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映画『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』は90年代UKロック満載

エドガー・ライト   2014/03/25 15:29掲載
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映画『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』は90年代UKロック満載
 『ショーン・オブ・ザ・デッド』、『ホット・ファズ-俺たちスーパーポリスメン-』などでお馴染みのエドガー・ライト監督による最新作、映画『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』が4月12日(土)より東京・渋谷「シネクイント」ほかにて公開。90年代のUKロック満載の音楽に乗せて、古今東西の映画への愛が溢れるオマージュが詰め込まれた本作。現在発売されているサウンドトラック(輸入盤のみ)の収録曲と選曲の理由についてエドガー・ライトが楽曲ごとに解説したライナーノーツが届きました(写真:エドガー・ライト監督[右]とサイモン・ペッグ[左])。

 『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』は、学生時代に成し遂げられなかった“1晩に5人で12軒のパブでハシゴ酒”にリベンジするため、地元に帰ってきたアラフォー男たちを描いたもの。劇中では、プライマル・スクリームブラースウェードザ・ストーン・ローゼズなど、主人公たちの学生時代を彩ったであろう、90年代のUKロックの音楽と共に物語が進行していきます。

 本作で監督は、『ミッション:インポッシブル』シリーズや『スター・トレック』シリーズなどにも出演している主演のサイモン・ペッグと共同脚本をつとめており、まず本作を製作するにあたって初めに取り組んだことが“2人のティーンエイジャー時代から20代前半までの曲のプレイリストを作ること”だったそう。

 監督は、「1987年から1992年まで約200曲あったよ。プライマル・スクリームの〈Loaded〉なんかは、僕が16歳のとき、つまり1990年に発売された。それがいわゆるホンモノの音楽を聴きはじめ、NME誌を買いはじめた最初の年だったと思う。それ以前はポップ・チャートしか聴いていなかったんだけれど、成長するにつれオルタナティヴをよく聴くようになって、それが映画にも反映されているよ。登場人物のサイモン・ペッグ演じるゲイリーは80年代後半から90年代初頭のそういう曲や、楽しげなパーティ・チューンに執着していて、バイブルの如く扱うんだ。僕らも好きな曲だから、登場人物がスープ・ドラゴンズの歌詞に沿って生きようとするのは笑えるね」と語っています。

 サイモンも、「どの曲を使うかにはこだわりがあって、1987年から1992年の5年間から採用しようと決めた。ドアーズの〈Alabama Song〉とオリジナルの曲以外は、全部その時代のものなんだ。そういうことが僕らにとって、すごく大事なことだったのさ」とコメント、2人のこだわりが伝わります。

[エドガー・ライトの楽曲解説]

Primal Scream「Loaded」

脚本を書き始めた頃に、僕とサイモンが学生だった1988年から1993年頃の楽曲のプレイリストを作った。パーティー三昧だった頃の曲を酔った時に聴くことで、ゲイリー・キングが過去を思い出すという仕掛けをしたかったんだ。彼は今でも、こういった曲を聴きながら自由でお気楽に生きたいと感じているんだ。“ローデッド”はすぐにプレイリストのトップに躍り出た。ロジャー・コーマンの映画『ワイルド・エンジェル』のセリフをイントロで使うことで若者の反抗心を思い出させるのだが、僕にとっては音楽にのめり込むキッカケとなった曲だ。10代の頃は、当時流行っていたポップ・ミュージックや、親が持っていたビートルズ、ストーンズ、サイモン&ガーファンクルのレコードに始まり、デヴィッド・ボウイ、ロキシー・ミュージック、クイーンに至るまで聴けるだけ聴いていた。1990年頃にはインディーズ音楽がチャートインするようになって、特に「ローデッド」がイギリスのトップ40で37位に入っていたのを覚えている。オープニングのセリフ箇所を除けば、僕はアンドリュー・ウェザオールの革新的なサウンドに戸惑いもしたけど心を奪われた。この曲は僕をクールな世界に導いてくれたし、今でも繰り返し聴いているよ。

