次世代アーティストの発掘・育成・普及  Eggsプロジェクト

2021/04/30掲載
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Eggs
https://eggs.mu/

 近年の音楽シーンを見渡すと、海外で誕生したサービスであるYouTube、Apple Music、Spotify、Tik Tokなどに音楽流通インフラを委ねている国内状況がある。そんななか注目したいのがレコチョクとタワーレコードが共同で立ち上げた国内発のEggsプロジェクトだ。次世代アーティストの発掘・育成・普及を目的とした、インディーズを中心とした3万組以上のアーティストと40万人以上のリスナーが出会えるネット・コミュニティである無料音楽プラットフォームEggsの運営。そしてCDリリースや配信、プロモーションやライヴ活動などを支援するEggsレーベルの事業化。さらにはDSP(デジタルサービスプロバイダー/楽曲をサブスク事業者などに届ける仕組み)を内合したTOWER CLOUDなど、アーティスト活動を支援する画期的な試みに注目したい。実際、作品を発表したい表現者にとってEggsは、アーティストファーストなサービスと言えるだろう。さらに2019年、レコチョクとタワーレコードが共同で株式会社エッグスを設立したことで、その動きはさらに加速する。コロナ禍で大変なこのご時世、ライヴハウスで思いきった活動をできないバンドやアーティストのためにも、Eggsが仕掛けている新たなチャレンジについて、株式会社エッグスの黒沢忍さんとタワーレコード株式会社のレーベル制作部・吉野省吾さんに話を聞いた。

