一言で言うと、青春――DÉ DÉ MOUSEが“アガる”もの『be yourself』

DÉ DÉ MOUSE   2018/08/17掲載
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 DÉ DÉ MOUSEが、約1年4ヶ月ぶりにニュー・アルバム『be yourself』をリリース。新作は、80s〜90sのユーロビートやフレンチハウスなど、ディスコをベースにした、キャッチーなメロディ溢れるキラキラのダンス・ミュージックがずらりと並んでいる。DÉ DÉ MOUSEからイメージされる民族ボイスもトリッキーな展開もない、ストレートさがとても新鮮だ。フレッシュで高揚感に満ちた作品へと向かった、彼の思いをたっぷりと聞いていこう。
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――ニュー・アルバム『be yourself』は、どのようなテーマで制作されていったんですか。
 「去年『dream you up』を出してすぐの5月くらいに、夕暮れどきの多摩川の辺りを散歩してて、フィルターハウスを聴いてたら泣けてきちゃったんです。気分が高揚して、川辺の野外フェスとかでこんな最高の時間帯にこんな曲がかかったらテンション、激アガるなって。そんな気持ちになれる曲作りたい、夕暮れどきのディスコみたいなのをテーマにしようって思ったのが、今回のアルバムのスタートでした」
――全体的にキラキラした感触がありますよね。
 「そうですね。自分の好きなフィルターハウス、フレンチハウスって80年代とかのAORをサンプリングしてるものが多くて音的にキラキラしてるんですよ。ただ僕は、それをやるんじゃなく、きらびやかな質感だけを出したかったんです」
――曲の雰囲気としては、80〜90年代のユーロビート的なものを強く感じます。
 「80年代後期からアーリー90sのユーロビートとかを、今のEDMフォーマットでやるっていうのはありました。僕は10代のときにカイリー・ミノーグとかを聴いてたので、そこは意識しましたね。あとは、ジャスティス、Kitsune Maisonとかが出てきた頃の初期のエレクトロとか。その辺を自分の中でごった煮的に、どうやって要素として入れていくかって感じでしたね。自分がアガるものって切ない展開が好きだから、最終的にそこにうまく落とし込めればいいかなっていうのはありました。あとは、フロアでかけられるとか、ライヴでどう映えるかを意識して曲の展開を作ったりしました」
――特に本作は、気分を高揚させていくパワーがすごく感じられますね。
 「それはすごく意識してます。あと、前作『dream you up』と今回の『be yourself』って、曲の質感、曲調的には同じ方向に思われるかもしれないけど、実は自分の中では180度違うんです」
――前作の延長戦ではないと。
 「はい。『dream you up』は、DÉ DÉ MOUSEがDÉ DÉ MOUSEをやるってことを意識して作ったアルバムなんです。前作は、自分はほんとはこっちの音が好きだけど、ファンが喜ぶのはこっちだからって感じだったんですよ。だけど今回は、自分がアガるもの、自分の気持ちを入れ込んで作っていったんです」
――作る視点が完全に自分だったと。
 「そうですね。単純に、自分がエモくなれる音を探していくって感覚というか。DÉ DÉ MOUSEだから、民族ボイスを入れなきゃいけないとかちょっとトリッキーなリズムを入れなきゃいけないとか、それが取っ払われた感じです。そしたら、音が軽やかになったんです。僕は、自分が今いいと思ってるものを届けることが、今、やるべきことだなって思ってるんです。でも、単に独りよがりなものじゃなく、みんなが踊れるようにとか、僕がエモいと思った気持ちも共有してもらえるんじゃないかなとか、ちゃんと第三者を意識して作っていきました。それでも、“これDÉ DÉ MOUSEじゃなくてもよくね?”って人もいると思うんですよ。“民族声は?”“素直すぎねえ?”って人もいるかもしれない」
