ミニマリズムと音響的アプローチ、コンポジションと即興性が交差する未知の領域――“21世紀ジャズの来るべきかたち”rabbitoo

ラビット   2014/03/27掲載
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 遂にrabbitooがベールを脱ぐ。そのライヴ・パフォーマンスの噂が徐々に広がり、ジャズ・リスナーだけでなくポストロック、エレクトロニカのリスナーからも注目されるジャズ・バンドが、待望の1stアルバム『national anthem of unknown country』をリリースしたのが今年の2月。そして4月16日(水)には、豪華ゲストを迎えて東京・渋谷 CLUB QUATTROでリリース・パーティを開催する。藤原大輔(ts)、千葉広樹(b)、佐藤浩一(key)といった個性的なメンバーを束ねるリーダーの市野元彦(g)と、米・シカゴでの活動でも知られるドラマーにしてrabbitooの裏ボスとも言われる田中徳崇(ds)にrabbitooの秘密を語ってもらった。
――まず、rabbitoo結成の経緯を教えてもらえますか。
市野 「新しいことやりたいなと思っていたときに、田中くんと初めて演奏する機会があって、いいなと思ったのと同時に頭にぱっと藤原大輔が浮かんで、このふたりを組み合わせたら面白いんじゃないかと思ったんですよ」
田中 「じつは以前から井野信義さんに、藤原と田中は一緒にやった方がいいよって言われていて俺も気になっていたんです」
市野 「田中くんのドラムと、大輔のサックス&エフェクトと自分のギターは決まって、あとどうしようかなって考えてたときに、佐藤浩一くんが浮かんだ。橋爪亮督さんのバンドでも信頼していて、どんなことでもできるうえに、つまらない音を弾かない。佐藤くんがシンセやエレピを弾いているところも見てみたいと思った。当初はその4人だったんです。ライヴとリハの日取りを決めて準備してるうちに、千葉広樹くんと出会った。千葉くんのエフェクトと生のバランス、音量とかあらゆるものがすごくセンスが良かったので、千葉くんにもお願いしてこのメンバーに落ち着いた。最初はベースを必要としてなくて、キーボードでやればいいと思ってたんだけど、千葉くんを知ってからベース・ラインが重要なものにシフトしていきましたね」
――rabbitooのサウンドの特徴としてミニマルな要素があると思います。
市野 「当初からミニマルをイメージしていましたね。単純なものを繰り返しながら、バックグラウンド、コード、ハーモニーを少しずつ変えていくようなシンプルなものをやりたかった。最初は4、5曲分のアイディアっていうか数小節のパターンだけが書いてあるモチーフみたいなメモを渡して、みんなに演奏してもらいました。パターンを繰り返して、何か浮かんだから付け足していく形で曲を膨らませてましたね」
――想像以上にバンドでのセッション的な作り方なんですね。
市野 「みんなで作っていくバンド的な作曲がやってみたかったんです。イメージやアイディアを持っていくけど、リハで却下されたり、その場で出てきた案が採用されたり。ふつうのバンドですね。たとえば〈subliminal sublimation〉だと、カウンターラインみたいなものを足して録ってみて、やっぱいらないねってなって元の形で落ち着いた。そういう試行錯誤が続いたって感じですね」
田中 「最初はあれもできるこれもできるって感じでやってみて、録音してみたら、こんなにたくさんいらないってのがわかった。そうしたらライヴがやりやすくなりましたね。全部やったら鬱陶しいってのがわかったので。」
市野 「エフェクトも好き放題みんな出して、音量もバランスもむちゃくちゃで。そこから引き算で、無意味な音や邪魔をしてパートが活きない音を消したりね。結果的にすごくシンプルなアルバムになりましたね。しかも、生で再現も出来る」
田中 「禅の修行みたいな感じですね。最初は自分たちで録音してミックスしようってなったから、僕はひとつのテイクを何百回聴くんですよ。やったときにそれぞれが取った選択があるわけじゃないですか。それに対してビターになった。録音を何度かやってわかったのは、初めのうちは感覚がジャズ・ミュージシャン過ぎたんですよね。奢りとまではいわないけど、ジャズ・ミュージシャンって、自分たちならなんとかなるみたいな感覚があるじゃないですか」
市野 「即興でなんとか出来る、みたいなね」
田中 「やったものをきちんと聴いて突き詰めたら、“俺たちこの曲の中でなにもやってないじゃん”とか、“この曲はいったい何なんだ”みたいなことになっちゃって。それぞれの役割を見直すための時間が必要だったというのはありますね」
