佐藤理とゴンドウトモヒコの新ユニットが、聴覚と視覚を刺激するアルバムを発表 LIG

LIG (佐藤理 + ゴンドウトモヒコ)   2025/11/05掲載
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 マルチメディア・クリエイターの先駆的存在としてゲーム、音楽、グラフィック、映像など多彩なフィールドで創作活動を精力的におこない、世界的評価も高い佐藤理。YMOのサポートやMETAFIVE、蓮沼執太フィルのメンバーとしても活躍してきたホーン奏者/作曲家/プロデューサーのゴンドウトモヒコ。二人の音楽アート・ユニット、LIGが、2枚組アルバム『Love is Glamorous/Life is Gorgeous』を完成させた。初回仕様限定盤には、豪華24ページのアートブックを付属。CDというフィジカルなアートピースの可能性を追求した作品に仕上がっている。聴覚と視覚を刺激する“聴く(体感する)音楽アート”を開拓し続ける二人に話を聞いた。
――お二人は90年代後半頃から一緒にライヴ活動をおこなっていたそうですが、どのようなきっかけで交流が始まったのですか?
ゴンドウトモヒコ「anonymass(徳澤青弦、ゴンドウトモヒコ、山本哲也による音楽ユニット)の山本哲也君が(佐藤さんの事務所で)バイトしていて」
佐藤 理「それでゴンちゃん(ゴンドウトモヒコ)が遊びに来て、その後一緒にライヴをやったりするようになって。その頃やってたのは、どちらかというと即興で、その日その日でやり方も変わる。たとえば、改造した僕のTR-808(ローランドのドラムマシン)にアナログ・シンセサイザーのシーケンサーをつないでいじるとグチャグチャのリズムになるんですけど、それに応じて即興するとかね。なんかそんな実験的なことばかりやってました」
ゴンドウ「僕もちょうどオフィス・インテンツィオ(ミュージシャン、マニピュレーター、レコーディング・エンジニアのマネージメント、レコーディングやコンサートの企画制作などを手がける音楽事務所)に入ったばかりで、バンドも始めるか始めないかみたいな時期で。いろいろ模索しながら、面白いことはなんでもやろうみたいな感じでしたね。即興はもともといろいろな人とやっていたので、全然なんの抵抗もなく。むしろ面白かったです」
LIG
――ただ、伝説のカルト・ゲームソフトとして今や名高い『LSD』を1998年にリリースしたあと、佐藤さんはゲームと音楽の制作から離れてしまいます。そして2017年にソロ・アルバム『ALL THINGS MUST BE EQUAL』をリリースし、ゴンドウさんとの交流も再開する。このあたりの流れはどういうものだったのでしょうか?
佐藤「ゲーム制作をやめてしばらくデザイン仕事に専念していたんですけど、ある日ドイツの二つのレーベル(SLEEPERSとVINYL ON DEMAND)から僕の音楽をアナログで出したいっていう連絡が来て。ただ、そのとき僕はもう音楽をやる気がなくて、最初のうちは断ってたんですけど、何度も連絡してくるので、じゃあ昔のものでよかったらと思って、昔のデータを整理してたら、こんな曲作ってたよなっていうのがいっぱい出てきて。それをもう一回、ちょっと手を入れ直し始めたら楽しくなって、けっこう曲ができたんですね。それで、昔出したアルバム『EQUAL』(1995年)に僕が坂本龍一さんからメロディとコードをもらって共作した〈RETROCOGNITION〉という曲があって、それをもう一回録り直そうということで、ゴンちゃんにフリューゲルホルンを吹いてもらったんです。それがひさしぶりにゴンちゃんと一緒にやるきっかけになって、またライヴをやるようになったんですね」
――二人で一緒にライヴ活動を開始した時、最初はLIGというユニット名はついていなかったそうですが。
佐藤「その時は連名(佐藤理+ゴンドウトモヒコ)にしていて。ゴンちゃんの新しい曲もやったりとかして、じゃあちゃんとグループ名を決めてやろうかっていうことになったんです。それから長い間ライヴはやってたけど、曲は別々に作ってたって感じです」
――二人で一緒に音を作っていったというわけではないんですか?
ゴンドウ「ではなく、僕は曲はいっぱい持ってるんで、それのMIDIデータを再構築してもらったりとか」
佐藤「ゴンちゃんから来た音を僕が好きに変えて、ゴンちゃんに戻して(金管楽器を)吹いてもらって、返ってきたのを僕がミックスするとか。ある程度作った僕の曲で、ゴンちゃんに吹けるところを吹いてもらって、そのファイルが返ってきたら、さらにいろいろやって完成する。だからファイルの交換だけです。でも、全曲に2人が入ってます」
