最初で最後のワンマン・ライヴ〈支配からの卒業〉直前 サ上と中江、1stフルアルバム『夢見心地』を語る

サ上と中江   2016/12/06掲載
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 東京女子流中江友梨とラッパーのサイプレス上野がタッグを組んだラップ・ユニット、サ上と中江が約3年に及んだこのプロジェクトにアルバム『夢見心地』とワンマン・ライヴ〈支配からの卒業〉で遂にピリオドを打つ! これまでの活動の集大成とも言えるアルバムは、デビュー曲となる「SO.RE.NA」から、アルバム新録となるエモーショナルな「To Be Continued」まで、“サ上”と“中江”という、年の差も大きい、性別も違う、スタンスも別……という、全く別々の2人だからこそ生まれた楽曲に貫かれ、“化学反応”という言葉がふさわしい内容となっている。改めて、この3年間の動きについて2人に伺った。
――今回の2人揃ったアーティスト写真は、上野くんのスタジオ兼住居兼溜まり場の通称“ヤサ”で撮られたものだけど、雑然とした部屋の中で上下スウェットで弁当食ってる上野くんと、真っピンクの頭の中江さんという、なぜかマイルド・ヤンキー感の強すぎる雰囲気で衝撃を受けました。
中江 「私がここにいて大丈夫なのかなって(笑)。でも変に落ち着く感じがありましたね」
サ上 「MU-STARSの『QUASAR EP』みたいな感じで。汚い部屋アー写シリーズというか(笑)」
――そしてアルバムのジャケは『ビールとジュース』に続いて、デ・ラ・ソウルのオマージュな雰囲気もあり。
中江 「それプラス、とんねるずさんの……」
サ上 「生ダラ(『生でダラダラいかせて』)のOPオマージュね」
――根本 敬さんが題字書いてた時のやつだ。……って、分かりづらいわ!
中江 「私だったらこのジャケ見たら買いますよ。“どんなグループなの?!”って興味湧くもん。見ただけじゃ分からなすぎて(笑)」
サ上と中江「夢見心地」CD + DVD
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――しかし、上野くんと中江さんで顔面の容積が倍ぐらい違うね。
サ上 「大きなお世話だよ!」
――こんなに顔近づけて中江ファンからブーイングが起きないか心配です。
中江 「もう最近は全然起きないよね」
サ上 「最初の頃のライヴは、こんなにアウェイになることがあるのか!ってぐらいブーイングも起きてたけど」
中江 「今や私と上ちょが手を繋いだり、肩組んだり、おんぶしたりしても何も起きない(笑)」
サ上 「俺が無害なことが伝わった(笑)。昔はブーイングしてた人達が、いまや酒を差し入れしてくれるようになってるからね」
中江 「でも、東京女子流の庄司芽生が、〈マイメン〉の時にダンサーとして踊ってくれたりするんですけど、その時に上ちょが芽生と手を繋いだりすると、ブーイングが起こるんですよ」
サ上 「この前も、指切りしたらブーイングが起きて。そこは許さねえぞって(笑)」
中江 「私の場合は“もう……仕方ない……”みたいな感じなのかな?(笑)。上ちょも私への関心薄くなってるんじゃない?」
サ上 「そんなことないけど、でも〈やついフェス〉に出た時、楽屋でDJのBEAT武士(Steruss)と中江がキャッキャしてて、俺は普通に荷物片付けてたら、“なんで嫉妬しないの?!”って言い出して(笑)」
中江 「昔はタケちゃんと遊んでたら“ジェラス!”とか言ってたのに、もう新鮮味がないのかなって(笑)」
――熟年夫婦みたいな話になってきたな。とは言え、計画期間から数えると、約3年に渡った“サ上と中江”プロジェクトですが。
中江 「3年ってこんなに早いんだなって改めて思いますね。だって、高校生だったんだよ、私」
サ上 「だから、MTV『サ上と中江の青春日記』も、中江は制服、俺は学ラン――しかもサイズが合ってなくてパツパツの――でデートするって企画があって。制服のままリハとかレコーディングもしてたもんね」
中江 「学校のお弁当を食べながらRECしたり(笑)」
サ上 「“今度買ってくるねっ”て言ったまま、そのまま立ち消えるという。まさに〈SO.RE.NA,〉の通り“こんどは絶対ないんでしょ?”って。サ上と中江は、サイプレス上野とロベルト吉野の活動が休止してる期間の時に始まったから、“休止中にまた面白いこと・変なこと始めたな”っていう反応もあって。ただ、俺自身としては、そういう時期だった分、止まらないでなにか新しいことを始めたいって気持ちもあったし、その欲求を形にできる場所だったね。その後、『フリースタイルダンジョン』も始まったり、サ上とロ吉以外での活動が増えるキッカケでもあったと思う」
――「フリースタイルダンジョン」は観てる?
