こんな引き出しがあったなんて――東京音楽隊・手塚裕之隊長&三宅由佳莉が語る『ブラバン・ヒーローズ』

海上自衛隊東京音楽隊   2016/04/11掲載
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 海上自衛隊を代表する音楽隊として国内外で幅広い演奏活動を行なっている“東京音楽隊”。ヴォーカリストの3等海曹・三宅由佳莉(ソプラノ)をフィーチャーした2013年リリースのアルバム『祈り〜未来への歌声』が大ヒットを記録して以来、音楽ファンからもなにかと注目を集める彼らから待望のニュー・アルバムが届けられた。新作『響け!ブラバン・ヒーローズ』には、懐かしの人気テレビ・アニメ&特撮ヒーローたちの主題歌が大集合。迫力たっぷりの吹奏楽新アレンジはオリジナルのテイストそのままでさらにパワーアップ。 2人のヴォーカリストによる胸アツな歌声が、かつての少年少女たちにもあの頃のピュアな気持ちを呼び覚ましてくれる、夢の一枚だ!
――手塚隊長(2等海佐・手塚裕之 / 指揮担当)は第17代東京音楽隊長に就任されて、この3月でちょうど2年になられたとか。
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手塚裕之2等海佐
手塚 「前(河邊)隊長時代のアルバム『祈り〜未来への歌声』が第55回〈日本レコード大賞〉(企画賞)や第28回〈日本ゴールドディスク大賞〉(クラシック・アルバム・オブ・ザ・イヤー)を受賞した直後の就任でしたので、隊員が“売れっ子”になって浮き足立ったりすることのないよう、気を引き締めていかねばという思いでした。東日本大震災・被災者への応援歌として制作したオリジナル曲〈祈り〜a prayer〉の精神を忘れないように、と」
――今回のアルバムも、平和を愛する気持ちや困難に立ち向かう勇気がテーマになっていますが、とても楽しい選曲です。冒頭の「ウルトラ兄弟メドレー」と「仮面ライダー・メドレー」からがっちり心を掴まれました。
手塚 「それぞれに個性の違う主題歌を一気に繋げるのは結構難しかったですね。個人的には〈仮面ライダー・メドレー〉のアレンジがいちばんのお気に入りです」
――とくに(自分のような)40代後半〜50代世代にはツボすぎます……たとえば「帰ってきたウルトラマン」と「ウルトラマンエース」の繋ぎに流れる“ワンダバ”の旋律とか。欲をいえば「ウルトラマンレオ」の主題歌は第14話から変更されたのでそちらも入れてほしかったとか、“昭和・仮面ライダー第1期”は『仮面ライダーストロンガー』までなのでは? とか、いろいろと意見もあるのですが(笑)、それもすべて愛、ゆえにです。
三宅 「たしかにレコーディング中も“熱い”世代がいて、そういう隊員たちが中心になってリードしてくれました。でも私のような若い世代にとってもワクワクするような曲ばかりで、今朝も〈仮面ライダー・メドレー〉を聴いて気持ちを上げて来ました」
――「マジンガー・メドレー」に“兜 甲児(かぶとこうじ)繋がり”で「UFOロボ グレンダイザー」の主題歌もちゃんと入っているのが嬉しいです。同作品は1970年後半からフランスやイタリアでも放送されて爆発的な人気を呼び、後の欧州における“日本サブカルチャー”ブームの礎を築いた、いわば外交上も重要なアニメですから!
手塚 「とくに〈マジンガー・メドレー〉はうちの音楽隊の持ち味をいかしたアレンジに仕上がっていて、気持ち良く演奏することができました。欧州で披露できる機会があればいいですね」
――そして今回のアルバムの聴きどころのひとつとして、すでにネットなどで話題騒然なのが三宅さんの歌う「キューティーハニー」です。これまでの清楚なイメージとはまたひと味ちがう、キュートなヴォーカルに魅了されました。
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三宅由佳莉3等海曹
手塚 「三宅の活動が反響を呼び、現在は自衛隊(陸・海・空)の音楽隊には総勢4名のヴォーカリストが配属されています。やはり彼女にはその先駆者として後輩の追随を許さないポジションで活躍してほしいと思い、この大役に抜擢しました」
