聴く人を架空のリゾートにご案内――Pictured Resortの新作が誘う日常からのエスケープ

Pictured Resort   2019/07/11掲載
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 大阪を拠点に活動する5人組バンドのPictured Resortが、約3年ぶりとなるセカンド・アルバム『Pictured Resort』をリリースした。彼らの音楽は、浮遊するシンセサイザーやメロウなギターがドリーミーな音像を作り出し、聴き手を架空のリゾートへと連れて行くかのような、シンセ・ポップ〜ドリーム・ポップといえるものだ。シティ・ポップ隆盛の昨今でも、独自の個性をブレなく追求している希有な存在といえるだろう。彼らにメールで話を聞いた。
――2014年結成ということですが、どういう流れで結成したのでしょうか。
高木恒志(g、vo)「もともとは2012年ごろ、僕が一人でバンド用のデモを作りはじめたところから始まります。大学時代の部活と友人関係を通して知ったインディ・ポップやドリーム・ポップ、チルウェイヴなどから影響を受けて、今とほぼ同じコンセプトで曲作りをしていました。大学の同じサークルの先輩などを誘って、最初は4人編成でスタートしました」
――今回のセカンド・アルバムについて、制作前に、こういうアルバムにしたい、というコンセプトのようなものはありましたか。
高木「つねに“自分がいつも聴いているアーティストと比較できる完成度”を目指しています。アルバム全体はもちろんですが、一曲一曲のレベル、ヴォーカルのメロディひとつにしても、“自分がリスナーとして聴いたらどう聴こえるだろう”と考えながら制作を進めています。それと今回のアルバムは、ファーストよりも明るく、ポップにまとめようと思っていました」
――今回は前作以上にシンセサイザー中心の音像になっていて、シンセ・ポップ的サウンドが前面に出てきていると思うんですが、そういう意識はあったんですか。
伊吹雄志(key)「全体のアレンジ面でいえば、これまではライヴの再現性に重きを置いていたのですが、今回そのリミッターを少し外して、一曲あたりに使用するシンセの種類を増やしたことが、そういった印象を持っていただいた理由のひとつかもと思います。アナログ/デジタルを問わず、求めるサウンドのシンセサイザーをチョイスしました」
――たとえば3曲目「It's Golden」などは、冒頭のシンセのフレーズが入道雲のような音像を思わせて、聴き手を異空間に連れて行くという効果がすごくありますよね。
高木「たしかに、この曲はアルバム全体のサウンド・バランスを象徴するような気がします。音像が曲やアルバムのイメージに与える影響には、毎回とても注意を払っています」
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――最後の「Living In A Dreamland」はとてもスケール感にあふれた曲で、今までにない人生の深さのようなものを感じさせて、こうした曲ができてきたのは興味深く思えます。
高木「タイトルの〈Living In A Dreamland〉とは、英語圏で否定的な意味で使われることが多いフレーズです。“彼はちょっと夢見がちだよね”みたいなニュアンスですね。日本で“バンドやっています”って言うと今でもよく思わない人は少なくないですし、僕も勤めていた会社がけっこう忙しくて、“音楽と仕事を両立できないから辞める”と言ったときは同期に笑われました。でも僕は完全にあちら側の人間ではなくて、絶対に音楽をはじめとする趣味は捨てられないです。何年経っても、“良い音楽を聴く度に心に天国を感じるし、一瞬で宇宙の深淵へと連れて行ってくれる。この世の最期の瞬間まで聴いていたい。夢見心地と言われても全然構わないし、これからもずっとそのまま”という曲です」
――個人的には、個々の曲の強度や全体としての構成も含めて、前作よりも完成度が高まったように思えるんですが、これまでと違う満足感はありましたか。
高木「今回のアルバムは、メンバー全員が各自のポテンシャルを最大限に引き出せていると思います。バンドを始めてほぼ5年が経ち、音楽の知識や引き出しも増えたなかで、自分たちのやりたいこととバンドの方向性をしっかり練りながら制作できました。たぶんメンバー全員120点を付けるんじゃないかと思います」
――ちなみにPictured Resortのサウンドって、リズム面でのグルーヴよりも、シンセやギターを中心とする音像作りの方を重視していると思うんです。昨今のシティ・ポップ系はグルーヴに頼りがちなバンドが多い中で、こうした音作りはとても興味深く思えるんです。そういう“グルーヴよりも音像”という意識はありますか。
高木「グルーヴと音像、どちらかを優先しているつもりはないのですが、このバンドの世界観として、自然とシンセやギターでの表現が前に出てきている、というのはあると思います」
大川雄太郎(ds)「それから、もともとバンド結成時から、“タイトなリズム隊に、ドリーミーな上モノ”というコンセプトがあったので、音像を活かすためにいかにシンプルなリズムにするかをつねに意識していました」
朱勇希(b)「ある時、高木が“リズムが複雑だと玄人感が出てしまい、若い人が聴いてくれない”というようなことを言っていたのですが、それからは意識してシンプルにしています。世代や時代を問わず聴かれているポップスの多くはリズム的にシンプルだし、このバンドはそういう音楽を参照していますし」
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ライヴで赴いた上海にて
――それと、メンバー個人のミュージシャン的なエゴや自我などよりも、楽曲優先というか、曲そのものの完成度を重視しているように思えるんです。すなわち、“名前よりも楽曲が残っていく”ということですね。それはすぐれたポップスには理想的な在り方だと思うんですが、実際のところどうですか。
高木「その指摘はとてもうれしいです。すごく意識しています。僕は“プレイヤー”としての自意識と“バンドマン”としての自意識はまったく別ものだと思っていて、前者のエゴは曲の良さにも直結できるので、雰囲気を壊さない範囲内で出してもらっています。後者から出てくるエゴは、そもそもメンバー全員がそういう性格ではないし、目立ちたいとか人気者になりたいという年齢でもないので、皆無ですね。そこがこのバンドのいちばん好きなところです」
大川「バンド・メンバーみんなが共通のゴールをもっていて、そこに到達するための手段として、個々人のアレンジという名のエゴが出てくるという認識です。時折共通のゴールの先に進めることもあるし、その頻度が高いのがこのバンドのいいところかと。到達点の共通認識が同じこと、これって簡単で当たり前のようだけど、特別だと思っています」
――Pictured Resortの音楽は、聴き手にとって架空のリゾートに連れて行かれるような気分になったり、現実から逃避させてくれる、という効果をもたらすものだと思うんです。聴き手に対してそのようなものでありたいと思いますか。
大川「そうでありたいですね。もともと架空のリゾート・ホテルというのも裏コンセプトにあった気がします。なので、そう感じていただければ、僕としてはしてやったりです」
高木「僕らの音楽を聴くことで、現実から逃避できたり、逆にバカンスなどの非日常をさらに非日常なものにしてもらえたら、それ以上にうれしいことはないです。普段使いにも、お出かけ用にも使える仕様になっています」
取材・文/小山 守
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