ガーンといって『ミュージックステーション』ですよ――結成20周年を迎えるOi-SKALL MATES、10年ぶりとなる4thアルバムをリリース

Oi-SKALL MATES   2015/12/25掲載
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 96年の結成から、2016年で20周年を迎えるOi-SKALL MATES。長きにわたってジャパニーズ・スカ・シーンの筆頭格としてライヴハウスを中心に絶大な支持を得つつ、近年ではTV番組から野球場までさまざまな場所でその音楽を耳にすることも急増中の彼らが、12月25日(水)にオリジナル作としては10年ぶり(!)となるアルバム『ADULTIX HANGOVERZ』をリリース。2016年5月8日(日)には東京・新宿LOFTにてバンド結成史上ほとんど例がないというワンマンライヴ&アルタ前でのフリーライヴ開催も発表されるなどアニバーサリーイヤーへの期待が高まるなか、フロントマンとしてバンドを牽引するワタルバスターに話を伺いました。
――まずは結成20周年、おめでとうございます!
「来年だったのかほんとは今年だったのか……まったくね。この日で20周年、とかそういう感じではないんだけど」
――『ADULTIX HANGOVERZ』はオリジナル・アルバムとしては10年ぶりということですけど、2010年にはミニ・アルバム2枚(『Evil Taste Six Pint』『Six Pint Evil Taste』)をまとめたアルバム『EVIL TASTE 12 PINT』を出したり、〈SKAViLLE JAPAN〉には毎年出演していたりとトピックがいろいろあったので、むしろそんなに経っていたのかという印象でした。
「僕も同じ。普通にライヴやって、たまにレコード出したり、コンピに入ったりしてたから。メンバーチェンジがあったり脱退があったり、ライヴのほうも忙しくて曲作りもなかなかできなかったしね。苦情は何件かきてたけど、曲作ろうと思って作ってるわけじゃないもんで、あっという間の10年でございました」
――そんな苦情の声も受け、20周年だしアルバムを作ろうかなっていう感じですか?
「まぁ曲も貯まったし、もういいかなぁと思ったら、たまたま来年20周年だって話になって。20周年のためになんか作ろう、みたいなノリではないかな」
――単純に20年という時間の経過ってすごく大きいと思いますが、実際に曲を作るにあたってかわった点はありますか?
「やっぱみんな覚えが悪くなったからね(笑)。でっかいMTRに僕が全員のパートを入れて、CDに焼いて、みんなに聴かせるっていうスタイルでやってる。とくに今回のアルバムはそうかな。あんまりスタジオにみんなが集まるっていうことがないから、イントロからみんなで作ってってやってると進まなくなっちゃうから」
――アルバムとおしてのテーマみたいなものって決めたりはしました?
「テーマは、ないねぇ……いっつもないんだよこれが」
――でも、収録するにあたってストックのなかから毛色に応じて選曲したりしないんですか?
「いや、今回はアルバムの曲順どおりに作っていった。でも、タイトル自体は10年くらい前からあったんだよ」
――え!“ADULTIX HANGOVERZ”っていう単語だけ温めてたってことですか?
「そうそう、これをもう次のアルバムのタイトルにしようって。“ADULTIX”っていうのは造語なんだけど、“ADULT”に“IX”がつくことで、なんか中途半端な感じになるというか。その中途半端っていうのはダメなイメージじゃなくて、僕にとっては“粋”だとかそういうもので。みんな、ある意味ではそういう部分を持ってるんじゃないかなって」
――遊びの部分というか、意図的に“字余り”を作り出したような。
「まぁ響きもいいしね。“ADULT”だけだと“VIDEO”ってつけなきゃいけないような気持ちになるし」
――キーになる言葉だけを先に作るっておもしろいですね。
「そっからやる気がでるんだよね。とりあえず決まったからやるか!みたいな(笑)」
――いきなり冒頭がタイトル・チューンの「ADULTIX HANGOVERZ」なわけですけど、これのトースティングは本当に二日酔いの状態で録音したとか。
「そうそう。二日酔いの状態で録って、そのままミックスダウンに入って、家に帰って聴いてみたら“やっぱ違うな”ってなって……(担当者に向かって)すみませんでしたあの時は」
――「SKANKIN' CLASS ERO」、「BOREDOM」なんかはもうライヴでもおなじみの曲ですよね。
「やっぱりライヴでやらんとね。ライヴでやって慣れてる曲とレコーディング間際に作られた曲って、みんなの演奏の仕方が違うから。ライヴでやっていくなかで、アレンジもああしたほうがいいこうしたほうがいいって変わっていくしね」
――今回のアルバムに限らず、パンクだったりブリティッシュ・ポップだったりラテンだったり、いろんなアプローチをしながらもすべての曲に“オイスカっぽさ”があって。しかも、その“っぽさ”っていうのは多くの人が共有できるものと思うんです。その最大の要因はなんだと思いますか?