Eggs
黒沢 忍

タワーレコードレーベル
吉野省吾
――無料音楽プラットフォームEggsについて教えてください。
黒沢「立ち上った経緯は、インディーズ文化を大切にすることが今後の音楽業界を支え、底上げしていくことにつながるだろうという思いでした。現状では、アーティストが次のステップに進むためのオーディションを行ったり、タワレコやEggsスタッフ、そして公式キュレーターがレコメンドするアーティストをしっかりと発信して、ライヴブッキングや大型フェスへの出演、海外での活動支援をかけてのコンテスト、EggsレーベルからのCDリリースをやっています」
――アマチュアのアーティストにとって、Eggsのような存在があることは目標が明確になるので嬉しいことですよね。しかも、レコード会社のスタッフなどは常に新人を探しているでしょうし、ニュー・カマーをいち早く発見して聴きたいリスナーもいますし。貴重なマッチングの場となっているわけですね。それこそYOASOBIのikura(幾田りら)や、勢いを感じるシンガー・ソングライターのみゆな、Ranも登録されていますよね。
黒沢「Eggs内で注目されていたアーティストの中には、あいみょんさんもいました。ほかにも、ドラマストアやリュックと添い寝ごはんなどバンド系も多数いますね」
――世界的には、最近になってDSPが新人アーティストを育成する試みをやり始めていますが、じつはいち早く取り組まれていたのがEggsですよね。
黒沢「いいプラットフォームだなと、手前味噌ですが思っています」
――ライヴ・イベントも定期的に企画されているんですか?
黒沢「タワーレコード渋谷店 B1 CUTUP STUDIOで、月に一度『EggsレコメンLIVE』を企画しています」
――新宿ロフトやShibuya eggman、TOKYO FMの『SCHOOL OF LOCK!』、大阪のFM局の802とも共同でオーディションなど、企画を開催されていたりもするんですね。
黒沢「ロフトさんは提携しているライヴハウスとして、10代をメインにした企画ライヴをやっていたりします。eggmanさんとはオーディションをやって、入賞アーティストにはeggmanさんのレーベルに所属してもらったりします。あと、大きいところですと『SCHOOL OF LOCK!』さんと一緒にやっている10代アーティストのみによるロック・フェスティバル『未確認フェスティバル』があります。ほかにも『ビクターロック祭り』では“ワン!チャン!!オーディション”というのもやっています。その賞品として、フェスへの出演権を提供していたりします」
――そして、株式会社エッグスではTOWER CLOUDというサービスを通じてDSPとして、Spotifyなどサブスクへの配信代行もやられていますよね。ちなみに“Eggs choice”とはどんな試みなのでしょうか?
黒沢「TOWER CLOUDのメインは配信代行サービスですが、“Eggs choice”はCDを世に出したい大多数のアーティストの中から、才能を感じたアーティストの自主盤をタワーレコードで販売する取り組みですね」
――CDをタワレコで応援してもらえるってアーティストにとって夢ですよね。“Eggs choice”では、雨のマンデーズ、pinfuが注目されています。
黒沢「pinfuは、CDどころか配信もしていなかったんですよ。Eggs内で発見しお声掛けして。“Eggs choice”における代表的なアーティストですね」
――pinfuも雨のマンデーズもセンスがまた素晴らしくて。“Eggs choice”は、リスナー的にも気になるニュー・カマーを発見する機会となりますよね。そして、TOWER CLOUDでは音楽性の高さを感じる一寸先闇バンド、ずみをがまたよくって。
黒沢「一寸先闇バンドは、Eggsとしてアーティストに寄り添った取り組みをしています。現在は配信メインではあるのですが、近々CDもリリースしたり、今後期待のできるバンドですね」
――Eggsレーベルについてコンセプトや大事にしていることを教えてください。
吉野「基本理念としては、Eggsのプラットフォームからまだ見ぬ新人アーティストを見つけ出して世に送り出そうという指針です。たとえば、まだまだ他社のレーベルの新人開発担当の目に留まっていないようなアーティストであっても、世に知っていただくきっかけのひとつとして存在していきたいなと思っています」
写真9
写真10
――タワーレコードは全国の店舗があることで、各地のバイヤーなど目利きのネットワークを作れていることは大きなメリットですよね。
吉野「そうですね。お客様に近い存在として店舗との連携や、しっかりとプロモーションをやれることは強みですよね。まだ世に出ていない才能の階段の一段目、二段目をタワレコ全店でバックアップしていきたいという気持ちが強いです。それこそ、タワーレコードのブランドを活用してほしいですね」
――タワレコ全国の目利きのバイヤーやスタッフに知ってもらうだけでもバズが生まれそうですよね。
吉野「音楽好きが集まっている会社なので、店舗スタッフに情報が届くこともいいプロモーションになるんじゃないかと思います。そこからまたクチコミなど広がっていくので。そして、そんなスタッフ自身が自分たちで、そのバンドを応援して大きくしていきたいんだってなったら嬉しいですよね」
――いい試みですねえ。ちなみに、Eggsレーベルからのイチオシのアーティストを教えてください。
吉野「今年3月17日にEggsレーベルから初の全国流通となるCDをリリースするアーティスト、あぶらこぶですね。まだ高校2年生なんです(取材時)。Eggsきっかけではあったのですが、奈良の橿原店スタッフが地元のアーティストとしてコミュニケーションをスタートさせました。お店の中に新人発掘マンがいたってことなんです。そんな動きからリリースが決定しました」
――いい話ですよね。ちなみにEggsレーベルからはこれまで何作品リリースされているのですか?
吉野「55枚です。若いバンドでもCDを出したい子たちは多くて。我々も世の中的にも、配信中心のプロモーションになっていく時代ではあるのですが、タワーレコードは全国に店舗がありますのでCDを含む音楽パッケージ商品の価値を高めていきたいと思っています」
――世界的に見ても、実は画期的なアーティストファーストな試みをEggsはやられているということですよね。日本のIT×音楽スタートアップって、なかなか結果を出せている企業が少ないのですがEggsは圧倒的に突き進んでいたんだなと。
吉野「我々の強みは全国に店舗があるとうことです。地方であればあるほど、お店を通じてアーティストやスタッフとのコミュニケーションが密接だったりします。その上で、無料音楽プラットフォームEggsを運営していて、Eggsレーベルもあります。音楽の発信の仕組みはあるので、ぜひアーティストの方もリスナーの方も注目してほしいですね」
2021年のEggsレーベル ディスコグラフィ



