コンプリート・ワークス・オブ・リザード 〜 モモヨが語る“リザード”の軌跡

LIZARD(Punk / New Wave)   2009/01/21掲載
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 未発表音源を含む全トラックを網羅したCD10枚組に加え、未公開ライヴ映像を収めたDVDをパッケージング。とびきりの刺激と興奮を日本のロック・シーンへと与えたリザードのコンプリート・ボックス『ブック・オブ・チェンジズ コンプリート・ワークス・オブ・リザード』が発売される。

 “東京ロッカーズ”というムーヴメントの枠組みを自由に行き来し、激しく深い進化をとげ、独自の世界を築き上げたその軌跡を、バンドの中心人物であるモモヨに語ってもらった。



 「膨大な量をまとめることで見えてくる、言葉にできない一本の“筋”を鮮明にしたかったのが、このボックス。次に何かを始める前に、自分が何なのかを知りたかったんですよ」
 リザードの中心人物、モモヨは、『ブック・オブ・チェンジズ コンプリート・ワークス・オブ・リザード』についてそう語りはじめた。今作は、未発表音源や未発表映像を多数含む全11枚組。オリジナル・アルバムや、名コンピ『東京ロッカーズ』(79年)用に録音されたライヴ音源の全貌のほか、70年代初めに結成された前身バンド、紅蜥蜴の楽曲から、デジタル映像を盛り込みながらの2000年代製作のクリップ(モモヨの現在の創作活動を語るうえで重要だとか)までを収録。ロック史に大きな足跡を残すリザード、ひいてはモモヨの36年が濃密に刻み付けられている。








 「みんな、東京ロッカーズ云々でビートがどうだとかリザードについてあれこれ言うけど、変化していくという意味では日本で希有な存在だと思う。今作を出すきっかけとしては、80年のライヴ映像(DVD『ロックンロール・ウォーリアーズ』)を観て、自分にとって重要なのは“言葉”なんだってことを再認識したことも大きかった」
 そんな同作は、72年から77年にかけての紅蜥蜴の未発表音源を集めた『憂鬱な少年のバラード』で幕を開ける。このバンドとしての作品は、2枚のシングルとプレ・リザードな『けしの華』(80年)が存在するのみだが、DISC1収録のシアトリカル&プログレッシヴな音源こそが紅蜥蜴の真の姿なんだとか。
 「初期の作品にバラード、といっても物語詩のことなんだけど、それはないと思ってたんだけど、紅蜥蜴の時代にけっこう書いていたんだよね。倒錯したフリークスみたいなキャラクターを想定しての物語詩を。そういった歌詞の世界って、日本にはあまりないんじゃないかな。(ブックレットに掲載された、紅蜥蜴時代の)シンセを弾く写真観ました? 国産第一号機なんですけど、ヴィジュアル面も(ピーター・ガブリエル在籍時の)ジェネシスというにはあまりにケバい(笑)。この後(76年頃)なんですよ、パンクっぽくなっていくのは」








 紅蜥蜴は、78年に日本で最初のパンク・コンサートなどと評される“ROCK'IN DOLL EAST”にフリクションミスター・カイトミラーズらと出演。当時についてモモヨは「フリクションや(中央線沿線の)高円寺にいるバンド連中を世間に出したかった」 「何かしらの種を残したかった」と語る。その後東京ロッカーズと呼ばれるムーヴメントが形成される中、紅蜥蜴はバンド名をリザードに変更。79年にはジャン・ジャック・バーネルストラングラーズ)をプロデューサーに迎え、ロンドンで録音したファースト『リザード』をリリースしている。
 「東京ロッカーズに関しては、もっとミスター・カイトが広い意味で捉えられれば良かったと思う。彼らには高円寺特有の臭みがあるし、あのバンドが持つ文学臭みたいなものが1つのカギだった気がする。そういった意味では、ムーヴメントとして限定的に捉えられてしまった嫌いがある。そんな中、俺たちはスタンスとして真ん中に位置するバンドだったし、東京ロッカーズ初期には紅蜥蜴のファンだった十代に分からせるような作り込みをしていた部分もあったし。だから、ステージに関しては東京ロッカーズのバンド群が持つ全部の要素を持ち合わせていたんじゃないかな。とはいえ、バンドとしては自由にやっていたと思う。逆にアルバムは1枚、1枚、作品集として作っているし、ファーストなんかは、映画『惑星ソラリス』の監督(アンドレイ・タルコフスキー)が東京を見て“未来都市みたいだ”と語ったエピソードが、構想のモチーフになっているんで」





