有村架純、黒木華、南沙良演じる3人の女性たちが、不平等な現実を突破し、みずからの人生を取り戻すため、正しさと生きることの間で揺れながら犯罪に手を染めていくさまをサスペンスフルな疾走感とシュールなユーモアで描く映画『マジカル・シークレット・ツアー』。話題作への出演が続き、目覚ましい快進撃を見せる南沙良がCDジャーナル初登場です。
『マジカル・シークレット・ツアー』
配給: アスミック・エース
6月19日(金)全国公開
(C)2026「マジカル・シークレット・ツアー」製作委員会
スクリーンのなかで異彩を放つ濃密なキャラクターたち。それらを「気づいたらやることになっていた」と飄々と笑いながら、すべて血肉化してしまうのが南沙良という俳優の面白さだ。
6月19日公開の映画『マジカル・シークレット・ツアー』では、キャバ嬢で未婚の妊婦という役に挑戦。有村架純、黒木華とのスリリングなアンサンブルのなかで、物語に確かな説得力を与えている。
――『マジカル・シークレット・ツアー』は実際の事件に着想を得た作品ですが、脚本を読まれての感想を教えてください。
「実際の事件のことは知らなかったので驚きました。3人がそれぞれの人生を取り戻そうとする疾走感をすごく感じましたし、これを天野千尋監督と、有村架純さん、黒木華さんと一緒にやってどういうものになるんだろうなっていうワクワクがすごくありました」
――南さん演じる麻由、有村架純さん演じる和歌子、黒木華さん演じる清恵が軸となり物語が進んでいきます。南さんが作品をご覧になって、3人の関係性についてどう感じられたか教えてください。
「麻由は期待をせずに生きてきた子なのかなという印象があります。無意識のなかで、自分のためじゃなくて誰かのために生きてきたんだなと思っていて。それがふたりと出会い、旅を通じて、自分の人生があること、自分の人生を自分で生きることの大切さにあらためて気づくきっかけになったのかなって、脚本を読んで実際にお芝居をしてみて思いました」
――ふたりと出会う前と出会ってからでは演技の表現や見せ方に変化はあったりしましたか。
「家族といる時と、それ以外の時では、ギャップと言いますか、なるべく違いが出るといいなと意識しました。監督ともお話をして、そこは一層気をつけながら演じました」
――プレスリリースで南さんが寄せられた「与えられた環境はいつだって不平等で理不尽だと身にしみて感じる撮影期間だったと思います」というコメントが非常に印象的でした。本作はもちろん、南さんが今年主演された『万事快調〈オール・グリーンズ〉』も重なるところがあると思っています。
「たしかにそうですね」
――置かれている状況を突破するキャラクターに共感する部分はありますか?
「私は度胸のない人間なので、突破できたことがあまりないんですけど、今回の登場人物の3人みたいに自分で選択し続けていかなきゃいけないということに気づけていないので、そろそろ気づきたいと思っています(笑)」
――金の密輸は悪いことだとわかってはいるけれども、生きるために仕方ないという選択をしている女性たちに、麻由という役を通じてどんなことを感じましたか?
「やっぱり不条理というか不平等な世の中だなというのは感じていますし、正しさと生きることの間で悩んだりすること、揺れることってたくさんあるかなと私は思っています」

(映画『マジカル・シークレット・ツアー』より)
――シンガポールの撮影中やオフの時間で印象的だったことなどがあれば教えてください。
「じつは私、シンガポールの撮影が終わった後に4日くらい延泊して、満喫し尽くしました(笑)。端から端まで行きました。ナイトサファリが楽しかったですね」
――では植物園なんかも?
「植物園も行きました。めちゃくちゃ楽しんできました。私が行った時は普通の展示だったんですけど、私が帰った2日後くらいに『ジュラシック・ワールド』とのコラボが始まったんですよ。『ジュラシック・ワールド』が大好きなので、それがくやしくてくやしくて(笑)」
――とにかくたくさんの作品に出られているので、しっかりオフを取られたと聞いて少し安心しました(笑)。南さんにとって『マジカル・シークレット・ツアー』は、2026年公開の映画では4本目の出演作になります。いつもどのように役を入れたり、切り替えたりされているのでしょうか。
「ずっと映画を撮っているんですけど、一本終えたらまた次の一本という形でやれているので、私にとってそれがちょうどいいと言いますか。ちゃんと一本ずつやれているので、わりと切り替えがしやすいんですよね。たまに重なることもありますけど、泣くようなスケジュールではないんです。個人的にも(役が)抜けやすいタイプなのかなと思っていて。引き摺る方もいらっしゃると聞くんですけど、私は意外とのらりくらりとやれています(笑)」

(映画『マジカル・シークレット・ツアー』より)
――だからこそさまざまな役をできているのだなと感じました。『マジカル・シークレット・ツアー』の麻由はキャバクラで働いていたという背景がありますし、また、妊婦の役も初めてだと思うのですが、演じてみていかがでしたか?
