【菊地成孔インタビュー】 老舗ジャズ・レーベル、インパルス!と電撃契約。ライヴ盤を発表!!

菊地成孔   2011/09/27掲載
はてなブックマークに追加
昨年、メンバーを一新して再始動した菊地成孔率いるDATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDENが、アジアのミュージシャンとしては初めて、老舗レーベルのインパルス!(impulse! records)と契約。注目のなかでリリースされる『ALTER WAR IN TOKYO』は、今年6月6日に恵比寿リキッドルームで鬼才アート・リンゼイ(Arto Lindsay)をゲストに迎えて行なわれたライヴを収録したもの。じつは菊地自身は気に入っていなかったライヴ音源を、どうやって“世界基準”にしたのか。想定外のワールドワイド・デビューを控えた菊地に、その舞台裏を聞いた。
――インパルス!との契約おめでとうございます。今回の契約は菊地さんにとって突然のことだったみたいですね。
 「デートコースの活動を再開した時は、CDを出すことさえ決まってなかったですから。比較的旺盛にライヴをやってたんですけど、スタジオ盤の話もライヴ盤の話もありませんでしたし、ないものだと思ってました。でも、水面下でプロデューサーの高見(一樹)君とユニバーサルが動いていたみたいで、突然、“6月6日のライヴをアルバムとしてリリースします、インパルス!から”と言われて“ええっ!?”と驚いたわけです。アメリカだったら、ピストルが出てきてトラブルになってもおかしくない状況です(笑)。言うまでもないとはこの事ですが、ライヴ盤というのは“これが盤になる”と事前に知って意気揚々とステージに上がるものであって、言ってみればこれはオフィシャルなブートな訳なので(笑)」
――6月6日のライヴは、菊地さんとしては満足のいかない内容だったとか。
 「そもそもこの日のライヴは、アート・リンゼイが相対性理論さんと共演するために来日する、それにあたって稼働日が1日あまっているから一緒にやらないか、という流れでした。周囲はアートとデートコースが一緒にやることで何かスゴいことが起こるんじゃないかって期待していたみたいですけど、我々は、べつに嫌ではないが、とにかくいきなりでしたし、受け身でした。もちろん、アートは本当に素晴らしいアーティストですが、こっちの演奏とは関係なく、あのアート節をやり続けるだろうと思っていたので(笑)。ライヴはものすごく盛り上がったんです。でも録音を聴いたら、事前に予想した通りだった(笑)。しかも、この日はそうした、ある種異様な盛り上がりによってメンバーがクタってきて、最後のほうはみんな好き勝手に遊び出してきてグチャグチャになってしまった(笑)。録音されたライヴ音源を聴くと、そういうのが全部わかっちゃうんです。だからライヴの後半の音源はまったく使えない状態で、“これは大変だ”と頭を抱え込んでしまったんです。それで“もういいや、なんとかハサミ入れて(編集して)、はじめて聴く人にとっては素晴らしいっていうぐらいまで持ってこう”ってことになって、4日間、相当な時間をかけて編集しました」