中江 「もちろん! メンバーも見てますよ。芽生から“上ちょ今日も可愛かったw”みたいなLINEがきたり」
サ上 「(満更でもない表情)」
――憎たらしい……。
中江 「でも、『フリースタイルダンジョン』に出てる上ちょは別世界の人みたいで、急に遠く感じるんですよ。モンスター側だし、プロフェッショナルだし、スゴい人なんだなって改めて思う。だから、ライヴとかで私が上ちょにタメ語でメチャクチャ言ってることに、びっくりする人がいるのも分かるんですよ。あっこゴリラさんに“マジで誰に言ってんの?! ヒヤヒヤするわ!”って言われるのも分かる(笑)。でも今更直せないし、相方だし、敬語使うのも変だな〜って」
サ上 「でも、実はライヴ終了後、俺がステージの後ろで超怒ったりしてるかも知れない(笑)」
中江 「私も“すんませんでした! さっき言いすぎました!”とか(笑)」
――先輩と後輩で組んだ、上下関係がはっきりしてるお笑いみたいな(笑)。
中江 「でもサ上と中江で会うと、いつもの上ちょだからホッとするんですよ。だからついつい言い過ぎちゃうんですよね」
――この3年間でラップに対する印象は変わった?
中江 「ダンスのBGMだったりで、外国のヒップホップは聴いてたけど、日本のは全然聴いたことがなくて。だけど、サ上と中江を始めてからいろんな日本語ラップを聴くようになって、自分が知らないだけで、スゴくシーンは広くて、バリエーションがあることが分かったし、興味が湧きましたね」
サ上 「女子流の曲でもラップやってるもんね」
――「リフレクション」でのラップは、サ上と中江があったからという流れでもあったと思うんだけど。
中江 「女子流のラップ・パートは私が担当になりましたね(笑)。女子流の時と、サ上と中江の時は(キャラクターを)使い分けてるの?って言われることがあるんですけど、私自身の中身は変わらないけど、キャラクターは変えてると思うし、スタンスも違うと思う。サ上と中江で動く時はインタビューでもピンクのウィッグを付けてるのもそうだし。アプローチとしても、女子流はグループだから、歌やダンスを“合わせる”とか“揃える”みたいな、“グループとしての魅せ方”があるんですよね。だけど、サ上と中江は決まりがなくて、好きなように楽しくやれるし、それが重要なのかなって。良いか悪いか分からないけど、サ上と中江の時の方が楽しそうって言われます(笑)。勿論、女子流も楽しいんだけど、その向かうベクトルが違うと思う」
――フリースタイルな楽しさと、揃えることで生み出される楽しさは違うもんね。
サ上 「最初は女子流の“ライヴでのポジション”みたいなことが体に染み付いてたのか、俺がライヴ中に勝手に動きまくってたら困惑してて。“止めてよ! 前に行かないでよ!”って(笑)。それに慌ててリリックが飛んじゃう時もあったり。だから、ラップのライヴはそうじゃないよってことを伝えて」
――確かに一回目のStudio Coast、二回目のVisionでのライヴは、やっぱり動きが硬かったと思う。
中江 「それが今や、上ちょがラップしてる時に私がちょっかい出しにいって」
サ上 「それに動揺して俺がリリック飛ばしそうになるっていう(笑)」
中江 「でも、サ上と中江のライヴって面白くないですか?!……って、自分で言っちゃったよ!(笑)」
サ上 「いきなりノリツッコミ始めたな(笑)」
中江 「曲もMCも自由だし。女子流のライヴだと脱線すると怒られちゃうんですよ。でも、サ上と中江のMCはとにかく自由だし、誰も怒らないから、それが居心地よくて楽しいんですよ。そうするとあのガチャガチャのMCになっちゃうんですけど(笑)」
――そして、この3年間の集大成となるアルバム『夢見心地』がリリースされます。
