二人だけれど、一人でやってるみたいな感じ――結成40周年を迎えたGONTITIが7年ぶりのアルバムを発表

GONTITI   2019/01/18掲載
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 聴いているといろいろな人生の場面が浮かんでくる。聴く人それぞれのあのときこのときをそっと呼び起こす。GONTITIのスタジオ録音のオリジナル・フル・アルバムが7年ぶり(信じられないが本当なんです)に出た。妙薬、というのがふさわしい。口あたりのよさ、なめらかさ、味の深さは特上、松、なのだが、ぺろっと食べられる(すっと聴ける)。確かに全部聴いたのに、もう一度すぐに、年がら年中部屋に流しておきたくなる。気がつくと全曲体に入って血液になじんでいる。そういう傑作を作り上げたお二人にお話をうかがいました。
――アルバムが7年ぶりって、そういう感じがしないんですけど。
チチ松村「それはね、アニメとかやってたから」
――あらためてこういうふうにアルバムを作ろうっていう発案は、どのへんであったんですか。
松村「それは40周年がもうすぐですねって、1年くらい前から」
ゴンザレス三上「40周年やりましょうよみたいなことは言われてますよね」
松村「で、アニメの仕事とか、出してても生ギター2台のデュオ形式が多かったので、いろんな音が入った、僕なんかはアナログ・シンセが好きでしょ。だからそういうのも入ったやつを……」
――いっぱいありましたね。
松村「そういう面白いのができたらいいな、というのはありました。今回は本当にそういうのができてすごいよかったですね」
――曲を作るうえでは、どちらかがアイディアを出して。
松村「いえ、べつべつに作りました」
三上「今回はこれで終わりにしようっていうのがちょっとあったんですよ。年齢も年齢だし、もういいんじゃないか、当初はそういう感じでした。だからこれで大締め。ラスト・アルバムみたいに銘打ったらどうだろうって」
松村「そうですね」
三上「曲も6曲ずつ12曲作ってきたんですけど、最後なんでもうちょっとちゃんとしたやつをってことで、6曲ずつたして、24曲くらいになったんですよ。それを、スタッフに……、僕らが聴いていいとかはもういいわということで、スタッフの人に点数をつけてもらって、そのなかから選ばれた曲をやろうということに」
――厳選されているんですね。
三上「わりとね。されていないようですけどね(笑)」
――いや、そんなことないですよ。
三上「いや、でも今まではそんなことなかったんですよ。この曲できたからどうしてもやりたいとかだったんですけど、今回は最後だからと作業していくうちに、Dorianさんとか中井(雅子)さんとかU-zhaanとかと一緒にやっているうちに、だんだん、面白いからもう一回作れるかなみたいな感じになった」
――7年こういったかたちで作らなかった間っていうのは、頼まれ仕事っていう感じですか。
三上「頼まれ仕事は頼まれ仕事で、制約があるとその制約をなんとか乗り越えることがまた面白い」
松村「勉強になりますよね。今回は自由なので、制約がない。どんなものができるか、やっていくうちに面白みが湧いてきて。三上さんは、長いことやっているのに、そこで新たな発見とか、ギターと打ち込みとのいろんなことで、この年齢になって初めて知ったみたいなことも」
三上「そういうのもありましたね。ほかにも、録音状態の問題とかがわかったりして」
松村「それもそうだし、いちばんびっくりしたのがギターの奏法。三上さんはどちらかと言うとギターっぽいのがイヤじゃないですか。ピアノみたいに弾く。で、ギタリストはなぜヴィブラートをしたりスライドをしたりするのかっていうのがわかったらしいんです」
三上「わかったっていうか、もともとある技法っていうのは、すべて相手を説得するためのものっていうのがわかるようになってきて。そういうグリッサンドとかビブラートとかを練習したりするのはなんのため? っていうのが。結局それは説得するため。僕が打ち込んできたのを、あんまりビブラートとかやらない音でほしいと言うと、演奏家はいや、できないですって言うんですよ。できないって、いや、やってください。いやいや、音程がたしかにならないからっていうのがあったので、そうかと。ギターのスライドも、この点にいくために、そこに上がっていきましたっていう解説をしている。それで、みんなは納得すると。ところが、パーンとその音だけをやろうとすると、その微妙な音がものすごく気になるんですね、どうしても。だからギターのテクニック……、ピアノでもなんでもそうでしょうけど、そういうギターの音っていうか部分っていうか、それを解消するものは徐々にわかってきたんですけれど、それをいまさらやるつもりもなかったので、けっこう難しい」