Blur「There's No Other Way」

1991年にブラーを一躍有名にしたこの曲は、インディーズ音楽の不朽の名作だ。その後1994年に"ガールズ&ボーイズ"を発表するまでトップ10に入るような楽曲がなくて、この曲は彼らにとっての代表作だった。最近のツアーで積極的に演奏しているところをみると、この曲のよさを自分たちで再確認したんだろう。20年のうちに他の曲でもヒットを飛ばしてきたしね。ジャンルとしてはダンス・ミュージックに組み込まれることも多いけど、間違いなくインディーズ音楽の名曲さ。

Soup Dragons「I'm Free」

C86の元メンバーであったスープ・ドラゴンズは、ローリング・ストーンズのシングルB面曲「アイム・フリー」を1990年にカヴァーして大ヒットさせた。でもこれが、多くの人々に一発屋のイメージを持たせてしまったんだ。それでも彼らの曲が、アメリカでザ・ストーン・ローゼズやザ・シャーラタンズ、ブラー、ハッピー・マンデーズらの曲より有名であったことは誇りに思っていいことじゃないかな。最近、バーバンクのIKEAでこの曲を聴いて、自分が90年代の曲にもノスタルジーを感じるんだということに気付いた。この感覚は劇中で特に感じられるようにしている。正直言うと、この曲の歌詞は覚えていない。ただ夏になると口ずさみたくなるし、ゲイリー・キングがドライヴする時の曲にピッタリだ。

Suede「So Young」

僕は本当にこの曲が大好きだし、軽快な面と憂鬱っぽい面が混ざり合っていて、それがこの作品の登場人物たちが感じるほろ苦さを表現するテーマ曲として完璧だと思う。この曲は、劇中でゲイリーたちがニュートン・ヘイブンの街を闊歩するスローモーションのシーンで使われている。普通こんな風に5人が横に広がって歩く映像は、ラスベガスやマンハッタンのような華やかな街で撮影されるというイメージがあると思う。でもこの曲は、イギリスの秋風吹く郊外の雰囲気とマッチしていて好きだ。この曲はすごく懐かしい感じがして、聴いていると僕とコリン・ハーディがボクスホール・シェベットに乗ってスウェードのデビュー曲を流しながら歌っていた1993年に戻ったような気分になる。

Pulp「Do You Remember the First Time?」

この曲は心から大好きだ。スウェードのシングルみたいに、憂鬱で過去に戻りたいと痛切に思う気持ちを表現した壮大な曲だよ。こうした苦しみや後悔を曲として表現できるのはジャーヴィス・コッカーのようなイギリス人歌手だけだね。この曲はパルプの代表的アルバム『彼のモノ・彼女のモノ』に収録されている。彼らがヒット曲を出すまで10年以上の下積みを経験したというスターダムへの道のりについては詳しく知らなかったけど、「リップグロス」や「ベイビーズ」、そしてこの曲の素晴らしさについてはちゃんと気付いた。劇中では、サイモン・ペッグ、ロザムンド・パイク、パディ・コンシダインがぎくしゃくした三角関係を見せるシーンで使われている。

Teenage Fanclub「What You Do To Me」

本作でのお気に入りのシーンのひとつは、パディ・コンシダインがロザムンド・パイクに恋心を抱いて、彼女が店を出ていくのを子犬のような目で追っているカットだ。そのシーンを撮る時に、パディがその気になってくれるようにティーンエイジ・ファンクラブの曲をイントロから僕のラップトップで流した。これが上手くいったんだ。僕とコンシダインはこの曲が気に入って、今でもよく聴いているよ。

The Stone Roses「Fools Gold」

1990年はインディーズバンドの曲がチャートインするようになった年だ。「Fools Gold」が1990年の夏にトップ10に入ったことは大ニュースとなった。彼らが音楽番組『トップ・オブ・ザ・ポップス』でやる気なさそうに演奏したのも話題になったね。僕にとっても、オルタナティヴ・ミュージックにハマる大きなきっかけになった。本作では「Fools Gold」と金色のラガー・ビールをかけて、曲名に新たな意味を持たせた。曲が流れ出すと、僕たちの“ヒーロー”ゲイリー・キングが誰かが残したビールを飲んでしまおうと見つめる。まさにFools Gold(バカな男にとっての金塊)だよ。

