2025年のエリザベト・コンクールで2位を受賞した久末航の2枚目となるソロ・アルバムは、生誕70周年を迎えるフランスの大家デュサパンの作品集。久末の優れたテクニックと鋭い音色感覚が、作品の本質を穿つ。

スペインの俊英ガルシア・ガルシアの3枚目のアルバムは、作曲家として世に問うた1枚だ。コロナ禍に書かれた自作の「アブストラクト」と、敬愛するモンポウの「沈黙の音楽」を併録。“沈黙”を聴くアルバムだ。

バッハの平均律から12曲を選び、音楽的に重要な関連性やコントラストへの配慮も加えて独自の配列をなした選集。アンデルシェフスキの鋭い感受性が生み出す美しい響きにより、傑作として新たな世界が切り拓かれた。

札響退団後はソリストやカルテットなど活躍の場を広げている、三上の高度な技巧を要するものから甘い抒情を聴かせるものまで、多彩なソロ曲を集めている。ピアニストの川島基とのアンサンブルも絶妙だ。

国際的に高評価を得てきたギタリストの谷辺昌央による、パラグアイの作曲家バリオスを中心に、スカルラッティ、ソル、バッハを絡めた作品集。南米的情熱から古典的洗練までを自在に描き切った、聴き応え十分な一枚となった。

アムステルダムで開催された〈マーラー・フェスティバル2025〉でのライヴ録音で、クラウス・マケラとロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の初共演盤。壮大な作品であり、マーラーが生前に体験した最後の大成功作「千人の交響曲」を特別な熱と勢いで演奏。

コジマ録音からの14枚目の作品集は、2023年に行なわれた『2023「近藤譲の音楽」』のライヴ盤。1975年の「鳥楽器の役割」から2022年の作品まで5曲が選ばれている。初期から最近までの近藤の音への思考が読み取れる。

ヴェルトハイムはオランダ最初の女性作曲家のひとり。ドイツを拠点に活動するクリスト加藤尚子は、ユダヤ人作曲家の紹介に力を入れている。第二次大戦で忘れられていたが、クリスト加藤尚子によって見事に蘇った。

第1集の発売時に各誌で取り上げられ話題となった作品の続編。本作もまた大きな話題を呼び、好評を博すだろう。2022年から2024年にかけて委嘱、初演された作品で、前作とは作曲家のかぶりはなし。好奇心が膨らむ。

スイスの作曲家ラインハルトによって、ミニマリズムと偶然性を組み合わせた独特の世界が繰り広げられていく。ラインハルトが言う「方向性を持たない」音楽は、静かに、そして反復しながら微妙な変化を伴って閉じられる。

3台のピアノがモティーフを繰り返す中に笙が絡んでいく1曲目と、ピアノがアルペジオ、即興、和音と繰り返す中に笙が伴奏を添えていく2曲目。笙という楽器に魅せられたラインハルトによる微妙な音世界が広がる。

サルテリオはペルシャのサントゥール、中東欧のツィンバロムと同じ楽器で、フライシャンデールはその研究者で第一人者。18世紀イタリアで流行し、ここでは3種類の奏法を駆使して、優雅で多彩な音色を生み出している。

アルバム『lieues d'ombres』の続編。1990年から2024年に書かれた曲を収録している。ピアノ独奏曲を通して、フライの作曲スタイルの変遷とその本質を明らかにしている。ファン・ハウトは素晴らしいピアニストだ。

1953年にスイスで生まれた作曲家、フライによる1984年から2018年にかけて書かれた7曲をCD3枚にまとめている。ピアノのファン・ハウトは前作でフライの信頼を得て、これは2作目。素晴らしいアルバムの登場だ。

バッハとブーレーズをカップリングしたり、ゴルトベルク変奏曲で独特な響きを創り上げたりと、独自の感性でバッハを捉えている、フレイの刺激に満ちた一作だ。バッハを中心に、バロック作品を再構築している。

クラシックだけでなくロックやポップス、ダンスとのコラボなど、幅広く活躍する榎本玲奈のアルバム。ピアノソロだけでなく、弾き語りやトイ・ピアノなども披露した一枚で、坂本龍一やメレディス・モンクらの作品を収録している。

2019年よりデュオを結成し活動するピアニスト、楠山裕子とミゲルソーサによる連弾アルバム。バッハやガーシュウィンからラテン音楽まで、ミゲルソーサが編曲を手がけたオシャレな小品集に仕上がっている。

フランス人シャマユとノルウェー人アンスネスの共演が実現した、シューベルト最晩年の4手のための作品集。国は違えど共通の師を持つ二人が、息もぴたりと合って、美しい響きと抒情性を生み出している。聴く価値大だ。

新しい音楽の聴き方を模索するピアニスト、倉田莉奈の1stアルバム。過去5回にわたって開催されたコンサートのライヴ音源から編み直した一枚で、ラフマニノフやラヴェル、坂本龍一らのナンバーを取り上げている。

タイトルはベートーヴェンのピアノ・ソナタ第30番の作品番号。バッハからベートーヴェンを経てシューベルトに至る流れの中に位置づけ、時代を超えた対話をなし遂げている。もう一つのテーマはホ調。思索に富んだ一枚といえる。

“眠り”をテーマに、19世紀から21世紀にわたる16曲の子守歌を集めたコンセプト・アルバムで、ヒーリング・アルバムでもある。通常の癒し系アルバムにはない、無調の子守歌や21世紀の作までを収録。どんな夢を見せてくれるか、楽しみだ。

サン＝サーンスのヴァイオリンとチェロのソナタと、ピアノ三重奏曲を収録している。カピュソン、モロー、シャマユとフランスを代表するソリストたちが集結。あまりない組合せで、良いアルバムが出た。

牛田が浜松国際ピアノ・コンクールで2位入賞を果たした直後に行なわれた、10代最後の録音。あらためて聴くと、音の細部への彫琢、全体を捉える構成力など、既にある種の風格を備えていることが分かる。

金子の9年ぶり2枚目のリスト・アルバムで、ソナタは2度目となる。前回は華麗なテクニックを聴かせていたが、本作ではテクニックはもちろん、表現力の幅広さと奥深さを聴かせている。確実にスケールが大きくなった。

牛田智大が16歳最後の夏に録音した6thアルバム。ムソルグスキーの『展覧会の絵』を中心に、チャイコフスキーの『くるみ割り人形』から世界初録音となるヴャチェスラフ・グリャズノフ編曲による「花のワルツ」などが収録された“ロシア尽くし”の一作だ。