「関ジャニ∞の仕分け」でもおなじみのピアニスト、ジェイコブ・コーラーが奏でるお気に入りの日本のメロディ

ジェイコブ・コーラー   2019/09/04掲載
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 1980年、米国アリゾナ州フェニックス生まれ。2009年に来日して以来、ジャズ・シーンを中心にさまざまなジャンルのミュージシャンたちと共演。ソロ・ピアニストとしてこれまでに12枚のアルバムをリリースし、国内だけでなく韓国でも積極的にコンサート活動を展開中。子どもから大人まで英語で学べる「ジェイコブ音楽教室」の校長であり、ピアノ・スコアの分野でも人気を博している。このたび、自身のレーベルであるJIMS Recordsから最新アルバム『JAZZ PIANO JAPAN』をリリースした。
――最新アルバムでは、アニメ主題歌からTV番組のテーマ、J-POPにスタンダードな歌曲まで、幅広いジャンルの日本の音楽をとりあげていますね。
「日本での演奏活動もちょうど10年。来日する前は日本の音楽のことは何も知らなかった。そんなゼロの状態からスタートして、今では好きな曲もずいぶん増えましたね。今回はそんな中から、ジャズへのトリビュートを込めて15曲を選んで収録しました。節目の年にふさわしい、映画音楽集と並ぶ新しいプロジェクトの第1弾です」
――オープナーは『情熱大陸』のオープニング・テーマ。葉加瀬太郎さんのヴァイオリンが印象的な原曲が、ピアノのために書かれたラテンの曲みたいに生まれ変わっています。
「ピアノ教室の生徒さんが弾きたがるのでアレンジしてみたら、とくに子どもたちがノリノリでエキサイティングに演奏する人気曲になった。まさに情熱大陸=日本のテーマ(笑)。今回の“ジャズ・ピアノ・ジャパン”というコンセプトのきっかけをくれた楽曲です」
――星野源の「恋」もピアノのシンコペーションが素敵です。
「オリジナルのテンポの良い出だしをうまく表現したかった。ドラムンベースのグルーヴが大好きなので、それを活かしてベースラインを決めて、途中で盛り上がるところからはすごく僕らしいピアノ曲になったと思います。自分で弾いていて気持ちよかった」
――映画『ハウルの動く城』より「人生のメリーゴーランド」もジャズっぽい雰囲気から最後にダイナミックに展開していくところにサプライズがありますね。
「ここでは敬愛するビル・エヴァンスを意識して、彼がこの曲をアレンジしたらどうなるかという発想で弾いてみました。ビル・エヴァンス・トリオの〈いつか王子様が〉とかを少しイメージしたかもしれません」
――「人生のメリーゴーランド」もそうだし、「となりのトトロ」ではより強く表れていると思うのですが、作曲者である久石譲へのリスペクトも感じました。
「まさに、愛するコンポーザーのひとりです。原曲自体が素晴らしいので、その持ち味をできるだけ壊さないようにしつつ、自分らしさを加えてみたかった」
――『名探偵コナン』のメイン・テーマには、JIMS Recordsからの第1弾アルバム『CINEMATIC PIANO ADVENTURE』(2017年)に収録されていた「ルパン三世のテーマ'78」に通じる疾走感があります。
「そうですね、調や和声が同じかも。〈ルパン三世のテーマ'78〉は日本に来て、最初に気に入ってよく弾いた曲なので思い入れがあります。コナンの曲もピアノ教室の子どもたちの人気曲で、弾きたいっていうリクエストが多かった」
――今回のアルバムでいちばん驚いたのは「さくらさくら」や「赤とんぼ」「荒城の月」の素敵なアレンジでした。日本人にとってはあまりにもなじみがありすぎて、古くさいと思っていた曲がオシャレなナンバーに!
「『CINEMATIC PIANO ADVENTURE』で滝 廉太郎の〈花〉がとても気に入ったので、ほかにどんな曲があるかなと思って〈荒城の月〉をみつけました。夜の歌が持つ暗い雰囲気がとても美しいと思った。〈さくらさくら〉や〈赤とんぼ〉を聴いてもアメリカ人の僕は郷愁を覚えることはありませんが、のどかな日本の田舎の風景が目に浮かびます」
――あと、アニメ『カウボーイビバップ』の菅野よう子作曲のオープニング・テーマ「Tank!」の大胆なアレンジも圧巻です。
「原曲のビッグバンドふうのグルーヴに菅野さんのセンスがあふれていて本当にカッコイイ。あの感じをピアノだけで出したくてかなり苦労しました……今回のアルバムでいちばん難しかったかも。この曲、あまりカヴァーする人がいないので自分が誇らしいです(笑)」
ジェイコブ・コーラー
――対照的にオーソドックスなアレンジなのが、米津玄師の「Lemon」です。この曲もきっとみんながこぞって弾きたがる曲でしょうね!
「やはり最近のヒット曲なので、あまり原曲から離れない方がいいと思って、ちょっとだけベースラインを強調したりするマイナーチェンジにとどめました。自分でも米津玄師は好きでよく聴いています。彼の曲ばかりを集めたピアノ作品集を作るのも楽しそう」
――ほかにもMr.Childrenの「himawari」やSEKAI NO OWARIの「RAIN」をとりあげていますが、普段からJ-POPをよく聴いているのですか?
「何でも聴くわけではないですが、Mr.ChildrenやSEKAI NO OWARIみたいに、独特の和声進行で個性的なヴォーカルのバンドは好きですね。歌詞の世界もみんなに愛されているので、ピアノで弾いてもメッセージが伝わるのも強みかもしれません」
――意外だったのは懐かしの昭和ヒット、荒木一郎の「空に星があるように」です。まるで夜空を旅しているようなとても現代的で美しいアレンジに仕上がっていましたが……。
「この曲は、10年前にリリースした星や月に関する名曲を集めたアルバム『STARS Gift for Piano Music』でもとりあげているのですが、ここでは少しボサ・ノヴァっぽい左手を付けた新アレンジで演奏してみました。じつは今回収録した中島みゆきさんの〈地上の星〉も『STARS』の選曲で候補としてアレンジしながら、結局採用されずに10年間寝かしていたものなのです」
――ラストの〈いとしのエリー〉はライヴでも盛り上がりそうな曲ですね。
「はい、とくに40〜50代のお客さんの心をがっちり掴む名曲です。この“ジャズ・ピアノ・ジャパン”プロジェクトでは、これからも日本の曲をどんどんとりあげていきたいと思っています」
――「ジェイコブ音楽教室」では、今も直接ピアノの指導にあたっているのですか?
「生徒が250人くらいいるので、自分で教えているのは月に4回だけで、あとは10人の先生に任せています。もともと僕のファンの中には、全国でピアノ教室を開いている先生も多いですね。今回の『JAZZ PIANO JAPAN』も9月1日に楽譜集として発売予定なのでこちらもお楽しみに。アルバムではとりあげなかった米津玄師さんの最新ヒット〈パプリカ〉なども入ってますよ!」
――YouTubeも楽しく拝見しております。
「10月にカメラマンの兄が来日するので、新しいビデオを作ろうと思っています。日本の美しい風景をバックに演奏する“ジャズ・ピアノ・ジャパン”にぜひ、ご期待下さい」
取材・文/東端哲也
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