――キャリアを重ねて変化していくことと、イメージと対峙していくのはアーティストとして避けて通れないものですしね。
 「それもわかるんですよ。例えば、自分が大好きなアーティストの最初に衝撃を受けたアルバムって、新しい作品が出ても自分の中では越えられないじゃないですか。今、僕のことをいいと言ってくれる人って、ほとんどがサードアルバムの『A journey to freedom』が好きって言ってくれるんです。それに対して素直になれない時期もあったんですよ。でも、僕はエイフェックス・ツインが大好きだけど、今、アルバムを並べられて真っ先に『Syro』を手に取るかと言われたら、最初に衝撃を受けた『リチャード・D.ジェイムス・アルバム』を取っちゃう。そうやって、人は最初に衝撃を受けたものは越えられないんだって思えたときに、じゃあ、自分が毎回出す作品が、誰かの衝撃になるようにがんばろうって思ったんです」
――新しい作品へ向かう、前向きな気持ちがみなぎっていると。
 「それはあります。なので新作をDÉ DÉ MOUSEらしくないとか言う人も必ず出てくると思うけど、それも全部含めて今の自分を届けたいなと。否定的な意見を見るのは怖いから、自分がやりたい気持ちを押し込めるのは違うなって、今は思いますね」
――なるほど。では、アルバムで軸になった曲を挙げるとすると?
 「〈back to love〉ですね。去年の5月くらいから構想して曲作りにも着手してたけど、今回収録してるものってほとんどが今年に入ってから作ったものなんです。それまでにも何曲かはあったんですけど、〈back to love〉ができたときに、これだ!って思えて、そこから作業がダッと進みました」
――「back to love」は、ずばりキャッチーさに溢れた楽曲です。
 「まさに、今回のアルバムがキャッチーになるきっかけになる曲でした。民族サンプルを使わなきゃいけないとかいいやって思える、僕の中でブレイクスルー感があったんです。そこから作業を進めて煮詰まると、自分が衝撃を受けた多摩川の河原に行ってまたインスピレーションないかな?って作ってました(笑)」
――多摩川の存在はデカいですね(笑)。
 「僕は、10年間くらい多摩の街を自分の作品のテーマにして来てるんです。必ず、作品の舞台は多摩の街だし、ジャケットにも多摩の街の一部分を入れてたんです。京都の鴨川、ロンドンのテムズ川みたいに、僕にとっては多摩川が心の川なんですよ。何か嫌なことがあったら多摩川を見に行くみたいな。上京してから、歩いて1分くらいに多摩川があるところに住んでいた時もあったし。多摩川と僕は切っても切り離せないですね(笑)」
――(笑)。リード曲になっている「be yourself」について聞かせてもらえますか。
 「最初は、リードにするつもりはなかったんです。でも、女の子が歩いてるMVにしたくて、一番合うのがこの曲だったんです。あと、マネージャーに最初に聴かせたとき、“これいっぱい音が入ってて、お得感すごいっすね”って言われて、アルバム全体を表してる曲のようにも思えたんです。なので、これを1曲目にしようって」
――確かに、いろんな音楽の要素がレイヤーで入ってますね。あと、女の子が歩いて行ってるって感覚が、このアルバム自体を象徴してるようにも受け取れます。
 「そうですね。僕の中で、今回のアルバムの設定はいろいろ深くあるんですけど、簡単に言うと、青春なんですよ」
――おぉ、青春ですか。
 「ただ単に青春。女の子を主人公にしたのも、未来しかない、全ての希望の象徴って感覚ですね。ティーンの子たちって、これから何にでもなれるし、時間もあるし、夢も叶うんですよ(笑)」
――そうですね。
 「あの、僕ね、ここ10年活動して来て、今が一番楽しいんですよ。イベントとか何しててもやってても一番楽しい。自分自身が楽しいって気持ちを、わかりやすく具象化したかったんです。それを一言で言うと、青春だなって。もちろん、悔しいとか思うことは沢山あるけど、それも含めてまだまだ青春だなと思えるというか(笑)。まだ越えなきゃいけないものしかないじゃないかって感じられて。だから、そういう思いがテーマになりました」
