「YOSHIKI CLASSICAL 2026 覚醒前夜 ― Tokyo 3 Nights 世界への第一章」から始まる世界への新たな道 YOSHIKI

YOSHIKI   2026/02/09掲載
 アーティストとして、グローバルな活動を続けるYOSHIKI。昨年はアメリカの権威あるニュース誌『TIME』で「世界で最も影響力のある100人」に選出されるなど、その一挙手一投足は日本のみならず、各国のメディアからもつねに注目される。昨年11月にはサウジアラビアにある世界遺産のヘグラ遺跡にて、数々の著名ミュージシャンとコラボレーションしてきたレバノン出身のトランペット奏者、イブラヒム・マーロフと公演を行なったことも記憶に新しい。
 そのYOSHIKIが4月3日から5日にかけて、東京ガーデンシアターにて、「YOSHIKI CLASSICAL 2026 覚醒前夜 ― Tokyo 3 Nights 世界への第一章」を行なうことになった。近年は頚椎の手術などもあり、長らくリハビリに取り組んできたが、今回のコンサートは、本格的な演奏活動の再開を宣言するものでもあるという。
「YOSHIKI CLASSICAL 2026」KV
 “YOSHIKI CLASSICAL”とは、彼が2013年にリリースしたアルバムのタイトルでもある。彼がこの名称に込めた思いとは何だったのか。
 「あのアルバムには、たとえば、X JAPANの〈Forever Love〉や〈Tears〉がクラシックになったヴァージョンも収録されていますけど、〈Miracle〉などクラシック用に作った曲もあるし、クロスオーヴァーもある。そういう意味で、“YOSHIKI CLASSICAL”というジャンルを作っていければということで続けてきたんですね」
 無論、その前提には、彼の音楽的素養の一つでもあるクラシック音楽に対する愛情や敬意がある。
 「そうですね。大好きですし、子供のときにはクラシックしか聴いていなかったですから。そういった中で、父親が亡くなったり、いろんな環境の変化もあってロックにも引き寄せられていったんですけど、ピアノもやっていましたし、クラシックの勉強も続けていたんですね。最近はノンジャンルのリスナーの方も多いと思うんです。ヒップホップを聴いたり、EDMを聴いたり、ロックを聴いたり、クラシックを聴いたり。ただ、昔はクラシックもロックも聴くという人はあまりいなかったと思うんですよ。そういった壁を壊したかったという考えもあると思います」
 幼少期における家庭環境の違いは大きいが、小中学校の音楽の授業で相応に触れる機会はあるとはいえ、とかくクラシック音楽は一般的に敷居が高いイメージがある。YOSHIKIはそのよさを、どのようなところに見出しているのだろう?
 「複雑さとか難しさとかもじつは魅力ではあるんですよね。だけど、やっぱりいちばんの魅力は美しいメロディだと思います。バッハにしても、ベートーヴェンにしても、ラフマニノフやチャイコフスキーにしてもそう。しかも、それを応用して作られたポップ・ミュージックが世の中にはたくさん存在してるんですよね」
 さらに先のヘグラ遺跡での公演のエピソードを交えて、次のように付け加える。
 「先日のサウジアラビアでは、イブラヒムさんと2人でほぼ即興で作った曲を演奏したんです。僕がアイディアを投げて、彼からアイディアが戻ってきて……本番の1~2時間前に完成した感じなんですけど、クラシックをやっていると、音楽家として会話ができる。ロックをやるにしてもパンクをやるにしても、EDMにしても、クラシックを知ってると、ある種の音楽基礎がわかるんですよ。その意味では、やっておいて損はないし、むしろやっておいたほうがいいと僕は思ってます」
YOSHIKI
サウジアラビアではラクダに乗る機会があった。「かわいかった。また乗りたい」
 YOSHIKIに関心を持つ視点はさまざまだろうが、コンサートとしての『YOSHIKI CLASSICAL』は、とくに初心者に向けては、クラシックへの道しるべになる可能性も大きいだろう。
 「そう言っていただけることもありますね。実際に僕のコンサートに来て、ベートーヴェンが好きになりました、チャイコフスキーが好きになりましたって言っていただけるのはうれしいですね」
 ただ、それはかならずしも意図していたことではなかったようだ。
 「そう、自分が好きなもの、自分がやりたいことをやっているという意識もあるので(笑)。オーディエンスはこういうのを聴きたいだろうから、こういうコンサートをやろうというのではなくてね。もちろん、自分がやりたいものを考えた後に、“それってファンのみなさんも聴きたいかな?”って微調整はするものの、基本的には自分がやりたいことをやります。こういう音楽を作ったら売れるんじゃないか、バズるんじゃないかって発想も、べつに間違ってはいないと思いますよ。でも、僕は逆なんです。実行に移す前にいろんな葛藤をするので、自分がやりたいことをやれば、それは自動的にバズる……というぐらいの自信を持ってやっているんです」
 YOSHIKIの臨み方は、アーティストかくあるべしという一つの理想的なモデルケースだろう。ところで、昨年12月に東京で行なわれた記者会見の場には“AI YOSHIKI”が登場して来場者を驚かせたが、生成AIは音楽の世界では、ミュージシャンが直面する大きな問題になっている。可能性を感じる一方、黎明期ゆえの弊害も散見される。YOSHIKIは現状をどのように捉えているのだろう。
