【RECORD STORE DAY 2014】JET SET下北沢店、中村義響氏インタビュー

Chabe   2014/04/18掲載
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2.JET SET下北沢店・中村義響氏インタビュー
 “レコードショップに行き、CDやアナログ・レコードを手にする面白さや音楽の楽しさを共有する”ことを目的に、4月の第3土曜日(2014年は4月19日)に世界同日開催されるRECORD STORE DAY。年々盛り上がりを見せ、2014年は93店舗が参加、国内だけで43作もの限定タイトルがリリースされるなど、音楽好きにとっては見逃せないイベントとなっています。今年は企画から参加した限定アイテム6タイトルをリリースするほか、インストアイベントの開催など、RECORD STORE DAYにかかせない存在となっているJET SET下北沢店の店長、中村義響さんにお話を伺いました。
――近年、アナログ・レコードに関してはポジティヴな話題をよく耳にしますが、実際に働いていてそういう部分は感じますか?
「感じますね。お店によって違うのかなと思うんですけど、2006〜2008年くらいにレコード屋さんの業界にも底の時期っていうのはあって。有名店や老舗が次々に閉店したり。それが下げ止まったなっていうのが2009年くらいかな」
――働いていて直に感じる部分ですよね。
「リアルに数字で出てきますからね。あ、落ちなくはなったな、っていう。それがここ何年かは徐々に上向いてきていますね。とくにJET SETのアナログ制作部門も貢献できた部分っていうのがあると思うんですけど、国内アーティストのレコードがまた出るようになってきたのは大きいかもしれないです。底の時期っていうのは、国内アーティストのアナログ・リリースが本当に壊滅的な状態だったんですけど」
――リリースの形態も、近年では“ダウンロードコード付き”というのが主流になってきました。データで手に入れることができる=CDに近い利便性があれば、ジャケットが大きくてコレクター的な要素もあるアナログ・レコードを買いやすくなりますよね。
「そういうものもきっかけになったと思うんですよね。プレーヤーを持ってなくても聴けるわけですから。とくにJET SETだと、〈下北沢インディーファンクラブ〉に出演していたような新しい世代のアーティストがレコードを頑張って作って、そのファンの若い子たちが買うっていうサイクルができあがったっていうのは大きいかもしれないですね。最近だと、メジャーなJ-POPのタイトルもまたポツポツと出るようになってきているので、新しいリスナーの入り口は増える傾向が続いている気はします」
――そんななかでRECORD STORE DAYが開催されるようになって。JETSETではいつから参加しているんですか?
「JET SETでは2011年からインストア・イベントを企画してます。その年はまだ、日本のアーティストがRECORD STORE DAYに作品をリリースすることはなかったと思います」
――その頃はまわりの反応はどうでした?
「最初は……そんなのあるんだって感じですよね(笑)。僕ら自身もあやかったというか、輸入盤のRSD限定タイトルが多く出始めてた時期だったので、それをひとつのコーナーにどさっと並べて。どちらかというと、ちょっとした賑やかし的な感じで始めたんです。翌年の2012年からはガッチリ取り組みはじめて、その年からは日本人アーティストのアイテムも少し出ていたと思います」
――2013年以降、参加店舗やアーティストが一気に増えましたよね。
「そうですね。とくに国内アーティストのタイトル数の増えかたはすごいものがあると思います」
――今年もインストア・イベントを開催されるそうですが?
「下北沢店では初めてアコースティック・ライヴもいれるようにして、DJと合わせてガッツリやります」
――JETSETさんでは今回、6タイトルを流通されますね。いずれも注目のタイトルだと思うんですけど、特にきゃりーぱみゅぱみゅ「にんじゃりばんばん」や坂本慎太郎 / メイヤー・ホーソーン「WINE GLASS WOMAN / IN A PHANTOM MOOD」なんかは限定アイテム全体を見ても大きいタイトルのうちのひとつだと思います。
「きゃりーだったり坂本さんだったり、人気アーティストが参加してもらえると、一気にイベントとしての知名度も拡がるのが嬉しいですよね」
――それとスカートの『ひみつ』はジャケットを新たに描き直したりしていて。“こだわってる”感が強いのも魅力的ですよね。