三宅 「自分の中にこんな引き出しがあったなんて……本人がいちばん驚いています。これはやはり、ホルン演奏の傍ら歌手としても人気があり、当隊のアレンジャーとしても活躍する川上(良司)1等海曹が、熱心に細かいニュアンスまできっちりと指導してくれたことが大きかったと思います」
――その川上さんがメイン・ヴォーカルを担当し、三宅さんもバック・コーラスで参加した「宇宙戦艦ヤマト」と「銀河鉄道999」が本当に素晴らしい! オリジナルのささきいさおヴァージョンよりも本物っぽいと言いたくなるような完璧な歌唱と、厚みのあるサウンドに感動しました。
手塚 「とくに〈宇宙戦艦ヤマト〉は“必ずここへ帰ってくる”という歌詞から、海上自衛隊では艦の見送りに欠かせない曲であり、演奏会でとりあげることも多い作品です。出版譜も有名でほかのバンドも好んで演奏する人気曲ですが、重厚な雰囲気を保ちつつもちょうどいいテンポで颯爽と波を切って進んで行く(宇宙戦艦ですが……)感じを出すのがとても難しい。今回は川上と“吹奏楽でオリジナルを超えよう!”を合い言葉に頑張りました」
――三宅さんの透明感あふれるソプラノ歌唱をヴォカリーズとしてフィーチャーした『宇宙戦艦ヤマト』の定番シーンのBGM「無限に広がる大宇宙」も、もはやオリジナルを超えた美しさです。こちらもアレンジャーである川上さんの強いこだわりと“愛”を感じました。
三宅 「〈無限に広がる大宇宙〉も2013年のアルバム『遙かな海へ』に続いて二度目のレコーディングでしたが、ピアノ入りだった前回よりもより忠実に、『宇宙戦艦ヤマト』が大好きな川上1等海曹のイメージどおりのサウンドに仕上がっているはずです」
――オリジナル・サウンドトラックと主題歌によって7つのテーマで構想された壮大な「交響的ファンタジー《機動戦士ガンダム》」も圧巻ですね。どれも有名な曲ばかりで、聴いているとアムロやシャアの戦闘シーンやあの印象的な名ゼリフが目の前に蘇ります。
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川上良司1等海曹
手塚 「それを聞いて安心しました。『ガンダム』世代ではない自分にはどれもなじみがなく、主題歌でもないBGMばかりをこんなにとりあげて、マニアックすぎないか、これで本当に大丈夫なのかと心配していたのです(笑)」
――ラストは人気曲の〈残酷な天使のテーゼ〉で締め。『新世紀エヴァンゲリオン』は三宅さん世代にとってもなじみのある作品ではないですか?
三宅 「そうですね、友達が歌うのを何気なく聴いていましたが、まさか自分が歌うことになるとは思ってもみませんでした。今回はどの曲も自分にとっては挑戦で、いろいろと勉強になることが多く、とてもいい経験になりました。これからもアンテナを張り巡らせて、自分の歌の栄養になるような新しい素材をどんどん取り入れていけたらいいなと思っています」
――今日はありがとうございました。航海の無事をお祈りいたします。
手塚 「私たち音楽隊の活動は艦艇出入港時の演奏から、儀式や式典における演奏、国際親善と多岐にわたっていますが、国民の皆さんに自衛隊へのご理解を深めていただくのも大切な仕事のひとつ。今後も日本を代表するバンドとしての自負を持って、頑張りたい」
三宅 「これから先、どのくらい目標を達成できるかわかりませんが、自分の道を信じて進んでいきたいです」
取材・文 / 東端哲也(2016年3月)
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海上自衛隊東京音楽隊
Concert Schedule

www.mod.go.jp/msdf/tokyoband/concert

・トワイライトコンサート
2016年4月16日(土) 18:00〜19:00

奈良 橿原神宮外拝殿前広場

・第32回自衛隊奈良定期演奏会
2016年4月18日(月) 18:30〜

奈良 なら100年会館

・ニコニコ超会議2016 超音楽祭2016
2016年4月29日(金・祝) 11:00〜11:30

千葉 幕張メッセ国際展示場
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