松村「すごい時間がかかっている。曲によって。その曲だけは後で三上さんのギターを入れなくてはダメになってしまって」
三上「そのときにどうしても自分ではそのポーンというメロディの一音が、あぁ違うみたいな。それだけで3日とか4日とか、その一音で」
松村「あれはびっくりしましたね。この年齢になってよくこういうことやるなって」
三上「僕もびっくりしましたよ(笑)。早く終わってほしい。何年やっとんねんみたいな」
松村「だけど、そんだけ音楽は深いんですね」
GONTITI
――そうですね。
三上「そうなんですよね。それはその一音をちょっとスライドさせても気にならないんですよ。でも、そこをスライドしたくないっていう。そのせめぎあいがね」
――三上さんがスライドするのあまり聴いたことがない。
三上「ないですよね。あんまりない」
――クロード・チアリの心がだんだんわかってきた。
松村「ほんとですか(笑)」
三上「チアリさんはそういうところ絶妙だったんですよ。やっぱりなにか持ってらっしゃいますよね」
――前から思っていることで、GONTITIさんて結局メロディを弾いているんだけど、メロディじゃなく聴こえる曲がけっこうあるんですよ。っていうのは二人で一つだと思って聴いているから、両方合わさるとメロディじゃなくて、そこの空気を二人で描くみたいなところがある。あえて三上さんはあまり主張しないけれどメロはおさえてますよっていうふうに弾いてるのかなと思ってたんだけど、よく聴いていくと、明後日のほうからこっちにくるというか、メインに戻ってくる奏法もあるし、逆ももちろんあるんだけど、曲のテーマを一緒に弾いている感じがするんですよ。でも、普通、たとえばリード・ギター、サイド・ギターみたいな考え方で言うと、三上さんの奏法って真ん中になると思われちゃうと思ったんだけど、でもGONTITIって、グループGONTITIだからどっちかっていうことはないわけじゃないですか。それがすごく特殊なんだなってだんだん気がついてきて……。
松村「僕はピアノの左手なんですよね。で、三上さんが右手。だから二人やけど、一人がやってるみたいな感じになってるのがいちばんいいと思う」
――そうですね。
松村「左手だけぐわーっとやるようなことはない。だから、ギターでやっているけど、本当はギターの音楽じゃないのかもしれない」
――うん。だからギタリストのアルバムって感じで聴いてない。
松村「ギター音楽じゃないかもしれないですね。ひょっとしたら。ギターを使っているだけで」
――番組をやってるせいもあるけど、聴かされたり聴いたりするわけじゃないですか。そうすると結局自分の好みじゃないものでも聴かされたり聴いたりすることがあるから、その蓄積が残っちゃってるところがあるんじゃないですかね。
松村「ありますね。体の中に一回入って、それがこなれて、曲を作るときになにかしら影響を受けていたりすると思う。いろんなの聴いてるから」
――曲を作ったり、二人でやってて、なんで俺ここ弾くんだろうみたいなことってあるんですか?
松村「メロディとか?」
――うん。コード進行とか。
三上「二人でやり始めて、ちょっと変えたりするときは、新たな未開の土地に入ったみたいな(笑)。え、そんなふうになるかって。松村さんが言ったアイディアも、松村さんの世界でもないし、僕の曲を変えるためにやるわけですけれど、その部分はちょっと変わってて、お互いに未開のところに到達することがある。そういうときは面白いですね」
――それがずっと続いてるんですかね。
三上「そうかもわからないですね」
松村「僕はほかの楽器をしないので、ギターで作るじゃないですか。で、どっちかっていうと、そこに口でメロディをはめていく。ギターでメロディを弾きながら作ってないじゃないですか。そうすると三上さんがギターでいちばんやりにくい、出にくい音、押さえにくいフレットを使うとか、そういうのがあるみたいで、すっごい苦労しているときがあります」
――ボイシングの入口が違うんですね。
松村「だから、それが逆に面白いものを生んでいる可能性もありますね。ギターのやりやすいところばかりでやるんじゃなくて、やりにくいところでやることによって、なにか、ええっ!? っていうようなものが出てくるのかもしれない。わからないですけどね」
