【菅野祐悟】 NHK大河ドラマ『軍師官兵衛』をはじめ、数々のヒット・ドラマの音楽を手がける気鋭作曲家

菅野祐悟   2014/01/29掲載
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NHK大河ドラマ「軍師官兵衛」
オリジナル・サウンドトラックVol.1

thanks!〜菅野祐悟 ベストセレクション〜
 『ガリレオ』『ホタルノヒカリ』『謎解きはディナーのあとで』等々、大ヒットしたドラマの数々を手がけてきた作曲家・菅野祐悟。テレビのスイッチを入れて彼の音楽を耳にしない日は、もはや一日たりとも存在しなくなったと言っても過言ではない。テクノ、クラシック、ジャズ、ケルトなど、ありとあらゆる音楽スタイルを駆使してカメレオンの如く姿を変えながら、ドラマや映画ごとに異なる世界観を的確に描き分けていく菅野はまだ36歳。すでに日本の劇伴音楽界の頂点に立った感のある彼が、なんと史上3番目の若さでNHK大河ドラマの音楽に抜擢された。豊臣秀吉の軍師・黒田官兵衛の生涯を描いた『軍師官兵衛』。演奏にあたってはポーランドの名門オーケストラ、ワルシャワ・フィルハーモニー管弦楽団を起用し、劇伴界の“関が原”というべきシンフォニックな“戦い”に堂々と挑んだ。
――現代劇の音楽が多い菅野さんとしては、今回は珍しく時代劇ですね。
 「時代劇の音楽の作曲としては、2007年の『明智光秀〜神に愛されなかった男〜』以来となります。大河ドラマというのは、過去の作品から綿々と歴史が続いているという意味で、一種の“シリーズもの”だと思うんですね。先代の作曲家のみなさんが築き上げてきたクオリティや、大河ドラマの固定ファンが楽しみにされている期待値というものが、確実に存在します。過去の大河ドラマの冒頭に流れるテーマ曲をすべて聴き直してみましたが、2分40秒という一定の長さの中で大河ドラマらしい風格を表現しつつ、音楽としても美しく成立しているという意味で、いずれも一流の作曲家のベストの仕事だと感じました。そこがクオリティの基準点となるわけですから、大変な仕事です」
――『軍師官兵衛』のテーマ曲作曲にあたって苦労なさった点は?
 「制作統括のチーフ・プロデューサーからは、“菅野君らしい音楽で黒田官兵衛を表現してほしい”という要望を事前にいただきました。それはおそらく、僕の音楽が持つ“ウェットな要素”、つまり叙情的なメロディ・ラインだと思うんですね。官兵衛という人物は、戦国時代の最中にあっても殺生を極力避け、生涯にわたってひとりの妻を愛し続けた武将でした。そうした彼の深い愛を“泣けるメロディ”で表現することが、今回いただいた僕の役目ではないかと。かつ、視聴者のみなさんがテーマ曲を聴いただけでドラマを思い浮かべるような、番組のアイコンとしての“メロディの太さ”が重要になりますが、それは今回に限らず、劇伴の作曲において毎回苦労している点です」
――スコアの作曲にあたって意識なさったことは?
 「過去の時代劇の音楽の伝統から、最新のハリウッド映画やヨーロッパ映画の音楽のトレンドまで、情報としてすべてを吸収したうえで考えたことは、制作スタッフが『軍師官兵衛』に込めた想いを音楽に反映しつつ、いかに新しい要素を付け加えていくか、という点でした。具体的には、エレキ・ギターなどのデジタルチックな音は一切避け、あくまでもオーケストラのアコースティックな生音の中で、過去の大河ドラマの音楽になかった“新しさ”を表現する、という制約を自分に課しました」
――その“新しさ”とは?
 「言葉では表現しにくいのですが、一種の皮膚感覚のようなもの、2014年の今この瞬間に生きている自分にしか出せないサウンドです。オーケストラの中で珍しい楽器の組み合わせ方を試みる、という意味での“新しさ”ではなく、あくまでも世界の劇伴のトレンドの中で大河ドラマの音楽を書いていく、という意味での“新しさ”です」
――スコアの演奏にワルシャワ・フィルを起用された理由は?
 「オーケストラで“勝負”すると決めた以上、それが一番美しく響く場所で演奏したい、という判断に行き着きました。もともとオーケストラはヨーロッパ出自ですから、ショパン・コンクール本選会場として有名なワルシャワのショパン音楽院コンサートホールで、ワルシャワ・フィルのような素晴らしい演奏家に演奏していただくのが理想ですよね」
写真:松井康一郎
――大河ドラマ本編の後に流れる『官兵衛紀行』では、テーマ曲をヴァイオリニストの神尾真由子さんが演奏なさっています。
 「自分の中にあったヴァイオリンの概念が、神尾さんの演奏によって完全に変わりました。つまり、神尾さんの音が“デフォルト”になってしまったんですね。サッカーで言えばメッシくらいのレベルで当たり前、F1で言えばアイルトン・セナくらいで当たり前、ということです(笑)」
――『軍師官兵衛』サントラ盤リリースに合わせ、過去の菅野さんのテーマ曲を収めたベスト盤も発売されます。
 「僕のベストというより、過去5年間の大ヒット・ドラマ、映画の音楽を一枚で楽しんでいただける作品としてお聴きいただければ、と。これだけの作品の音楽を担当させていただくことになったのは、本当に幸運としか言いようがないです」
――2月8日には“菅野祐悟バレンタインコンサート2014”をオーチャードホールで開催されますね。
 「前半は過去1年間に書かせていただいた曲を中心に、僕の弾き振りで演奏します。後半では『軍師官兵衛』から計4曲を演奏する予定ですが、テーマ音楽指揮を担当していただいた広上淳一さんを特別にお招きし、『軍師官兵衛』を振っていただきます。楽しみにしていてください」
取材・文/前島秀国(2014年1月)
| 『thanks! 〜菅野祐悟ベストセレクション〜』
リリース記念トーク&ミニライヴ決定!


■ 2月22日(土)
東京 タワーレコード渋谷店 7F イベントスペース

[Tel]03-3496-3661
15:00 START

| 菅野祐悟バレンタインコンサート2014

■ 2月8日(土)
東京 Bunkamura オーチャードホール

問:東京音協[Tel]03-5774-3030
18:30 開演
※詳細は菅野祐悟オフィシャル・サイトへ
www.yugokanno.com
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