話題の公演“100チェロ”を東京で行なうジョヴァンニ・ソッリマが代表作を語る

ジョヴァンニ・ソッリマ   2019/06/25掲載
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 百人ものチェロ奏者が一緒にステージで演奏するという壮大なプロジェクト“100チェロ”のコンサートを、この8月に日本で敢行するイタリアはシチリア島出身のチェロ奏者 / 作曲家のジョヴァンニ・ソッリマ。プロ / アマ問わず現地で有志を募って演奏するこの特殊なプロジェクトは、欧米ではここ数年評判になってきたが、いよいよ日本でも大きな話題となることは必至だ。
 そのコンサートに先立ち、先日ソッリマのアルバム『we were trees』も国内リリースされる。『we were trees』は2008年の作品で、最新作ではないが、彼の作品としてはおそらくもっとも有名な「チェロよ、歌え!(Violoncelles, Vibrez!)」がオープニング・ナンバーとして収録され、また、パティ・スミスらも参加するなど話題満載の、まさしく彼の代表作である。
 以下、アルバムや“100 チェロ”のことを中心に訊いたメール・インタビューからソッリマの生の声をお届けしよう。
――『we were trees』はどのようなコンセプトに基づいて作ったのですか。
「大きな視点としては、今日我々が議論している地球の現状や環境問題(もちろんここでは直接的にではなく、誌的に表現しているわけだが)も含んでいるんだけど、直截的には、我々の楽器(チェロ)を生み出してくれる木々に思いを寄せる、ということだね。この楽器(チェロ)の音は木々たちの歌だ、と私は考えたいんだ。─銑の6曲から成る組曲〈When We Were Trees〉が、その象徴だね。ちなみにジャケット写真のチェロもどきは、半世紀ほど前に地震で崩壊したままになっていた故郷シチリアの大聖堂の残骸の木端で作ったんだ」
――オープニング曲「チェロよ歌え!」はピーター・グリーナウェイ監督の『レンブラントの夜警(Nightwatching)』(2007年)でも使われ、多くのチェロ奏者たちに演奏されてきた人気曲ですが、そもそもあの曲は友人のチェロ奏者マリオ・ブルネッロのために書いたそうですね。
「そう、この曲はブルネッロと私の共通の師であるアントニオ・ヤニグロ(註:20世紀を代表するイタリア人チェロ奏者)に捧げた曲なんだ。ヤニグロは私たちに、表現することを諦めず、内なる精神を震わせることを追い求め続けるよう導いてくれた。彼は(ルイジ・)ボッケリーニと並び、このアルバムの根幹をなす象徴的存在と言っていい」
――そのボッケリーニに捧げたのが、本作◆銑イ4曲から成る組曲「L.B.ファイル」ですね。
「ボッケリーニはとてもユニークな存在だ。音楽家としての彼の旅路(註:彼はヨーロッパ各地で演奏し、20代後半以降はスペインで活躍した)、チェロのテクニックにおける探求と革新、表現が、彼を今日的人間にしているんだ。私は彼を最初の民俗音楽学者だと考えている。彼は大衆音楽もたくさん研究した人なんだけど、それは当時きわめてめずらしいことだった。作曲家として彼はほかに類を見ない存在であり、ハイドンやモーツァルトと同じ土俵で比較するのは大きな間違いだね」
――「イェット・キャン・アイ・ヒア」という曲ではパティ・スミスが作詞と歌を担当していますが、どういう経緯で?