「スカートに関しては、アーティスト本人の希望でジャケットの印刷の仕方が“A式”っていうアメリカ式のノリの貼り方を採用してるんです。それはもう今は海外だとやってるところが少なくて、日本の工場でしかやっていない」
スカート「ひみつ」
――アメリカ式なんだけども日本でしかやっていないという(笑)。
「いまアーティストがレコードを作るモチベーションって、お金儲けというところでいうとすごく儲かるわけではないので、“自分たちが好きで作る”っていう意識が前提なんですよね。だから、そういう意味ではみなさんこだわります。きゃりーなんかにしても、アナログのマーケットはCDや配信と比べたらぜんぜん小さいわけで、遊びというか、おもしろいことやりたいっていう部分でアーティスト側がのっかってくれないと進まない企画なんですよ」
――やる必要があるかないか、って言ったらないわけですもんね。
「そう、たぶん商業ベースでいったら余計なことなんです。でもその作品を目当てにレコード屋さんにたくさんのファンが来てくれるわけですから、僕らみたいな大きな資本の入っていない独立経営のレコードショップにとってはすごくありがたいことで」
――やっぱり参加アーティストが増えたことで全然変わりましたか?
「変わりました。去年とかは、こんなに売れたのか! って驚くぐらい。オープンの時間を普段より3時間早くして午前中から空けたんですけど、その時点で行列ができていて」
――それはすごいですね! 限定アイテムに関しては直接お店に行かなきゃ手に入らないわけですもんね。(※RSDの限定アイテムについては原則的に店頭販売のみ。発売から一定期間を経過するまでは、web / 予約販売は行なわない方針になっている。)
「そうですね。おかげさまでJET SETはレコード屋としては名前を知っていただいているほうなので、とくに反響が大きいっていうのはあるかもしれないですけど、もしかしたら地方の町の小さなレコード屋さんでも、同じように何人かがRSDアイテムを求めて買いに行ってくれているかもしれない。それは小さいお店にとってすごく大きなことで」
――そうですよね。
「そういう意味では、だんだんRECORD STORE DAYの趣旨に沿うような循環が生まれてきたのかなっていう」
――“レコード・ショップにみんなで行きましょう”っていうのが最大の目的ですもんね。それをきっかけにそれからも通ってくれたりしたら嬉しいですよね。
「そうですね。それが一番かなって。こうやって取材してもらえる機会も去年くらいから多くなってきて、レコードが元気なように見えてるっていうのは嬉しいです」
――アナログっておもしろい! って思ってる人や興味を持っている人は、今たくさんいると思いますよ。
「アナログ盤の市場に関していうと、国内よりも先に海外が調子よくなってきていたんですけれど、やっぱり海外作品の輸入販売をやっているだけでは、なかなか気づいてもらえなかった部分もあって。それはメディアとかに対してそこまで訴求力のあるニュースじゃないというか。日本人のアーティストがレコードを作り始めると、やっぱりメディアの人たちも反応してくれて」
――唐突な質問ですけど、アナログの魅力ってなんだと思いますか?
「それは、それぞれ答えがぜんぜん違うと思うので(笑)。すごく個人的な回答ですけど、純粋に嗜好品としての完成度ですね。ちょっと誤解されるかもしれないですけれど、もはや中身の音楽に興味があるというより、レコードが好きなんです。レコードという形になっていないと愛せないっていう、一種の“病気”みたいなところもあるので」
――フィジカルとして残るものに対しての欲求というか。
「そうですね。これからデータ・リリースが主流になればなるほど、アナログの存在感が増していくっていうのは必然だな、と思います」
――最後に、こういう風に今年のRECORD STORE DAYを楽しんでほしいなっていうのがあればお願いします
「今年は本当に魅力的なタイトルがたくさん出るので、とにかく最寄のレコード屋さんに足を運んでみてもらえたら幸いですね。JET SETでは京都店、下北沢店でインストア・イベントも開催するのでちょっと遠出して来ていただくのも大歓迎です!」
取材・文/木村健太(2014年4月)
JET SET下北沢店インストアイベント

11:00 通常営業
14:30 【DJ】松田"chabe"岳二
15:30 【LIVE】Gotch
16:00 【LIVE】スカート
16:30 通常営業
17:30 【DJ】SEX山口
18:30 【LIVE】曽我部恵一
19:00 【LIVE】柴田聡子
19:30 通常営業
20:00 【DJ】D.L. aka DJ Bobo James
21:00 【DJ】MURO

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