[こちらハイレゾ商會]第74回 オリジナル・アルバムのような『シカゴ・クリスマス』はシカゴからのクリスマス・プレゼント
掲載日:2019年12月10日
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高音質放送i-dio HQ SELECTIONのランキング紹介番組『「NOW」supported by e-onkyo music』(毎日 22:00〜23:00)にて、この連載で取り上げたアルバムから牧野さんが選んだ1曲を放送します。今月の放送は12月11日(水)の「ROCK'N'POPS NOW」から。

こちらハイレゾ商會
第74回 オリジナル・アルバムのような『シカゴ・クリスマス』はシカゴからのクリスマス・プレゼント
絵と文 / 牧野良幸
シカゴがクリスマス・アルバム『シカゴ・クリスマス』をリリースした。ハイレゾでも配信され、flacが96kHz/24bitと44.1kHs/24bit、MQAが96kHz/24bitで用意されている。
シカゴは、これまでも3作のクリスマス・アルバムをリリースしてきたが、それらはスタンダードのクリスマス・ソングのカヴァーが中心だった。しかし今回はシカゴがこのアルバムのために書き下ろした曲がメインになっている。つまりクリスマス・アルバムとは言いながら、クリスマスをテーマにしたオリジナル・アルバムと言ってもいい作品だ。
“それでも企画物だから、クリスマス・シーズンだけ聴く内容じゃないの?”と思われる方も多いだろう。僕も最初はそう思っていたのだが、これが違った。ブラス・ロック時代のシカゴやAOR路線に入った頃のシカゴ(そのものとは言わないが)を聴いた感触に近い音楽だった。
オープニングからいきなりノリのいい曲が飛び出す。「(Because)It's Christmastime」はブラスの絡み具合が、いかにもシカゴと言える作品である。クリスマス・ソングらしくバックで鈴の音が鳴っているものの、往年のシカゴを彷彿させる曲調だ。乱暴なたとえ方をすると、シカゴのキャッチーな曲「いったい現実を把握している者はいるだろうか?」(ファースト・アルバム収録)をクリスマス風に鈴の“シャンシャンシャン”をつけたらこうなるのではないか、と思うくらいシカゴ的。
もちろん両曲はまったく似ていないのだけれども、そういうたとえをしたくなるほど「(Because)It's Christmastime」はブラス・ロック時代のシカゴを愛する僕にグッときたのである。ほかにも「Merry Christmas, I Love You(R&B Version)」や「All Is Right」などもシカゴらしさが味わえる曲だ。
シカゴらしい曲の一方で、バラエティに富んだ曲を収録しているのも本作の特徴である。
バート・バカラックのカヴァー「世界は愛を求めている(What the World Needs Now Is Love)」はマーヴィン・ゲイの「ホワッツ・ゴーイン・オン」みたいな官能的なドラム音が印象的。R&B風に聴かせる。「I'd Do It All Again(Christmas Moon)」やクリスマス・スタンダードの「Here We Come A Caroling」はラテン系のリズムに乗ったシカゴ・サウンドだ。
ということで『シカゴ・クリスマス』は、クリスマス気分というよりも、昔大好きだったシカゴの音楽に出会えたアルバムだった。サウンド的にはAORなのだが、音楽の“キレ”としてはブラス・ロック時代のシカゴを彷彿とさせるところがある。これでテリー・キャスが生きていてギターを弾いていたら……と思うのは僕だけではあるまい。
収録時間も43分ほど。今時のアルバムにしては短いのもいい。聴覚上では30分くらいに感じる。2枚組だった初期のアルバムのように途中で疲れることもないし、AOR時代のアルバムのように、どこか煮えきらない気持ちを抱えて聴くこともない。シカゴのエッセンスがシンプルに最後まで味わえるところがいい。『シカゴ・クリスマス』は往年のシカゴ・ファンへのクリスマス・プレゼントになるアルバムだ。
最後に音質の話であるが、リスニングはハイレゾをUSBに入れたものをOPPO BDP-105D JAPAN LIMITEDで再生したのと、ソニーのHDDオーディオプレーヤーHAP-S1と両方で聴いた。
OPPOではエネルギー感のある音で聴けた。低域に厚みがあり、クッキリとした輪郭は現代的な音だと思う。一方ソニーのHAP-S1ではエッジが柔らかい。その分、解像度はOPPOより劣るものの、かわりに空気感が生まれた気もする。僕にはHAP-S1の音のほうが耳あたりが良かった。もっともHAP-S1はライン・ケーブルがモガミでそれも音質に影響しているのかなとも思う。モガミのライン・ケーブルだと柔らかくウォームな音になるので愛用しているのだ。
ハイレゾもアナログ・レコードやCDと変わらないオーディオ・ソースの一つだ。再生機器やアクセサリーによって音が変わる。『シカゴ・クリスマス』もオーディオ・ファイルが好きな音に追い込んで聴けばいいと思う。音楽がいいのだからその価値はあるだろう。



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