【特集】冨田勲×小室哲哉 シンセサイザーの二大巨頭、奇跡の邂逅 <HARAJUKU PERFORMANCE+DOMMUNE>をレポート

冨田勲   2012/01/06掲載
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 昨年末にラフォーレミュージアム原宿で開催された<HARAJUKU PERFORMANCE + DOMMUNE>。12月23日に行なわれた冨田勲小室哲哉によるトーク&ライヴ・イベントのレポートをお送りする。




 前半は冨田勲と小室哲哉によるトーク・ショー「冨田勲 / PLANET ZERO〜更新される音像太陽系」(司会は松山晋也)。初対面となる両氏。小室は11歳の時に学校を休んで行った大阪万博(1970年)で冨田の音に触れ、“宇宙が見えた”ことががきっかけで音楽家を目指した旨を伝えると、そこからトークは一気に冨田の歴史を遡っていくことに――。
 戦後、食糧難が続いてる頃に作ったというNHK『きょうの料理』のテーマ曲や、リヴァーブ(残響効果を生み出すエフェクト)がなかったのでビルの非常階段を使って録音した『新日本紀行』の楽曲など、当時のエピソードを交えながら解説していく。その内容もさることながら、冨田のざっくばらんな喋りが面白い。自身のデビュー作『月の光』(74年)について「すげーことやってると思うわけですよ」と言い放ち、会場をおおいに沸かせた。
 数々のエピソードの中でも、冨田の音楽的ルーツである北京・天壇公園にある“回音壁”の解説が印象的で、そこで不思議な反響音を体験したことが、のちの“サウンドクラウド”(世界各地で開催された立体音響による野外イベント)のアイディアに繋がっていることを、実際に映像と本人の言葉で説明したのは、とても意義あることだったと思う。
 小室は自身のシンセサイザーとの出会いなども話したが、基本的にはファン目線で冨田の聞き手側に回ることが多かった。小室がアニメ『ジャングル大帝』のオープニング・テーマの影響を受け、冨田を意識して作ったというTM NETWORKのインストゥルメンタル曲「Dawn Valley」(87年、『humansystem』収録)を冨田本人に聴かせるシーンなども印象的だった。
 続いて冨田の最新アルバムである『PLANET ZERO - freedommune<zero>session with Dawn Chorus』を宇宙の映像付きで鑑賞する視聴会。太陽の黒点から出る電波を浅間山麓で待ち受け、それを音に変換した“ドーン・コーラス”の小鳥のさえずりのような響き(宇川直宏が言うところの“宇宙と地球のセッションの音”)が脳を刺激する。音源はCDで聴けるものだが、スクリーンで宇宙の映像を眺めながら、アンビエントとクラシックと電子音楽が混交した冨田の音楽を大音量で聴くというのは、不思議なトリップ感を味わえる貴重な体験だった。
 後半は小室哲哉ソロ・ライヴ「HARAJUKU PERFORMANCE + DOMMUNE LIVE PLUS!!!!! #3 -DEDICATED TO ISAO TOMITA-」。iPhoneから「ハレルヤ」を流した直後にけたたましいビートが鳴り、ライヴはスタート。ここから観客はスタンディングに。パフォーマンスは昨年6月のDOMMUNEで行なわれたライヴをベースに、さらにアップデートさせたもので、十数台のシンセを周囲にぐるりと並べ、シーケンスを走らせてその上で即興的にさまざまな音を重ねていくスタイル。
 冨田にインスパイアされたセットということで、途中に「Jupiter」の演奏を挟みながら、怒涛のエレキ・ギター・ソロ(鍵盤で!)へと突入。ここから予期せぬアレンジでTM NETWORK「Self Control」globe「Love again」を繰り出し、圧巻のドラム・ソロへ(これももちろん鍵盤で)。そのフィジカルなプレイに観衆は文字通り熱狂した。その後もH Jungle with t「WOW WAR TONIGHT〜時には起こせよムーヴメント〜」やglobe「Many Classic Moments」のフレーズを盛り込みながらのシンセ・プレイはヒートアップ。白熱するあまり、Nord Leadを抱えて演奏し始めた時には驚嘆するほかなかった。ラストはビートルズ「Let It Be」からクリスマス直前ということもあり「きよしこのよる」へとシームレスに繋いで厳かに終了。有無を言わさないプレイヤビリティと構成力を見せつけた。
 パフォーマンスを観ていた冨田は小室の音楽を“スピード感と生命力、哀愁がある”と評し、新旧シンセサイザー奏者のニ大巨頭による奇跡的な邂逅は幕を下ろした。


取材・文 / 南波一海(2011年12月)
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