秘密のベールに包まれたマンチェスターの4人組ウー・ライフが初来日! DIYなバンドの素顔を語る

ウー・ライフ   2011/08/12掲載
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秘密のベールに包まれたマンチェスターの4人組ウー・ライフが初来日! DIYなバンドの素顔を語る
 マンチェスターから登場した4人組バンド、ウー・ライフ(WU LYF)。地元で彼らが主宰していたイベント〈へヴィ・ポップ〉が話題を呼ぶなか、メジャーからのオファーを断って自分たちのレーベルからデビュー・アルバム『ゴー・テル・ファイアー・トゥ・ザ・マウンテン』をリリース。プロフィールをほとんど公開しなかったこともあって、秘密のベールに包まれた存在として騒がれていた彼らがフジロックで初来日した。今回、インタビューに応えてくれたのは、エラリー・ジューサー・ジェイムス(vo、key)とトミー・G・ラング(b)。「自分たちをミステリアスに見せようなんて思ってないよ。勝手にメディアが騒いでるだけさ」なんて肩をすくめる彼らは、自分たちの目指すサウンドについて率直に答えてくれた。




――今回のアルバムはどういった環境でレコーディングされたんですか?
 エラリー「最初はスタジオでレコーディングを始めたんだけど、サウンドがすごくクリアすぎるのが気に入らなくてね。リヴァーブとか、そういうエフェクトをなんでわざわざつけるんだろう? っていう気持ちになってきた。だったら、自然に良い音が出る場所を探したほうがいいんじゃないか? ってことで、マンチェスターのいろんな工場や建物を試してみて、工場街にある廃墟寸前の古い教会を見つけた。持ち主と交渉して3週間だけ借りることができたから、その3週間に集中してレコーディングに打ち込んだんだ」
――では、アルバムのリヴァーブは自然のものなんですね。
エラリー「ほぼそのままの状態だね。個々の楽器にマイクをあててレコーディングすると同時に、教会の反響音も拾って、そのリヴァーブをどれくらい使うかをあとで調整していった。そうすることで、教会をひとつの楽器のように扱ったんだ」
――レコーディングは一発録りですか?
 トミー「そう、すべてはグルーヴのためさ。個々の楽器の音をパーフェクトにしようとすると、音の一体感とかグルーヴが失われてしまうと思うんだ。アルバムの部分部分でパーフェクトじゃないところがあるけれど、逆にそこが大切だと思ってる。僕らは日本の“侘び寂び”という言葉にすごくインスパイアされていて、パーフェクトじゃないところがアートだと思っているんだ」
――バンドの一体感を大切にしているんですね。
 トミー「“音楽をどうして行くか?”なんて考えないで、みんなその場で自分が感じたように音楽をやっている。だから、バンドが持つケミストリーがすごく音に反映されているんじゃないかな」




 エラリー「あと重要なポイントは、みんなが個々にそれぞれ違うことをやる、とういことかな。例えばヴァン(・カティ)がギターですごいノイズを出したときに、ほかのパートもノイジーな方向にいってしまうとヴァンのギターが引き立たない。だから、お互いを尊重して演奏に参加するという姿勢はバンド内にあるかもしれないね」
――そういえば、ヴァンのクリーン・トーンなギターの音色は、マンチェスターの先輩アーティスト、ヴィニ・ライリードゥルッティ・コラム)を思わせますね。
 トミー「ヴァンがそれを聴いたら、すごく光栄に思うんじゃないかな。彼の一番好きなギタリストがヴィニ・ライリーだから」
――ちなみにお二人はどんなアーティストから影響を受けましたか?
 エラリー「僕はトム・ウェイツウータン・クラン。ウータンの本を読んだときに、彼らの音楽に対する信念にすごく共感を得て刺激されたんだ。その2人のアーティストにはすごく影響を受けている」
 トミー「僕はミニットメンのベーシスト、マイク・ワッツ。僕がベーシストだからというのもあるけど、彼はいろんなスタイルをやるベーシストだから、そこにすごく共感する。あと、パーラメントファンカデリックかな。ベース・ラインがすごく良いんだ。ボアダムスも好きだよ。バンドを始めた頃、彼らの〈スーパー・アー〉をカヴァーしていたけど、あのベースにも影響を受けたね」




――あなたたちが主宰していたイベントの名前で、曲名にもなっている〈ヘヴィ・ポップ〉というキーワードは、ウー・ライフにとってどんなサウンドを指しているのでしょう。
 トミー「例えば“オルタナティヴ”なんてふうに言うと聴く人を限定してしまうけど、“ポップ・ミュージック”って多くの人々に届く音楽だろ? 僕らは多くの人々に聴いてもらいたいと思っているから“ポップ”と言ってるんだ。“ヘヴィ”っていうのは、バンドを始めた時にヘヴィな音楽が好きだったからで、その両方を合わせて〈ヘヴィ・ポップ〉と呼んでいる」
――あなたたちの歌詞やメッセージには“ホーム”という言葉もよく登場しますが、あなた達が目指す“ホーム”とはどんな場所ですか?
 トミー「実在する場所ではなくて、もっと精神的な場所を指しているんだ。音楽を始めた当時、僕らがどこかに現実逃避したかった。自分たちの精神的な居場所を作りたくて、そこを“ホーム”と言ってたんだ」
――ウー・ライフはあなたたちにとっての“ホーム”になりました?
 エラリー「いや、どっちかというと車かな。“ホーム”に辿り着くための乗り物だという気がするね。車って古くなってくるとみんな改造したりするだろ? でも、ウー・ライフという車は、これからもあまり手を加えたりしたくないな(笑)」
取材・文/村尾泰郎(2011年8月)
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