マイアミ・ソウルの秘宝クラレンス・リード TKプロダクション期をコンパイル [対談]黒田大介×the Shark

クラレンス・リード   2023/05/19掲載
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 クラレンス・リードをご存じだろうか。1939年生まれ、2016年没。ヘンリー・ストーンとスティーヴ・アレイモが率いたマイアミ・ソウルのメッカ、TKレコーズのプロデューサー、ソングライター、アレンジャーであり、1969年から1976年にかけて4枚のアルバムをリリースしたソウル・シンガーでもある。
 ベティ・ライトに提供した「Clean Up Woman」(1971年)は大ヒットしたが、自身のヒット曲はほとんどない。下ネタ替え歌&ラップのオルター・エゴ、ブロウフライのほうが知られているくらい。しかしながら、そのちょっぴり哀愁漂うキャリアと、聴くほどに味が沁み出る名曲群は、地味さと裏表の可憐な魅力に満ちている。
 そんなクラレンスがTK系のレーベルに残した7インチをみっちり詰め込んだ、画期的なコンピCD『MASTERPIECE - CLARENCE REID 45S COLLECTION FROM T.K. 1969-1980(COMPILED BY DAISUKE KURODA)』がリリースされた。選曲と監修はTKにも詳しいDJの黒田大介。同日に『“SOUNDS FUNKY!” - JAMES BROWN 45S COLLECTION FROM T.K.』も同時リリースされる。
 CDJournal.comでは黒田と、『MASTERPIECE』のライナーノーツを執筆したTKの7インチのコレクター、the Sharkにインタビュー。クラレンス・リードならびにサザンソウルのなかにあってもユニークなTKソウルの魅力を語ってもらった。
――the Sharkさんはどうしてクラレンス・リードに惹かれたんですか?
the Shark「40年か、35年ぐらい前ですかね。シングルを集めはじめたわけです。TKものは“安いから”と理由で買ってたら、だんだんと増えてくるんですけど、すごくいいとは思わないんです。でも、悪いとも思わない。そうして集めてるうちに、何年かかけてジワジワと“じつはものすごくいいんじゃね?”と思えてきて、見つけたら買うようになりました。
 当時は今みたいに情報がないし、ひとりで集めてるから、ブロウフライとクラレンス・リードが別人だと思ってたんです。あるとき変なLPを買うんですよ。緑色のジャケで、ブロウフライが女の子をはべらせてバナナ食べてるやつ(1984年の『Electronic Banana』)。これがまぁ、つまらないつまらない(笑)。つまらないっていうよりも、わからない。延々と猥談してるだけですからね」
黒田「でもthe Sharkさん、英語わかりますよね」
the Shark「スラングが混ぜこぜに出てくるから、わかるのは“ワレメ!”とか“クイコミ!”程度ですよ(笑)。なんだこれは、と思いました。のちに同じ人だってわかるんだけど、このCDを聴くとおわかりになる通り、クラレンス・リード名義の曲は大半が本当にまじめなんです。こんな真摯なソウルを作る人とスケベな漫談をやる人が同一人物とは思えなかったんですよね」
――まじめにいい曲を作っているのに売れないから半ばヤケになってブロウフライを始めた、とライナーノーツに書いていらっしゃいますね。
the Shark「それは本当の話で、夜中にスタジオでバック・メンたちと替え歌をやってたら “変なやつがいるぞ”って噂が広まったんだそうです。初期に遡って聴いていくと、意外に音楽的なレコードもあるんですよ。そこで同一人物であることに納得がいくというか」
黒田「ブロウフライも聴いてるんですね、ちゃんと(笑)」
the Shark「いちばん好きなのは『Blowfly on TV』(1974年)というLPです。有名なソウル・ヒットの卑猥な替え歌を、しっかり歌ってるんですよ。初めて聴いたとき、歌うまいなって思ってね」
写真左:黒田大介、右:the Shark
(写真左:黒田大介、右:the Shark)
――クラレンス・リードだけじゃなくTK全体かもしれませんが、“じつはものすごくいいんじゃね?”と思いはじめたきっかけはあるんですか?