YOSHIKI
記者会見で“AI YOSHIKI”と会話するYOSHIKI
 「一言でいうと、僕はカオスだと思う。僕が紹介した“AI YOSHIKI”はファンとのコミュニケーション・ツールなんです。だから、直接、今の音楽制作とは関係がない。ただ……今もそうだと思うんですが、レーベルと生成AIの企業とは裁判の嵐ですよね。今や生成AIが作った曲がヒットしたりもしているし、レーベル側も歩み寄ってはきている。たぶん、模索しているんだと思うんです。徐々にですけど、実際にライセンス契約を結び始めてますしね。とはいえ、レーベルと生成AIの企業にとってはよいけれど、それはアーティストにとってよいのかというと、まだ僕にはクエスチョン・マークがたくさん残っているんです」
 ミュージシャンとしてさまざまな体験を通して自己を磨き上げてきたYOSHIKIには、言わずもがな、アーティストであることの揺るぎない自負がある。
 「僕はアーティストというものが存在してほしいんです、10年後も100年後も。このまま今の流れに任せてしまうと、アーティストという存在がなくなってしまうことも考えられる。何をもってアーティストと呼ぶのかという定義も変わってきてしまうかもしれませんよね。要するに、たとえば、“コーヒー”“ブレックファスト”“サンライズ”など、たんに思い浮かべたイメージから曲ができてしまう。それもアーティストだという時代が来るかもしれない。でも、僕が思うアーティストは、ギターだったらギターをたくさん練習したり、ピアノだったらピアノを一所懸命に練習して、表現方法を身につけて、作曲も勉強したり、セッションしたりしながら作っていく人たちなんです。そういうところは、守れることであれば守りたい。そういうアーティストが存在してほしいと思ってます」
 それにはどうすべきなのか。彼自身も状況を眺めつつ、将来に向けて取り組んでいるようだ。
 「インスピレーションだけでアートが生まれるということを否定はしていないんです。それはそれとして、そういったジャンルとして確立すればいいんじゃないかと思います。ただ、音楽ができる過程では、エンジニアがいたり、ステージだったら照明のスタッフがいたり、たくさんの方々が関わっていますよね。その中には生成AIに取って代わられるものも出てくるでしょうし、従来のエコシステムのすべてを守ることはできないだろうと思います。だけど、守れるところは守りたいんです。だから、どのレベルで共存できるのか。そこが課題だと思いますし、僕はそこに実際に取り組んでいる一人だと思います」
 コンサートの現場にも生成AIの影響は及んできている。しかし、どんな時代が訪れようとも、ステージでの演奏は、生成AIにはなり代われない唯一のものだろう。ただ、アウトプットだけに目を向けても、芸術の本質は見えてこない。
 「実際にロボットなら、どんなに難解な曲も弾くことができると思うんです。逆に“間違えて”って指示したら、間違えることもできる。ただ、僕らはそこに到達するまで、何十年もピアノを練習したりするわけですよね。それゆえに人は感動する。たとえば、ただ楽曲のクオリティが素晴らしいというだけでは、感動には至らないと思うんですよ。たとえばゴッホの絵はたしかに素晴らしい。でも、彼にはとてつもない人生があるわけじゃないですか。耳を切り落としてしまったとか。僕はその芸術ができるまでの過程も芸術であると思ってるんです。今はA地点からB地点まで光のスピードで行けてしまうけれど、苦労する創作活動の時間というのも大事だと思ってる。だから、そこを何とか活かせるようなAIとの共存の仕方を考えなきゃいけないんじゃないかって」
 『YOSHIKI CLASSICAL 2026 覚醒前夜 ― Tokyo 3 Nights 世界への第一章』の後には海外での公演も計画されているようだ。今だからこそ、YOSHIKIはどうあるべきなのか。そんな自己探究の一端が表現されるコンサートにもなりそうだ。
 「やっぱりAIを突き詰めると、どうして僕らは生きているんだろうという人生観に行き着くと思うんです。すべてAIがやってしまったら、人間の生命とはなんだろうというところまでいっちゃう。その時代は、すぐ目の前に来ていると思うんです。その点では、クラシック・コンサートなんて、時代に逆行していますよね。一所懸命にピアノを練習して、生の音でやっていくっていう。片や僕はテクノロジーを駆使して作られた音楽も嫌いじゃないんです。だからこそ、感動を与えたいですね。命とは何か、人が生きている意味とは何か。そういった大きなテーマを、みなさんに投げかけることができるコンサートになると思います」

取材・文/土屋京輔
information
「YOSHIKI CLASSICAL 2026 覚醒前夜 ― Tokyo 3 Nights 世界への第一章」

日程・会場
4月3日(金)東京・東京ガーデンシアター
4月4日(土)東京・東京ガーデンシアター
4月5日(日)東京・東京ガーデンシアター

開場・開演:
18:00開場・19:00開演(3日) / 16:00開場・17:00開演(4日、5日)

主催:ウドー音楽事務所
https://udo.jp/concert/YoshikiClassical26
https://jp.yoshiki.net/info/7740/
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