【ベンジャミン・ギバード】デスキャブのフロントマンが初ソロ・アルバムを発表!−『フォーマー・ライヴズ』に広がる原風景

ベンジャミン・ギバード   2012/10/19掲載
はてなブックマークに追加
【ベンジャミン・ギバード】デスキャブのフロントマンが初ソロ・アルバムを発表!−『フォーマー・ライヴズ』に広がる原風景
 デス・キャブ・フォー・キューティーベンジャミン・ギバード(Benjamin Gibbard)が、個人名義では初となるソロ・アルバム『フォーマー・ライヴズ(Former Lives)』を発表した。「常に曲を書き続けている」という生来のソングライターである彼は、制作動機について「たまたまバンドとしてのアルバムには入らなかっただけで、クオリティが低いわけではなく、ちゃんと形にしたいと思うような曲が溜まってきたから」と話す。デスキャブと比べても何ら遜色のない楽曲が、より素朴なサウンドで仕上げられた本作の内容は、特に昔からのファンにはグッと響くはずだ。


――ソロ・アルバムは、デスキャブの近作よりも素朴なサウンドになっていますね。
 「今回はとにかく、各曲をできるだけストレートに捉えたかった。僕の意見では、最近プロダクション技術が均一化されてきてる気がするね。どんどん個性がなくなってきていて、たとえばインディ・ロックだと、何にでもリヴァーブがかかっていたり、全部コンピュータで音がいじられていたり、とにかくその時のトレンドに左右されがちだ。もちろんそれがいい場合だってあるし、技術として人が使いたいなら使えるものもある。ただ、僕はむしろそういうのから離れたかった」
――あなたは本作について「僕の人生の小さなフォトブックみたいなもの」と形容しています。収録曲に登場する、リリーやダンカンといった人たちは、具体的に顔が思い浮かべられるような実在の人物なのでしょうか?
 「これはずっとそうなんだけど、曲の登場人物は、その曲の中でこそリアルなんだよ。その名前で書かれた人物が現実において存在してるかどうかは重要じゃない。ソングライターとして、僕は曲というメディアで人生を捉えて形にしてる。だからレディ・アデレードっていう女性が実在するかどうかより、その曲において存在することの方に価値があるんだ。モデルがいるのか、それとも僕が作り出したキャラクターなのかはほとんどどうでもいいんだよ。だって、彼女はその3分の曲の間ではリアルな存在なんだからね」
――なるほど。「ティアドロップ・ウィンドウズ」では、スミス・タワーという建築物が主人公になっていますね。
 「シアトルにあるスミス・タワーは1914年に建てられて、30年代までは西海岸で一番高い建造物だった。ニューヨーク以外では唯一の高層建築で、建物としても本当に美しいんだよ。堂々としてて威厳があって、スペース・ニードルができるまでは、シアトルのスカイラインにおける宝石的な存在だったんだ。今は、映画でシアトルが出てくる時は絶対にスペース・ニードルが映されるから、みんなシアトルと言えばスペース・ニードルと思ってるけど、僕は、個人的にずっと愛してきたスミス・タワーについて曲が書きたかった。見過ごされてしまった素晴らしいものについてね。この曲が、スミス・タワーがもうちょっと見直されるきっかけになればいいんだけど」



――「ブロークン・ヨーク・イン・ウェスタン・スカイ」は古い曲だそうですが、2人で同乗していた車から自分だけ飛び降りて取り残されるような別れの気持ちは、曲を書いた当時のあなたが実際に体験したものなのですか?
 「あれは取り残されるというより、2人で乗ってる車から衝動的に自分が飛び降りてしまう気持ちなんだ。怖くて、そこにいたたまれなくなって、相手の気持ちや後先も考えることなく、とにかく逃げ出してしまう……それがどういうことかも考えずにね。ある意味ものすごく臆病で、情けない行動なんだけど、恋愛においてそういう心情になる瞬間は誰にでもあると思う。僕が好きな映画『ファイブ・イージー・ピーセス』(70年)のラスト・シーンでは、ガソリン・スタンドで、カレン・ブラックが車で待っているのに、ジャック・ニコルソンはたまたまそこに停まってたトラックの運転手と話して、そのトラックに飛び乗り、彼女を置き去りにしたまま何も持たずに行ってしまう。この曲にあるのは、あれと同じ恐怖感、子供っぽい衝動で、すべてを放り出して逃げ出してしまうフィーリングだ。思い当たる人には思い当たるんじゃないかな」
――わかりました。さて、本作のリリースにともなってソロ・ツアーも行なわれますが、単身での来日公演の可能性はありませんか?
 「もちろん、日本にも行きたいよ! うまくスケジュールが合うといいな。日本でプレイするのはいつだって楽しいからね」




取材・文/鈴木喜之(2012年10月)
最新 CDJ PUSH
※ 掲載情報に間違い、不足がございますか?
└ 間違い、不足等がございましたら、こちらからお知らせください。
※ 当サイトに掲載している記事や情報はご提供可能です。
└ ニュースやレビュー等の記事、あるいはCD・DVD等のカタログ情報、いずれもご提供可能です。
   詳しくはこちらをご覧ください。
[インタビュー] みやけん 人気ピアノYouTuber 『俺のヒットパレード!』第4弾リリース![インタビュー] Billyrrom 注目の新世代バンドに聞く新章突入と〈HEADZ 〜NEW HOT WAVE〜〉出演への思い
[インタビュー] 町あかりの歌謡曲・春夏秋冬 春のテーマは「ディスコ」![インタビュー] Arvin homa aya  実力派シンガーの話題曲 アナログで連続リリース
[インタビュー] ジェイコブ・コーラー × kiki ピアノ 凄腕師弟コンビ[インタビュー] 文坂なの \
[インタビュー] 人気ジャズ・ピアニストが立ち上げた新レーベル 第1弾は田中裕梨とのコラボ・シングル[特集] いよいよ完結!? 戦慄怪奇ワールド コワすぎ!
[インタビュー] you-show まずは目指せ、新宿制覇! 新宿発の楽曲派アイドル・グループがデビュー![インタビュー] 想像を超えた創造。タフでラフでラブな一枚 崇勲×ichiyonのジョイント・アルバム
[インタビュー] 千住 明、オペラ・アリアをヴァイオリンで 千住真理子とともに20年以上前の編曲スコアを再録音[インタビュー] 思い出とともに甦る名曲の数々 藤あや子のカヴァー・アルバム
https://www.cdjournal.com/main/cdjpush/tamagawa-daifuku/2000000812
https://www.cdjournal.com/main/special/showa_shonen/798/f
e-onkyo musicではじめる ハイカラ ハイレゾ生活
Kaede 深夜のつぶやき
弊社サイトでは、CD、DVD、楽曲ダウンロード、グッズの販売は行っておりません。
JASRAC許諾番号:9009376005Y31015