カラフルなポップ・サウンドと深い人生観が満載! 身近にある“瞬間”が楽しめる、奥井亜紀の新作

奥井亜紀   2009/06/04掲載
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 3月に15周年を記念したDVD『15 FESTA』がリリースされたシンガー・ソングライターの奥井亜紀。そんな彼女のニュー・アルバム『TIMEcARTRIDGE』が登場!

 本作は、ヒットしているエッセイ集『B型のオンナ』(発行:文化放送メディアブリッジ)と同タイトルの曲も収録。“空”“海”をテーマにした前作からの流れで、今回は“地上”における身近なものがテーマになっている本作について、彼女に話を訊いた。





 放課後、卒業、グラウンドといった言葉をちりばめながら、学生時代の風景に想いをはせる「ドロップ」、ノスタルジックな夏の空気がゆったりと広がっていく「真夏日」、亡くなってしまった母親との思い出をリリカルに描き出した「緒結び」。アニメ、CMを含め、幅広いフィールドで才能を示してきたシンガー・ソングライター、奥井亜紀の新作『TIMEcARTRIDGE』には、人生におけるさまざまな瞬間を切り取った、(タイトルどおり)いろんな時間にスリップできるような楽曲が並べられている。その中心にあるのは「漠然とではあるけれど、このアルバムのなかで言いたいことを考えながら作った」という「ハジマル」というナンバーだ。
 「前の前のアルバムが『青空の手紙』、前のアルバムが『音海スイム』。空、海と続いて、今回は地上のこと、身の回りの生活をテーマにしようと思ったんですね。そこからいろいろと考えているうちに、なんとなく“丸いもの“というイメージが浮かんできたんです。1日の流れ、人と人との縁、それから人生も曲線で出来ていて、じつは全部が一つに繋がってるんじゃないかなって」

 幼いころの記憶、思春期の思い出、切ない恋愛の体験、そして、いまはそばにいない大切な人との繋がり。このアルバムを聴いていると、“自分は確実に、どこかに繋がっている”という安心感が芽生え、それはいつしか、“今日を前向きに生きてみよう”という肯定的な感覚へと結びついていく。また本作は、きわめて個性的な色彩に満ちたポップ・アルバムとしても魅力を放っている。軽やかにステップを踏むヴォーカル・ラインを軸にした「音海スイング」、童謡のような優しさに満ちたメロディとクラシカルな音響が一つになった「新日」、アコースティック・ギターの響きを活かしたトラック・メイクのなかで大らかなスケール感のある旋律が広がっていく「B型のオンナ」(奥井亜紀本人のキャラクター/B型気質を投影した歌詞も楽しい)。意外性に満ちたアイディアを誰でも楽しめるポップ・ミュージックへと昇華していく彼女のセンスは、ここにきてさらに活性化されているようだ。
 「曲のイメージを誰かに伝えているとき、“それは○○○ということですか?”ってジャンルを決められると嫌なんですよ(笑)。一般的に“これとこれは合いませんよ”っていうことを試してみたい、っていう気持ちは強いかもしれないですね。でも、ポップですねって言われるのは嬉しいです。以前は“また暗い曲ばかりですね“って言われてたこともあったので(笑)」






 デビュー16年目に突入している奥井亜紀。カラフルなポップネスをたたえたサウンド、奥深い人生観を含んだソングライティングが一つになった『TIMEcARTRIDGE』は彼女の新しい代表作として、これから長く聴き継がれていくことになるだろう。
 「学生さんはいまの自分を重ねながら、私くらいの年齢の人は昔のことを思い出しながら聴いてくれたら嬉しいですね。最近はお子さん連れのお客さんも増えたし、誰が聴いても“なるほど”と思ってもらえるような音楽を作っていきたいっていう気持ちもあるので」




取材・文/森 朋之(2009年5月)
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