言葉が違うだけで同じこと――澤田政嗣(WDsounds)×今里(STRUGGLE FOR PRIDE)

STRUGGLE FOR PRIDE   2016/10/21掲載
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 美しい轟音や甘いメロディ、淀みの無いフロウの内側で、シグナルのように発信されるMORE THAN MUSICを受け取って自分の街を歩く。込められた想いや背景に心を巡らせながら――。リミックス・アルバム『5014CompMostWANTED-revisit-』のリリースを控えるWDsoundsは、そんなリスナーの期待を裏切ることのないレーベルだ。レーベル・オーナーであり、ハードコア・バンドPAYBACK BOYSのヴォーカル、さらにラッパーJ.COLUMBUSとして活動する澤田政嗣(MERCY)が、STRUGGLE FOR PRIDEの今里との共同企画としてスタートした〈NEW DECADE〉のスペシャル・パーティ〈NEW DECADE Z〉を11月4日(金)に東京・代官山 UNITで行なう。
――SFPは、8月にEARTHDOMで行なわれたTHE SHRINE来日公演の出演がキャンセルになっていたので、〈NEW DECADE Z〉が東京での復帰ライヴになりますね。
今里 「あの日、逮捕されたんです。会場に入ろうとしたら“今里さんですよね?”って話しかけられて。知らない人だったんで“こんにちはー”なんて挨拶したんですけど、“ちょっといいですか?”って、そのまま。大切なライヴだからそれだけ、15分で終わらせるから、ってお願いしてもやっぱダメでしたね。8月いっぱいは警察に」
――そうだったんですね。
今里 「色々な方が必死になって動いてくれて。ほんとWDsoundsが助けてくれた」
澤田 「いやいやいや(笑)」
今里 「ほんと、そうなんですけど。だから〈NEW DECADE Z〉が東京復活一発目ってところで」
――出ないところもふくめてSFPだな、なんて思っちゃったりしてたんですけど(笑)。
今里 「やりたかったんです(笑)。EARTHDOMでやりたかったです」
――ライヴって……色んな意味で事件でもあるから。妄想や期待、誤解も含めて結果、良いライヴだったなと思います(笑)。
今里 「カウントしてくださってありがとうございます(笑)。FELEMが呼んでくれて、Kemmyくん(dREADEYE)企画でってすごい嬉しかったんですよ。前の大阪のライヴも“おかえりなさい”ってパーティで、その東京編みたいな感じだったから。ほんと申し訳ないなって。すみません」
――でも、それもふくめてハードコアかなって(笑)。
澤田 「そんなふうに思わせてくれる間口の広さってすごくないですか?」
――適当にやってるんじゃないって思わせてくれる信頼があるから、ですかね。SFPもそうだし、WDsoundsもそうだし、何か想いがあってそうなってるんじゃないかなって。真面目で……。
今里 「純粋な」
――同じようなことは自分にも起こりうることだと思うし、作品・行動に想いとか、満ちているものを受け取れる人が惹かれていくのかなと思います。かっこいい!って夢中にさせていくことと、このひと何がしたいんだろうって“?”を置いていくこと、気持ちを揺さぶるという意味では、一緒だと思うんです。MERCYさんはそのセンスがすごく秀でている。
澤田 「ただ、個人的には“?”を置こうとは思ってないです(笑)。どれも後生に語り継がれるであろう、歴史に残る名盤として出してますよ(笑)。MONADアルバムは気に入ってくれた人はきっと一生聴いてくれると思うから。絶対。人間って一貫性ってあるようでないじゃないですか」
――WDsoundsは自分たちの身の回りの音楽を世に出していくもの?
澤田 「基本的にはそうなんですけど、リリースの一番最初がIntegrityだったりするから、そうやって考えると別に……。タイミングですね。自分とアーティストが、これを形にしたら面白いって、互いに思ったものが出てるっていうイメージだと思います」
――MERCYさんはプロデューサーのような関わり方になるんですか?