 最近、ナイン・インチ・ネイルズ『ゴースツ:1-4』(2008年)を聴き、アーティストとしてトレント・レズナーとの類似点を実感しているというモモヨ。ボックスでひとつの区切りをつけての今後の活動については、
 「1つは、コー(リザードのオリジナル・キーボーディスト)と自分を核に、アンビエントと言えば語弊があるけど、機材や楽器をあれこれいじりながらのアプローチ。もう1つは、生ギターとヴォーカルだけのアルバムを作りたいと思っている。子供の成長について歌った曲があって、それをまとめたいんだ。後は派遣切りだなんだって時代が70年代後半と変わっていない気もするから、リザードの初期、東京ロッカーズの頃に戻ったことをやろうかとも考えている。メッセージを発したいというか、こんなご時世だからこそ時代に貢献したいんだよね」


■トランスフォーマー オフィシャル・サイト
http://www.transformer.co.jp/


取材・文/兒玉常利(2008年12月)



【LIZARD COMPLETE BOX 遂に発売!】



※1/30発売
『ブック・オブ・チェンジズ〜コンプリート・ワークス・オブ・リザード』
(CD10枚+DVD:TMSC-001 税込29,400円)
<未発表音源を含む完全リマスターCD10枚組>
(1)「憂鬱な少年のバラード」
(2)「真説けしの華」
(3)「ドキュメント1979」
(4)「鋼鉄都市」
(5)「インディペンデントデイ」
(6)「ジャンキータウン」
(7)「脱王国記」
(8)「現代謡曲集」
(9)「岩石庭園(全)」
(10)「バビロニックワークス」
<DVD>
・The Amazing LIZARD/モモヨ自身による創作映像をまとめたPV
・1979 オリジナルPV/ファーストアルバムリリース時に製作された16ミリの映像
・1980 LIVE/1980年に行われたライブショー
・2006 LIVE/2006年10月20日、新宿ロフトでのライブ映像
・2007 LIVE/渋谷La.mamaでのライブとディスクユニオンでのDVD『ロックンロール・ウォリアーズ』発売記念ライブ
<ブックレット/計112P>
・ジャン=ジャック・バーネル(ストラングラーズ)×モモヨの対談
・紅蜥蜴時代、LIZARDロンドンライブなどを収めた写真の数々
・モモヨによる全作品解説、全曲歌詞
・LIZARD&モモヨヒストリー ほか
※「LIZARD ARMY 復刻バッジ」封入

(C)2008 YASUO SUGAHARA + Transformer , Inc. All rights reserved.
発売元・販売元:株式会社トランスフォーマー



【LIZARD コンプリートBOX発売記念ライヴが開催!】

“Change2009 革命前夜祭”ニューキッズ総決起大会
【日程】 2月5日(木)
【会場】 新宿LOFT
【開場/開演】 18:00 開場 / 19:00 開演
【チケット】 前売り¥3,500/当日¥3,800
※PIA(311-807)、LAWSON(76144)、e+、LOFT窓口
※お問い合わせ:新宿LOFT/03-5272-0382
【出演】 Lizard、8 1/2、DARKSIDE MIRRORS
Lizard:モモヨ(vo,g)、コー(vo,electronics)、ワカ(vo,b)、キース(ds)

【disk unionにてインストア・ライヴ&トークショー決定!】

●1月30日(金) 21:00〜
会場:disk union 下北沢店(03-3467-3231)
<ゲスト>モモヨ(LIZARD)&地引雄一
※観賞無料

●2月1日(日) 16:00〜
会場:disk union 御茶ノ水駅前店(03-3295-1461)
<ゲスト>モモヨ(LIZARD)、高木完、地引雄一
※観賞無料
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