セットリストはおなじみの名曲ばかり! 新作完成を記念したトレヴァー・ホーン最新ライヴ・レポート

トレヴァー・ホーン   2018/12/27掲載
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 80年代を彩ったヒット曲をアレンジし、オーケストラで再現した新作アルバム『トレヴァー・ホーン リイマジンズ − ザ・エイティーズ フィーチャリング・ザ・サーム・オーケストラ』を完成させたトレヴァー・ホーンが、ロンドンのクイーン・エリザベス・ホールで新作のお披露目ライヴを行なった。ひさしぶりの、それも一夜限りのライヴに集った観客は、40代を中心とした男性やカップルが中心だった。
 トレヴァーがベースを抱えてステージに姿を見せると会場が湧いた。オープニングはフランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドの「トゥ・トライブス」だ。彼らのデビュー・ヒット「リラックス」に続く2枚目のシングルで、トレヴァーの手によるパワフルな打ち込みサウンドが圧倒的。83年に設立されたZTTレーベルの存在を、音楽シーンに刻んだ瞬間だったと思う。攻撃的なサウンドが、ライヴの幕開けにふさわしい。その後に彼にとって初のシングル・ヒットであり、トレヴァー・ホーンの名前を世にしらしめたバグルスの「ラジオスターの悲劇」が続いた。
ロル・クレーム, トレヴァー・ホーン, スティーヴ・ホガース
左からロル・クレーム, トレヴァー・ホーン, ヴォーカルはスティーヴ・ホガース
 ステージに立つのは総勢19人。8人からなるストリングス・オーケストラ、指揮者、ドラムス、ギターが3人、キーボードと打ち込みが2人、バッキング・ヴォーカルの女性が2人。ここに男性ヴォーカリストが入れ替わり加わるという形をとった。「ビデオスターの悲劇」のオーケストラ・アレンジはオリジナルのコーラス部分をうまくストリングスに置き換えたあたりが絶妙で、それを生で体験できたのは嬉しかった。ブルース・スプリングスティーンの「ダンシン・イン・ザ・ダーク」については、“クリスマス風にバラードとしてアレンジしたんだ”とトレヴァーは説明した。2人の女性がヴォーカルをとるロマンティックな雰囲気に仕上がっている。デヴィッド・ボウイの「アッシュズ・トゥ・アッシュズ」は80年代のMTV文化の幕開けとなったエポック・メイキングなビデオがあまりに有名な曲だ。曲を聴いただけでスティーヴ・ストレンジを含む当時のロンドンのニューロマンティックスが出演するビデオ・イメージが脳裏に鮮明に蘇る。
 この日のライヴの重要なメンバーは、元10のメンバーであり、トレヴァーの親友でありコラボレイターでもあるロル・クレームだ。セットリストには、新作アルバムからの曲に加え、10ccの「ラバー・ブレッツ」と「アイム・ノット・イン・ラヴ」や、ゴドレイ&クレームの「クライ」が追加された。トレヴァーは「クライ」について、1969年にニューヨークで2人が初めて出会って意気投合し、イギリスに帰って即一緒にレコーディングした曲だと説明した。ステージにおける2人の息はぴったりで、長い間の信頼で結ばれた仲を察することができた。
ロル・クレーム, トレヴァー・ホーン
ロル・クレーム(左)と トレヴァー・ホーン
マット・カードル
マット・カードル
 アルバムにはロビー・ウィリアムスシールルーマー、ジム・カー(シンプル・マインズ)など豪華ヴォーカリストが参加しているが、残念ながらこの日彼らの参加はなく、トレヴァーとマット・カードル、スティーヴ・ホガース、ライアン・マロイがヴォーカルを担当した。ホリー・ジョンソンのヴォーカルで知られるフランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドの「パワー・オブ・ラヴ」を歌うのはテレビのオーディション番組『Xファクター』で知名度をあげたマット・カードルだ。音域の広い高音の利いた、少年のように若々しく美しいヴォーカルで会場を魅了した。アルバムに含まれていない、ロシア人女性2人組のタトゥーの大ヒット・シングル「オール・ザ・シングス・シー・セッド」、そしてこちらは新作アルバムに収録されるグレイス・ジョーンズのヴォーカルで有名な「スレイヴ・トゥ・ザ・リズム」は2人の女性ヴォーカリストがリードを担当した。a-haのヒット「テイク・オン・ミー」はトレヴァーとマット、スティーヴの3人で歌ったが、冒頭のハイトーンなリード・ヴォーカルをトレヴァーが披露、観客は驚いた様子だった。
 トレヴァー・ホーン=敏腕プロデューサーというイメージが強いし、本人もこの肩書を否定はしない。しかしこの日のライヴを観て感じたのは、ミュージシャンとしてのパフォーマンスをトレヴァーが心から楽しんでいた点だ。歌えるものは自分で歌うし、ベースを弾きながらバンドを引っ張る表情はとても幸せそうだった。またソングライターとしての誇りもありフランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドの「パワー・オブ・ラヴ」は、(結局実現しなかったけど)フランク・シナトラがカヴァーすることを考えたんだ、と自慢げに語ったのも印象的だった。一時は英プログレ・バンド、イエスのメンバーとして活躍していた事実も忘れてはならない。バグルスでポップ・ソングをやっていただけでなく、高度なテクニックと音楽性で知られるイエスのメンバーとしての経歴は、彼が才能あるミュージシャンであることを証明する事実でもある。
トレヴァー・ホーン, ライアン・マロイ
トレヴァー・ホーンとライアン・マロイ
 新作に収められた曲がヒットした1979年から1985年は、打ち込みサウンドが大衆を魅了し、MTVが一世を風靡し、ミュージック・ビデオのイメージが曲と同時に観客の脳裏に刻まれた時代だった。シングル・チャートの最後の全盛期であったともいえる。以後、デジタル化によりチャートへの関心が薄れ、ポピュラー・ミュージックの在り方が変貌した。80年代にミュージック・ビデオの監督として大成功を収めたロルと、80年代を代表する敏腕プロデューサーのトレヴァー。80年代の音楽シーンを賑わせた2人が当時のヒットを再現したこの日のライヴ。観客は10代だった当時の気持ちに返って楽しんでいるように見えた。
文/高野裕子
Photo by Mark Mawston
セットリスト
[11月2日・英ロンドン QUEEN ELIIZABETH HALL公演]
※カッコ内はオリジナル・アーティスト
  1. Two Tribes(Frankie Goes To Hollywood)
  2. Video Killed the Radio Star(The Buggles)
  3. Dancing in the Dark(Bruce Springsteen)
  4. It's Different for the girls(Joe Jackson)
  5. Ashes to Ashes(David Bowie)
  6. Rubber Bullets(10cc)
  7. All the things she said(t.A.T.u.)
  8. Slave to the rhythm(Grace Jones)
  9. Power of Love(Frankie Goes to Hollywood)
  10. Living in a plastic age(The Buggles)
  11. What's Love got to do with it(Tina Turner)
  12. Take on me(a-ha)
  13. Cry(Godley & Creme)
  14. Blue Monday(New Order)
  15. Brothers in Arms(Dire Straits)
  16. Girls on films(Duran Duran)
  17. I am not in love(10cc)
  18. Eerybody Wants to Rule the World(Tears For Fears)
  19. Owner of the lonely hearts(Yes)
  20. Relax(Frankie Goes to Hollywood)
  21. Money for nothing(Dire Straits)
※トレヴァー・ホーンが新作を語るインタビューを1月中旬に掲載予定です。お楽しみに!
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