――編集という行程が、今回のアルバムで大きな役割を果たしているわけですね。
 「言葉はキツいですけれども、素材がクズであるほど、編集することで良いアルバムが生まれます。マイルス・デイヴィス(Miles Davis)『オン・ザ・コーナー(On The Corner)』なんてその代表みたいなもんで、そのままじゃ使えないクズ・セッションを編集することで、いまのクラブ・ミュージックみたいに編集作品としての傑作になった、というのがワタシの考えです。とにかく編集というのは、精緻にそしてデタラメにやったほうがいい。100枚の写真のなかからイケてる1枚を必死に選ぶということではなくて、演奏の前半と後半を大胆に入れ替えたりすることで全体の流れがすごく良くなったりする。そういうクリエイティヴな編集技術は、今ではポップ / クラブ・ミュージックの常識ですけど、ジャズの世界ではマイルスとテオ・マセロ(Teo Macero)の二人がやって以来、誰も受け継ぐ者はいなかった。クラシカルな名演主義を出ていません。それをやろうとしてデートコースを始めたんですけど、最近は編集せずにライヴ音源をそのまま配信することが多かったんです。だから図らずも、今回のアルバムを通じてデートコースの原点に立ち戻ることができたし、アルバムもかなり刺激的な作品に仕上げることができたと思います」
――当日のライヴとは違った雰囲気の作品になった?
 「まったく別物と言えると思います。収録時間も半分ですし、曲順も変わったし。盤的にはけっこうヤバい。タイトル通りの、別化された戦争ですね。不穏というか、凶悪というか、エレガンスというか」
――インパルス!が初めて契約したアジアのアーティストということもあって、このアルバムがアメリカで話題になったり、高い評価を受けたりすると、また活動の範囲も広がりそうですね。
 「こういうバンドの、こういうタイトルのアルバムがアメリカのレコード・ショップで並んだ時、向こうでどう思われるのかな、というのは興味ありますね。インパルス!なのにマイルスのカヴァーも入ってるし(笑)。ちょっとしたジャパンクールの感じも入っています。今のアメリカのジャズって、伝統芸能以外は結構ダメになってます。一方で、日本のジャズ・シーンには、竹野昌邦や津上健太など、いろんな才能がひしめきあっていてデートコースを含め、そういったアーティストの存在は、アメリカではまったく知られていない。ガラパゴス化しているわけですよね。だから、我々がきっかけになって日本のジャズ・シーンが向こうで注目されて、韓流みたいになればいいなと思いますね(笑)。ボヤッとしてたらなんか日本人がやって来て、“日本人なんて、どうせバークリーを卒業した巧いヤツらが、手堅くやってるだけでしょ?”って思ってたら全然違ってて慌てふためいたと。そんなふうになれば面白いな、なんて思いますけど、まあ、あんまりならないと思いますが(笑)」
取材・文/村尾泰郎(2011年9月)
[Live Information]

『ALTER WAR IN TOKYO』Release Party
10月9日(日)東京・恵比寿リキッドルーム
※お問い合わせ: 恵比寿リキッドルーム 03-5464-0800

Naruyoshi Kikuchi Presents
12月6日(火)DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN
12月7月(水)〜9日(金)KIP HANRAHAN BEAUTIFUL SCARS PROJECT guest appearance NARUYOSHI KIKUCHI
会場: ブルーノート東京
※お問い合わせ: ブルーノート東京
オール・ジャンル 最新CDJ PUSH
 
※ 掲載情報に間違い、不足がございますか?
└ 間違い、不足等がございましたら、こちらからお知らせください。
※ 当サイトに掲載している記事や情報はご提供可能です。
└ ニュースやレビュー等の記事、あるいはCD・DVD等のカタログ情報、いずれもご提供可能です。
   詳しくはこちらをご覧ください。
[インタビュー] 角銅真実&西田修大が語る石若 駿『Songbook2』[特集] [LIVE Report] 愛され続けるシンガー・ソングライター藤田麻衣子のオール『緋色の欠片』曲によるスペシャル・ライヴ!
[インタビュー] 秋本帆華が語るチームしゃちほこの“これまで”と“これから”[インタビュー] 原点回帰を経て再確認した“本気”の在り所 加藤和樹『SPICY BOX』
[インタビュー] “世界の先端で戦うということ” BIGYUKI『リーチング・フォー・ケイローン』[インタビュー] 音楽の“過去と未来”とを想像力でつないでみせる歌 高田 漣『ナイトライダーズ・ブルース』
[インタビュー] 永遠に愛される曲を目指して――サラ・オレインが真価を発揮した『Cinema Music』[インタビュー] ノリとヴァイブスだけで作った音楽を“ヒップホップ”としてパッケージ化する GRADIS NICE & YOUNG MAS(Febb)
[インタビュー] 密接な関係性ありきの音楽 MIKUMARI×OWL BEATS『FINEMALT NO.7』[インタビュー] (想像以上に)挙動不審!? 廣瀬真理子が総勢22人の“ドリアンな奴ら”を率いてアルバムをリリース
[インタビュー] 「知らない土地で出会う風景や人から音楽が生まれる」 ――ピアニスト、ジェイコブ・コーラーが描くシネマティックな世界[インタビュー] 上原ひろみが驚異のハープ奏者エドマール・カスタネーダとのデュオ・プロジェクトを始動
弊社サイトでは、CD、DVD、楽曲ダウンロード、グッズの販売は行っておりません。
JASRAC許諾番号:9009376005Y31015