5月8日に80歳の誕生日を迎えたピアニスト、
キース・ジャレット(Keith Jarrett)。彼が、2016年7月9日にオーストリア・ウィーン ウィーン楽友協会 黄金の間で行なったソロ・ライヴの模様を収録するアルバム『ウィーン・コンサート 2016』を、5月30日(金)に発表します。この度、アルバムからの先行トラック「パート 5」が公開されています。
2017年以来ライヴ活動をしていないジャレットの最後となったヨーロッパ・ソロ・ツアーを録音したアルバムは、『
ミュンヘン 2016』『
ブダペスト・コンサート』『
ボルドー・コンサート』に続いてこれが4枚目です。
『ブレーメン/ローザンヌ』『ケルン・コンサート』から『ウィーン・コンサート』に至るまで、ジャレットの初期のソロ・コンサートを代表する長大な形式は、彼の演奏人生の最終段階に入ったこの時期には、短い、自己完結的で対照的な曲で構成されるショーに取って代わり、このウィーン楽友協会での公演もそうでした。「パート1」は、自然発生的な音の渦であり、渦を巻き、濃密で複雑。「パート2」は静寂の中で和音が浮かび上がり、ゆったりとした旋律が引き出され、リズムが前面に押し出された「パート3」では、ジャレットがそれぞれの手で別々のパターンを展開し、それを織り交ぜる能力が際立っています。
「パート4」は讃美歌的で、栄光の雲をたなびかせ、「パート5」はエーテルからの純粋なバラード。「パート6」は叙情的な衝動を屈折させてより抽象的にし、「パート7」はジャレットのヨーロピアン・カルテットのために書き直されたような優しい曲です。「パート8」はブルースで基本に立ち返り、「パート9」はゴスペルとカントリーのヒントを含み、ジャレットの音楽的ヴィジョンがいかに包括的であったかを思い起こさせます。アンコールに選ばれた「虹の彼方に」は、『ラ・スカラ』『ア・マルティテュード・オブ・エンジェルズ』『ミュンヘン 2016』で聴かれたすばらしいヴァージョンとは少し異なるフレージングで、ジャレットはまたもや類まれな演奏を締めくくっています。
ライヴ演奏は行っていないものの、ジャレットのソロ音楽に対する世間の関心は依然として高く、1976年にプロデューサーのマンフレート・アイヒャーを伴って来日し行われたソロ・コンサート全8公演のうちの京都(京都会館ホール)、大阪(サンケイホール)、名古屋(愛知文化講堂)、東京(中野サンプラザ)、札幌(厚生年金ホール)の5公演を完全記録した名盤6枚組『
サンベア・コンサート』が、5月2日にはじめてSACDで発売されたばかり。全国のCDショップではキース・ジャレット80歳記念プレゼント・キャンペーンを実施中です。
Photo by Roberto Masotti