ゴンドウ「全部、半々。ただ、曲がいっぱいできて」
佐藤「そう、2枚分できちゃったんですよ」
――それで2枚組になってしまったと。完成した曲はどのように2枚に振り分けていったのですか?
佐藤「バランスを取りました。二つとも同じように聴こえるように。両方とも曲の並びが、僕、ゴンドウ、僕、ゴンドウってなっているんですよ。最後のほうはちょっと違うんですけど、同じ曲数だけ書いてるんです。曲のクレジットは別々でもよかったんですけど、もう全部レノン=マッカートニー方式にしようかってことで」
――それで「All music composed by LIG」とクレジットされているわけですね。LIGというユニット名はどのようにして決まったのですか?
ゴンドウ「お互いレーベルを持ってるんで」
佐藤「僕が理念音盤で、ゴンちゃんが愚音堂」
――レーベルの頭文字をあわせて理愚=LIGということですね。
佐藤「で、LIGには“のらりくらり”っていう意味があって。僕ら、ライヴをやるけどレコーディングはのらりくらり全然やらない状況が1年ぐらい続いていたんで。じゃあ、のらりくらりっていうことで、トレードマークは亀にして、デザインも亀甲にして。僕が今かけている眼鏡の形も亀甲なんですよ。どうでもいいことですけど(笑)」
LIG
――細かい音のピースが組み合わさることで一つの大きな世界を作り出すというのは、佐藤さんの絵や音作りの特徴でもあると思いますが、そこにゴンドウさんの特徴ある金管楽器の音が入ると、一気にLIGの世界になっていきますね。
佐藤「そういう意味で言うと、ゴンちゃんが入ることによってメロディックになるね」
ゴンドウ「あんまりしたくないんですけどね、個人的には」
佐藤「本来、僕もあんまメロディが好きじゃなくて、リフを組み合わせたり、そういうパズル的な音楽作りたいと思っているので、(ゴンドウが)メロディを少し出してくれると……〈PIROSMANI〉っていう曲はリフだけで作ってたんだけど、ゴンちゃんが吹いてそこにちょっとだけメロディ足してくれたら、なんか(曲が)生きてきたしね」
――金管楽器が入ってくると、ゴンドウさんの音のスタンプが曲に押されたみたいな感じがしますよね。そういう意味では、匿名的な音楽ではなく、お二人の顔がしっかり見える音だなと。
佐藤「金管楽器と電子音楽をうまい具合に融合するのがLIGの特徴で。ライヴをやると、みんなアンサンブルがいいっていう風に言ってくれる。そんなことができる人、あんまりいないしね」
――Epokheさんという女性のソプラノ・ヴォイスをフィーチャーした曲もあったりしますが、アルバムに入っている曲は基本的にはミニマルなインストゥルメンタルですよね。ダンス・ミュージックを意識したりはしますか?
ゴンドウ「クラブ・ミュージックの考えでは作ってないかな。ただ、手段が佐藤さんの機械だったっていう」
佐藤「うん、ダンス・ミュージックじゃないと思います。クラブとかにも行かないし。65になって行く人も少ないと思うけど」
――年齢でいうと佐藤さんが65歳で、ゴンドウさんが58歳ですね。
ゴンドウ「60手前で、新しいユニット(笑)」
――でも二人ともアウトプットされる作品は全然枯れてないですよね。
ゴンドウ「そういう意味では年齢的なものは何も感じない」
佐藤「ずっとやっていってることは同じなんだけど、65になってもう1回メジャー(のレコード会社)となんかやるとは思ってなかった。そこは面白い。老人に希望を与える存在でありたいですね(笑)」

取材・文/小暮秀夫
Photo by Kenji Miura
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〈『Love Is Glamorous/Life Is Gorgeous』POP UP〉
LIGがアルバム『Love Is Glamorous/Life Is Gorgeous』の発売を記念したPOP UPを開催。会場では、佐藤理が手がけるアートワークの展示のほか、オリジナルグッズの販売を予定しています。また、期間中の11月22日(土)17時からメンバー2人が登壇するトークライブが開催されます。

11月21日(金)〜30日(日)東京・新宿 ビームス・ジャパン4階「TOKYO CULTUART by BEAMS」

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