サ上 「決まってた曲順を、最後の最後になって俺のワガママで変えさせてもらって。一曲一曲のカラーが強いし、どう組み合わせるかでも見え方がガラッと変わるから、リリース順みたいに単純に並べただけだと、上手く響かないなって」
――確かに、一曲毎にカラーが違うし、その時々の状況が織り込まれてるよね。
サ上 「年の差がある2人がタッグを組んだから〈SO.RE.NA〉を作ったり、中江が高校を卒業するタイミングだから〈さいごの宿題〉を作ったり、ほぼ毎月やってた2.5D〈続・サ上と中江の青春日記〉で新曲をやりたいから曲を作るってこともあったから、その時々のマインドが一曲一曲に織り込まれてると思う。このアルバムはそういう3年間の道程が一枚になった、総決算というか」
中江 「〈SO.RE.NA〉とか、初期の曲を改めて聴き直したりすると、私のラップがちょっとぎこちなかったりして、可愛いな〜って」
サ上 「自分で言うか?」
サ上&中江 「SO.RE.NA」
――定番だな、そのくだり。
中江 「ラップに慣れてないし、何も分からずにやってたんだろうなって。そういう風に、一曲一曲に思い出が深すぎて、聴いてると一曲一曲についてスゴく考えちゃう。〈売命行為〉のRECはスゴく苦戦したな、とか」
サ上 「ラップが上手く出来なくてブースで泣いてたもんね」
中江 「言うな! その話!(笑)。ラップ・ヴァースが初期で一番多かったんだよね。16小節ひたすらラップするっていう。でも今となってはそれもいい思い出だし、そういう思い出の詰まった“アルバム”になったと思いますね」
――その意味でも、新録曲はラップの感触が違った?
中江 「以前は、どういうラップすれば良いのかなっていう取っ掛かりすら分からなかったんですよね。だから、どう歌えばいいですか?って、上ちょにガイダンスを貰わないとラップできなくて。でも、サ上と中江でライヴを続けていく中で、ラップは誰かに似せなくてもいいし、“こうでなきゃいけない”っていうのはないってことに気づいたんですよね。“ラップっぽく”ならなくても、自分らしく聞こえればいいかなって。そして自分がいちばん気持ちよくハマるところでラップすればいいし、その気持ちよくなるラップを見つけるまで、いろんな方法を試せるようになりました」
サ上 「〈売命行為〉で号泣してた子と同じ子とは思えない!」
中江 「まだ言うか!」
サ上 「ホントに感動してるよ。ラップってデモを聴かせて“この通りにやって下さい”ってやる方が難しいんだよね。ラップはその人のクセやノリが、歌よりも強調されるから、完璧になぞるとコピーになっちゃうし、なぞること自体も難しい。最初はなぞろうって頑張ってたと思うけど、そこから離れた時に、気楽にブースに入るようになったよね」
中江 「最初の頃はブースに入るのが怖かったもん」
サ上 「しかも、先に俺が録っちゃってるから、それがプレッシャーにもなったり」
中江 「上ちょが三〜四回のテイクで終わらせてるのを見てるから、時間をかけるわけには……って余計緊張しちゃって」
サ上 「だから、今回はスゴく楽しそうにブース入ってるようになったなって。〈マイホームタウン 大阪〜熊本〜横浜 feat.深瀬智聖〉も、〈売命行為〉タイプのシンプルなビートにロング・バースっていう曲だから、正直大丈夫かなって思ってたんだよね。でも、サクッと余裕でこなしてて、そこに成長を感じたよ」
――「マイホームタウン」は関西弁でラップしてるから、フロウも変わると思うし。
中江 「変な感じでしたね。ラップで関西弁を喋るんじゃなくて、ラップをするっていうのは。でも深瀬さんのイベント〈deep chisei house〉でラップしたら、RECよりもスムーズにいけましたね」