「妊婦の役はわからないことが多かったので、撮影中にお腹につける疑似のベルトを持ち帰って生活のなかでつけるようにしていました」
――演じる上で参考にしたものはありますか?
「私の場合は、知識はもちろん大事ですけど、実際に見聞きしたりとか、五感で感じたほうが入りやすいタイプなので、たとえば実際の場所があったとしたら、時間がある時は行ってみたり、その人物の仕事に触れてみたりすることが多いですね。実際にそういう経験をした人の話を聞いてみるとか。その場所に行けるのであれば、実際に行くのがいちばん自分のなかに入りやすいんです。生まれ育った場所が明確だったら、わりと行くようにはしてます。今回は、妊婦さんを演じる上でちゃんと説得力を持たせられるかなという懸念があったので、なるべくたくさんの方にお話を聞きました。あとはたまたまキャバクラで働いている知り合いがいたので、実際にお店に行きました。そのひとに接客してもらいました(笑)」
――恐れ入りました……。南さんは常日頃から新しいことに挑戦したいとおっしゃっています。最近だと『殺手#4』でガンアクションもやられていましたし、あらゆる役に挑戦されています。
「普段なにも考えてないから、なんとかなっているんだと思います(笑)。変わりたいと思う部分、変わらなきゃと思う部分はたくさんあって、それを改善したりはしているんですけど、基本はずっと一緒のことをやっている感覚なんです。ただ、表現することが昔からすごく好きなので、もしお芝居じゃなかったとしても、いろんなことに挑戦したいと常に思ってます」
――出演作がどれもインパクトの強いものですが、どのように作品と出合われているのでしょうか。
「たしかに濃い作品が多いですよね(笑)。新たな役に挑戦したいということは常日頃から言っていますが、いつの間にか出演させていただくことになっていて。でも、完成したものを見ると、すごく面白かったり、こんなにインパクトのあることをやっていたのか、となることが多いですね。ゆりやんレトリィバァさんが監督した『禍禍女』がそうでしたけど、最初はあんなことになると思ってなかったのに、気づいたらすごくインパクトのある作品になっていました(笑)」
――前号でそのゆりやんレトリィバァさんに取材したのですが、「南沙良さんにあんなことをやらせるなんて親を人質にでも取ってるんじゃないか」という感想を見たと言ってました(笑)。完成してからわかることも多いとのことですが、『マジカル・シークレット・ツアー』をご覧になっての感想はいかがでしょう?
「脚本を読んだ時は、題材のインパクトも大きいですけど、とにかくテンポがいいと思ったんですね。これが映像になったらどうなるんだろうと思っていたんですけど、実際にできたものを観て、すごく天野さんらしくなったというか。当初感じていた疾走感にシュールさが加わっていて、あまり観たことないジャンルになっていたのが面白いな、これは癖になるなと思いました」
――最後に、映画のタイトルにちなんで最近マジカルだなと思った体験があったら教えてください。
「えー!……最近、親知らずを上下2本抜いたんです。本当に痛かったんですけど、それが綺麗に抜けたのでもらえたんです。そうしたら、母がそれをくれと言ってきて。ネックレスにしたいからと。だから紐も買ってみたんですけど、さすがに気持ち悪いかもしれないなと思って、歯の形をした小さい入れ物を買い直して渡しました。母は歯の形をした入れ物に本物の歯を入れて持ち歩いてます」
――なんというエピソード!
「しかも、歯の根っこに糸みたいなのがあったんです(笑)! それがなんと神経だったみたいで。歯の神経ってこんなに形ではっきりと見えるんだっていう発見がありました。それはすごくマジカルで感動しました(笑)」
取材・文/南波一海
撮影/品田裕美
スタイリング/藤井希恵(THYMON Inc.)
ヘアメイク/坂本志穂
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ジャケット 104,500円 / IRENISA (イレニサ)
ニット 26,400円
コードハーネス 29,700円
スカート 52,800円 / 共に AOIWANAKA (アオイワナカ)
ネックレス 36,300円
ブレスレット 13,200円
右耳に付けたイヤーカフ 12,100円
右手中指に付けたリング 11,000円 / 共に JUSTINE CLENQUET (ジュスティーヌ クランケ)
ニットの下に着たインナーキャミソール
シューズ / 共にスタイリスト私物