パーティは終わった――2018年、STRUGGLE FOR PRIDEが贈る憎しみの音楽

STRUGGLE FOR PRIDE   2018/05/25掲載
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 ついに下北沢駅の南口がなくなった。南口の階段下にあったドトールも、コンビニもパン屋も、待ち合わせてスリッツやシェルターへ向かった“噴水のない”噴水広場なんてとっくの昔に消えた。街も生きている。変わることを嘆く必要はない。つまらないならまた、自分たちで塗りかえればいい。抗ったところで街は、東京は新陳代謝を繰り返す。

 東京オリンピック開催を控え、やや乱暴ともいえる再開発が進む2018年5月、STRUGGLE FOR PRIDEによる約12年ぶりのフル・アルバム『WE STRUGGLE FOR ALL OUR PRIDE.』が満を持してリリースされる。陳腐なノスタルジーを蹴散らし、ムードを変えるナンバーの数々を聴きながら、また新しい東京を歩いて、遊びに行こう。
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――様々な場所に貼られていた告知ポスターからだいぶ時間が経ちましたけど……アルバム完成おめでとうございます。みんなだいぶ焦らされてここまできましたね(笑)。
 「うわあ! ヤバい、初めて言われた(笑)。なんでこんな大々的に嘘をついたんだと思ってたところでした(笑)。あの時はやるつもりだったんです」
――『YOU BARK,WE BITE.』の再発盤と併せて『WE STRUGGLE FOR ALL OUR PRIDE.』を聴きましたが、音作りが変わったな、と思っています。これまでは良くも悪くも、東京・西荻窪にあったWATTSでのライヴを思い出すような、ライヴ感がある音だったんですけど、今回はクリアで独特のうねりもあって。すごく良くなったなって思いました。
 「意図的にではないんですが、前の作品から時間が空いたこと、特にグッチンは常に活動を継続していたからこそ、録音物に対してのメソッドが分かったんだと思うんです。選択肢が増えた。そこにドラムとして陽くんが加入してくれたことで、明らかな変化として出てきたんだと思います」
――1曲目を飾る「CHANGE THE MOOD」は現行のハードコア・パンクから余計なものを全部取り除いた音だと感じています。グッチンさんがいきなりあの音でギターを弾くことがすごく感動的だし奇跡(笑)。
 「かっこいいっすよね。そう聴いてもらえるのはありがたいです。憎悪の音楽、ハードコア・パンクです」
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――サイケデリック・バンドであるかのように聴こえる瞬間もあって。
 「マスタリングの時に“参考になる音源を持ってきてください”って言われて、俺はブルー・チアーアイアン・バタフライを持って行きました(笑)。昔、ウザワくんからジーザス・フィーバーと一緒に借りて知ったデーモン&ナオミが去年たまたま来日して観に行ったり。俺たちのサマー・オブ・ラヴ(笑)。意識としてありましたね」
――アルバムに収録されている〈METEO NIGHT 2017〉でのライヴを観た時、サイケデリックな音作りをしてるって感じたんですよ。確かにヴォーカルの音量が大きかったのも事実だけど、それよりもほかのメンバーの音だったり、意識もこれまでと違う気がしていて。ただ、それが意図的に変えてきているのか、偶然なのかがわからなかったんですけど、ようやく確信できました。
 「〈METEO NIGHT 2017〉で曲順とかも含めて具体的に試してみたんです。すごい、伝わってた! よかった(笑)。いろんなスタイルがあるからこそ、暗黙の了解にしたかった」
――それは例えば、BUSHMINDSWEET TALKING』だったり。アンプを積んでるからそうかという訳ではないし。
 「そうです、過去にあるものをなぞってもそうはならないし。そういうことには興味ないです」
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――MOONSCAPEのHATEさんと小西康陽さんが参加した「全ての価値はおまえの前を通り過ぎる」、小西さんのステートメントはとても鮮烈なんですが、あれは……。
 「自分が書いたものを読んでもらってます」
――「2018年、東京の深い憎しみの音楽」という言葉がすごく重要だと思えました。今里さんが“ノスタルジーだったらもうやらない”って言っていたこともあるし、メンバーとも同じ気持ちでやれるって確認ができて、この作品につながっていますよね。自分と同じ感触の人を探しているし、通じてる人だけが参加していることが明確に伝わる。
 「なんか、ホーミー的な。本当に近い人間で、かつ自分から見てすごく考え方が好きな人たちを誘わせてもらってます。心細かったから、力を貸してほしかったんです」
――今までも心細かった?
