ヒネりの効いたサウンドとファンタジックな世界観で注目を集める4人組ロック・バンド、ピロカルピンが1st EPを発表!

ピロカルピン   2011/12/02掲載
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 独自の音と世界観で、耳の早い音楽ファンから注目を集める4人組ロック・バンド、ピロカルピン。2011年3月にリリースした3rdアルバム『宇宙のみなしご』は、スピッツ草野マサムネや漫画家の日本橋ヨヲコをはじめ各界著名人らも熱いコメントを寄せた。彼らにとって、2011年はアルバムのリリース、旧ドラマーの脱退、新ドラマーである荒内塁の加入、渋谷クアトロでのワンマン・ライヴなど、さまざまな転機が訪れた激動の一年だった。そんな年を締めくくる作品として、1st EP『青い月』がリリースされた。本作はどこか開き直ったかのように新たなフェイズに突入した彼らのサウンドが聴ける一枚に。今年の活動を振り返りつつ、アートワークといった音以外の面でのこだわりについても訊いてみた。



 
――2011年はピロカルピンにとって、ターニングポイントと言える年でしたね。
松木智恵子(vo、g / 以下、松木) 「3月に『宇宙のみなしご』のリリースがあって、5月にドラマーが代わって、バンドにかなりの変化がありましたね」
岡田慎二郎(g / 以下、岡田) 「2 ndアルバムまでは既成の楽曲を中心にレコーディングしてきたところがあったけど、3作目と今回のEPは新しい楽曲もうまくミックスされたものになってます」
――新ドラマーの荒内さんはどんな経緯でメンバーになったんですか?
岡田 「とあるメンバー募集サイトで、僕らの好きなサウンドとかは列記しつつ、バンド名を公表せずにメンバー募集をしてたんです」
荒内塁(ds / 以下、荒内) 「実はピロカルピンのことは全然知らなかったんですよ。試聴してみたらすごく良かったから、web上でやり取りをし始めて」
岡田 「最初に荒内さんから送られてきたドラムの音を聴かせてもらったときは、ちょっとジャンルが違う感じもしたんですけど……」
松木 「だから、断りそうだったよね(笑)。でも、お互いが影響を受けたバンドにUKのマンサンが入ってて、“そういう人ってなかなかいないから合わせてみたいです”って荒内さんが言ってくれたんです。きっかけはマンサンですね」
荒内 「意外とびっくりしたんですよ。知らないって言われる方が多いから」
スズキヒサシ(b / 以下、スズキ) 「名前しか知らない人が多いよね」
岡田 「(マリリン・)マンソンと間違えられたりね(笑)。僕らの中では超メジャーなのに」
――荒内さんはメン募サイトをよくチェックしてたっていうことですか?
荒内 「いや、昔はよく使ってたけど、最近は放置してたんですよ。ふと思い出して開いたタイミングで募集を見つけたんです」
岡田 「ちなみに、メンバーは全員そのサイトがきっかけで出会ってるんですよ」
スズキ 「有名なバンドでも、メン募サイト経由で結成した人たちって多いらしいです。僕がピロカルピンに入ったのは2010年なんですけど、それもけっこう不思議な流れなんです。というのも、とあるメン募サイトの関係者とたまたま知り合いで、メンバー募集を見る1週間前に友達の結婚式で彼にバッタリ会ったから、その流れでなんとなくサイトを見たっていう(笑)」
――そういうことってあるんですねぇ。荒内さんが入って、わりとすぐに渋谷クアトロでのワンマンがあったんですか?
岡田 「はい。代わって3本目のライヴがクアトロでしたね。かなりバタバタでした(笑)」
松木 「だけど、バンドの精神状態は今までで一番安定してるんですよ」
スズキ 「落ち込む間もないうちに安定感のあるドラマーが入ってくれて、クアトロまでにみんなで形にしようっていう集中モードになれましたね」