澤田 「自分でも何をやってるかあまり把握してないです、正直(笑)。細かいところとかは助けてもらってますけど、基本一人でやってます。相談しつつも自分の責任で。そのとき、一緒に遊んでいる人たちを出してる。もちろんかっこいいと思ってるから出してるんですけど。……すげーかっこ悪いんだったら出してみたい(笑)。興味も愛情も100%無いものでも、出すと何が起こるんだろうみたいな。やってみたいかもしれないですね。まあ、やらないですけど(笑)。……そんな感じで、WDsoundsは全部、ノリだと思います。ノリで言ってることほど、面白いことってないじゃないですか?」
今里 「でも、実現させてるからすごい」
澤田 「いやいやいや(笑)。例えば、経験をがっつり歌っている人もいれば、見てきたことを歌っている人もいて、それぞれ立ち位置も違う中で、自分のフッドである“街”を歌うことをスタンダードにしたのは、日本のヒップホップだったらERAだと思うんですよ。彼は、俺の生きて来た環境、一緒にバンドやってた俺にとってスターで、その彼が自分の世界観のみを歌ってるのが『3 WORDS MY WORLD』。持っているヴィジョンを明確に打ち出している。そこを見えるようにするというか、どうやったら人に伝わるようになるのかを考えるのが、レーベルにおける自分の仕事、役割だと思います」
――それが“ノリ”をどうやって形にしていくかってことなんですね。続けることで出会いもあるでしょうし。
澤田 「興味があったり、好きな人って結局会えたりするじゃないですか。それがやっぱり自分としては、大きいですね。“悔しい”みたいなのはありますけどね、負けたくはないんで。でも、悔しいけどかっこいいってものはあって。その人にしか出来ないし、俺には出来ないなっていうのが、かっこいいものだとは思います。そういうものをリリースしてますね。もちろん全部ではないですけど、11月の〈NEW DECADE Z〉は、そうやって俺が出会ってきた人たちを呼んでいます」
――〈NEW DECADE〉は始まって何年目ですか?
澤田 「6年目くらい? いまいち……定かではないです(笑)。今里さんとかと皆で池袋bedで遊んでて、bedのJomoくんから“何かやろうよ”みたいに話をもらって……」
今里 「多分そう。俺が〈The Sexorcist〉に入って、皆が遊びに来てくれてて。Jomoくんから誘われて……ノリだよね(笑)」
澤田 「一回目が終わって、Jomoくんに“9月どうすんの?”って言われて、これレギュラーだったんですか?!みたいな」
今里 「(爆笑)」
澤田 「そのまま続いている(笑)」
今里 「最初は近い人たちが出てくれて」
澤田 「〈NEW DECADE Z〉は、KNZZくんの『Z』のリリース・ツアー・ファイナルでもあるので“Z”になってるんですけど。大きい所でいっぱい出演者がいた方が良いかなって。その中で、誰が一番かっこいいの?みたいな。後は来てくれた人で判断して下さいっていう」
――東京、東海、大阪から、これだけのアーティストが揃って同じ場所に集まることは稀だと思いますし、ツアー・ファイナルにこそふさわしい豪華なラインナップになっていて。……覚えていないかもしれないけれど、先日MERCYさんが「ギャングスタ・ラップには夢がある」と仰っていたのが印象的で。ある意味〈NEW DECADE Z〉というステージが用意されていることも、その“夢”のひとつに当てはまるのかな。精神的なものも含め、ゲットーという存在が定義となる音楽だとは思うんですが。
澤田 「川崎の工場地帯で炎が上がってるところがあるじゃないですか? “あれを見てたから、俺はおかしくなったと思うんだよね”って話を聞いたし。ま、場所であれ、精神的なものであれ、比較することは出来ないというか」
今里 「国によって定義は違うし、規模も違う。日本には日本なりのゲットーがあると思います。そういう各々の状況下で、出来る最大限のことをやってる人たちはいる」
――そういうものに惹かれること、引き寄せられていくのはなぜなんだろうと。