the Shark「先ほどもお話ししたように、いきなりドスン、ではなかったですね。ジワジワとくる感じ。あと、集めてるうちに“なんだかいっぱい出してるぞ”ってことになるんです。LPじゃなくて7インチ。まだウェブがなかったんで、手当たり次第に買ってるうちに、だんだんと彼が首尾一貫していいを曲作ってるってことが見えてきまして」
――アルバムにはない7インチならではの味なんですね。
the Shark「LPは4枚出してるんですけれども、時流に合わせて1枚ごとにうっすらとしたコンセプトがあるんですよ。たとえば3枚目の、横顔のやつ(1973年の『Running Water』)はニュー・ソウルっぽかったり、アトコで最初に出した『Dancin' With Nobody But You Babe』(1969年)はソウル・パーティ向きなノリがあったりね。LPはLPでそれぞれの個性があって、ひとつの作品って感じなんです。で、シングルを見ていくと、スローもあるし、このCDのタイトルにもなった〈Masterpiece〉なんか、ファンクも入れつつサビの部分はきれいに作ってたりとか。これは普通じゃないぞ、と思いはじめました」
クラレンス・リード
クラレンス・リード
クラレンス・リード
――インターネットがなかったころは何で情報収集していましたか?
the Shark「足です。ディスクユニオン回ったり。今も同じですけど(笑)。僕が始めたころはTKは人気なかったんで、格別に安かったんです」
黒田「個人輸入はしてなかったんですか?」
the Shark「してたしてた。でも、手間や送料はかけたくないんです、TKのレコードには(笑)。そこらへんに落ちてたんですよ、昔は。そのころこの手を集めてた人は、日本に2人しかいなかった。僕とPenguin Joeこと永井博画伯。それはあとから知ったんですけどね」
黒田「永井さん、TK大好きですもんね」
the Shark「そもそもマイアミものは海外で買った記憶があんまりないんですよ。ほかの人がまとめて買って“これ、いらない”って手離しちゃった盤が多かったんじゃないですかね。魅力がすぐダイレクトに来るようなものじゃないから」
――いきなりドスンと来ない、ジワジワ来るというのはたぶんTKものの特徴のひとつかなと思うんですが、黒田さんもそう思われますか?
黒田「思います。ボクは入口がファンクで、ソウルから入ったthe Sharkさんとは違うんですよ。〈Nobody But You Babe〉とかはレア・グルーヴのクラシックなんで、そこからクラレンス・リードを知って……もちろんブロウフライも。ディープ・ファンクってムーヴメントがあったじゃないですか。そのころローカルファンクの7インチを集めてたら、ドライヴとかアルストンのものもちょこちょこ入ってきて、モノとして興味を惹かれたんです。レーベルは緑か紫か赤で、スリーヴもかわいいし、“なんで穴が開いてんだろう?”とか。TKはだいたい開いてるんですよね」
the Shark「あー、ドリル・ホール(レコード会社や問屋が廃盤のレコードに開けていた穴)ね」
黒田「音もちょっとモコモコしてて独特な空気感がある。プレスの問題なのか、エンジニアの好みなのかわかんないですけど、それも一つのマイアミ・サウンドですね。で、いろいろ聴いてると“Reid/Clarke"のクレジットがだいたい入ってるんですね。それで“なんかこの人すごいんじゃない?”みたいな感じで聴きはじめたら、TKの7インチの男性シンガーってだいたいクラレンス・リードっぽいんですよ。独特の塩辛い感じが出てて」
the Shark「それは言えてますね」
黒田「で、だいたいクラレンスが曲を書いてるんで、歌唱指導とかしてたんじゃないかっていう話を昔、the Sharkさんとしたことがあって。そういう感じでトータルでTKにのめり込んでいくわけです」
――想像力を刺激されるものがあったわけですね。
黒田「TKって面白いんですよ。ローカル・レーベルなんだけど、けっこう大きな会社で、変なものからストレートなものまで出してて。12インチなんてとくにピンとこないのが多くて(笑)。TKディスコのコンピ(『the SOUND OF T.K.DISCO 12" Choice for Boogie Generation』)を作ったときにほぼ全部聴きましたけど、コンピに使えないような曲が多いなか、たまに宝石がある。知れば知るほど魅力的に感じるレーベルなんですけど、なかでもクラレンス・リードは自分にとってはリトル・ビーヴァーと双璧ですね、ソングライターとして」
――たしかにいい曲を作っていますよね。まとめて聴いてあらためて思いました。
黒田「はい。ボクも今回びっくりしました」
the Shark「並べるとかなり説得力あると思います。アルバムは先ほど言ったようにうっすらコンセプトがありますけど、7インチだとそういうのを取っ払って、10年間の一貫した流れを実感できますよね」
黒田「やっぱりシングルですよね。クラレンス・リードの歴史はTKの歴史でもあるじゃないですか。TKプロダクションの活動期間が1969年から1984年で、このCDに入れた音源は1969年から1980年だから、ほぼ合致するんですよ。言い方悪いですが、最初から最後までヘンリー・ストーンにこき使われてたっていう(笑)」