――そんな深瀬さんもゲストで登場する、ラスト・ワンマン・ライヴが12月9日に行なわれます。
中江 「タイトルは〈支配からの卒業〉です」
サ上 「今まで支配されてやってたのか、俺達はっていう(笑)」
――上野くんが30半ばになって支配からの卒業って言ってたらやばいよね。
サ上 「“まだ校舎の窓ガラス割り足りねえ!”って」
――ただの危ないオジサンだわ(笑)。
サ上 「仕掛けはいろいろ考えてるし、面白い感じになると思いますね。ワンマン自体、これが初めてだし」
中江 「最初で最後のワンマンなんですよ。だから集大成を見て欲しい。でもサ上と中江のワンマンですよ? 絶対メチャクチャになる!」
――それは君たちの心がけ次第だからな〜(笑)。
サ上 「段取り忘れまくるとか」
中江 「それを普通にステージ上で話し出すからね」
サ上 「DJのBEAT武士も困惑してるよ」
中江 「武ちゃんは察しが良いから大丈夫だよ」
サ上 「はっはっは!! 19歳に察しが良いって言われる34歳(笑)」
中江 「こんなに分かりづらいのにちゃんとライヴができてるのは、武ちゃんのおかげだよ」
サ上 「最後のサ上と中江のライヴは、嫁が勇気を出して見に来るって言ってたから」
中江 「え!そうなの! “あの女だれよ!”とか言われたらどうしよう」
サ上 「中江ってわかるよ! ダンナの仕事相手を知らない方がヤバいわ(笑)」
中江 「でも、サ上と中江の活動も残り一回なんですよね。“え! もう終わりなの!”って自分でも思うし、もともと女子流のファンで見に来てくれた人が、サ上とロ吉のライヴにも来るようになったり。逆にサ上とロ吉のファンの方が女子流を知ってくれるキッカケになったり、色んな方面に広がってくれたのが嬉しくかったし、それが終わってしまうのは本当に寂しい。だから、寂しすぎてメッチャ勝手なことを言ってて、“終わるんでしょ?”って言われても、“終わりっちゃ終わりですけど、始めようと思えばいつでも始められるんで!”って。“その気になったらことを起こすんで! 私の意思が強ければいけます!”って言ってます(笑)」
サ上 「俺の意思は関係なしか(笑)。でも、そういう含みを持たせたり、望みがあるようなことを言ってるよね。だからアルバムの最後が〈To Be Continued〉でもあるし」
――いきなり戻ってくる場合の多い、ラッパーの引退みたいな話だし、そこにヒップホップの悪影響が出てるのかしら(笑)。
中江 「“終わり”って言葉がすごく嫌いなんですよ。終わりって言っちゃったら、ホントに終わっちゃうじゃないですか。だからそれは言いたくない。ステージに立つ人間としては同じだけど、全く別のフィールドで動いてた、絶対出会うはずのなかった2人が、MTVの番組をキッカケに出会ったこと自体がスゴいことだと思うし、3年も続いたこのプロジェクトを、完全に終わらせるんじゃなくて、区切りはつけるとはいっても、サ上と中江という関係は終わらせたくない。どこかで繋がってはいたいし、いつでも復活できるようにしたい。ラスト・ライヴの前に言うことじゃないかもしれないけど(笑)。だから大事にしたいんですよね、サ上と中江を」
取材・文 / 高木“JET”晋一郎(2016年11月)
サ上と中江ワンマンライブ「支配からの卒業」
sauetonakae.tumblr.com/
2016年12月9日(金)
東京 代官山 LOOP
開場 18:30 / 開演 19:30
スタンディング 3,000円(税込・整理番号付 / 別途ドリンク代 600円)

ローソンチケット(L 74901)
お問い合わせ 代官山 LOOP(03-6277-5032)

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