澤田 「かっこつけてやったことじゃないからこそ、経験したことって実際問題、言いたくないと思うんです。でもそれを作品に出来るって、音楽の良さであるというか。そこが好きだったりするんですね。逆にすごいナードなものでも共通することだと思うし。経験、意見を思いっきり外に出すことじゃないですか。自分のことを全く知らない人のところまで伝える。出せてる人は一握りよりもっと少ないぐらいじゃないですかね。そういうことをすることで、本人的に消化する部分もあるだろうし」
今里 「説得力ですね」
澤田 「ギャングスタ・ラップって、“ギャングスタ”及び周りで見ている人しかやっちゃダメな音楽じゃないですか。実際見たもの。本読んで書けるものでもないし。限ったことではないですけど、ギャングスタ・ラップって“突き詰めた”音楽じゃないですか」
今里 「あと地域性で言えば、東京の人って少ないですよね。俺らは最初から東京が広いと思ってないっていうか。年上の友達とかもそうだったから。そんな大掛かりなものじゃないでしょ?っていうのは染み付いちゃってるかもしれないです」
――それぞれの経験を作品として昇華する。そのひとつひとつは局地的なものではあるけれど、呼応する人たちが様々な場所に存在していて。もちろん広がっていく過程で、受け取る側の想いもミックスされていくでしょうし。
澤田 「地図とかカテゴリーにハマるものって、作るのは簡単だと思うんです。でも、ちょっと違うかなって思う時期とかが確かにあって。俺はそういう時期にSFPのライヴを観ることが出来たんで。ハードコアってほんとに存在するんだなって、それがやっぱり大きいですね。とにかく俺は今里さんの後をひたすらついていかせてもらって、色んなものを見せてもらったってだけなんで」
今里 「やめてください(笑)。僕がMERCYくんについていってる」
――“かっこいいこと”にも色んなセンスだったり、受け止め方があって。額面通り真面目な人がいてもいいし、それを指差して笑ってる人がいてもいいと思うんです。でもどこかで技術に惑わされて、本物を判断する基準がずれてきている気がします。
今里 「“ラップ”と“ヒップホップ”の違いだと思います。KNZZとかは存在もそうだし、やってることも全部誇りに思ってる。例えば、ヒップホップとかハードコアとか名称はどうでもいい(笑)。よくわかんないですけど、何でもそうなのかな。形態や言葉が違うだけで同じことだとも思います。俺らはそこを分けていない」
取材・文 / 服部真由子(2016年10月)
「NEW DECADE Z」supported by NIXON
wdsounds.com/
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2016年10月28日(金)
東京 代官山 UNIT
www.unit-tokyo.com/
開場 / 開演 23:00
前売 3,500円 / 当日 4,000円

[チケット取り扱い]
チケットぴあ(310-827) / ローソン(70935) / e+
トラスムンド
※前売特典: wdsounds sampler(未発表曲収録)

[出演]
LIVE: B.D. / BES / BLYY / C.O.S.A. / CAMPANELLA / D.U.O TOKYO / DOWN NORTH CAMP(ISSUGI / 仙人掌 / Mr.PUG / YAHIKO / CENJU / OYG / J.COLUMBUS) / febb / ILL-TEE / KING104 / KNZZ / MASS-HOLE / MIKUMARI / PSYCHO PATCH / R61BOYZ / STRUGGLE FOR PRIDE / THE EREXIONALS / THE OTOGIBANASHI'S

DJ: BUSHMIND / FOOTCLUB / IKEBUKURO BED(JOMO & DJ MANTLE) / MASS SCHEME / MICHIOSHKA(EBBTIDE RECORDS) / THE RIVER / THE TORCHES / SEMINISHUKEI

produced by WDsounds
supported by NIXON
sponsored by BackChannel / CHILL OUT

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