the Shark「こき使われたとも言えるけど、ストーンが辛抱強く使ったっていう見方もできると思いますよ。こいつは才能あるって信じたからこそ、年に2枚のペースでシングルをリリースし続けたわけで。“絶対売れる”とか“こいつはやる”って思ってなかったら、そんなに出せないと思うんです」
黒田「変名もいっぱいありますもんね。ブロウフライズとかあるじゃないですか。だからTKのメインではありますよね。裏方ですけど」
the Shark「まぁ、支柱ではありましたよね」
黒田「世間的にはサンシャイン・バンドかボビー・コールドウェルか、みたいな感じですけど、ボクら的にはクラレンス・リードです。こんなでかいローカル・レーベルってないじゃないですか」
the Shark「そうですね。近隣のルイジアナやテキサスには、支柱になるようなレーベルがないから」
黒田「たぶんマイアミの音楽シーンを一手に引き受けてたんじゃないですかね、ヘンリー・ストーンが。プレスは絶対にTKの経営してる工場ですよね」
the Shark「たぶん。統一感があるからね」
黒田「紙が全部一緒ですもんね。すごく愛らしいんですよ。印刷のにじみ具合とかもいいし、モノとしての魅力がありますよね」
――黒田さんはファンク45sのけもの道を歩いてこられたわけですが……。
黒田「もう歩いてないです(笑)」
――そのなかでのTKの位置づけは?
黒田「やっぱり特殊です。カリブの匂いがするんですよ、近いから。アーティストもビギニング・オヴ・ジ・エンドとかT-コネクションはバハマだし、ルー・カートンもバルバドスですよね。キング・スポーティはジャマイカだし。ニューオーリンズとはまた違うラテン、カリブの味つけがあるのが、ほかの大都市のファンクと比べて異質だなと思います。あと、言うてもちゃんとしたスタジオがあって、よそのローカル・レーベルの“カセットで録ったんじゃないか?”みたいなマイナーなファンクとはクオリティも違うんです」
the Shark「同じサザンソウルでもメンフィスとは違いますしね」
黒田「めちゃくちゃディープなやつってあるんですか?」
the Shark「ありますよ」
黒田「J.P.ロビンソンとか?」
the Shark「J.P.ロビンソンはまだ軽いほうで、まずウィリー・ジョンソン。そしてジョン・ルートマン・ヘンリーやウィリー&アンソニー、パーク・バジャー(ミスター・パーコレーター)などがいます。ただ、そういうものほど売れてないんだろうね、むしろ。だから、本当の意味でのマイアミ・ソウルっていうのは、クラレンス・リードとかリトル・ビーヴァーになるんじゃないでしょうかね」
黒田「たしかに。ベティ・ライトもそうですよね」
クラレンス・リード
クラレンス・リード
――今回のコンピレーション、1500円で2枚組、45曲も聴けるんですよね。
the Shark「クラレンス・リードの7インチをこれだけ集めたコンピは世界初と言っていいと思いますね」
黒田「コンプリートって言いたいんですけど、ちょっと謎があるんです。TKはそのへん紛らわしくて、情報が出てないのもあるかもしれないし。だからあえてコンプリートとは謳ってないんですけど、そのつもりで情報があるものは一応、全部入れました。入ってますよね?」
the Shark「入ってると思います」
黒田「(笑)。こういう感じで、自信を持って言えないところがTKの沼なんですよ」
――まだどこかに……。
黒田「そうなんですよ。テイク違いとかもあるかもしれないし、変名もあるかもしれないし。だからクラレンス・リード名義のものだけ入れました」
――確認しようにも、ご本人が2016年に亡くなっちゃいましたからね。
黒田「肝臓ガンで。たしか、闘病中に治療費が足りなくて周りの人たちがドネーション募ってましたね。ベティ・ライトの〈Clean Up Woman〉を書いた人なのに……って思って、ちょっと悲しかった」
――the Sharkさんのライナーにもありましたけど、いい曲を作っていたのに、最後までいまいち成功しきれなかった人ですよね。
黒田「そうなんですよ。このCDを作りたいと思ったのも、みんなブロウフライ、ブロウフライってネタ扱いするけど、こっちが本質でしょ、っていう思いがあったからなんです。この魅力を絶対に知ってもらいたくて」
――黒田さんはDJミックスものを何枚か出していらっしゃいますけど、今回は普通のコンピなんですね。
黒田「リリース順ですしね。物理的に2枚組になっちゃうから、A面の曲を1枚目にして、B面を2枚目にしようかってずっと悩んたんですけど、やっぱり時系列で並べたほうがいいかなと思って。けっこう壮観ですよね、こうして並べると」
the Shark「壮観です、本当に。よくできたよね。僕だって持ってないのが入ってますから。これ全部持ってる人は日本にいませんよ、たぶん」
――2人を惹きつけてやまないTKの魅力を、先ほどからお話にチラチラ出てきてはいますけど、あらためて教えていただくとすると?