リュックと添い寝ごはん
リュックと添い寝ごはん

リュックと添い寝ごはん official site
 音楽配信サイト「Eggs」出身アーティストといえば、2017年結成の3人組バンド、リュックと添い寝ごはんが頭角をあらわしている。「Eggs」再生アーティスト・ランキングで1位を獲得し、オーディション“RO JACK for ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2019”では優勝アーティストに選ばれ、ロックフェス“ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2019”に出場を果たしている。そんな3人にこれまでとこれからを聞いてみた。
リュックと添い寝ごはん
『neo neo』

(SPEEDSTAR RECORDS・VIZL-1825)
リュックと添い寝ごはん
『青春日記』
(Eggs・RICE-1)
――バンド結成のきっかけは?
堂免英敬(b)「高校の軽音部出身で。僕と(松本)ユウが、入部前から“一緒にバンドを組もうね”って話をしていたんです。夏合宿に行く機会があって、最終日に発表会があって。ユウがやってたバンドに宮さん(宮澤)が惚れ込んで“いい声してんね!”ってバンドを結成しました」
宮澤あかり(ds)「ざっくり説明するとこうなります(笑)。バンド名は、私の中で流行っていた言葉で“添い寝”ってワードがあったんです。合宿の最終日、急がなくちゃいけなくて、リュックを背負いながらご飯を食べていたんです。それでこのバンド名になりました(笑)」
――ははは(笑)。結成後、どうやって「Eggs」を知ったのですか?
堂免「先輩が〈Eggs〉にオリジナル曲を投稿していたんです。それで僕らもやってみました」
宮澤「英さん(堂免)が全部やってくれて」
――そこから再生回数ランキングで1位に上り詰めていくと。バンドにとって自信になったんじゃないですか?
宮澤「〈Eggs〉で、バンドを知ってくれた方、見つけてくれた方がたくさんいますね」
――ランキングが伸びた理由は? 
松本ユウ(vo,g)「〈ノーマル〉という曲をいちばん聴いていただけて。高校生活のありのままを歌にしたんです。それが同世代に伝わったのかな。高校界隈で音楽やっていたらみんな〈Eggs〉をチェックしてますよね。あと、ライヴのブッキングの数が増えました。それと、ライヴに来てくださるオトナの数も増えました」
――あ、いわゆる関係者の方々ですね。これまでだとライヴをやり続けていく中でブッキングが増えたり、発見されることが多かったわけですが「Eggs」に登録してランキングで上位になることで、同じような効果が生まれたということですね。
宮澤「逆に、私たちもいろんなバンドを知りました」
松本「認知度が上がったおかげで、周りが知ってくれるようになったことは大きかったですね」
――そして、昨年春にはタワレコ限定でEggsレーベルからCDとして、EP『青春日記』がリリースされました。
堂免「めちゃテンション上がりました。〈グッバイトレイン〉がいいですね」
松本「僕らCDとサブスクの間世代なので、CDへの憧れがあったので感動しました」
――昨年末にはファースト・アルバム『neo neo』でメジャー・デビューという。「あたらしい朝」「海を越えて」「PLAY」がとても好きですが、今作のポイントはありますか?
堂免「リズム隊が全体的にタイトというかより大人っぽくなりましたよね。曲では、〈ほたるのうた〉が好きで、大事にしたい曲です」
宮澤「〈23〉で、ユウ君がピアノを弾いていて、クリックを聴かずに録ったのでリアルなライヴ感があらわれています」
松本「〈ホリデイ〉のイントロのギターにこだわりました」
――まだまだ大変な時代が続いてはいますが、2021年の目標は?
松本「“出会いを大切に”していきたいです。ライヴでの対バンなど大事に広げていきたいです。楽曲としてもレベルアップしていく1年にしたいですね!」
取材・文/ふくりゅう
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