「なんだろう……でも、みんなのイメージしてくれてるものがそのまま答えなんじゃないかなと思う」
――たとえば曲に関して、“こういうことはしない”っていうようなルールを決めたりしているわけではないんですよね。
「それはしてないね。日本語の曲もあるし、英語の曲もあるし。たとえばTHE SPECIALSMADNESSが好きで、レゲエも好きになって、そこからまた新しい80〜90年代のダンスホールを聴くようになって……っていうゴチャゴチャした部分を、自分なりに消化したものが自然と出てるとしか言いようがないかな」
――ワタルさんが作ったデモの段階で、その成分がにじみ出てるってことなんですかね。
「もうデモの段階で80%くらいは作ってるからね。ホーンは吹けへんからオモチャのCASIOのオルガンで音色を変えて入れてるけど。……まぁとりあえず20年やっても、演奏力はまったく上がってないのは確か(笑)」
――バンドのルーツとしては、いまも出たTHE SPECIALSやMADNESS、それにTHE SKA FLAMESとかBAD MANNERSっていうバンドが核にはなっていると思うんですけど、ワタルさん個人としてはどうなんでしょうか?
「僕はもうRCサクセションとか……でも、そのまえに歌謡曲もあったな。昔の歌謡曲って、(山口)百恵ちゃんとか美空ひばりさんもそうだけど、いろんな曲があるじゃない。ロックっぽいものもバラードっぽいものも。そこに音楽のおもしろさっていうのがすごくあって。だから、“おもしろい”とか“いい”とか思ったものはぜんぶ取り入れちゃう」
――2004年にライヴ会場限定で発売された7inch「恋は突然に / サヨナラ」なんかは、歌謡曲の影響が強く出ていますよね。
「そうだね。日本語にしちゃうと、どうもそっちになっちゃうんだよね」
――あの時は歌謡曲っぽいものに寄せて作ったというわけではなく、期せずして、という感じなんですか?
「浮かんだメロディに日本語を乗っけたら自然とああなったって感じで。日本語を乗せるっていうのは難しいよね。とくにロックっぽく、スカっぽくっていうアプローチに関してはすごく難しい」
――今回もCDと同日にアナログでもリリースするわけですけど、Oi-SKALL MATESは初期から一貫してアナログでのリリースも続けてますよね。
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ADULTIX HANGOVERZ(限定LP / PX-304)
「僕らの先輩のスカバンドっていうのは、ほとんどアナログの7inchを切ってたから。しかも、宣伝なしでいつのまにか出てる。ああいうのに影響を受けたかな。スカバンドはアナログだろうっていう」
――7inchシングルは、いつも争奪戦になってたり。
「でも、それこそさっきの〈恋は突然に〉なんていうのは強気に2000枚も刷ったから、全部を売り切るのに5年かかったからね。一時バンドバブルというか、ブームになった時期があったじゃない。そのときのお金で作ったら全部なくなっちゃって、おやおやおや?って(笑)」
――先ほどの先輩バンドの話じゃないですが、会場限定で売られ続けていたことが知られていなかったのか、中古でプレミア化してたりしてましたからね。
「そうなんだよね。初めて売るときの野音で1000枚くらい持っていったんだけど、300枚くらいしか売れなくて。段ボール抱えて持ち帰ってきて。大貫憲章さんにその話をしたら、“バカヤロー300枚売れたらいいほうだよ!”って言われたけど」
――でも、心待ちにしている人は多くいると思います。
「7inchっていいよね。すごく欲しくなるんだよ。60〜70年代のジャマイカン・スカとかだと、アルバム・ヴァージョンと違ったもので出したりするじゃない。あれがいいんだと思う。シングルでしかできないなにかを閉じ込めるというか」
――アナログに関することもそうですけど、今作は1stアルバム『12-MATES SKALL NIGHTER WOO.....』以来となる缶ケース仕様をライヴ限定で発売したり、リリースに関してはいつもいろいろと仕掛けがありますよね。そのひとつとして、これまでのアルバムがほとんどがクリスマスのリリースですが、これはなにか狙いが?