the Shark「ソウルフルさと、うっすらとしたファンキーさですかね。南部としてはインパクトが強くないゆるやかな味はマイアミならではなんだけど、それでいてやっぱりアメリカ南部の音楽であることも感じさせてくれるところかなと思います。あと、クラレンスの場合はちょっと哀愁を帯びたメロディがときどき出てくるんで、あれがなかなかどうして心に残るといいますか」
黒田「リトル・ビーヴァーとはまた違った哀愁ですよね。ちょっと控えめで」
――わかります。めちゃくちゃ歌がうまいわけでもないと思うんですが、得がたい味がありますよね。
the Shark「激しく歌うわけでもなし。だから昔からのソウル・ファンからの注目度が低いんですけどね。盲点だったから集めたところもあります」
黒田「クラレンスってバックは固定されてたんでしたっけ。てか、まぁスタジオのメンツですよね」
the Shark「ヘタすりゃKC(ハリー・ウェイン・ケイシー)も入ってたかもしれない。チョコレートクレイ(ベーシストのジョージ“チョコレート”ペリーとギタリスト、クレイ・クーパー)でやってたかもしれないし。モータウンと一緒で、パーソナルは謎のままですね」
黒田「オーシャンライナーズっていうマイアミのファンク・ブラザーズみたいなミュージシャンたちもいましたもんね。のちのサンシャイン・バンド。リトル・ビーヴァーも裏方だったし」
the Shark「ミュージシャンとして有能な人が多かったから。スヌーピー・ディーンなんかもそうだしね」
黒田「ウィリー・クラークが組んだマイアミっていうバンドなんて、もうスーパーグループですから」
the Shark「ロバート・ムーアとかフレディ・スコットとかね」
黒田「全員揃ってる。クラレンス・リードも歌ってますもんね」
――クラレンス・リードはマイアミのシーンの中心人物のひとりと言っていいんでしょうか?
the Shark「地味な中心人物ですけど(笑)、一本筋を通していたのは彼だったと思います」
黒田「ヘンリー・ストーンとの関係が興味深いですけど、やっぱり謎に包まれてて。ストーン的には絶対に手放せない人材ですよね。お金はちゃんと払ってなかったと思うけど(笑)」
the Shark「契約社会じゃなかったからね。取っ払いでそれっきりとか」
黒田「ティミー・トーマスの〈Why Can't We Live Together〉(1972年)は、キング・スポーティーから75,000ドルで権利を買ったTKが全米でリリースしてミリオンセラーの世界的ヒットになったらしいですよね」
――ドラマがありますね。真相を知ったら殺伐としそうですけど。
黒田「自分はTKには裏のストーリーをすごく妄想しちゃう。音楽を聴くときって妄想が大事じゃないですか。TKは、大河ドラマほどじゃないですけど、ネタがいっぱいあるなって思います」
the Shark「あるね!」
黒田「人間関係も。情報はまったくないんですけど(笑)」
――ブロウフライのドキュメンタリー映画があるらしいですね(2010年の『The Weird World of Blowfly』)。
the Shark「YouTubeにあったプレヴューみたいなのは見ました。悲哀のある日常生活を撮ってましたよ(笑)。バスに乗ってたから、車は絶対持ってないです」
黒田「ビギニング・オヴ・ジ・エンドは漁師で、会いに行ったら船に乗って魚獲りに行ってた。みたいな話を海外のDJがしてました。曲名“Fisherman”にかけたジョークだと思いますが、ホントかも?とも思ってしまう。リトル・ビーヴァーはバスの運転手でしたっけ?」
the Shark「鉄道会社のアムトラックに入ったっていう。もう退職してるんじゃないかな、さすがに」
黒田「ミルトン・ライトはエリートなんですよね」
the Shark「そう。あの人は裁判官やってたんですよ」
黒田「ライト兄妹はみんなインテリなんですよ。ベティもIQ高いですもんね。趣味が数学ですから。で、フィリップ・ライトが実業家ですよね」
――クラレンスはどうだったんですか? 副業的なものは。
the Shark「音楽一本でしょう、この人は」
黒田「副業はブロウフライですよね」
――副業が下ネタ芸……(笑)。
黒田「ブロウフライは本体より売れたから、たぶんそっちで食ってたんですよ」
the Shark「最初にまじめって言いましたけど、案外そうでもなかったのかなって話もあるんですよ。一時期クラレンスのガールフレンドだったと言われてるヴァネッサ・ケンドリックっていう歌手が、イギリス人の取材に“もうあんな人とは二度とやりたくない”と言ってたと。というのも、レコーディングの最中にずっとセクハラされてたらしいんです。ブロウフライな面もちゃんとあった人だったようですね(笑)」
黒田「ちょっとショック。ブロウフライは金のためにイヤイヤやってると思いたかったのに(笑)」
クラレンス・リード
――最後に、同日発売されるジェイムス・ブラウン・ファミリーのコンピ『SOUNDS FUNKY!』のことも少しうかがえますか?
