“第二のデビュー・アルバム”の意気込みで作ったアルバム――人間椅子『萬燈籠』インタビュー

人間椅子   2013/08/21掲載
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人間椅子のニュー・アルバム『萬燈籠』は、2013年“和ドゥーム”の傑作である。ヘヴィでスローな音楽性、日本文学をモチーフに用いたダークな歌詞など、その世界観は鬱蒼とした暗い森の中へと聴く者をいざなう。
和嶋慎治(ギター / ヴォーカル)のももいろクローバーZとの共演や“サブカル”側からの注目など、時に本質からズレた部分から捉えられることもある人間椅子だが、『萬燈籠』は彼らがヘヴィ・ロック・バンドであり、ドゥーム・バンドであることを再認識させてくれる重厚な一撃だ。和嶋、鈴木研一(ベース / ヴォーカル)、ナカジマノブ(ドラムス / ヴォーカル)に、“ドゥーム・バンドとしての人間椅子”について語ってもらおう。
――『萬燈籠』は人間椅子のドゥーム・サイドが表れたアルバムですね!
和嶋 「最近、ドゥームって言われることがありますね(笑)。ただ実際のところ、ドゥームというものを意識したことはないです。元々人間椅子はブラック・サバスレッド・ツェッペリンなど、ブリティッシュ・ハード・ロックにさまざまな要素を加えた音楽をやりたくて結成したのであって、当時はドゥームという言葉すら知りませんでした」
鈴木 「もちろん、ドゥームと呼ばれる音楽が存在するのは知ってるけど、3人とも意識して聴いてないよね」
――人間椅子はデビュー以来、独自の世界観を描いてきて、それがドゥームと呼ばれる音楽と共通するものがあるのだと思います。それはバンドが結成された青森という地域性にも起因するのではないでしょうか? 恐山や十和田文明、「ナニャドヤラ」(1993年作アルバム『羅生門』収録)で歌われていたイエス・キリストの墓など、青森という土地そのものが持つ呪縛を感じるのですが……。
鈴木 「青森には、何らかの事情で中央にいられなくなった人たちが流れてきた人たちの思念が遺っているのかも知れないですね。うちの近所はリンゴ畑と田んぼばかりで、ドゥームな要素はまったくなかったけど」
和嶋 「青森は本州最果ての地で、冬は寒いし、農作物がたくさん収穫できるわけでもない。何か曰くのある人が集まってくるんですよ。ちょっと変わっていて、品が良かったりもするし、へそまがりだったりもする。青森に入ると、空気そのものが変わるんですよ」
――新作の収録曲「時間からの影」というタイトルはH.P.ラヴクラフトの小説から取ったものですが、彼の小説の舞台になってきたアーカムに通じる“土地の呪縛”が、青森にはあるのでしょうか?
和嶋 「アーカム性、確かにありますね。あと、ねぷたの影響も大きいんじゃないかな。青森のねぶたは観光化されてしまったけど、弘前のねぷたは首が飛んだり目玉が飛び出したり、そういうのを子供の頃から見て育つわけですから、相当なインパクトがあります」
鈴木 「夜行館という劇団が毎年ねぷたに出ていますけど、僕が白塗りにするのは、彼らからの影響かも知れませんね。……本当はジーン・シモンズへのリスペクトの筈だったんだけど、深層心理的に(笑)」
――『萬燈籠』で、よりダークで幻想的な方向性に向かったのは、どんな背景があったのでしょうか?
和嶋 「やはり〈Ozzfest 2013〉(オズフェス / 2013年5月)でプレイしたことが大きかったですね。尊敬するブラック・サバスと同じステージに立って、刺激を受けたせいか、全曲マイナー・キーで、フラット5の不吉な音を多用したり、ヘヴィな音楽性を意識しました。オズフェスの後で、注目も集まると思ったんで、“第二のデビュー・アルバム”の意気込みで作ったアルバムです」
――『萬燈籠』というタイトルが、イマジネーションをかき立てますね。
和嶋 「前作『此岸礼賛』が(東日本)大震災の直後、あえて現実を見据えつつ肯定したいというアルバムだったんで、今回は僕らの元からのスタイルである幻想的・非現実的な部分をコンセプトにしました。津軽地方の方言で、満月のことを“まんどろなお月さま”と言うんです。耳慣れない言葉だと思うので、聴く人のイメージが拡がると思ってタイトルにしました。高木恭造の詩に“まんどろなお月様”という表現があったり、弘前に“萬燈籠”というライブハウスもありますね。高校生の頃から何度か出演していて、青春の思い出のひとつでもあるし、自分たちのルーツをもう一度見つめる意味合いがありました」
――今回、「地獄変」「蜘蛛の糸」と、芥川龍之介のタイトルが2曲で使われていますが、それは意図したことでしょうか?
和嶋 「たまたま、ですね。小説のタイトルを使うのは、その言葉の持つ強烈なインパクトを借りてくるのであって、ストーリーはほとんど関係ありませんね。芥川ネタが2曲あるけど、歌詞の内容はオリジナルだし、これでいってみようと。“蜘蛛の糸”は筋少(筋肉少女帯)もやっていますが、おそらく世界観も異なるし、あまり気にしませんでした」