「(即答で)いや、クリスマス・プレゼントになるかなって(笑)」
――単純にそこなんですか!
「それぐらいじゃないとみんな金使わないでしょ! 1stのときから狙って出してましたよ。今回のレコーディングが終わって昔の自分たちのインタビューを読み返してみたら、なんかそんなこと言ってたし。しかも、そのときのインタビューで2nd(『LUVI'N SIDE NEW STOMPER』)もクリスマスに出しますって言っちゃったもんだからもう決まっちゃって。でも、そういうふうに時期が決まってるほうがいい気がするけどね」
――たしかにイメージはしやすいですよね。基本的には、もっとポンポンとリリースできたらいいな、という思いはあるんですか?
「メジャーとかに行ってですね、高いお金で雇ってくれて、年間1枚出しなよって言われたらがんばりますよ。でも、そのために作る音楽ってなんか……ねぇ? 汗水たらして作った曲のほうがいいじゃん。まぁ悲しき労働者の発言ですけど」
――今回もワーキング・ソングである「FREEDOM FREEDOM」が入ってますが、われわれ労働者たちの力強い味方ではあるという認識は持っています。
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「でも少しぐらい金持ちが聴いてくれないと」
――バンドがまわっていかないですからね(笑)。
「貧乏人ばっかだと困っちゃうからね」
――ワタルさんの自主レーベルである「Watax」からのリリースになったことにはなにか理由があったんですか?
「いつもお世話になってるユニオンのDIWPHALANXでもよかったんだけど……まぁ博打ですよ。でも、今回のアルバムで新たなお客さんを獲得できればいいな」
――全方位的にアピールできるような内容だと思います。
「なんならそれでガーンといって、『ミュージックステーション』ですよ。タモさんに“はい、次はオイスカでーす”って」
――すさまじい絵面ですね(笑)。
「でも、こないだはケンくん(Ken Yokoyama)も出てたしね。ああいうアタマに立ってる人がきっかけになって、いろんな人が塗り替えていく。おもしろいじゃないですか。ああいう音楽番組ってもうほとんどないのに、今はその少ない椅子を似たような人たちがまわしてる状況なわけで、そのなかにひとつ枠を作ってくれてもいいような気がするけどね。そういうの好きな人がテレ朝に入ってくれるといいんだけど」
――でも、千葉ロッテマリーンズの応援(※応援歌として「Bring On Nutty Stomper fun」や「SkinHead Runnin'」が使用された)から火がついて、いまや高校野球の甲子園でOi-SKALL MATESの音楽が流れているわけじゃないですか。
「不思議だよね。なんでおれに一銭も入らないんだろう(笑)。嬉しいんだけどね」
――親和性としてはサッカーのほうがあるはずの音楽ですけどね。
「ジェフ千葉も使ってたみたいだけどね。だから次はバレーボール……はダメか。そういえばあれだよ、『モヤモヤさまぁ〜ず2』見た?」
――見ました!大活躍(※11月29日放送「西荻窪」の回の冒頭で「NISHIOGI TOKYO」が流れたほか、ナレーションには“Oi-SKALL MATES的なモヤモヤ”というフレーズも登場)でしたね。
「……やっと来たよ。おれがまだ西荻に住んでる頃にも西荻の回があったんだけど、そのときはなんにもかからなかったんだよね。しかも今回はOi-SKALL MATESっていう言葉も出たからね」
――それこそ、“なかの人”に潜んでるんですよね。
「そういうやつのおかげだよ。テレ東だテレ東!」
――甲子園もそうですけど、少なくとも音楽自体はお茶の間に確実に浸透しているはずですからね。なにかのきっかけで爆発的なヒットを記録する可能性も……。
「えぇ。もうそのつもりで。……っていつも言うんですけどね。世の中が許してくれない」
――金曜8時に見られることを願っております。
「たぶんモザイクかかってるけどね」
――念願であるテレビ出演以外にも、20周年イヤーにはいろんな仕掛けの期待をして待っていていいんでしょうか?
「内緒だけどね。新しいようで、懐かしいような感じのやり方をしようかなって。まだハッキリとは決まってないけど、いろいろ企んでますよ」
取材・文 / 木村健太(2015年12月)
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