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原田郁子 / 2008/05/22掲載
『ケモノと魔法』キーパーソン・インタビュー 有山達也氏



CD+本という形態で発表される原田郁子の2ndソロ・アルバム『ケモノと魔法』。前作『ピアノ』に引き続き、今作のアート・ディレクションを手掛けているのが、エディトリアルや書籍を中心に活躍するグラフィック・デザイナー、有山達也氏。絵物語というスタイルをとることで、彼がヴィジュアル化した原田郁子の内なる世界とは?


──原田さんと最初に面識を持ったのは?

有山 「僕が仕事している『ku:nel』という雑誌で、架空のテーマ曲の楽譜を書いてもらうような企画があって。そこで彼女に曲をお願いしたのが最初の出逢いです。それからしばらく経って、“ソロで作品を作るのでアート・ワークをお願いしたいです”というオファーを受けてジャケットとPVを作らせてもらいました。PVは沖縄で撮影したのですが、飛行機や宿の手配からレンタカーの運転まで、僕がやることになって(笑)。あれは大変だったけど楽しかったですね。それからプライベートでもたまに飲みに行ったりするようになったんです」

──一緒に仕事をしたときに感じた原田さんの印象は?

有山 「たぶん世間的には“郁子ちゃん、かわいい”みたいに思われていると思うんです。もちろんそういう部分もあるけれど、内面にもっと魅力を感じていたのです。いい意味で“野生的”なんです。頭の中で物事の善し悪しを考えるのではなく、お腹で考えているというか……。観念的に物事を見ていなくて、自分がどう感じるか?という部分ですべてのことを判断してるように思えます」


──ミニ・アルバム『気配と余韻』は、原田さんの言葉と絵をコラージュした本とのブックCDという形態で発表されていますが(※初回限定生産盤のみ)、あの本はどんな流れで作業を進めていったんですか?

有山 「『気配と余韻』に関しては、CD+本という形態が先に決まっていて、本の中身をどうするのか、まったく決まっていなかったんです。それで内容を考えていくうちに、さっき言ったように、彼女の濃い内面を今までと違った形で見せることができたらいいなと思ったんです。内面をビジュアル化するためには、歌詞だけではない“言葉”があったほうがいいんじゃないかと思い、メモ帳とか落書きとか、そういうものを持ってきてもらいました。あとは本人に絵を描いてもらい、それをドッキングしました」

──ちゃんと絵を描いたのは初めてだったみたいですね。

有山 「いえ。描いてはいるんですよ。メモの端っことかに、気持ち悪い絵を(笑)。それもすごく面白かったから、さらに絵も描いてほしいって伝えて」

──出来上がったものは、かなり混沌とした内容になっていますが。

有山 「まとまらない感じでいいなと。もともと、まとめたくなかったっていうか、ざっくりしたままでいいんじゃないかとは思っていたんです。それが彼女らしいから」

──そして『ケモノと魔法』の作業に入られるわけですが、物語をつけるというのは、もともと決まっていたんですか?

有山 「本の作業に取り掛かる前に、『ケモノと魔法』というタイトルだけは、なんとなく決まっていました。今回はそれをもとに物語を書いてほしいと、僕の方から原田さんにオファーを出しました」





──製作期間はどれくらいだったんですか?

有山 「物語が延べ10日間くらいで、絵は1週間弱だったと思います。夕方、うちの事務所にやってきて打ち合わせ室に缶詰状態でこもって、朝まで作業して帰るという感じで」

──絵は、物語がある程度、出来上がったところで描いてもらったんですか?

有山 「そうですね。7割方ぐらい物語が出来たところから。最初は慣れないこともあって大変そうでしたが、描き続けていくうちに、どんどん楽しくなっていったみたいで。彼女は興味を持ったものに対して、とんでもない集中力を発揮するんですよ。ある意味、子供に近いのかもしれません(笑)。やったことのないことにトライして、それを面白がる能力は本当にすごいと思う」

──彩色も全部、本人がやってるんですよね。

有山 「そうです。いくつかのお題を出してそれをただただ一生懸命描いてもらう、その繰り返しの毎日でした。ひとつが描き上がると、次は何を描けばいい?という感じで。彼女が悲鳴を上げるくらい細かいところまで描いてもらいました。彼女はどういう目的でそれを描いているか理由もわからず黙々と描き上げていきました」

──あえて、そういうやり方で作業を進められたのは?

有山 「自分で書いた物語を、絵で説明しすぎてしまうのを避けたかったんです。ちょっと距離があるぐらいが面白いんじゃないかと思っていたので何でこれを描くかの理由を説明しませんでした」

──出来あがったものを実際、ご覧になっていかがですか?

有山 「彼女の中にある、今まで見せてこなかったようなものを形にすることができたかなと思います。後半は絵を描くことに夢中になっていました。“もっと描いた方がいい? これくらいでやめておいたほうがいい?”って、彼女は集中しすぎて、自分で描いた細かな鉛筆の描写を小指の付け根あたりでこすり消しながら進んでいたりして(笑)。子供そのものです。そこに彼女の良さが滲み出ていると思います。消えた部分はもう一度描いてもらいましたけど(笑)。音も前作に比べて、さらに彼女らしい部分が音に出ていると思います。1曲目から度肝を抜かれました。9、10、11曲の最後の流れがとても好きです。今はナチュラルに自分のやりたいことをやれているんじゃないかと思います」

──今後の原田さんに望むことは何かありますか?

有山 「特にありませんよ(笑)。身体に気をつけて自由にやってもらえたら。彼女の歌は、誰も行ったところがない場所へ向かっていると思います、いまはその途中じゃないかと」



取材・文/望月 哲(2008年5月)






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