GONTITI
――その時その時で好きなものがあったりするでしょ。たとえば松村さんの場合インドにのめり込んだり、アナログシンセを好きになったりっていうことがあるから、そういうものが部分的っていうよりもすごく薄くいつも反映されている。お互いにそういうのがあるのかなと思うし。趣味的な感じがないんですよね、全然。今度のアルバムを聴いてても。いろんなこと知ってるから、こういうのやって、ああいうのやって、みたいな趣味を出し合った感じでは全然なくて。それがすごく面白いっていうか気持ちよかった。このアルバム。
三上「そうですね、趣味性は全然ないですね。うれしいですね。そういうふうに聴いていただけるのは」
松村「そうですね。」
三上「松村さんはえげつない趣味とかいろいろあると思うんですけど」
松村「自分の毒で死にそうになることがある(笑)」
――(笑)
松村「だからそれはめちゃくちゃ抑えられていると思う」
三上「この人はタンゴにすごく詳しいよってことで、じゃあこの曲はタンゴっぽくやってみようとかそういう感じは全然ない」
松村「でもそれは言い方は悪いですけど、武器を持ってない感じ」
――ああ。丸腰な感じ。
松村「うん。武器を持ってて、僕はブルースなんですよとか、それはブルースという武器を持っているわけですよね。そういうのはあまり好きじゃないですね。よく聴くといろんなものがじわーっと出てくるっていうのがいいですね」
三上「丸腰はほんとに丸腰ですもんね。でもまあ染みてますもんね。なんとなく出てくるというか。小松(亮太)くんに今回やってもらってるけど、演奏してもらったら、すごくタンゴっぽい。いやもう、小松くん普通に弾いてって」
――(笑)それ小松くんに言う?
三上「いやそれはすごくいいけど、それになってしまうので。使うかもわからないけど、とりあえず普通に弾いてって言ったやつを全部OKにした。ごまかしたわけではなくてね。それだけでひとつの世界になるので、べつにいろんなテクニックをやる必要はなくて、ちょっと混ぜたいというか、小松くんがここでばーんと出てくるとかそういうことじゃなくてっていうのはあります。小松くんはどうやってもすごい演奏家なんだから」
松村「ある意味、贅沢な使い方ですよね。小松くんを前面に出すんじゃなくて」
――そうですね。みんなが出汁になっちゃってるみたいな。
三上・松村「そうそう(笑)」
松村「で、後から、これ何の味が入ってるんだろうって、わからないから何回も食べる。そういうのがいいかもしれない」
三上「自分たちの音楽を何回も聴くタイプなんで、目立つやつがあると最初はいいんですけど鬱陶しくなってくるんですよ。そういうのを抑えて、端のほうを聴いてみたりとか、そういう感じが好きですね」
――ありますね、そういうのね。意味がひとつになっちゃう音楽って面白くないじゃないですか。これは何回も聴いて、いろんなことを考えられるっていうのもひとつ側面としてあるし。普段いろいろ話をしてて、くだらないことばかり言ってるじゃないですか。あれがすごく音楽的なんだなってわかりました。
三上・松村「(笑)」
取材・文 / 湯浅 学(2018年12月)
Live Schedule
gontiti
Daiwa Sakura Aid Presents ゴンチチ 新春生音三昧 2019

2019年1月20日(日)
愛知 名古屋 電気文化会館 ザ・コンサートホール
開場 16:30 / 開演 17:00
全席指定 6,000円(税込)
※お問い合わせ: JAILHOUSE 052-936-6041

2019年2月3日(日)
東京 紀尾井ホール
開場 16:30 / 開演 17:00
全席指定 6,000円(税込)
※お問い合わせ: キョードー東京 0570-550-799

2019年2月9日(土)
北海道 札幌 コンサートホールkitara 小ホール
開場 16:30 / 開演 17:00
全席指定 6,000円(税込)
※お問い合わせ: マウントアライブ 011-623-5555(平日11:00-18:00)

2019年2月17日(日)
宮城 仙台 宮城野区文化センターパトナホール
開場 16:30 / 開演 17:00
全席指定 6,000円(税込)
※お問い合わせ: ニュース・プロモーション 022-266-7555(平日11:00-18:00)

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