安藤裕子   2010/09/17掲載
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 2004年9月には最初の集大成とでも言うべき1stフル・アルバム『Middle Tempo Magic』をリリース。さらにこの後も「あなたと私にできる事」「Lost child.」、そして、スマッシュ・ヒットを記録した「さみしがり屋の言葉達」と優れた楽曲を発表していく。


 「<ドラマチックレコード>から繋がってるのかもしれないけど、私のなかから漏れ出るものだけではなくて、“他人が見る自分で遊ぶ”ってことを覚えたんですよね。もちろん、そこには自分の感情がともなってるんですけど、あるスタイルに自分を当てはめて遊ぶというか。<さみしがり屋の言葉達>は、自分のなかの“松本隆っぽさ”なんですよね。メロディの語尾にしても、あえてユーミンっぽくしてみたり。“さみしがり屋”“で私のことを知ってくれた人がライヴに来たら、“え? 何か違う!”って思うかもしれない(笑)」 (安藤裕子)


 また、山本隆二との共作による「のうぜんかつら(リプライズ)」がCM(月桂冠 定番酒つき)に起用され、安藤裕子の存在はさらに広いフィールドへ広がっていくことになる。そして、2ndアルバム『Merry Andrew』がオリコン・チャート10位にランクイン。スネオヘアー大橋卓弥スキマスイッチ)といったアーティストが彼女の作品をフェイバリットに挙げるなど、音楽的な評価も確かなものとなった。


 「『Merry Andrew』は学年でいうと“中2”なんですよね、私のなかでは。学校にも慣れて、部活でも“先輩づら”できたり、レギュラーになって試合に出たりするようになって。やれることの幅が広がってくる、っていうのかな。たとえば<ニラカイナリィリヒ>という曲は、あるコード進行のループがあって、そのうえにメロディを乗せるっていう作り方なんですよね。1stアルバムはお互いに気を遣っていたし、その結果、バランスの取れたものになったと思っていて。2ndはもっと自由にやりたいことをやってるイメージですよね」 (安藤裕子)


 ここで少し、安藤裕子の“映像”についても記しておきたい。彼女はデビュー当初から、ミュージック・ビデオ/CDのアート・ワークなどにおいて、際立ったビジュアル・センスを示してきた。1stミニ・アルバムのタイトル曲「サリー」のミュージック・ビデオを手がけた堤幸彦監督は、「サリー」の制作時のエピソード、そして、映像における彼女の才能について、こんなふうに語っている。


 「(「サリー」のミュージック・ビデオに関して)とにかく、彼女の世界を何とか映像にしたい。それは彼女にしか書けない、描けない世界なので、っていう柱が一つ。それから、音源のオケをずっと聴いていると、すごく思い入れがあるというか、愛があるというか、とにかくすばらしい演奏だったんですね。その演奏を映像化したい、と。その結果、バンド映像に加えて、ちょっとシャガールのようなリアル感を持った彼女の文字とかも含めて、いろんな素描をコラージュしていく作品になりましたね。最後は彼女の力を借りて、本当に文字を書いてもらったりとか、ここにちょっと落書きして、みたいなこともあって。彼女が音楽をやってなかったら、もしかしたら、大女優になってたかもしれないって思うんです。もしくはポップ・カルチャーを牽引するような人になってたかもしれないし。あとは画家とか詩人とか。そういうものが安藤裕子の中にちゃんとあって、それをアウトプットするのが歌だっていうことのような気がしますね。だからステージとか観ていても、なんていうか……ポップスの範疇の人じゃないですよね。もしかしたらある日突然、家にこもって絵を描き始めたりするような感じもあるし。その精神性にはほんとに憧れますね」 (堤氏)


 2ndアルバム『Merry Andrew』のヒットによって一般的な知名度を得たあと、彼女のクリエイティビティは実験的ともいえる色合いを帯びていく。「私たちにとってのスタンダードをもう一度、ちゃんと作っておきたかった」(安藤裕子)と言う「TEXAS」、高度に洗練されたアレンジと奥深いメッセージ性が1つになった「The Still Steel Down」を含むアルバム『shabon songs』(2007年2月リリース)は、安藤裕子の奔放な感性がたっぷりと描かれた作品となった。


 「『shabon songs』を学年でいうと、高1くらいかな。夜遊びを覚えて、クラブ通いも始まって、ちょっと無謀なこともやっちゃうっていう(笑)。3人でいろんなことを実験してた気がするんですよ。“酸素と硫酸を混ぜて、風船に入れよう! バーン!!”みたいな。サウンドもゴリッとした手触りになってきたし、面白い変化があったアルバムだと思いますね。私、このアルバムに入ってる<絵になるお話>がすごい好きなんですよ。全体的にゴリッとしたサウンドになったから、“もうちょっとかわいい曲がほしい”って思って作ったのが<絵になるお話>なんです。もともとはフォーキーで根暗な人間なのに、自分のことを“ファンシーでかわいい音楽をやってる人”って思ってるところがあったので(笑)」 (安藤裕子)


 さらに本作の特徴として、「佐野康夫さん(ds)に参加してもらったことも、エポックメイキングな出来事だったと思います」と、安藤氏は指摘する。それまでにも東京スカパラダイスオーケストラのメンバーを始め、数多くの優れたミュージシャン(山本タカシ/g、沖山優司/b、TOKIE/b、鈴木正人/b、沼澤尚/dsなど)が彼女の作品に参加してきたが、佐野氏のドラムは安藤裕子の音楽に対し、まったく新しいビート感を与えたというのだ。


 「それまでもミュージシャンの方々の演奏によって楽曲が変わっていくことはあったんですけど、佐野さんのドラムはホントに躍動的だったんですよね。<パラレル>(2008年3月リリース)も、そうで。レコーディングのとき、佐野さんのカウントが始まった瞬間に“ゾワッ”として、“ガッ”と目が見開くような感覚があったんです。最初はもっと地味なイメージだったんですけど、より疾走感のある曲になったんですよね」 (安藤裕子)



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