声優・緒方恵美が振り返る、アニメとの15年〜『新世紀エヴァンゲリオン』などアニメ楽曲のカヴァー集を発表〜

緒方恵美   2007/09/26掲載
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 『新世紀エヴァンゲリオン』で主役の碇シンジの声を演じる緒方恵美が、今年で声優生活15周年を迎える。それを記念し、自身の思い入れのある曲を収録したカヴァー作『アニメグ。』がこのたびリリースされることになった。本作は、新旧人気アニメ作品のテーマ曲やエンディング曲で構成されたバラエティに富む、まるで彼女自身を象徴するような内容。そこで、アルバムの話を中心に、彼女が身を置いたアニメ界、そして音楽との関わりを含めたこの15年を振り返ってもらった。


「10周年のときに自身の楽曲のベスト盤を出したので、今回は何にしようかと考えたときに、“アニメの楽曲のカヴァーがいい”ということでコンセプトは決まりましたね」

 アルバムには、お馴染み『幽☆遊☆白書』や『美少女戦士セーラームーン』、そして『新世紀エヴァンゲリオン』といった彼女が声優として参加したアニメの楽曲を自身で歌ったものが収録されている。

「世の中はカヴァー・ブームですし、また作品を愛してくれた人へ感謝の意味を込めたアルバムを作りたいなって。こういうカタチでやるのは初めてだったんですけど、面白いことが起こって……。作品のことを思いながら歌うので、だんだんと演じていたキャラクターの声に近づいていってしまうんです(笑)。あとアニメの曲というのは、その作品のためだけに作られているモノが多いですから曲のテーマがカッチリしていて、濃い! おかげでお腹一杯になるCDになりました(笑)」


 たしかに、遊園地のようなアミューズメント性のあふれたアルバムに仕上がっているわけだが、それに拍車をかけているのが、彼女の思い入れが深い『銀河鉄道999』『宇宙戦艦ヤマト』『デビルマン』といった有名アニメ作品の楽曲だ。もちろん、古い作品ゆえに彼女は参加しているわけもないのだが、なぜこれらのアニメの曲をピックアップしたのだろうか。

「私が小学生ぐらいの時の作品なんですけど、これらのアニメを観て、初めて“声優”という仕事を意識するようになったんです」

 つまり、声優としての緒方恵美の萌芽がこれらの曲にはあるというわけだ。

「基本的には有名な作品の曲が多いので、ファンの方のみならずいろんな人が聴いて楽しんでもらえるアルバムだと思います。また世界観を大事にしたかったので、なるべく原曲のイメージを大切にしつつ自分のカラーを出しつつ作りました」

 その特色とは“ロック”である。声優として有名な彼女だが、ミュージシャンとしてもそのキャリアは長く、すでに10枚以上のアルバムを発表している。現在は、バンドの仲間とともに全国ツアーもしており、彼女の音楽性は70〜80年代のロックに影響を受けているという。

「声優が作ったというよりも、肩書きに“声優”も使っている一人のバンド小僧が音楽仲間と楽しみつつ作った作品という感じでしょうか(笑)」




公開中の映画『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』。その劇中楽曲がフルサイズで収録されたCDがリリースされた。音楽の担当は鷺巣詩郎。レコーディングはアビイロード・スタジオで『スターウォーズ』や『ロード・オブ・ザ・リング』を手掛けたスタッフにより行なわれ、エヴァの世界観がクオリティの高いサウンドで楽しめる一枚。

 さて、声優生活15年。近年は時代のキーワードとして欠くことのできないアニメではあるが、内側の世界から見る時代の流れというのはどういうものだったのだろうか。

「うーん、どうなんでしょう。アニメだけには限らず、今の時代、CSやBS、深夜放送などハードが増えてきてソフトであるアニメの需要も増えてきてはいるけど、製作コストが削減されクリエイターが苦労していますね。それに付随して、地上波のいい時間帯の放送が少なくなってしまい、誰の心にも通じる作品が少なくなってしまったのはちょっと哀しいですね」

 では、その渦中にあって声優として常に意識してきたことはなんだろう。

「この仕事が特殊なのは、役者と比べて明らかに見た目ではありえないような年齢の役をやったり、たとえば木や玩具といった“物”を演じることもあることなんです」

 それを聞いて納得。彼女自身、少年の役が多い。声優は、実際とはかけ離れた役を演じきらなければならない場合もあるわけだ。

「アニメチックにデフォルメしたものを求められる作品もあれば、なかにはリアリティを求められる作品もあります。たとえば、少年の役をやる場合、その人格を演じるためにはピュアな部分を常に持っていなければできない。そういった少年の心を普段から意識的にキープして失わないような努力はしてきたつもりです」

 少年のリアルな演技をするために、少年性を保つとは普通の役者ではありえない世界観。ならばエヴァの主人公・碇シンジという少年は彼女にとって……。

「少年らしい純粋さが必要な、その最たるモノでしょうね。職業上、その役から自分自身が影響されるということもありますが、だからこそ、彼に会えて感謝しています」

 では最後に、現在公開中の映画『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』について聞いてみた。

「私はこの劇場版をやるために声優として生かされてきたんだなって思いました。この作品に関わらせてもらって本当に幸せです。日本アニメの最高峰にいるクリエイターたちが集まって作っている、大好きな宮崎駿さんの作品ともまた違った意味で日本のアニメに誇りを持ってもらえるクオリティになっていると思います。コアなファンはもちろん、初めてエヴァを観る人も楽しめる作品なので、ぜひ劇場に足を運んでもらいたいですね」


■緒方恵美 公式サイト : http://emou.net/


取材・文/石塚 隆(2007年9月)
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