市野 「繰り返すパートだけでジャズ的に5分もたせてたのが意味ないことに気付いて、発展的なパートを加えたりしてね。そうしたら、逆にインプロのパートがいらなくなったりした。ジャズ・ミュージシャンの即興的な力を使って、決まったラインを決まった回数繰り返すような楽曲でも、生き生きと響かせるようなアンサンブルを作ることにずっと興味があったんです。インプロをやる人たちがインプロをやらないで、ひたすら繰り返すところに面白いサウンドが滲み出たりね」
――ミニマルなサウンドの中での即興とコンポジションの関係って言うのは、rabbitooのひとつの鍵ですね。
市野 「“即興に逃げない”っていうのは、大事にしたことかもしれませんね。ミニマルに繰り返すような曲をやりながら、ジャズ・ミュージシャンの強迫観念で“前と違うことをしなくちゃいけないんじゃないか”みたいなことはあまり考えたくない。気持ちよかったら全く同じソロを弾いてもいいと思う」
田中 「中身がシンプルな分、その時に考えていることや練習しているテクニック、よく聴いている音源なんかが出やすいんじゃないかと思うんですよ」
――音楽的にはいわゆるステレオタイプなジャズのイメージからは離れているような感じですね。
田中 「個人的には、ビルドアップしていく音楽を演奏するのに飽きたんですよ。繰り返しやる音楽は、僕の中ではシカゴでやってきたものに近くて、そっちの方が好きなんですよ。最初からぼわーんっとした空気があって、特に盛り上げる必要もないバンドってなかなか無いと思う。たとえば、ポール・モチアンの音楽にはそういう魅力もあるんじゃないかな」
市野 「基本的にジャズって、演奏者が順番に人生語ってバタンって倒れて、次は俺が語るって、またバタンって倒れて、みたいなのが多いから、とくにNYのマッチョなシーンとかだと。一昔前は“俺はこんなリハモできるぜ”みたいな研究発表を順番にやっていく感じだったもんね。ちょうど僕がボストンにいた頃は、マーク・ターナーの影響が大きくて、サックスだと練習室でもみんなフラジオでドンドン音域が上がっていく。マーク・ターナーがボストンに来るたびに音域が上がって行くみたいな。すごいなって思うのと同時に、ついていけないなっていうのもあったんですよね」
田中 「クリス・ポッターの世代もそんな感じですよね」
市野 「まさにね。今はもうちょっと音色とか違うところにベクトルが向いていると思うけど。rabbitooではサックスがバーっと吹いてたり、ソロ的なセクションもあるけど、そこはソロじゃなくてそういう雰囲気で、っていうのは言っている。人生を語るところじゃない。形式的に順番にソロを弾いていくようなジャズ・フォームの曲もあるんですけど、ただのサウンド、なんかローズのいい感じのサウンドっていうように演奏してもらっている。意識としては全然違うものをやっているってことですね」
――強烈な個の集積で成り立っているんだけど、そこにエゴがないのも印象的ですね。
市野 「rabbitooに関しては、ジャズっていうよりはビートルズ的な考え方で、ギターを重ねたかったら一番得意な人に弾かせたいし、必要じゃない曲なら僕は弾かなくていいって考え方。ギタリストだからギターを弾こうっていうよりは、ビートルズ的にパートで、鍵盤3人で3パート欲しければ3人持ってくる。そういうふうに演りたいっていうのがありますね。」
田中 「やっぱりサンプリング以降派だから。人の音で成り立つことを経験しちゃってるからね。要はどう組み立てるかですよね」
――個人個人のソロの連続ではなくて、いろんなものが折り重なってシームレスに連なっていって、時折滲んで混ざっていったりするっていう感じは、田中さんが活動していたシカゴのポストロックの感覚とも近いですね。
田中 「それって、オーネット・コールマンについてどう考えるかってことなんですよ。ハーモロディクスについてどう考えるか。僕のハーモロディクスの理解は、一人一人がセルなんです。セルが糸が伸びるみたいに奥まで続いているんです。その糸が交じったところがハーモニー。狙って出す和音じゃなくて、たまたま交じったところ。だからリズムの上でメロディックなことをしていれば、絶対に交じり合うからハーモニーは避けられない。リズムに関しても同じことがいえて、4小節で割るんじゃなくて四分音符だけ必ずあれば、何拍子であっても周りとあう場所がある。音楽が横に広がっているイメージですね。横に一人一人が並んでいて、それがお互い同じテンポでやっている。たとえ違う拍子でも同じテンポでやっていることで、偶発的に新たなリズムやハーモニーを生んでしまう。だから基本はメロディだと思います。シカゴの音楽ってそういうイメージですね」