the Shark「面白いとこに目つけたなと思って。これも楽しみな一枚ですね。これだけ包括的なのは初めてでしょう?」
黒田「Pヴァインから出てた『ホット・パンツ-アイム・カミング』っていうボビー・バードとヴィッキー・アンダーソンのコンピとか、近いコンセプトのものはいくつかあったんですけど、TKでまとまったものはないですね。ヘンリー・ストーンとJBが共同で設立した音楽出版社、インターナショナル・ブラザーズの音源です」
the Shark「仲良かったんだね」
黒田「60年代にジェイムス・ブラウンが所属していたキング・レコードがJBファミリーの音源を出さず、それをヘンリー・ストーンが自身のレーベルがリリースするということがありました。そんなこともあって、ジェイムス・ブラウンにはヘンリー・ストーンに対する絶大な信頼があり、70年代にインターナショナル・ブラザーズとブラウンストーンの設立に結びついたんです。演奏もJBズなのかTKのスタジオ・ミュージシャンなのかわからないものもあるし、絶対JBズだってのもあって、ミステリアスで面白いんですよ」
the Shark「なかなかまとめては聴けないです、これは」
黒田「これも全部入れたら2枚組になっちゃうんで、ファンキーなものだけにしました。最後の1曲だけはスロウな曲でたぶん初CD化です。サム・クックの〈A Change Is Gonna Come〉をジョニー・ザ・マン名義でジョニー・スコットンがカヴァーしてます」
the Shark「聴くのが楽しみ。いいコンピだなぁ」
黒田「たとえば、ボビー・バードの〈Back From the Dead〉とかヴィッキー・アンダーソンの〈Sounds Funky〉は、クラレンス・リードとウィリー・クラークの曲ですよ」
the Shark「気づかなかった。灯台下暗し(笑)」
黒田「本当に書いてるかはわかんないですけど(笑)。ヘンリー・ストーンが“クレジット入れといてあげてよ。金払ってないから”とか言ってたのかもしれないし。まぁ妄想ですけど、そういうちょっとうさん臭いとこもいいんですよ」
――今日はクラレンス・リードとTKへの興味と愛着をそそられるエピソードをたくさんお聞きできました。最後に2人から何か言っておきたいことがありましたら。
the Shark「とてもすばらしい2枚のコンピなんで、ぜひ多くの人に聴いていただきたいと思います。聴く機会はこれを失ったらもうないです」
黒田「ボクらにとってはスターですから、クラレンス・リードは。山下達郎さんに聴いてもらいたいですね。昔、さっきお話したTKディスコのコンピを出したときにラジオで紹介してくれたんですよ。その瞬間にAmazonで全部売り切れちゃって、R&Bチャートで一瞬マライア・キャリーを抜いて1位になったんです(笑)」
――すごい!クラレンス・リードも紹介してほしいですね。
黒田「ですね。好きだろうな、達郎さん」
クラレンス・リード


取材・文/高岡洋詞
撮影/西田周平
【Information】
黒田大介選曲・監修コンピレーション2タイトル 『“SOUNDS FUNKY!” - JAMES BROWN 45S COLLECTION FROM T.K.』 『MASTERPIECE - CLARENCE REID 45S COLLECTION FROM T.K. 1969-1980』 リリース記念イベント

2023年5月21日(日)16:00〜20:00
東京 ULTRA SHIBUYA(東京都渋谷区東1-28-9)
イベント内容:DJ、座談会(17:00〜18:30頃予定)、the Shark レコードコレクション即売など
出演:黒田大介、マスクマン、the Shark、T-GROOVE(座談会のみ)、佐藤潔
座談会司会・進行:林剛

https://ultra-shibuya.com/blogs/event/2023-05-21-daisuke-kuroda
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