「パティとは、数年前にフィリップ・グラスの紹介で知り合い、今日まで親しくつきあったきたんだ。デュオをやったり、彼女のバンドに私が参加したりと、ライヴで何度も共演したよ。トスカーナの美しい教会でのクリスマス・デュオ・コンサートや、映画祭で訪れたベルリンの教会での共演ライヴはとくに印象に残っている。〈イェット・キャン・アイ・ヒア〉は、シチリアのパレルモにある私の自宅の古いイチジクの木を前に、パティが即興的に作った詞(詩)を聴きながら、私とレスコヴァル(註:ソッリマの長年の盟友であるクロアチア人女性チェロ奏者モニカ・レスコヴァル)がこれまた即興的にチェロの音を重ねた。パティはシャーマンのエナジーを持った素晴らしい詩人だ。まったく無駄のないシンプルさで本質を突く。リアルで、力強く、まっすぐなことを言う。みんな彼女のそんなところに惚れ込むんだと思う」
ジョヴァンニ・ソッリマ
©2012 Almendra Music
――ァ屮椒奪吋蝓璽法廚悩郢譴噺譴 / 歌を担当しているジルベール・ジョプ・アブドゥラマーネについて教えてください。
「友人の紹介で知り合ったんだが、セネガル出身の詩人ということ以外は私もよく知らないんだ……。ボッケリーニが今もこの世界、しかもセネガルにいるということを想像して、政治的にも近年問題になっている亡命と移民について即興で歌詞を作ってくれないかと彼に頼んだんだ。私は、この問題には以前から強い関心があり、2002年には「Ellis Island」というオペラ作品の歌曲を書いたこともあった(註:エリスは19世紀後半から半世紀ほどの間アメリカに移住する人々が最初に上陸させられたニューヨークの小島)」
――20世紀以降に活躍したチェロ奏者(クラシックにかぎらず)の中で、あなた自身が、とくに優れている、あるいは、興味深いと思う人は?
「それを答えるのは大変だが……クラッシックの分野では、私とも親しいアントニオ・ヤニグロ、驚くべき才能と社会性という視点だとムスティスラフ・ロストロポーヴィチ、広い視野を持っているヨーヨー・マ。あとジャンル越境系だとエルンスト・レイスグル、ジャズ / フォーク系ではラッシャッド・エグルストンといったところかな」
――この8月にはいよいよ日本でも“100チェロ”コンサートが開催されます。すでに続々と参加希望者が集まりつつあるようですが、コンサート現地でプロ / アマ問わず公開募集する理由は?
「このプロジェクトで一緒にステージに上がるのは、ソリストも務めるようなプロから、2日前にチェロを買ってYouTubeで学び始めた初心者まで実に多種多様であり、年齢も5〜6歳から70代までと幅広い。これまでマリオ・ブルネロ、エンリコ・ディンド、ハンナ・アイヒベルクら、数々の有名チェロ奏者たちも参加してきたよ。もちろんレベルのバラつきによる困難な点は多々あるが、各パートを揃え、プログラムを整え、難しいパートと簡単なパートを混ぜるようにしている。大体20人ほどの決まった中核メンバーがいて、彼らはとくに若いチェリストや子供たちの指導役に回るという役目も果たしている。演奏曲目も、有名なクラシックの曲からプロジェクトのために書かれたオリジナル曲、あるいはロックやポップスもあり、集団即興だってやる。日本公演では、バッハやヘンデル、ベートーヴェンといったクラシックの名曲だけでなく、レナード・コーエンの〈ハレルヤ〉やデヴィッド・ボウイの〈世界を売った男〉、南イタリアの民俗舞踏音楽タランテッラなどもやる予定だ。“100チェロ”は、いわばシンフォニー・オーケストラと巨大なロック・バンドの融合のようなものだ。それは、すべての人、すべてのレベル、すべての経歴の人にオープンであり、真の愛の結晶なんだよ」
ジョヴァンニ・ソッリマ
取材・文/松山晋也
Concert Schedule
ジョヴァンニ・ソッリマ
©2012 Almendra Music
■ジョヴァンニ・ソッリマ“100チェロ”コンサート
2019年8月12日(月・祝)
東京 錦糸町 すみだトリフォニーホール
開場 17:15 / 開演 18:00
前売 6,000円 / 中学生以下 3,000円(税込)

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