Soul II Soul「Get A Life」

このバンドは当時、それほど好きだったわけじゃないけど、1989年〜1990年にかけてかなり有名だったから、ペッグと相談してこの曲を使うべきだと考えた。この曲を聴くと、すぐに長い夏と学生時代を思い出すんだ。劇中ではゲイリー・キングが友人たちから反撃を受けるシーンで使われている。ニック・フロスト演じるアンディがゲイリーに大人になって社会に出るよう諭すと、ジャジー・Bがラップでこう歌うんだ。――“眼を肥やせ、客観的であれ、そして社会の一員になれ”――。

The Doors「Alabama Song(Whiskey Bar)」

本作のストーリーができてすぐにこの曲が頭に浮かんだ。最初はデヴィッド・ボウイが歌っているバージョンが好きだったけど(映画の最後に曲を使おうとしたけどダメだった)、ベルトルト・ブレヒトとクルト・ヴァイルが作ったこの曲をドアーズがカバーしたものは、不気味で威厳があって、劇中で使うしかないと思った。この曲の、“次のウィスキーバーへの道を教えてくれ、でも理由は聞かないでくれよ。次のウィスキーバーが見つからなかったら、その時は死んでしまう”という歌詞は、この映画の内容を端的に表している。これ以上正確に言い表すことができるだろうか。ドアーズのカバーは最高だ。曲後半のレイ・マンザレクによるマーキソフォンのソロがとにかく素晴らしい。本作のサウンドトラックの中でも一番のお気に入りさ。

Definition Of Sound「Wear Your Love Like Heaven」

これは1990年頃にあちこちのディスコで流れていたインディーズの曲で、本作にもってこいだと思った。この素敵な楽曲が、ディー・ライトの曲ほどウケなかったことが理解できない。同じくらいキャッチーじゃないか。皮肉なことに、僕たちは元々この曲の代わりにピクシーズのアルバム『ボサノヴァ』から奇妙な雰囲気のある「Stormy Weather」を使おうとしていた。でも、それにはおそろしいほどの金額を支払わなければならないと知って、アップビートな曲に差し替えることに決めた。このことがむしろ功を奏して、不気味な音楽を使うよりこのダンス・ナンバーを使ったことで、シーンをより面白くすることができたよ。

Silver Bullet「20 Seconds To Comply」

このブリティッシュ・ラップの名曲は、1991年頃に爆発的な勢いでチャートインした。当時は正当な評価を受けなかったけれど、映画『ロボコップ』のセリフをサンプリングしたこの曲は、20年以上が経った今でもそのテンポの速さと攻撃性を失っていない。ニック・フロストが何体ものロボット相手に狂ったように戦うシーンで使うのは、この曲以外にはないと思った。シルヴァー・バレットの曲のおかげもあって、この格闘シーンは観ていて全然飽きないね。

The Sisters of Mercy「This Corrosion」

この曲は本当に素晴らしくて、つい何度も聴いてしまう。この曲ではゲイリー・キングのゴス的な側面を表した。ペッグはこのバンドのファンで、10代の頃はゴスっぽく爪を黒く塗っていた時期もあった。劇中でサイモンがシスターズ・オブ・マーシーのTシャツを着られるよう権利関係の交渉をしたら、リード・ヴォーカルのアンドリュー・エルドリッチが『ショーン・オブ・ザ・デッド』と『ホットファズ -俺たちスーパーポリスメン!-』の大ファンだったということが分かったんだ。あんなに興奮したサイモンを見たことがないし、本当に大好きなんだろうね。僕はジム・スタインマンがプロデュースしたシングルが好きで、この非常に壮大な曲はハッピーエンドにふさわしい曲だと思った。

The Housemartins「Happy Hour」

僕は映画のエンディングには聴いていて飽きない曲を選ぶべきだと信じている。『ショーン・オブ・ザ・デッド』ではクイーンの「マイ・ベスト・フレンド」を、『ホットファズ -俺たちスーパーポリスメン!-』では「Caught By The Fuzz」を使用した。このしきたりに則って、暗黒の終末をこの軽快な不朽の名作で彩れば面白いと思ったんだ。ソングライターのポール・ヒートンは彼が率いるバンド、ザ・ビューティフル・サウスの「Old Red Eyes Is Back」の音楽と共に映画に登場している。彼は酔っ払いたちのための歌というものを理解しているし、イギリス人の作曲家として突出した才能を持っているのに過小評価されていると思う。

(C)Focus Features
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