――「十三世紀の花嫁」はタイトルだけでイマジネーションをかき立てるものがありますね。
和嶋 「〈十三世紀の花嫁〉は夢で見たんです。その夢の中で、僕は車を運転していて、カーラジオをつけたら、ある人が話していて……その人は寺山修司の『書を捨てよ町へ出よう』の映画版の冒頭でモノローグで話す主人公だったんですが、“今度、新曲を出します”と言って、ハードなバック演奏に乗せて“やさしさっていうのは、十三世紀の結婚式の花嫁は……”という詩を朗読していたんです。途中で目が覚めてしまったんですが、その続きをどうしても聴きたくて、書いたのが〈十三世紀の花嫁〉でした。分析してみると、“やさしさ”の答えを求めていたのかも知れませんね。十三世紀には、やさしさが普通に行われていたのではないか……とかね。これまでリフの一部とかが夢に出てきたことはあったけど、歌詞やタイトルまで夢で見たのは初めてでした」
――「衛星になった男」も、タイトルだけでロマンを感じます。
和嶋 「1960年代、米ソが宇宙開発競争をしていましたが、実はソ連が秘密裡に有人ロケットを飛ばしていたという説があって、結局どこにも着陸できないまま、太陽の周りを回っている……という話を読んだことがあったんです。その宇宙飛行士の気持ちを想像しながら書いたのが〈衛星になった男〉でした」
――ところで、和嶋さんがももいろクローバーZと共演したことで、“ロック・バンドがアイドルと一緒にやっていいのか!”などという批判は浴びませんでしたか?
和嶋 「特別なかったと思いますよ。ももクロとやることで人間椅子の音楽性が変わるわけでもないし、本質はまったく同じだから、問題ないですよ。そりゃまあ、ちょっとは悩みましたが。一瞬だけ。でも、共演できて嬉しかったです。ももクロは天使のようでした。かわいかった!! ただ、少しだけ寂しかったのは、ギター・ソロになってもほとんど誰も僕の方を見ていなかった(笑)」
――ナカジマさんは3月に〈Voices Of Rainbow〉ライヴで元レインボーの歴代シンガー(グラハム・ボネットジョー・リン・ターナードゥギー・ホワイト)とも共演したそうですね。
ナカジマ 「グラハムもジョーも中学の頃から聴いていたし、当時の情熱が再燃という感じで、感動しましたよ。ドゥギーも歌はうまいし、ムードメイカーとして貢献していました。全員がロニー・ジェイムズ・ディオに対して敬意を持っているのも感じたし、素晴らしい経験でした」
――『羅生門』をブラック・サバスのトニー・アイオミがプロデュースするという話があったそうですが、その事情について教えて下さい。
和嶋 「あの頃は、売り上げのことなんかで、そろそろ起死回生の一発が必要だった時期で……他のバンドだったらテレビとのタイアップとかを考えたんでしょうけど、僕たちはそれも難しいんで、当時のディレクターさんがトニー・アイオミにプロデュースを頼んだらどうだろう?って提案してきたんです」
――トニー・アイオミは必ずしもプロデューサーとしては評価されていませんよね?手がけたバンドというとクォーツネクロマンダスなど、あまり成功していないし……。
鈴木 「当時ディレクターさんとクォーツの話題が出たのは覚えていますね。名ギタリストが名プロデューサーとは限らないし、要するにトニー・アイオミの名前が欲しかったというか(笑)。他にもジーン・シモンズに連絡をとったりしたけど、一番現実味があったのがトニー・アイオミでした」
和嶋 「僕らのデモテープを送って、“良いリフがあるね”という有り難いお言葉をもらって。スケジュールが合わなくて、実現しなかったのが残念ですよ。それが回り回って、一緒にライヴをやれたんだから感無量ですよ」
取材・文 / 山崎智之 (2013年7月)
撮影 / 松島 幹
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人間椅子
「人間椅子レコ発ツアー〜萬燈籠〜」


2013年9月12日(木)札幌 BESSIE HALL

2013年9月15日(日)青森 Quarter

2013年9月16日(月・祝)宮城 仙台 enn 2nd

2013年9月20日(金)福岡 博多 DRUM Be-1

2013年9月21日(土)熊本 DRUM Be-9 V1

2013年9月23日(月・祝)大阪 阿倍野 ROCKTOWN ソールドアウト

2013年9月24日(火)兵庫 神戸 CHICKEN GEORGE

2013年9月26日(木)愛知 名古屋 Electric Lady Land

2013年9月29日(日)東京 渋谷 O-WEST「おどろの日」 ソールドアウト

2013年9月30日(月)渋谷 Shibuya O-WEST「どろろの日」 ソールドアウト


■ イベント出演
2013年9月14日(土)
“-夏の魔物-AOMORI ROCK FESTIVAL '13”
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