――なるほど。
 「ポジティブさもあるし、でもティーンなりに子供の頃を思い返すし、ちょっと感傷に浸ったりもするし。そういうのも含めると、ただ若いから全てが前向きっていうんじゃなく、エモい気持ちも全部含めてるんです。だから、音にユーロビートやエレクトロみたいなリバイバル感も入れたり、単純に僕自身がフィルターハウスみたいなのを聴くとエモい気持ちになれるって感情を込めたり。そこをリアルタイムに通ってない若い子も、こういうのを聴いてエモさを共有できるんじゃないかなとか、いろんな気持ちがが青春ってものに集約されてますね」
――あと、先ほどアルバムの設定がいろいろ深くあるとおっしゃってましたが、そこを聞かせてもらえますか。
 「この作品の設定は、ジャケットの女の子が聴いてるプレイリストの曲なんですよ。女の子が、学校の帰り道に普段と一本手前の曲がり角で曲がったら、見慣れないダイナーがあった。勇気を出して入ってジュースを飲んでたら、店内に音楽が流れてた。マスターに“この音楽好き?”“じゃあこの曲あげるよ”ってiPhoneに入れてもらうんですよ。そんなに音楽に興味あったわけじゃないけど、知らない世界に触れ合えた、自分っていうものが必要とされた気がしてすごく気持ちがよかった。で、次の日も行くけど、あったはずの場所にダイナーがなくて、でも手元には昨日もらったプレイリストがある、みたいな感じです」
――SF小説的なストーリーがあると。
 「僕は、神話とか民話が好きで、毎回作品のテーマとか物語を作るときに必ず潜ませるんですよ。神話とか民話って、その日そのときにしか現れない別世界の入り口みたいな題材がよく出てくるんです。今回は、夕暮れどきにしか現れないダイナーで流れているディスコ・サウンドを、ふとこの世に持ち帰ってしまった女の子の物語って感じですね。この子がどうなっていくのかは、もちろんみなさんのご想像にお任せしますってことなんですけど。でも、ちょっと勇気を出して知らないいい出会いがあったときに、少し自信が持てたっていう感覚が今回のテーマだと思います」
――今回の『be yourself』は、すごく活き活きとしたフレッシュな感じがあるし、聴き手を能動的な気分にさせる、人をプッシュするエネルギーがあるなっていうのは改めて思いますね。
 「そう思ってもらえるのは、すごくうれしいですね。このアルバムが、誰かのちょっと背中を押してくれるものであればいいなっていうのは思ってます。自分がちょっとだけ勇気出せば、面白い出会いがあるよとかどんどん楽しいものに出会えるかもしれないよとか、そういうことは曲を作りながら思っていたことなので。アルバムにあるエネルギーを受け取ってくれたらいいなって。僕がこれまでいろいろな作品を作ってきて、今こういう作品をやるっていうのを、前向きに捉えてくれる人がたくさんいたらいいなって思いますね」
取材・文 / 土屋恵介(2018年7月)
DÉ DÉ MOUSE be yourself
release oneman tour

dedemouse.com/
-DÉ DÉ MOUSE(band set)-
DÉ DÉ MOUSE(key, Track operate) / Kannon(g / from SAWAGI) / Takuto Unigame(b / from SAWAGI) / Akinori Yamamoto(ds / from LITE)

2018年8月31日(金)
京都 CLUB METRO
開場 19:00 / 開演 19:30
前売 3,800円(税込 / 別途ドリンク代 / スタンディング)



2018年9月14日(金)
東京 渋谷 TSUTATA O-EAST
開場 18:30 / 開演 19:30
前売 3,800円(税込 / 別途ドリンク代 / スタンディング)

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