「自分がインスピレーションを受けた瞬間を誰かと共有したいという気持が根底にあるんでしょうね」――凛として時雨のTKが初のソロ作品を発表

TK(凛として時雨)   2011/04/22掲載
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 凛として時雨の世界観を担うギター&ヴォーカリストTKが初のソロ作品『film A moment』を発表。スコットランド、アイルランドを一人旅した際に撮りためてきた写真と8mm映像をそれぞれフォト・ブック、DVDという形で作品化した今作。表現者としての自らの核心を多面的かつパーソナルな形で浮かび上がらせることとなった今作についてTKに話を訊いた。


 ――そもそも今回の作品はどのようなところから制作がスタートしたんですか。
 TK(以下、同)「以前、(メジャー・デビューのタイミングで)『moment A rhythm』という、フォトブックとCDが一体になった作品をリリースしたことがあったんですけど、そこからさらに一歩進めて、音と映像で何かを表現したいなと思うようになったんです。それを形にするために、いろいろトライしていたんですけど、なかなかうまくいかなくて。あれよあれよという間に2年くらい時間が経ってしまって。その頃、8mmカメラの存在に興味を持ったんです。それでスコットランドに旅行に行く時に、知人のカメラマンから8mmカメラを借りて。普段、写真もフィルムで撮影してるし、その延長線上で映像を刻むことができるかなって」
 ――ちなみに写真はいつぐらいから撮りはじめたんですか。
「小学校の頃に、おもちゃみたいなパノラマカメラでパシャパシャ写真を撮ったのが最初です。ただパノラマカメラって現像代が高かったみたいで、よく母親に怒られて……(笑)。あとは、それこそ修学旅行とか海外旅行に行くときにインスタント・カメラを持っていってたくらいですね。なので、特別カメラがすごい好きとかっていうわけではなかったです」




 ――今みたいに撮るようになったのは?
「中学・高校くらいですかね。その頃からデジカメが普及しはじめて。大学生のとき初めてイギリスに行ったんですけど、そのときにデジタル・カメラを持っていって、たくさん写真を撮ったのが今に繋がるきっかけになっていると思います」
 ――写真は独学で。
「そうですね。独学も何もシャッターを押すだけっていう(笑)。それは今も変わらないです」
 ――8mmでの撮影はいかがでしたか。
「基本的には写真と一緒の感覚で、自分が気になった風景があれば撮影するっていう。基本的な操作しか教わっていなかったので、“本当に映ってるのかな……”とか最後まで不安だったんですけど。でも帰ってきてから、現像された映像を観て、何かを“見つけた”感じがして」
 ――TKさんがシャッターを切ろうと思う時って、どういう瞬間なんですか。
from 『film A moment』 photo book
「音楽を作るときに似ているんですけど、“この瞬間を今、切り取っておかなくちゃ”って思うんです。たとえばレコーディングでギターを弾いてるとき、いいフレーズを思いついた瞬間、忘れないうちに録音するようにしてるんですけど、写真や映像に関してもそれは同じで。虚無感なのか儚さなのか、うまく言えないんですけど、目の前にある風景が、数秒後には消えてしまうような気がして。自分がインスピレーションを受けた瞬間を誰かと共有したいという気持がきっと根底にあるんでしょうね」
 ――全体的にすごくクワイエットで寂寥感漂う雰囲気が漂っていて、1枚1枚の写真からもTKさんの透徹した美学のようなものが伝わってきます。
「撮影してる間は特に意識してないんですけど、今回は現像された写真をセレクトしてるときに、自分自身いろんなことに気づかされました。基本的には風景を写した写真が多いんですけど、その写真の向こう側に、どこか自分がいるような感覚を覚えて。結局、どの写真も自分のフィルターを通してるからかもしれないですけど」
 ――結果としてすごくパーソナルな印象の強い作品に仕上がっていますよね。
「そうですね。『moment A rhythm』っていうプロダクトはもうちょっと抽象的で、写真も含めて閉じていたり、尖っているようなイメージがあるんですけど、今回はかなり自分の内面が反映されていると思うので。ある意味、自分に近すぎて、まだ落ち着いて接することができないんです(笑)」
 ――淡々と展開しつつ、くすりとさせられるような描写がさりげなく織り交ぜられていたり、文章からもTKさんの知られざる一面が伝わってきます。
「僕は、普段日記も書かないしブログもやってないんですけど、文章を書くことでいろいろ気付かされることも多くて。歌詞よりもさらに丸裸というか、文章を書く作業を通じて、いつもより素直に自分と向き合えたような気がします。ちょっとした変な事を書いてしまうのは……たぶん性分なんでしょうね(笑)」


from 『film A moment』 photo book
 ――DVDには書き下ろしの楽曲が収録されていて、「white silence」には湯川潮音さん、「film A moment」には54-71のドラマーBOBOさんが参加しています。
「自分の作品なのに、いい意味で掴めない部分があるというか。それがすごく面白くて。普段、僕は(ピエール)中野くんのドラムと345のベースが入ってくることを想定して曲を書いてるんですけど、当然、潮音ちゃんもBOBOさんも、いつも通りにやってるとそこからハミ出てしまうわけです。そこを一緒にやりとりしながら調整していって。最終的に凄い化学反応が生まれて、自分が予想していた以上のものになりました」
 ――パッケージとして完成した作品をご覧になって、どんな印象を受けましたか。
「時雨とは全く違うアプローチの曲もあったりするので、それでも時雨の延長線上に聞こえるのか、全然違った音に聞こえるのか。バンドでの作品を経ての今回の作品は受け取る人によって、万華鏡みたいに解釈が変わると思うんで。凛として時雨のイメージをもって接した人がどういう反応をしてくれるのか、すごく楽しみです」
取材・文/望月 哲(2011年4月)
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