――ワンマンを経て、メンバー・チェンジ後初の音源となるのが今回のEP『青い月』ですが、新曲の「青い月」「オペラ座」はこれまでのピロカルピンになかったタイプの曲ですね。
松木 「今回は1曲ごとにまったく異なる方向性を打ち出してみたんですよ」
――「青い月」はクアトロのライヴ後にすぐ作った曲だそうですね。この爽快なギター・ロック・ナンバーは意外でした。
松木 「ここまでスピーディに出来上がったのは初めてですね。クアトロのライヴを受けて、バンドのモチベーションが上がってきたことが表われてると思います。そもそも私は疾走感のあるギター・ロックがやりたくて、バンドを始めたはずなんですよ(笑)。それが今になって自然と出てきた」
岡田 「僕はUKロックが好きなので、ストレート過ぎるアプローチを恥ずかしがる気持ちがあったんです。でも、今までそういうひねくれたことをやってきたからこそ、<青い月>は新鮮なんですよね」
――“ありえないことなんて なくなる世界”という歌詞が「青い月」にあるんですけど、これは松木さんの実体験から生まれた考え方なんですか?
松木 「そうです。私たちって“ライヴ・ハウスに1回出られればいい”みたいなところからスタートしたバンドなので、そう考えると自分たちでも信じられないような素敵な出来事が最近は特に多くて。この詞はまさにそんな思いからですね」
――以前はこんなにポジティヴな考えはなかった?
松木 「今だって全然ポジティヴじゃないと思いますよ(笑)。普段がネガティヴだから、歌はポジティヴに向かおうとするというか。自分が希望のある言葉を聞きたいっていうことで、理想が投影されてるんじゃないかな」
――対照的に「オペラ座」はひねくれた要素を全面に出した曲になってて、サウンドのごった煮感が面白いです。
松木 「クラクソンズとかサンシャイン・アンダーグラウンドとかのニュー・レイヴが好きで、そういうのを作ってみたいと思ったのが発端ですね」
岡田 「試行錯誤の末、最終的にはサイケやプログレ、シューゲイザーの要素を加味した独特な曲になりました」
――どの曲でもそうですが、岡田さんのギターはがっつり弾き倒してますね。
岡田 「スウェードみたいに、歌と対等なフレーズを弾くイメージなんです。あまり歌に譲る感じじゃないですね(笑)」
荒内 「すごいなって思いますよ。初めて聴いたとき、めちゃくちゃ不思議だったから。こんなに堂々と弾きまくるギタリストってなかなかいなくて面白いです」
スズキ 「メロディにメロディを乗っけてる感じですよね(笑)。どっちが主旋律でも成り立つのは本当に独特だなって」



1st EP『青い月』の原画


――バンドの魅力的な個性の1つですよね。あと、アートワークについてもお聞きしたいんですけど、青がベースになってることが多いのはどうしてですか?
松木 「イラストレーターの吉田利一さんに曲をお渡しして、曲のイメージもお伝えして書いていただいてるんですけど、色を指定したわけではないんですよ。吉田さんが受け取った曲の印象が青なのかなって思います」
岡田 「僕らの曲は夜のイメージに近かったり、内に秘めた感情を歌ったりした曲が多いですからね。アレンジするときは僕もそのカラーを意識してますし」
――これまでに配信よりCDを重視していることもこだわってる点だそうですね。
岡田 「配信は配信として認めつつも、やっぱり僕らはCD世代で、モノが好きなんですよね。ジャケと音はリンクすると思うんです。たとえば、あるアーティストの音を色でイメージするときって、実はジャケの色そのものが頭に浮かぶじゃないですか。だから、僕らが伝えたい世界観を、音楽性だけじゃない面でも示すことが大事だと考えてますね」
スズキ 「すごい技術を使ってアナログなことがやりたいんです。音だけ聴くとシンプルなんだけど、実はこだわってるみたいな。ジャケやPVも同じ考え方で、ポップな裏では丹精込めて作ってる。そこが僕らの一貫してるスタイルですね」
松木 「わかりやすいのが吉田さんの手の込んだ点描画ですよね。親しみやすさの背景に、とても丁寧な作業が存在してるっていう。そこはピロカルピンの本質とまさに繋がってる部分だと思います。最近では音楽以外の部分と合わせて楽しんでくれる方も多くて、そういう声を聞くと私たちも嬉しくなりますね」
取材・文/田山雄士(2011年11月)
【ツアー情報】
<「青い月」レコ発ツアー“once in a blue moon”>

[東京公演]
●日程:12月13日(火)
●会場:渋谷WWW
●時間:開場18:00 / 開演19:00 
●料金:前売券 3,000円 / 当日券 3,500円 

[大阪公演]
●日程:12月15日(木)
●会場:梅田Shangri-La
●時間:開場18:00 / 開演19:00 
●料金:前売券 3,000円 / 当日券 3,500円

[名古屋公演]
●日程:12月20日(火)
●会場:名古屋ell.SIZE
●時間:開場18:30 / 開演19:00 
●料金:前売券 3,000円 / 当日券 3,500円
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