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誰もがみんな憧れる……リッケンバッカーとは?

2008/11/05掲載
誰もがみんな憧れる……リッケンバッカーとは?
 2008年も残りわずかとなった11月は、ザ・フー待望の来日公演が開催され、ポール・マッカートニーファイアーマン名義で新作を発表。ザ・スミスの新しいベスト盤が発売され、ACIDMANがニュー・シングルを発表。一見共通項がないように思えるこれらのアーティストですが、皆、リッケンバッカーを愛用している(いた)アーティスト。 そんなリッケンバッカーとは一体何なのか? 今回はその歴史を振り返りながら、リッケンバッカーの特徴などについて説明していきます。



 リッケンバッカーはビートルズによってその名が知られたこともあり、イギリスの楽器メーカーだと思われがちですが、実はアメリカのギター・メーカー。リッケンバッカーなる名称は創設者の一人であるアドルフ・リッケンバッカーからとられたものになります。母体となる会社は、ロサンゼルスの電気楽器とアンプを製造することを目的とされた“ロー・パット・イン・コーポレーション”(のちにエレクトロ・ストリングスに改名)。1931年に創設され、その後ハワイアン・ギター(ラップスティールギター)を世界で初めて商品化し、fホール、ピックアップを搭載したスパニッシュ・ギター、ベース、ヴァイオリンなどを製造。53年に、フェンダー社の販売権を手に入れアメリカ全土の販売網を確立させたF・C.ホール氏に会社が売却され、56年に現在でも引き継がれているスルーネック仕様のギター(コンボ400)やソリッド・ボディのベースを発表し、58年にはホロウ・ボディ仕様のギターを発表。そして1962年にデビューしたビートルズが使用したことでその知名度、人気は世界的なものとなり、多くのミュージシャンの憧れの楽器として定着していったのです。

 そんなリッケンバッカーのギターやベースの特徴は、ネックのねじれを防ぐためにトラスロッドが2本搭載されている点や独特の形状のピックガード、フロント・ピックアップとリア・ピックアップの音を別々に出力できるリック・オー・サウンド機能などが代表的なものとして挙げられます。弾いた音に反応してボディに内蔵されたライトが光るモデルや12弦ギターをレバーで6弦ギターに変えるモデル、8弦ベース、ギターとベースのダブルネック仕様といった、独自のアイディアが生かされた他に類を見ないモデルを発表しているところも見逃せません。そんなリッケンバッカー社の製品は、 “ハンドメイド・イン・アメリカ”という公約のもと、原材料の加工から組み立てなどの工程がすべて手作業で行なわれています。これは創設時から今に至るまで引き継がれているリッケンバッカーのこだわりのひとつです。

 ギターの音の特色を挙げるならば、中高音がガツンと鳴り響き、ジャキーンとしたソリッドで硬い音色。サスティンが短くアタックが強めに響くその音は、まさにリズム・ギターにもってこい。ザ・ジャム「イン・ザ・シティ」の前奏はもちろん、ビートルズ「オール・マイ・ラヴィング」でのジョンの3連ギターなどはその最たる例といってもいいでしょう。また、アルペジオを奏でたときのきらびやかな音色も特徴的で、ザ・スミス「ディス・チャーミング・マン」などが代表的なものになります。ソリッドでパンキッシュなサウンド、キラキラ感あふれるギターポップ、どちらにもフィットするそのサウンドは、リッケンバッカーだからこそなせるもの。
(写真:ザ・ジャム『ディレクション・リアクション・クリエイション』

 またリッケンバッカーを語る上で絶対に外せないのが12弦ギター。縦巻きと横巻き両方のセルを採用したコンパクトなヘッドという独自の仕様もさることながら、主弦と副弦を通常の12弦ギターとは逆に張ることで成り立つサウンドは唯一無二のもの。ビートルズ「ア・ハード・デイズ・ナイト」やザ・バーズ「ターン・ターン・ターン」をはじめとする楽曲で聴くことができる12弦サウンドと、イーグルス「ホテル・カリフォルニア」の前奏などで聴くことができる他メーカーの12弦サウンドを聴き比べれば、リッケンバッカーがいかに特徴的な音を奏でるかわかるはず。主弦が先に鳴るか、副弦が先に鳴るかという単純な違いでもありますが、その音色こそがリッケン・サウンドを形付ける一因になっています。

 ベースはというと、ビートルズ初期のヘフナー使用時の楽曲と中期〜後期のリッケンバッカーを使用した楽曲を聴き比べればその差は歴然。タイトで締まった太い低音をしっかりと響かせることがわかると思います。また、モーターヘッドレミーなどが使用するなど、ヘヴィな音楽にも通用するサウンドを奏でるベースであることもわかるはず。その音はもちろん、独特なシェイプも人気の1つですが、ハイフレットでも弾きやすいといったところもベーシストに愛されてる理由かもしれません。

 さて、そんなリッケンバッカーを愛用するミュージシャンはもちろん数多く存在します。60年代はビートルズ(ジョン・レノン、ジョージ・ハリスン、ポール・マッカートニー)を筆頭にザ・フー(ピート・タウンゼント)やホリーズ(トニー・ヒックス)などのブリティッシュ・ビート系バンドや、ザ・バーズ(ロジャー・マッギン)などが使用。70年代にはイエスクリス・スクワイア)、ダブルネック仕様のモデルを使用したジェネシスマイク・ラザフォード)やラッシュ(ゲディ・リー)などプログレ系のアーティストに愛用されます。70年代後半にはザ・ジャム(ポール・ウェラー、ブルース・フォクストン)がソリッドなカッティングとタイトなベース・サウンドを奏で、80年代にはザ・スミス(ジョニー・マー)、トム・ペティR.E.M.ピーター・バック)、バングルススザンナ・ホフス)などが使用。90年代以降になるとストーン・ローゼズプライマル・スクリームのゲイリー“マニ”モーンフィールド、ライドマーク・ガードナー、アンディ・ベル)、カサビアン(セルジオ・ピッツォーノ)、エディターズ(クリス・ウルバノヴィッチ、ラッセル・リーチ)などが使用しています。日本ではザ・コレクターズ古市コータロー)、財津和夫L⇔R黒沢健一黒沢秀樹、木下裕晴)、スパイラル・ライフ車谷浩司、石田小吉)、少年ナイフ(山野直子)、椎名林檎奥田民生くるり岸田繁)、cymbalsFrogの沖井礼二などが代表的なアーティスト。最近では銀杏BOYZ、ACIDMAN、サカナクションmonobrightなどのバンドがリッケンバッカーを愛用し、10~20代のリスナーの間でも憧れのギターとして挙げられることが多くなりました。
(写真:ACIDMAN「I STAND FREE」

 決してパワーのある音が奏でられるわけでもなく、エフェクターのノリも良くないなど、いろいろと扱いにくい点が多いにもかかわらず、さまざまなジャンルのアーティストに愛されるリッケンバッカー。その音色は他のギターでは決して真似のできない、まさにオリジナルのサウンド。これからギターを購入しようと思っている人は、リッケンバッカーを候補の1つに挙げてみてはいかがでしょうか? 真空管アンプにダイレクトでつなぎ、Eのコードを思い切り鳴らしてみれば、その音からもう逃れられなくなるはずです。
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