市野 「平行移動して滲むっていうか、ハーモニーになって消えて、また別のものになるっていうか。そういうのはrabbitooの感じだね」
――田中さんはそういうところにいたからこそ、rabbitooのサウンドにあそこまで貢献できる気がしますね。
市野 「田中くんは全体が見えている。自分のことをやるんだけど、それがどういう風にハモっているかを感じられる。自分のパートのことももちろんなんだけど、他のパートもケアできる」
田中 「どっちかというとそれしか考えていない。自分のドラムのソロとかパートについてはあまり考えたことがないんです」
市野 「とくに僕は曲のモチーフや設計図を持っていったりしている時点で、その部分がどうサウンドしているかばかりが気になって、全体としてそのパートが必要かどうかなかなか判断がつかないんですよ。でも、田中くんは曲がどう流れているかを見ててくれて、“それ、いらないっすよね”って言ってくれる。で、カットしましょう、みたいな」
――rabbitooの特徴としてサックスの存在があると思うんです。テクノとかポストロックとかと一緒に聴きたいけど、サックスがある分、体温もノイズも加わってアトモスフィアが変わっていてクールになり過ぎないのが面白い。
市野 「たとえば、ミニマルなラインをふたつ並べて、サックスで一つ吹いてもらうと凄く強い。息遣いがあるからね。どっちがどっちを弾いてるかわからないくらいのミックスにしたくても、管楽器だけはそういうことが不可能。だから、別のアトモスフィアを持ち込んでもらうことを考えましたね」
――エフェクトかけても、どこまでも人間が出ますからね。
市野 「だから細かいラインじゃなくて丸投げでカラーをつけてもらったり、密度を表現してもらったり。結果的に長くソロ的に吹いてる部分が多くなるんですが、それもソロじゃないっていうところが重要ですね」
――しかも藤原大輔が入るってのはなかなか重いじゃないですか。僕はphatとか、藤原さんのソロをジェフ・ミルズsubaみたいなものと並べて聴いてた世代なので。
市野 「その不思議なバランスが面白いと思うんですよね。個々のキャラクター込みでどうやってサウンドを作っていくかっていうのが魅力ですね。あと、大輔がドラムにかけてるエフェクトはライヴならではの面白さですね。そこは即興性が楽しめるところだし、大輔のセンスが出てますしね」
――今でもライヴをやるたびにサウンドが進化している感じがありますよね。
市野 「まだ完成してはいないので、これからもブラッシュアップしていくと思います。4月16日の渋谷クラブクアトロでの公演は現時点の最新型ってことで。変拍子好きの人が拍子を数えて楽しんでるって話を聞いたことがある一方で、広い会場でスタンディングで聴きたいって人もいたので。クアトロではこれまでのライヴにはない音響や音量、音圧もあるだろうし、自由に楽しんでもらえたらと思いますね」
取材・文 / 柳樂光隆(2014年3月)
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VELVETSUN PRODUCTS presents
rabbitoo
national anthem of unknown country
1st Album Release Party

(SONG X LIVE 014)

2014年4月16日 (水)
東京 渋谷 CLUB QUATTRO

〒150-0042 東京都渋谷区宇田川町 32-13-4 5F / 03-3477-8750
出演: rabbitoo(市野元彦 / 藤原大輔 / 千葉広樹 / 田中徳崇 / 佐藤浩一) / スガダイロートリオ(スガダイロー / 東保 光 / 服部マサツグ) / 降神(志人 / なのるなもない)
DJ: やけのはら / Yoshio*o(JZDMS) a.k.a. 大谷能生
開場 19:00 / 開演 19:30
前売 3,500円 / 当日 4,000円 (税込 / 別途ドリンク代)

ぴあ 0570-02-9999(P: 226-245) / ローソン 0570-084-003(L: 72881) / e+ / クラブクアトロ店頭

[イベント詳細]
www.club-quattro.com/shibuya/schedule/detail.php?id=3269

主催: 株式会社ソングエクス・ジャズ / VELVETSUN PRODUCTS
VELVETSUN web www.velvetsun.jp


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