミュージシャンという形でお迎えして、〈dreams of the wind〉という楽曲で演奏していただいています。とても優しいお人柄ですが、ご自身のプレイに関しては非常にストイックです。今回のレコーディングでは曲によってどのリードにしたらいいか、そのたびにサックスを吹きながら相談してくださいました。いろいろな角度から音楽のためにできることを最大限してくれて、たとえば、3曲目〈nami〉のイントロの最後のほうで風に揺られたさざ波のような音が一瞬聞こえますが、これはパーカッションではなく、レミーさんのアイディアでサックスにフーッと息を吹き込んだ音なんです」
――秩父さんのソロ・ピアノが堪能できるボーナス・トラック〈A Letter from Tohoku〉は日本郵政ブランドムービー「東北から郵便です」のために録音した楽曲ですよね。
「〈A Letter from Tohoku〉はおばあちゃんが手紙を読んでいる映像のバックで流れていたんですが、レコーディングのときはスタジオに設置されたモニターでその映像を見ながら、そして、朗読を聞きながら即興で演奏しました。この曲だけは2021年の録音になりますが、いずれ、なんらかの形で発表したかったですし、今回のアルバムなら違和感がないかなと思って入れたんです。即興演奏という意味では〈Time Lapse〉もフリー・インプロヴィゼーションです。みんなにテーマだけを伝えて録り、同じテイクの違う部分を〈Time Lapse 01〉と〈Time Lapse 02〉に分けてアルバムに収めています」
――ところで、秩父さんはどんなふうに曲作りをしているんでしょう?
「一概には言えないというか。たとえば、2曲目の〈inu〉は頭の中に浮んだ景色を曲にしています。“遠くに山が見える広大な草原。真ん中には道路があり、古い車が停まっている。犬もいて、靴下が落ちていて、そこはもしかしてアメリカ?”……という謎のイメージ(笑)をもとに書きました。一方で、〈feel the green〉はお花畑や植物園、園芸センターなどに足を運び、観察したうえで作っています。ですから、ケース・バイ・ケースですね」