 「全部っすね、常に(笑)。less than TVのコンピ(『友達以上恋人未満TV以下』)にも提供してた〈IT WAS A WAR EVERYWHERE〉には、5.14とか身の回りのクルーの名前がいっぱい出てくるんですけど、90年代の下北でみんなが何をしていたかってことについての曲です。CMWの〈MUSIC TO DRIVE BY〉みたいにシャウトアウトだけで作りたかったんだけど、俺には無理だった(笑)」
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――『YOU BARK, WE BITE.』から約12年、バンドとしての成長はありましたか?
 「時間の区切りの中で、それぞれにとって色んなことがあるのは当たり前のことだし、身につくものは多いけど、それは人に見せるためのもの、自慢するためのものではないって思うんです。グッチンが自分達のやりたいことを明確にやれるようになってくれたことは成長なんだけど」
――経過した時間は関係ないってことですね。
 「長い間バンドとか音楽やってる人って、無礼な人が多いと思う。“すごく好きなんです”って声かけたりすると“ありがと、よろしくねー”みたいな。あれって慣れだと思うんですよ。誉めてくれたり、受け入れてくれることに慣れちゃって、当たり前だと思っているから流せるんじゃないかなって。……自分でも性格悪いなって思うんだけど、そういう態度を取っている人を見て、俺らはクスクス笑ってる(笑)。意識して、そういうことに慣れないようにしようと。例えば石田さん(ECD)って絶対そういうことをしないし、音楽が好きで、長い間そこに身を置いているのに絶対に無礼な態度がなくて。本当にそういうやつらが大っ嫌いだったんだろうなって」
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――〈METEO NIGHT 2017〉でECDさんが残した「次はSTRUGGLE FOR PRIDEです」。これは今となってはある意味、“次への”バトンを渡されたとも考えてしまうのですが、どうでしょう?
 「いや……そういうことにしておこうかな(爆笑)。石田さんのアルバム『MASTER』で冒頭、俺らがWATTSでライヴやった時に“次はECDです”って小西さんのマネをしたのを使ってくれたことがあったんです。“使う”とか何も聞いてなかったし、まさか自分の声が入ってるとは思ってなくて。すごく嬉しくて……。その逆ができないかなって。体調を崩されて一番最初に退院した後、お見舞いに行った時に、アルバムを作るんで参加してくださいってお願いしたんです。それからその件については全然連絡なかったんですけど、METEO NIGHTの数日前に連絡くれて“やりたいけど大丈夫かな?”って言ってくれて。俺、最後の何時間か前まで石田さんとふたりっきりで。すげえ元気で、ふざけた話をいっぱいしてて。俺はMETEO NIGHTが最後だとか全く思ってなくて、まだ約束は果たされてない、ビートも作ってもらいたくて。翌週にBUSHBASHでDJが決まってたから“次はライヴやってくださいよ”なんて話して“無理ーっ”とかそんな感じで。俺は、治ると思い込んでた。この一回が特別だったわけではないんです。石田さんが考えていたことはわからないし。うまくは言えないですけど。でも最後の日に病室で、石田さんが“呼んでくれ”って言ったメンツ、例えばクボタくんと、石黒くんは毎日連絡してくれて、俺のことを今でもずーっと気にかけてくれてるんです。深読みしだしたらキリないんだけど、亡くなった後のことまで考えてくれてたのかもしれないです。そうですね、このごろ人がいなくなることには慣れないって分かりました」
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――最後の曲「TRUE TO MY TEAM」も慣れることのない感情を呼びますね。
 「いなくなっちゃったことは事実だから。もう仕方ないことだけど。去年の年末とかクソみたいなことばっか起きてて、いまでも続いているんだけど、このアルバムも全然楽しい気持ちで作ったものでは実はなかったりするから。ちゃんと笑ったりもしていたけど、ずっとイライラしてますね」
――それはとても正直だと思うし、悲しいことはあるから。それでもパーティは続けていかなきゃいけない。
 「パーティは続けなくていいです(笑)。〈WE STRUGGLE FOR ALL OUR PRIDE〉はもともと〈PARTY IS OVER〉ってタイトルで」
――え、でもあの曲はシンガロングしたくなる感じの……。
 「あ、そうですね(笑)。俺、ヤンクンに歌わせたかったんです。MC KHAZZとかみんなにも歌ってもらってます。この間のアースダムのライヴでもいきなりヤンクンの前にマイク・スタンド置いたりしてみたんだけど(笑)」
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取材・文 / 服部真由子(2018年5月)
撮影 / 中野賢太
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